金属もつながっているよ

前回はイオンが水に溶ける仕組み、水和についてチラッと見ていましたが、そちらに逸れた結果ご質問が途中状態だったため、ご質問内容に戻るところから早速参りましょう。

 

銅についてですが、

銅イオンもやっぱり液体の中でしか存在せず、コレっていう(私がわかるレベルの)ものはパッとは出てこないというのはわかりました。


例えば10円玉もそうですし、銅そのもの(固体)っていうのは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいるということですが、「何らかの」陰イオンと書かれているように、陰イオンはたいして重要でもない感じなんですかね?陽イオンである銅イオンの方をとって銅というくらいですし。(逆に銅の陽イオンだから銅イオンということなのかもしれませんけど)

 

⇒銅の話に行く前に、また少し一般的な補足からしておきますと、「銅そのもの(固体)っていうのは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいるということですが」という部分……

こちらは前回「固体の中にもイオンは存在している、と正しく把握なさっており流石です」などと書いていたものの、少し補足しておいた方がいいかなと思える点として、金属の銅自体は、「銅そのものは、銅イオンと何らかの陰イオンが手を繋いでいる」というわけでは必ずしもなく、特に金属のカタマリである銅そのものを考えた場合は、銅原子のみがズラーッとつながった形になっています、というポイントが挙げられるかもしれません。


まぁ一応銅原子自体はイオン化しているとはいえるんですけど(もちろんその銅イオンが自由に漂うことができるわけではないというのは、10円玉が硬い固体であることからも明らかといえましょう)、これは金属に特有の性質で、金属というのはそれ単体が延々とつながることで、巨大なひとかたまりの物質として存在できるのです。


…って、別に世の中には木とか、プラスチックとかコンクリートとか、「巨大なひとかたまりの物質」なんていくらでもあるやん、と思われるかもしれませんけれども、それらは色々な原子が寄せ集まった作られた分子からなるもので、単原子でどこまでも大きくなれるのは、完全に金属の専売特許という感じなわけですね。


もちろん10円玉なんかも、酸化されたら酸化銅になるので、「何らかの陰イオンと手を繋いでいる固体の銅もある」というのも間違いではないのですが、それは酸化された表面のみで、やはり金属といって我々が頭に思い浮かべるあのメタリックな物質というのは、基本低に単原子がズラッとつながって存在している物質だといえましょう。


イオン結合共有結合と触れ、「金属結合」も名前だけは出していたものの、「これはあんまりおもんないので、詳しくは触れなくてもいいでしょう」なんて書いてきた記憶もありますが、まぁせっかくなのでこいつにも触れておきましょう。


とはいえWikipedia日本語記事(↓)には画像の一枚すら存在しなかったぐらい、実際あんまおもんないやつなんですよね、こいつはやっぱり(笑)。

ja.wikipedia.org

一応、英語版の方に画像があったので、そちらを拝借させていただきましょう。

https://en.wikipedia.org/wiki/Metallic_bondingより

正直、今まで以上にこんなの見ても何のイメージも湧きようがないように思えますけど、結局金属結合というのは、金属原子がズラーッと規則正しく並び、各原子が電子を放出し(金属元素は、周期表で左側に多い=電子余りの元素なので、余計な電子を放出した方が安定するという話でした)、全原子がそれぞれの電子をシェアする形になっている……画像だと電子(丸印に「-」)も規則正しく並んでいるように描かれているものの、(英語ですが)文字での説明にもある通り、実際の電子はこの陽イオンとなった金属原子の中を自由に動き回っているのです。


したがって、金属の中にある電子は、しばしば「自由電子」とも呼ばれています。

(…と思ったら、より厳密な物性化学においては、「自由電子」はより一般的な意味で用いられるとのことで、金属内を自由に動き回る電子は「伝導電子」と呼ばれることの方が多いみたいですね、↓のウィ記事によると…)

ja.wikipedia.org

まぁ呼び方はともかく、金属内には実は大量の電子がうようよ動き回っており、金属が電気を通しやすいのもまさにそれが理由で、他にも、冬、乾燥した状態で金属を触ると「パチッ」とくるあの静電気なんかも、金属がいかに自由に動ける電子を沢山抱えているかの証左といえましょう。


(…って、そう書くと、さっきは「銅イオンが動けないのは、10円玉が硬い固体であることからも確定的に明らか」とか言ってたくせに、実は「電子は金属の中を自由に動き回れるんです」とか矛盾しまくりにも程があるように思えますが(笑)、まぁ電子は原子という物質の中においてはバリクソ小さいホコリみたいな存在ですから、全体が動かなくともホコリ粒子は実は内部でウヨウヨ動き回ることができる…ってのは、まぁあんまり納得できない気もしますけど(笑)、一応世の中そういう風になっている、ってことですね。)


いずれにせよ、金属というのは、大量の原子が規則正しく並び、各原子は余計な電子を放出することでより電気的に安定な状態になっている……いわば金属イオン全員に「邪魔だなぁ電子、どっか行けよ」とシッシとやられ続けることで電子は安定した行き場がなく全体をさまよい続ける(結果として、金属は電子をある意味全員で共有することで、大きな一塊として存在している)、って話だといえる感じです。


(そこに、上手いこと電子を奪いたくてしょうがない酸素とかがやってくると、表面の金属原子が「待ってました」といわんばかりに酸素に電子を与えてしまい、銅の場合ならくすんだ酸化銅になってしまう、って話ですね。

 改めて、電子を奪われたものは「酸化された」と言うのでした。)


なお、ミクロのレベルでは、金属原子は電子を放出してイオンになっているともいえるんですけど、全体で見れば電子はその金属全体の中に等量存在していると言えますから(自由に動き回っていて、どれが誰の電子だったか皆目見当がつかないとはいえ)、その辺に転がっている金属というのは、やっぱり「イオン」ではなく「金属原子そのものとして存在している」とみなす形になっていると言えるように思います。

(実際化学式でも、固体の金属は「Fe」とか「Cu」とかで表されますしね。)

したがって、改めて、「イオンとして単体で存在できるのは、溶液の中のみである」ってのは特に覆らない話だといえる感じですね。

(とはいえ同時に、金属結合というのは、陽イオンとなった金属がズラーッとつながったもので、放出された電子はその中全体を自由に漂っている、というのも正しい話なのですが。

 これはもう、いわばイメージの話なので、あんまり深く考える必要もないように思えます。)


それを踏まえてまた1つ脱線してみますと、しばしば勘違いされやすい話として、例えば栄養分で「鉄分を摂取するのが重要」とよくいわれるわけですけれども、これは別に鉄球を食べなきゃいけないとか、体内のどっかに硬い鉄でできた組織だか器官だかがあってそれを作る必要があるとか、そういうことではないんですね。

まぁそんな風に考える人はいないと思いますが(笑)、体内で必要な金属元素金属結合をした固体の、ピカピカ光って硬いあのいわゆるメタル金属ではなく、イオンとなって他の元素とイオン結合をした、しばしば水に溶けているため目には全く見えない、金属の化合物でしかないわけです。


とはいえ、カチコチのいわゆる金属自身にも当然金属イオンは含まれているわけで、「ひじきは鉄分豊富だと思われていたが、実は調理するときの鉄製フライパンに由来するものだった…!」ということが判明し、ある年の栄養成分表の改訂時に含有量がガクッと下げられたという逸話は……あぁ以前見ていた↓のミネラル記事なんかで既に触れていましたね。

 

con-cats.hatenablog.com

似たような話で、キリンが鉄棒をナメナメする様子がちょっとセクシャルだ、なんてしょうもねぇネットニュースを最近どこかで見た気がしますが(笑)、実際鉄の棒を舐めた場合、唾液の成分と反応して、あるいは既にイオン化している鉄棒表面の酸化された部分などから、少なからず鉄イオン(鉄化合物)も摂取できるのは間違いなく、特に動物はそうやって微量金属元素を摂取しているともいえるように思います。


鉄棒ナメナメの動画はありませんでしたが、文章で「子供キリンのコナツは、低い鉄柵を舐めているときが多いです」と紹介されていた、こちらキリンを愛する方のブログ記事(↓)に、木などをなめる可愛いキリンの動画がありましたね!

giraffe.hitoshimz.net

この行為を「常同行動」と呼ぶそうで、舐めるものに含まれる微量元素を摂取している可能性もあるものの、野生のキリンにはあまり見られず飼育されて暇なキリンがよくやる行為のようで、実はハッキリしたこの行為の原因・目的は不明とのことでした。

てっきり野生動物こそ栄養素が不足しないように色んなものを舐めるのかと思っていたのですが、むしろ「ただ暇つぶしにやってる」ぐらいまであるようで、キリンの世界も奥深いものです(そんな話だったか?(笑))


という所で、またまた銅の話の前段で時間切れとなってしまいましたが、次回はご質問にあった銅化合物に注目してみようと思っています。

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