カニス・フェリス……賢い呼び名も知ってみよう

前回は、染色体形成に働くタンパク質分子(団)こと「コンデンシン」の説明画像にたまたま線虫のみに見られる構造も掲載されていたことから脱線ネタで逸れてみた、生命科学を大きく発展させたスーパーモデル生物、「シー・エレガンス」について触れていました。

 

元々、「シー・エレガンスは、全ゲノム配列が判明している、数少ない動物のひとつなんですね(もちろん初めて全DNAが解明された、最初の種でもある)」という切り口で話を始めようと思っていたんですけど、「全遺伝子DNAの配列が完全に解明された生物のリスト」を見てみたところ、地味にめちゃくちゃ大量に存在していて、僕は配列解析が専門でもないので全然アップデートできてませんでしたが、最早「まだ解明されてない種の方が少ないんじゃないか…?」とすら思えるレベルだったため(まぁ、この世に生物種はどれだけいると思ってるんだ、って話で、絶対解読されてない方が圧倒的に多いですけどね(笑))、その辺は前回省いていたんですけれども……

 

日本語版の記事はなかったこともあり省略していたその「全遺伝子DNAの配列が解読された動物のリスト」が↓のウィ記事で……

 

en.wikipedia.org

 

…もちろん日々更新されているので具体的な数は意味がないですが、こちらの論文によると、2021年6月の時点で3278種の動物のゲノムが解読済みで、さらにその後3年近くが経って今なお増え続けていますから、相当な数の種の動物の遺伝子DNAの全データが分かってる、ってことなんですね!

 

(とはいえ、具体的に調べてみた所、この世に異なる生物のはおよそ870万種程度存在するということで、上のリストの三千数百種というのは「動物界」だけであり、もちろん動物だけに限れば全体の数は減るためもう少し割合は増えるものの、「全生物を網羅できるほどでは全くない」というのは間違いない感じではありますが…。)

 

ちなみに、上記リストを見ると本当に、特に2010年代後半から大量の動物がこの「ゲノム解読済み」リストに加わっていることが分かると思うんですけれども、これはまさに「次世代シーケンサー」という、DNAの配列を凄まじい速度・正確さで、しかも低コストに読める装置が発達してきたからでして、まぁ難しすぎるので次世代シーケンサーの詳しい話は置いておくにしても、今後全DNAが暴かれる生物の種類はますます増えていくことが予想されます。

 

とはいえ、まぁ前回書いた通り我々人間も含む動物界において、初めて全ゲノムが解読されたのは我らがシー・エレガンスこと線虫さまで、解明年が掲載されている上記リストをチェックしてみても、唯一の「90年代に全ゲノム解読済みであった動物」であることが分かりますね…!

 

…と、今回は染色体の話に戻るつもりでしたがまた予定を変えて、せっかくなのでこのリスト、学術的なものなので「C. elegans」のように学名も付記された形になっていますから、「身近な動物の学名をチェックしておこう」というこれまたしょうもねぇ記事をまとめてみようかな、と思った次第です(笑)。

 

「身近な動物」といえばやはり犬猫ですが、しかし、生命科学分野においては、犬猫よりももっと実験材料として使われやすい(もちろん解剖して切り刻むというより、「臓器とか消化液とかから、酵素や試薬として使える材料を採取する」って意図が多いですけどね)ものとしては、以前触れたこともありましたウシさんなんかがパッと浮かびますが(↓)…

 

con-cats.hatenablog.com

 

…ウシは「ボス・タウルス」という感じだったわけですけど、当然そこそこ重要な生物なので2010年以前にゲノムは解読完了されていました、上記リストではより細かく亜属名まで載っていましたけど、ウシはこんな感じですね。

  • ウシ:Bos primigenius taurus, cow (2009)


この通り、このリストには学名(斜字体で表します)と、コンマの後に一般英語名、その後にゲノムが完全解読された年も併記されていますが、こんな感じで、おなじみの動物の学名を見ていくとしましょう。

 

まずはやはり動物といえば我らがワンニャン……犬と猫は、そういえば学名で何と呼ぶのでしょうか…?


3000を超える上記リストから、「dog」「cat」と検索することで探し当ててみました、こんな感じですね!

 

  • イヌ:Canis familiaris, dog (2005)
  • ネコ:Felis catus, cat (2007)

 

…おぉ~、「ウシの方が生命科学ではなじみがあるのです(キリッ」とかほざいてたくせに、やっぱり犬猫の方が人類には馴染みがあって大切だったのか、実は牛より先にゲノム自体は完全解読されてたんですね(笑)。

 

まぁそれはともかく、犬の学名はズバリ「カニス・ファミリアリス」(まぁカタカナ表記は人によって多少の違いがありますが)で、これは正直聞いても全然ピンと来ない、全く馴染みがない名前ですねぇ。

 

ただ、種名(一番最後の部分)は基本的にラテン語から採られていることが多く、例えば人間=「ホモ・サピエンス」のsapiensは有名な「知恵」を意味する言葉由来ですから、犬の種名である「ファミリアリス」にも意味があるはずですけど……

…これは調べるまでもありません、「familiar(馴染みがある)」という意味の言葉由来に決まってますから、恐らく人類にとって最も馴染みがあって仲の良い、相棒たる動物として、分類学の生みの親、リンネさんがそうつけてくれたものなのでしょう(調べてないので断定はできませんが、まぁ間違いないと思います)。

 

一方、人によっては犬より大好き猫ちゃんですが、こちらは「フェリス・カトゥス」という感じで、こちらはむしろ、属名の「フェリス」が馴染みがあるといいますか、どう考えてもフェリスなんて女学院しか浮かばないわけですけど、フェリスはなんと「ネコ」って意味があるということで…


「犬は男っぽい、猫は女っぽい」というのは何となくどなたも感じられるイメージではないかと思いますが、それを鑑みると「フェリス=猫」という図式は素敵に似合っていて、何だか良いですね……

…と思いきや、ちゃんと調べたら、フェリス女学院の「フェリス」は創設者の苗字で、スペルも微妙に違うFerrisさん由来だったということで、猫とは1ミリも関係ありませんでした(笑)。

 

でもまぁその方がいいので、個人的には「フェリスは猫!」とこの先も思い続けせていただくことをお許しください(笑)。

 

一方、種名の「カトゥス」、これはむしろ「cat」って語が入ってて分かりやすいね、と思いましたが、これも別にcatとは関係なく、catus自体は「賢い・聡明な」という意味の語だそうで、まあまあ、猫は可愛く賢く聡明で液体ですから(笑)、これもニャンコに相応しい良い名前といえますね!

 

と、他の動物は何を見ておこう、と思ったんですけど、せっかくなので日本人の好きな動物トップ10を見ておくか…と思い、検索してみた所…

 

honkawa2.sakura.ne.jp

 

こちらのランキングで、最新の「日本人の好きな動物」が発表されていました、当然犬猫がワンツーフィニッシュなのは未来永劫変わらないと思われるので3位からですが、リストから学名とゲノム解読年だけ一気に貼らせていただいちゃいましょう。

 

  • イルカ:Tursiops truncatus, bottlenosed dolphin (2012)
  • 馬:Equus caballus, horse (2009)
  • うさぎ:Oryctolagus cuniculus, European rabbit (2010)
  • パンダ:Ailuropoda melanoleuca, giant panda (2010)
  • コアラ:Phascolarctos cinereus, koala (2013 未完成版)
  • リス:Tamias sibiricus, squirrel(データなし、ゲノム完全未解明!?)
  • レッサーパンダAilurus fulgens, red panda(データなし、ゲノム完全未解明!?)
  • ラッコ:Enhydra lutris kenyoni, sea otter (2017)

 

…と人気アニマルズ3位から10位でしたが、「レッサーパンダとかマジで?子供人気だけなんちゃう?」とも思えたものの、まぁ堂々9位も不思議ではない可愛さといえますけど、面白いことに、リスとレッサーパンダは、日本での人気とは裏腹に生命科学では不人気カス動物なのか、全く遺伝子DNA配列が調べられたことがないようですね!

(コアラのゲノム解明年は「draft(=草稿・未完成)」として挙げられていたので、不完全でもある程度調べられていたら挙げられるっぽいですし、どうも完全に未解読であることが窺えます。)

 

しかし、レッサーパンダはともかく、リスとか、北米大陸の象徴のような動物だと思えるのに、これはめちゃくちゃ意外でした…!

…まぁ、ゲノムを読んだところで別にこれといってその動物に詳しくなれるってわけでもないといえますから、「ゲノム解析なんてそんなものです」ということの表れかもしれませんけれども、絶滅危惧種のラッコが読まれてて、リスは読まれてないのかぁ…と、結構意外な感じで驚きではありますね。

(いやまぁ、絶滅危惧種だからこそ、ちゃんと全ゲノムを読んでおく、という動機付けも働きそうではありますが。)

 

学名を挙げたものの、結局これといって面白いネタもなかったのでただ並べただけで終わりましたが、「カニス」と「フェリス」が犬と猫をカッコつけて言った呼び方である…今回はそれだけ覚えて帰っていただけたら幸いです(んなもん全然覚える必要もないですけど(笑))。

 

アイキャッチ画像は、意外だったリスを借りようとも思いましたが、記事タイトルにも挙げたことですし、仲良しの犬と猫のいらすとをお借りさせていただきましょう。

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