二酸化炭素を吐き出す理由

脱線に次ぐ脱線で、前回は全然関係ないカフェインの話なんかをチラッと出していましたが、呼吸の方に話を戻して参りましょう。

 

クエン酸について、その構造まで含め見ていたところで(=酸性を産み出すカルボキシ基 -COOHが3つ、それぞれ別の炭素原子につながった、炭素6つの分子でした)、ようやく呼吸の第2ステップ・クエン酸回路についてですね。

 

まぁこれはもう、本当に細かく見る意味なんてまるでないと言いますか、概略としては毎回お世話になっている以下のイラストにある通りの反応が進んでいくだけなわけですけど……

https://ja.wikipedia.org/wiki/細胞呼吸より

…これは簡略図であり、実際はもうちょい細々と代謝産物が絡むわけなんですが、僕個人的には、高校の生物でクエン酸回路を習ったとき、教え方の上手さに定評がありすぎる先生が教えてくれた語呂が、

性酢酸(アセチルCoAの別名がこれでした)のアセチル(がサイクルに入って)→エン酸→α-トグルタル酸→ハク酸→キサロ酢酸」

…という感じのものであり、「か・き・く・け・こ・おー」とでも覚えれば十分だと思うよ…などと教わりまして、何気に僕は未だにクエン酸回路の概略は「カキクケコオ~」で覚えてますけど笑、まぁそれは高校生向けの無意味な語呂ではあるのですが、正直、大学に入ったら(解糖系のときにも同じことを書きましたけど)そういう棒暗記よりももうちょっと何と言いますか、実際の反応で何が生まれて何が使われるかまで理解しながら覚えた方がいいと思うので、一般的には別の語呂(もうちょい代謝産物をしっかり並べた完全版)で覚えられがちのこのクエン酸サイクルですけど、僕は高校の生物の先生の授業が至高であり、それが全ての知識の土台であり続けたいなんて気持ちもあり、他の覚え方は「邪道だ」と無視し続けています(笑)。

(具体的には、この画像にも挙がっているフマル酸と、あとすぐ次に来る、ここにすら挙がっていないリンゴ酸とで、「・・・不倫」で終わる覚え方がメジャーだと思いますけど、前半には実際の人名っぽいものが来て、同姓同名の人がいたら失礼にあたるし、何かその覚え方は普通に気に食わない感じ……ってのもあります(笑))

 

とはいえ実際「カキクケコオー」にはいい点もあり、「カ・キ・ク・オ」は最初と最後(あと回路に入ってくる、実際にくっつくもの)でありまぁこれは語呂で覚える程でもないわけですけど、途中の「ケ・コ」が、↑のイラストをご覧いただいても分かる通り、脱炭酸が起きて、分子の炭素が1つずつ減っていくキーとなる分子であり…


(それぞれケトグルタル酸とコハク酸とで、C6→C5になるのと、C5→C4になる感じですね。

 クエン酸がC6なのは何度も書いている「カルボキシ基COOHが3つ、それぞれ別の炭素原子と手をつないでいる」から明らかで、最終産物のオキサロ酢酸がC4なのは、「アセチル基 -CH3COOHという炭素2つのカタマリがくっつくことでクエン酸になる」ことからも明らかといえますから、

「どこで炭素の数が減るんだっけ?」

…というのは、別個の知識として覚えておきたいポイントなわけですね。もちろん、試験対策でもない限り、現実社会ではそんなのどうでもいいにも程がありますけど(笑))


…まぁフマル酸からオキサロ酢酸に変換される際の「NADの還元」も大事っちゃ大事な点ですけど、物質変化としてはマイルストーン的な、回路の中での重要産物と言えますから、「どの辺で炭素が減るんだったかな」と思い出す際に便利な語呂にもなっている感じなのです。

 

なお、これまたイラストをご覧いただければ明らかでしょう、その「脱炭酸」で炭素が1つ減っていくわけですが、減った炭素はどこへ行くのかというと、炭酸ガス、すなわちCO2として排出されるわけで、ズバリ、「呼吸では、二酸化炭素が吐き出される」という小学生並みの知識は、こういうこと=クエン酸回路で有機化合物をグルグル変換(分解)していく際に出てくるものだった、ってわけなんですねぇ~。

(ちなみに、ピルビン酸がアセチルCoAに変換されるのも「脱炭酸反応」でしたから、ここでも二酸化炭素が発生しています。)

 

まぁ正直、別にこれは言わずとも「排泄物の一種なんだろうな」というのは誰でも予想がつくわけですけど、二酸化炭素ってのは別にそれを作るのが目的ではなく、呼吸反応=エネルギーを作り出す反応を進める上で、分子をあれこれいじっていく上で発生してしまうゴミに過ぎなかった感じで、呼吸の目的はあくまで、ATPの合成、および次の「電子伝達系」で使うことになるNADやFADの還元にあるということで、そういう意識でイラストを見れば、ちょうどそれぞれの分子変換の際にキーとなるモノが生み出されていることが窺えるかと思います。

 

また、NADやFAD(補酵素の一種、ビタミンみたいなものというのも以前書いていた通りですね)の還元は解糖系以上にたくさん行われるのですが、実は肝心のATPに関しては、このサイクルからはわずか1分子のみ…

…とはいえ正確には、「グルコース1分子で、解糖系ではピルビン酸が2分子生まれる」ということだったので、「グルコース1分子を使ったとき」で考えれば、サイクルを2回まわせることになりますから、「1グルコースあたり」であれば「2 ATP」になりますけど、このクエン酸回路からは、酸素を使わないヘボいエネルギー合成経路である解糖系と同じ数のATPしか合成できないんですね。


…しかし改めて、次のステップである電子伝達系では尋常じゃない量のATPを産み出せますから、そのためのNAD/FADの還元をじっくりたっぷり行ったと考えれば、これはエネルギー合成のための素晴らしい準備期間だと考えることもできましょう。

 

(なお、呼吸の化学反応式「C6H12O6 + 6O→  6CO2+ 6H2O」は、グルコース1分子から6分子の二酸化炭素が発生することが示されているわけですが、CO2が発生するのは上述の3か所の反応で、グルコース(C6H12O6)1分子あたり2サイクルが回る形ですから、3か所が2回で、6分子の二酸化炭素の発生になることが明らかといえますね。)

 

ちなみにずっとお世話になっているあの呼吸概略図画像はかなり簡略化されているものなわけですが、「クエン酸回路」単独記事を見てみたら、より完全版のイラストがありました。


せっかくなのでこちらの画像もお借りさせていただきましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/クエン酸回路より

まぁ先ほど「キー分子は描かれていますが…」とか書いていた通り、何気に最初の画像から追加される分子はそこまでないんですけど、「ク」と「ケ」の間には「cis-アコニット酸」および「イソクエン酸」というものがあり、「ケ」と「コ」の間には「スクシニルCoA」という、またまた補酵素Aがしゃしゃり出てくる中間体が出てくる感じですが、実は正確にいえば、このスクシニルCoAになった時点でもう炭素数は4に減少しているんですけれども、まぁこれは補酵素付きの中間体ということで、コハク酸の方がキー分子とみなして問題ないかと思います。

(どうしても「カキクケコオ」が主役と考えたい模様(笑))

 

そして、「コ」と「オ」の間にも、これは最初のイラストにもありました「フマル酸」と、それから「リンゴ酸」(こいつと先ほどのイソクエン酸には鏡像異性体があるので、それぞれL体とD体を明記した方が正確ですが…さらに言えば、他の分子で出てくる「cis-」や「α-」も、立体的な構造の違いを示すものになっています)があり、最後のオキサロ酢酸にまで戻ってくる感じですね。

 

正直、それら中間体は覚えなくても全く問題ないと思います(まぁ僕は学生時代、ちゃんと覚えましたが、そういえば「覚えておかなきゃテスト解けなかったぜ~」なんて経験すら一度もなかった気がしますしね)。

 

改めて、物質を棒暗記するよりも、「代謝の過程で脱炭酸されて、CO2ガスが発生する」とか「補酵素NADやFADの還元が行われる」とか、「物質の変換には、水分子がくっついて行われることが多い。生きるのに水が大量に必要となるのは、そういった『加水分解』や『水和反応』で必要だからなんだね」とか、そういうことを理解していく方がよっぽど重要ではないかな、なんて思います。

 

なお、「ATPを合成する」という最重要ポイントですが、実は、この画像をよく見ると分かる通り、クエン酸回路では、正確にはATPではなく、DNAの4種類塩基A・C・G・Tの内の別のやつ、Gを使ったGTPの方が合成されるという注意点もある感じですね!

 

高校ではATPと習いますし、実際(ウィ記事にもある通り)植物ではクエン酸回路でATPが合成されるので間違いとは言い切れないわけですけど、人間を含め、多くの動物では実はなぜかここではGTPが合成される形になっています。

 

利用頻度は低いものの、ATPではなくGTPを使ってエネルギーを得る生体反応/酵素もありますから、これも有効に活用されるエネルギー源であることには違いないんですけどね。

 

そんな所で、クエン酸回路に関しては、細かい点は正直どうでもよく、

有機化合物が少しずつ分解されながらエネルギー(そのモトとなるもの)が得られていくのです」(その際の排出物として、二酸化炭素が発生)

…っていうのがポイントで、そこを知っていればそれで十分ではないかな、なんて気がします。

 

では、次回は続くラストステップ・電子伝達系にいくか、とはいえせっかくなのでやっぱりクエン酸回路の各物質についてごく簡単に注目して1記事見繕おうかな、という邪な考えも浮かんできましたが(笑)、ひとまず今回はこの辺で区切りとさせていただきましょう。

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