もっといろんなものとつながってみようよ

前回は糖がたくさんつながった、いわゆる多糖類(デンプンとかグリコーゲンとか)を軽く見ていましたが、今回はいろいろなものがつながって、最早「炭水化物」の枠組みからは外れているともいえる糖について、簡単に見ていくとしましょう。

炭素・水素・酸素という糖を構成する元素以外で最もよく顔を出すやつといえば、当然、窒素Nです。

Nは腕が3本ですから、一番簡単な窒素の官能基(腕が1本フリーで、何かと手をつなげる状態のもの)は、-NH2、重要なのに未だに名前を出しただけでしっかり触れたことがなかったですが、こいつはアミノ基と呼ばれるやつですね。

このアミノ基を含む有機化合物のグループを「アミン」と呼ぶということもこないだの記事で書いていましたが、糖にも当然NH2はつながります。

糖の王様グルコースにこれがつながった場合は、そのまんまの名前、グルコース+アミン→グルコサミンとなります!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/グルコサミンより

何となく聞いたことのある名前になっているのではないでしょうか。

ちなみに、アミノ基のつく場所ですが、多分そこが一番つきやすかったのか、あるいはそこにつなぐことによるメリットが一番大きかったのか、必ずグルコース2番炭素(画像のNH2がつながっている位置ですね)につながっています。
(もちろん人工的に別の場所につなぐことは可能ですが、天然に存在するものはそこにつながっているということですね。
 見方を変えると、生体内に、そこにつなぐ酵素が存在しているということになります。)


そして、このグルコサミンは、生体内ではさらにちょろっと手が加えられまして、アセチル基(CH3CO-。酢酸CH3COOHの一部ですね)がアミノ基につながって、何となくもっとよく聞いたことあるような気がする物質になります。

それが、N-アセチルグルコサミン

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https://ja.wikipedia.org/wiki/N-アセチルグルコサミンより

まぁ健康食品に興味がない方は別に聞いたこともないかもしれませんが、結構メジャーサプリの1つだと思うので、どこかで目にしたことがあるのではないかと思います。

その辺の機能的な話はまたもうちょい後でしてみるとして、まず名前のN-、これずっと何なんだ?と思ってたんですけど、どうやら、アミノ基のN、つまり窒素のことのようで、「いやいや、グルコサミンの「アミン」の所でもうアミノ基があることは明記されとるやんけ!冗長すぎる無意味で無駄な感じがして、イラつくぜぇ~!!」と思ったんですが、まぁ、「アセチル」が窒素についてることを明記してるという意味では、一応意味のある表記とはいえそうですね(でも、慣用名の一種(ある意味固有名詞)なんだし、N以外にアセチル化されてるグルコサミンなんて出てこないわけだし、別にいらなくない?って気もしますが)。

ちなみに、こちら略称は上記Wikipediaの画像にもあるように、GlcNAcと表記されることが(特に科学研究の分野では)多いですね。

またちなみに、このアセチル+アミンの糖はグルコース以外にもありまして、次に有名なのはガラクトースの同じく2番炭素につながった、名前はほぼそのままN-アセチルガラクトサミン(略記GalNAc)…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/N-アセチルガラクトサミンより

他にもガラクトースグルコースがつながった二糖であるラクトースの、グルコース側の2番炭素につながったN-アセチルラクトサミンなんかもありますね。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/N-アセチルラクトサミンより

この内特にGalNAcは、核酸(特にRNA)を使った新しい医薬品の末端につなげることで、その薬をより安定的に(RNAは、二本鎖であるDNAに比べて、かなり分解されやすい分子として知られており、いかに安定させて長持ちさせるかが大きな課題なのです)、体内で目的の場所へ運搬させる役割で使われる分子として近年めちゃくちゃ注目されており、既にGalNAc結合タイプの核酸医薬品は商品として実用化されています。

参考記事の例:今年2021年の、最新の研究まとめ日本語記事(東京理科大・西川さん他著)「核酸医薬品開発における体内動態とDDS」(PDF記事)など

 

まぁその辺は割と自分の専門にも近い話なので、いきなり入門編を逸脱している内容になってしまいましたが、割と、この先もバンバン実用化されていくこと間違いなしの注目分子といえましょう。


一方、別の視点へと話を進めると、GlcNAcはアミノ基&アセチル基がついたとはいえあくまでグルコース1分子の単糖でしたが、こいつも、つながって多糖を形成します。

最も有名なのがこれ、これまた美容・健康食品界隈でめちゃくちゃ有名な、ヒアルロン酸

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ヒアルロン酸より

こちらは、二糖が延々とつながった物質ですが、1つはGlcNAc(まぁ「N-アセチルグルコサミン」表記の方がなじみのある書き方でしょうか)、もう1つはグルコース…かと思いきや、グルコースの出っ張り部分であるCH2OHがCOOH(カルボン酸を作る、カルボキシ基)に置き換わった、グルクロン酸と呼ばれる物質が手をつないで1つの構成単位となり、この2つの糖が次々につながった構造、つまり多糖=高分子ですね。

ヒアルロン酸は、どの高分子もそうであることが多いように、水に溶けるとネバネバした粘調のある物質になりますが、そういうベトネバ感ある性質が「皮膚の保水保湿に効く→うるおい肌!」とか「関節に良い!」「目の硝子体に多く含まれる→目の健康にもいいよ!」と謳われて、美容製品サプリでよく使われているように思います。

もちろん実際に保湿作用があることや、関節液に多く含まれる物質であること、さらには、ヒアルロン酸は年齢とともに体内から減少していくことなんかは間違いはないので、詐欺商品では決してないものの、個人的には、「ヒアルロン酸」って名前が、何となくヒーリング的なキレイで美しそうな響きであることが大きく、「名前で得してるだけちゃいます?名前のおかげで、過大広告になっとりゃせん?」…って気も、少ししちゃいますね。

実際グリセリンなんかも保湿効果がめちゃくちゃ強いですが、グリセリンなんてクリーム状の塗り薬にはほとんど入っているわけで、それでも別に「グリセリン配合!」なんて謳われることもないのに、ヒアルロン酸だけ何か特別感あるよなぁ、そんなめちゃくちゃ特別なものでもないのでは…?そもそもヒアルロン酸に限らず、皮脂だって水分だって基本ほとんどの成分は加齢とともに減少するんだし……という気がするといいますか、もしこれが例えば「ベトグチャ酸」みたいな名前だったら、果たして「ベトグチャ酸配合!」みたいに大々的に扱われていただろうか…?とも思えるので、まぁかように名前というのは大切だということでしょう。


別にそんなにヒアルロン酸を敵視しているわけではないんですけど、基本的に高分子は高分子のまま吸収して細胞内で使うことはできない、って点も注意点としてありますしね。

ちょうど、タンパク質を食べても、消化してアミノ酸にして、結局そのアミノ酸を材料にして、改めて自分で必要なタンパク質を自分の体内で作らなくてはいけない…というのと同様、高分子を摂取するのは、もちろん無意味ではないけど、そこまで積極的に推す物質でもないのでは、って気が個人的にはする感じですね(特に飲んだ場合は、胃腸で消化されてバラバラにされるだけですしね)。

実際、「効果なし」と断じられたケースもままあるのがヒアルロン酸ですが…(↓参考記事)

www.mynewsjapan.com

まぁやっぱり、何相にもわたる二重盲検(=試す方(医師)も試される方(患者)も、本当の薬か偽の薬(プラシーボ)かどちらを使っているのか分からない状態で実施する検査)を含むランダム化試験を、とても厳しい基準でクリアした、安全性含め効果がしっかり科学的に実証されている医薬品と比べ、サプリ・健康食品系は、あくまで気休め程度にすぎないこともとても多いというのは、意識しておいてもいいかもしれませんね。
(もちろん、僕自身、以前書いていた通り、サプリは好きだし自分でも飲んでるんですけどね。やはり、効果としては、医薬品とは一線を画します。)


関連して、ちょうどGlcNAcで思い出したんですけど、大学院の頃、近隣の研究室の同級生からの紹介で、サプリメントの治験に参加したことがありました。

あれはちょうどN-アセチルグルコサミンアスタキサンチン両方配合の、新しい美容サプリか何かだったと思いますが、若くて健康な男性被験者が集められ(そういえば募集要件は男性だったので、美容というより、健康サプリだったのかもですね)、最初にいくつかの基本身体検査をした後、パスしたら治験に参加できるという感じのやつで、一緒にいった後輩(あぁ、ずーっと前の記事で一度だけチラッと話に出したことのあった、身長180後半のビッグマン・藤井君です)の中には検査で落とされて参加できなかった学生もいましたが、概ねみんなパスして、顔見知りのみんなで参加しました。

僕と同じ日に割り当てられた参加者は5人でしたが、この治験バイト、土曜か日曜の合計2日(連続ではなく、別の週)、そのサプリ会社のオフィスに集まって、支給された割と豪華な弁当(と、もちろん、サプリも飲む)を朝昼晩食べて、食後とあと別のタイミングでも何回か採血するだけ、その間は、一応激しい運動はしちゃダメだったので、帰宅などもせず、ずっとオフィスに軟禁されてましたけど、当時出たばかりのWiiWiiスポーツや他のゲーム機、漫画、ネット環境など完備で、1日あたり12時間ぐらいの長い軟禁でしたが、ひたすらみんなで遊びまくっただけ、めっちゃ楽しい時間を過ごしただけなのに、2日間合計24時間弱の拘束(といいつつ、友達と遊び続けただけ)で、合計10万円弱もらえたという、「そんなバイトあり?!」と思える、逆の意味でヤベーやつでしたね。

もちろん、被験者には最後まで本サプリか偽サプリかは知らされなかったので、僕が飲んだのはサプリだったのかただのラムネだったのかは分かりませんが、GlcNAc+アスタキサンチンなんて健康被害を及ぼすわけもない全くリスクのないもの(むしろ、サプリとして開発されてるものなんだから、プラス)を飲んで、酒池肉林のバカ騒ぎをしてた(いやアルコールとかはなかったですけどね(笑))だけのバカ学生に1人10万円も払わなきゃいけないとか、サプリ開発も結構大変なんだなぁ、と思った記憶があります。

無名の会社だったので、企業名も商品名も記憶になく、果たして商品開発にまでこぎつけたのかどうかすら定かではないですが、お世話になったせめてものお礼に、僕たちから採ったデータが、効果のあるいいヒット商品につながっていたことを願ってやみません。


…と、途中からほとんど糖からはずれた話になりましたが、もうちびっとだけ次回も糖関連の話を続けましょう。

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