メジャーミネラル続き、カルシウム・マグネシウム・リン!

めちゃくちゃ中途半端な形になっていたミネラルの話について、前回は最重要ともいえるミネラルのキング&クイーンこと、ナトリウムとカリウムについてちらっと触れていましたが、早速続きに参りましょう。

なお、取り上げるミネラルは、日本人の食事摂取基準(2020年版)(494ページものPDF!)にて触れられているものを順に見ていく形ですね。

ミネラル三巨頭の一角といえる、カルシウムからレッツラゴー!

 

3. カルシウム(Ca)

こちらは、名前だけなら下手したらナトリウムやカリウムより有名で、幼稚園児でも知っている、骨を丈夫にするといわれているミネラルですね。

ちなみに、既に何度か書きましたが、カルシウムも当然金属元素なわけですけど、生体内で使われるのは、まんまカルシウムオンリーから成る金属カルシウムではなく、イオン化したり、他の元素と結合して化合物を形成したりした状態のカルシウムということですね。

カルシウム純品の塊(=単体・金属カルシウム)そのものを見たことがある方は、まずいらっしゃらないでしょう。

「えっ?俺はカルシウムタブレットを飲んでいるぞ!あれにはカルシウム配合って書いてあるんだが?!あの白いのはカルシウムじゃなかったってことなのか!?騙しやがって、ふざけるなよ!!!」

…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが(いやそんなしょうもないことでブチ切れる人はカルシウムが足りてないし、カルシウムサプリ愛飲者の方にはいないかもしれませんが(笑))、あれも「カルシウム」と書かれてはいるものの、普通にカルシウムの化合物だということですね。

その証拠に、金属カルシウムってのはこういうものです。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/カルシウムより

こんないかにもな金属を飲んでいるなんて方は、まさかいらっしゃらないことでしょう。

まぁサプリに含まれるのがどういう形態のカルシウムかは僕は詳しくないですが、恐らく炭酸カルシウムとかリン酸カルシウムとかそういうのではないかと思われます。

成分表示にも多分「カルシウム・・・○○mg」とか書かれていると思いますけど、これはあくまで金属カルシウムではなく、イオン化したカルシウム化合物の形をそう書いてるにすぎないんですね。
(わざわざ化合物に分けて書くのも手間というかそうする義務もないため、いちいち「炭酸カルシウム」とか「カルシウムイオン」とかは書かずに、「カルシウム」とだけ書かれることが多い、ということ。
 この記事でも、あえてイオンとか化合物名を書かない「カルシウム」と表記してる箇所もありますが、実際はカルシウムイオンのことを指している形になります。)

ちょうど、金属ナトリウム(水をかけると爆発)と、イオン化した塩化ナトリウム(ただの食塩)とでは性質に雲泥の差があるように、カルシウム含めあらゆる金属(というかあらゆる元素)は、単体と化合物とでは全く別物レベルの違いがある、っていうことなわけですね。

…って、毎度書いてて思ってたんですけど、「いやいやイオンがどうたらって、何のこっちゃよぉ分からんのだけど…。そりゃ中学理科では習ったけど、正直、それが何なのかイメージが全くつかない。『生体内に存在するのは、金属単体じゃなくて、イオンなのです!』とか元気よくいわれても、『ほ~ん、で?ぶっちゃけまるで意味が分からんけど、どうする?』以外に何も思えんのやが…」と思われている人も、もしかしたら結構いるかもしれないので(いないかもしれませんが、イオンはやっぱり、中学理科の壁&適当に理解している人が多い単元なのではないかと思います。中学時代の自分含め…)、イオンについてもまたいずれ簡単に分かりやすく書いてみたいですね(まぁ、僕はイオンの専門家ではないので、あくまで自分のイメージを語るだけになりますが)。


カルシウムとほぼ関係ない話でまたスペースを食っちゃいましたが、まぁカルシウムはみなさまご存知、(それからを形成する役割が第一に挙げられましょう。

実際、体内に含まれる元素は、酸素・炭素・水素・窒素の四天王に続いて、カルシウムが1.5%で5番目に多い元素となっており(参考:岡山県立図書館によるレファレンス事例より↓)、その内99%が骨と歯に含まれているとのことですね。

crd.ndl.go.jp
しかし、昔は「骨のために、とにかくカルシウムを摂りましょう」といわれていた記憶がありますが、近年、「カルシウム自体の摂取量よりも、カルシウムの吸収を助ける栄養素を摂ることの方が大事」なんてことが声高に叫ばれることも多くなっているような印象がありますね。

具体的にはビタミンDが最も重要視されていますが、他にもちょうど次で触れるマグネシウムなんかも、カルシウムとバランスよく摂ることを推奨されています。

ちょうど、これに関して、ずーっと前に稲垣吾郎さんがCMで、つけ鼻をつけてイタリア人っぽい感じで「カルニ・マグイッチ!」とかいってたのを思い出しました。

懐かしCMとしてYoutubeにアップされてましたが、印象にあるのは別バージョン、これよりもっと巻き舌で「カァルニィ!マグウィッチィ!」とかいってるアホっぽいやつでしたけど、まぁ未だに覚えてるほど印象に残っているということで、これはナイスCMだったといえますね。

www.youtube.com

…と、「カルシウム2:マグネシウム1」というバランスで摂るのが良い、という話なんですけど、このCM以外でそんな話聞いたこともないし、ただの言ったもん勝ちの適当な話なんじゃないのぉ~?とか思ってたら、一応調べてみたところ、きっちり査読つき論文で、ちょうど今年発表されていた関連データも目に付きましたし、マジみたいですね(↓)。

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
詳しくは読んでませんが、要約部によると、マグネシウムの摂取量が少なくて、Ca/Mgの比が大きくなりすぎると、心臓病やメタボリックシンドローム、さらにはガンに罹るリスクが上昇し死亡率が上昇する、一方逆にマグネシウムを摂り過ぎても悪影響が認められたとのことで、カル/マグ比は、1.70-2.60の間であることが望ましい(2.00あたりがやはりベスト)、とのことですね。

まぁ、「ゆーてそんなもん毎日上手くそこに落ち着くように調節なんてできます?」…って感じるのが正直な所ですが、カルシウムサプリとかで特別たくさんカルシウムを摂取している場合は、マグネシウムを摂ることも意識しておいてもいいかもしれませんね。


あと、ちょうど上で書いてて思い出しましたが、そういえばカルシウムって、イライラしてる人に「カルシウム足りてないんじゃないの?牛乳でも飲んで落ち着けよ」とかよくいわれる気もするんですけど、こちらは正直特に直接的な根拠はない、ただのイメージで語られている話かと思われます。

一応、こんな感じ(↓)の論文にまとめられているように…

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov
…中枢神経系で神経伝達物質の放出や制御にカルシウムが関わっているのは事実ですけど、仮に神経系でカルシウムが不足したら、恐らく骨から血中に溶け出して補充されるでしょうし、軽く調べてもカルシウム不足がイライラにつながるという臨床学的証拠は見当たらない(し、個人的な経験からも、まず関係ないと思う)ため、まぁこんなもんは迷信でしょう。

もちろん、話のネタとしてはイラついてる人に「カルシウム飲みんさいな(笑)」とかいえば場が和むかもしれないし、カルシウムを含む食品が一般的に健康にいいのは間違いないと思うので、「カルシウムとイライラは関係ない!キーッ!!」とネチネチつっこむようなカルシウム警察にはなりたくないですけどね…!

カルシウムについてさらに詳しくは、以前ビタミンDフラボノイドの記事なんかで参照させていただいていた、オレゴン州立大&新潟薬科大の一連の概説記事が、またまた非常によくまとまっていて素晴らしい内容に思えたので、リンクを貼っておくので興味ある方はどうぞ、と丸投げしようと思います。

lpi.oregonstate.edu

4. マグネシウム(Mg)

そんなわけで先ほどカルシウムの所で触れていたマグネシウムですが、なぜか日常生活ではカルシウムの方が圧倒的に知名度が高いですけど(まぁ明らかに骨に大量に含まれてるおかげですけどね)、生化学的には、最もよく使われる代表的な二価イオンということで、カルシウムよりも遥かに親しみが強い印象です。

またつまらん原子特性の話になりますが、ナトリウムとカリウムは一価の陽イオンを形成し(Na+、K+)、マグネシウムとカルシウムは二価の陽イオンを形成する(Mg2+、Ca2+)というのは中学理科でも習う話ですけど、これを体系的に理解するには周期表について知る必要がある感じですね。

まぁ詳しくはイオンについて触れるときに見てみようと思いますが、MgとCaは同じ第2族、アルカリ土類金属と呼ばれるグループに属し(先ほど貼ったカルシウムの図にも、縦のつながりがある旨が載っていましたね)、割と似たような性質を示す元素になります。


マグネシウムは生体内において本当に重要な元素で、シグナル伝達経路この辺の記事で見ていた遺伝子スイッチのON/OFFの流れみたいなやつですね)で、マグネシウムが大元のスイッチとしてキーになっている経路が多数知られていまし、酵素反応制限酵素でDNAを切る反応とか、PCRでDNAを増やす反応とか、とにかく様々な反応)でも、二価のイオンが反応に必須なことが多くあり、その際は反応溶液中にマグネシウムイオンを欠かさずに加えることになります。

とにかく生きるために必要な色んな反応で使われまくっている元素ですから、これが欠乏したらヤベェことになるのは明らかといえましょう。


日常生活では…というか生化学を専攻したことがない方には、マグネシウムなんてほぼ聞いたことないか、あるいは中学の理科でマグネシウムリボンを燃焼させたり水中に入れて気体を発生させたり…みたいな話でなぜか唐突にこいつが出てきたはずなので、その印象がある方もいらっしゃるかもしれないので、ナトリウム・カリウム・カルシウムと違い、これはむしろ金属のマグネシウムが一番身近というか印象的な物質かもしれませんね。
(でももちろん、生体内に存在するのはマグネシウムイオンです。)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/マグネシウムより

(リボン状に加工していないマグネシウムは、こんな感じなんですね。僕もこんな状態の金属マグネシウムなんて見たことない気がします。)


「そういえばマグネシウムとマグネットって似てるな」とふと思ったんですが、マグネシウム自体は磁石にくっつかないのに何でや?と不思議に感じ調べてみた所、Wikipediaによると、現在のトルコにあたるMagnetesという部族がいた場所(マグネシア地方)に由来するギリシャ語から取られた言葉だったようです。

この地名からは磁石マグネットの由来となる磁鉄鉱(Magnetite)や、同じく名前が似てるっっちゃあ似てるマンガンという語も派生したようで、まぁマグネットとはその意味で全く無関係ではない、という感じですね。

5. リン(P)

最早何度も登場したことのある元素、リン(P)ですが、このブログではヌクレオチドとかその辺で触れていました。

我らがDNAに含まれている、しかもより詳しくいえば塩基同士をつなぐのに、リン原子が仲立ちしている=1塩基に1つリン原子が介在していますから、例えば30億塩基のヒトゲノムDNAなら30億個のリンが(最後の1塩基はOHでリンがついていないことが多いので、正確には29億9999万9999個かもしれませんが(笑))必ず存在するということで、それだけでもうリンの重要性は説明不要といえましょう。

(この辺の結合について、言葉や概略図だけで分かりにくい説明ばかりでしたが、DNAヌクレオチド間の結合は、こうなってる(↓)ということですね。この図は一度どこかで貼ったことがあった気もしますが)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/リンより

そもそもこいつの名前のリンって何だよ、って話なんですけど、漢字では燐で、語義的には「光を発する」的な意味ですね。

英語のphosphorusも、phosが「光」(写真のphotoも同じ語源です)、phorosが「運ぶもの」の意のギリシャ語ですから、実に日本語と似たような意味ですね(元素記号Pはもちろんこれ由来)。

リンは非金属ですが、当然単体でも存在して(非金属の酸素や炭素も、当然単体が存在するのと同じように)、これは同じリン原子のみから成る純品物質なのに、結合の仕方によって白リン・赤リン・黒リンなど、色とりどり、様々な形態を取ることも有名です。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/リンより

一番身近な用途だと、やはりマッチ棒の擦る部分に使われる赤リンが最も有名というかイメージしやすいでしょうか。

まぁ改めて、生体内で重要なのはそれのみで存在している単体ではなく、イオンや化合物なわけですが、生体内の場合はとにかくリン酸の形がメインといえましょう。

クッソ重要すぎて至る所で登場しまくるので、最早逐一説明もできないぐらい、生体内で多様な役割を果たしています(生化学実験でも超多用します)。

あとはこないだ触れていた通り、DNA・RNAに含まれることから放射性ラベル(32P)したリンなんかも使われますが、それはまぁ日常生活・栄養ミネラルとしてのリンとは関係ありませんね。

分子レベルで生活に関連した話となると、「骨に含まれるカルシウムは単体の金属ではなく化合物」と書いていた通り、骨や歯に存在するカルシウムは実はリン酸カルシウムの形、より正確には水酸化リン酸カルシウム、化学式Ca5(PO4)3(OH)で表されるもので、別名ハイドロキシアパタイトと呼ばれる物質であり、こいつは「芸能人は歯が命」の「アパガード」 あたりから、身近でも聞くような気がする単語になったんじゃないかな、なんて気もします。

かように重要な元素ですが、ナトリウム同様、通常の食事をしていてリンが不足するということはまずあり得ないようで、元ネタの日本人の食事摂取基準(2020年版)では、摂取の推奨量は一切掲げられていませんでした(ここに挙げられているミネラルは、摂取推奨量が挙げられてるミネラルなのかな、と思ってたんですが、単に重要ミネラルなだけで、推奨量がないものもあったようですね)

でもまぁ何せDNAを結んでいる原子であり、さらに「エネルギーの通貨」ともいわれるATP(この辺の記事で触れていた、アデノシン三リン酸)に3つも含まれるリンですから、生体元素の中で最高に重要なものの1つであるってことは、どうか忘れないでやってほしいな…なんて思ってやみません(いやお前はリンのファンか何かか(笑))。

 

以上が多量ミネラルで、結局たった3つで無駄に長くなっちゃいました。

残り微量ミネラルについては、また次回へ続くとさせていただきましょう。

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