全ては電気が伝えている…

前回の記事では、反射について…といっても、鏡の反射ではなく、脊髄を介した「生物学的な無意識反応の方の反射」について、おさらい…という程でもなく、謎の「自分、マッサージ好きすぎて、オリジナルの反射見つけちゃったんすよ(笑)」とかいうどうでもいいにも程がある話を書いていました。

 

とはいえ反射反応は意外と面白いもので、前回も貼っていた以下のウィ記事には色々な反射の例が掲載されていましたけれども…

ja.wikipedia.org

 

…学生の頃、同じ学部で同じ大学院研究科に進級した友人が、大学院に入ってすぐに結婚してしかも子供まで産んでいたんですけど(直接の友人は男性の方ですが、結婚相手も見知った別の学科の人でしたが)、

「いやぁ~、赤ちゃんの手の平に指を乗せたら握ってきて、『把握反射だー』って感動したぜぇ~」

とか、その他有名なバビンスキー反射なんかも「本当になって、面白いよ」とか言って興奮してましたけど、「いやもっと他に感動することあるだろ(笑)」と思えたものの、まぁ生命科学系の学生には、そういう講義で学んだものが実際に見られるってのはたまらなく楽しいことなわけですね。

 

って、こんなわざわざ関係性まで出して長々と語る話でもなさすぎましたが(笑)、各反射についてはウィ記事をご参照いただく以上の話もないのでその辺にするとして…

(ただ、赤ちゃんが見せる各反射は、成長とともに失われるものなので(指を手の平に乗せたら、無意識に握ってしまう大人なんていませんもんね(笑))、これらは「病的反射」とカテゴライズされているのは面白いポイントでした)

…前回、「反射」という用語の厳密な意味なども書いていたわけですけど、それに関連して、「反射神経」なんてのも日常生活、特にスポーツをしているとよく使われるわけですけれども、これもまぁ中学理科で「運動神経」という用語を習う際に、雑談を丁寧にしてくれる話の面白い先生なら確実に触れてくれる話だったんじゃないかとは思いますが、「反射神経」という医学用語というか体の中の部位というのは実は存在せず、また「運動神経」というのも、一般的に用いられる「スポーツがどれだけ上手にできるか」という意味では全くなく、これは「脳や脊髄から指令が走って、筋肉などを動かす際に作用する神経」のことなのである…というのも注意点かもしれませんね。

 

ちょうど前回もチラッと見ていた反射の反応で、「熱いものを触った」という刺激がまず神経を伝わって脊髄を経由して、この場合は脳を介さずに即、腕の筋肉の方に指令が下るわけですけど、この後半、いわば司令塔を頂点とした場合の下流というか下りのシグナルを伝えるのが「運動神経」なわけですね。


一方、「熱いものを触った」ということを脳や脊髄に伝える神経は「感覚神経」と呼ばれており、いわば上流というか上りにあたるラインがこの感覚神経になるわけです。

(モノを見る・においをかぐ・音を聞く・味を感じる・何かに触れるといった五感のシグナルは全て、感覚神経がそれを脳に伝えている…ということですね。)

 

そんなわけで、動物が動物らしい振る舞いをするるための神経、いわゆる性神経系には、大きく分けて2つの神経経路・感覚神経と運動神経とがあり、ちょうど動脈と静脈のように、これらは両方向にシグナルを伝えられるわけではなく一方通行になっているわけです。

(より方向が分かりやすい用語として、感覚神経を求心性神、運動神経を遠心性神と呼ぶこともありますが、まぁそんな言葉についてはどうでもいいでしょう。)

 

ちなみに自分の意志で動かすことのできる体性神経系(もちろん反射など、不随意な反応もありますが、基本的に、ですね)の他に、人間には自動的に制御されている自律神経系というものも備わっているわけですが、そういえば確か「副交感神経系」に触れて脱線が始まったこの生命科学系のシリーズでしたから、色んな話を経て今度はまた体性神経系の話にまで戻ってきたというのは何とも感慨深い気もします。

 

まぁそれはともかくとして、せっかくなのでこの辺の神経の話をもう少し深掘りしてみますと、何度か書いている「熱いものを触った刺激が、シグナルとして伝わる」って一体どういうこと?具体的に何がどうなることで指で触った熱が脳に何が伝わるのさ??……と、まぁそんなこと別に疑問にも思わないかもしれませんが(笑)、よくよく考えるとこれは大変不思議な話になってるといえましょう。

 

あまりにも当たり前すぎて最早何ら意識すらしないですが、例えば今僕がやっている行動というのは、文章を書くためにキーボードを指でパチパチ打ってるわけですけど、「次はこの文字を打ちたいから、この指をこのキーの上に乗せて押し込むように指を動かそう」というこのアクション、一体どうやって可能となっているのか…?

 

もちろん教科書的には、光の反射でキーボードの位置を目で「光の刺激」として受け取り、感覚神経がそれを脳に伝え、それを受けて脳からは「人差し指をここにあるHキーを押すためにこのように動かし、続いて中指をここにあるIキーに動かし…」という命令を運動神経に送ることで、僕の指は正しく動いて今こうして文字を打ち込んでいるわけですけれども、具体的に体の中では何が起こってるの?という話ですね。

 

これに関しては、ズバリ、「電気信号が細胞の中を伝わることで実現されています」というのが端的な回答になっています。

 

とはいえそう聞いても、「いや電気信号って、人間にはコンセントも電池もないじゃん」と思われるかもしれないわけですが、これは結局、またそこに落ち着くしかないといえる、イオンの流れで産み出される電気シグナルになっているという話なのでした。

 

ずっと前もどこかで書いたことがあったように、細胞というのは基本的に膜で包まれた内部にカリウムイオンが多く存在し、外部にナトリウムイオンが多く存在するという形になっているわけですが…

ここで、何らかの刺激が加わると、神経細胞の表面に存在する「イオンチャネル」という生体分子(当然、機能性の分子ということで、これらはタンパク質で出来ています)の開閉が行われ、ナトリウムイオンとカリウムイオンの移動が起こり、その移動の結果、(両イオンは陽イオンなので)電気的な偏りが生じ、電気というのはご存知高速で伝わっていくものですから、その電気信号が細胞内を走り、端まで達したらまた次の神経細胞へと伝わっていく……という感じで、そこそこ距離がある指先で受けた刺激なんかも順番に速やかに脳へと伝わるようになっているという形なわけですね。


(とはいえ言うまでもなく、完全にゼロ秒で瞬間移動できるというわけでもないので、身の危険を感じるような刺激に対しては、高等動物は「反射」という、神経シグナルのショートカットで反応を高速化する仕組みも、進化の過程で獲得したんだといえましょう。)

 

まぁチャネルどうこうとかはややこしすぎますし、その辺は大学の生物物理で習う話なので細かい点は気にしなくてもいいと思いますけど、概念図としてはこんな感じになっています。

https://www.tmd.ac.jp/artsci/biol/textlife/neuron.htmより

 

…こちら、「神経 電位」で検索したらトップでヒットしてきた、東京医科歯科大の和田勝さんによる解説記事(既に退官されて名誉教授となられているようですが、偉大な方だけあって、とても分かりやすい解説記事だと思います)からGIFアニメ画像をお借りしましたが…

 

www.tmd.ac.jp

 

…まぁ画像自体は単なる概念図ですけど、こちらの記事は、多少難しいとはいえ網羅的に神経の仕組みを理解できる大変素晴らしい解説ではないかと思います。

 

とはいえここでは触れられていない、そもそも根源的な疑問として、「物理的な刺激が、どうして電気信号になるの?」という疑問も生まれるかもしれません。

 

まぁこれは、「その刺激を受けると、タンパク質の構造が変化して上手いことパカッと開いてイオンを通すことができるようになる、チャネルというものが都合よく存在しているから」としか言えないのですが、ちょうど、「熱いものを触ったら反射的に手をどける」にかかわってくる、「熱を感知するチャネル」として有名な、TRPチャネルというものが解説されているPDF記事が見つかったので、画像をお借りさせていただくと……

 

http://tenaca-nips-2016.kenkyuukai.jp/images/sys%5Cinformation%5C20161004145432-C9A0307CDC5BFFBE368042C37301506118242A368CDD5986EDA4A983ED7B8D92.pdfより

 

…このように、細胞膜に埋まったチャネルは、熱の刺激(他にも、酸=水素イオンの刺激や、面白いことに唐辛子でおなじみカプサイシンにも反応することが知られています)によって形が変わって、ナトリウムやこの場合カルシウムイオンなんかも細胞の中に入っていくと、そういう話になっているわけですが……

 

…またまた時間不足につき完全に時間切れとなってしまいました、続きは次回持ち越しとさせていただきましょう、中途半端で誠に恐縮です。

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