スティーブンス・ジョンソンやらループスやらバージャーやらシェーグレンやらという恐ろしい難病をチラホラ見ていた最近の記事でしたが、一通り気になる疾病は見終えていたので(まぁまだまだ挙げられていた難病は他にもいくつかありますけど、発見者の名前がつけられたカタカナ病は概ね見終えた感じだったと思います。日本語・漢字で書かれる病気は何となくどういうものか想像がつきますしね)、各難病に脱線するきっかけとなっていたてんかん記事に戻りますと、てんかんの治療法として挙げられているものの中にひとつ、また面白そうなものがありました。
それがズバリ、ケトン・ダイエットこと、ケトジェニック療法!
何となく「ケトン食」やら「ケトダイエット」やらって、健康記事か何か、どこかで何となく耳にした記憶もあるっちゃあるんですが、パッとウィッキー先生をチェックして見た限り(↓)…
…どうやらこれは、歴史的に、てんかんを治療する目的で開発された食餌療法だったんですねぇ~。
まぁ正直、クリーブランド・クリニックの記事より、何だかんだウィキペディアの方がよくまとまってて分かりやすいことも多いんで、「↑のウィ記事をご覧ください」で終わりっちゃ終わりかもしれないんですけど(笑)、例によって医療分野では世界最先端をいく信頼と実績のクリ・クリさんのまとめ記事を読んでおくのも、意味がなくはないといえましょう。
そんなわけで今回は「ケトン・ダイエット」、ウィ記事にもある通り、日本語表記は「ケトジェニック」やら「ケトン生成食」やら色々なパターンがあるわけですが、まぁウィ記事もそうなっている通り、この記事では「ケトジェニック・ダイエット」という表記でいこうかなと思います。
(「ケト」はもちろんケトンで、「gen」というのは日本語でまさに「源」とか「産み出す」という意味、そして「ダイエット」は、日本語だと完全に「体重を落とすこと」というニュアンスになりますけど、英単語の本義はあくまでも「食事」とか、より医学的な感じだと「食餌(しょくじ)療法」とかいう意味なので、必ずしもいわゆる「ダイエット」とは関係ない話ですね。)
てんかんのためのケトジェニック・ダイエット(ケト・ダイエット)(Ketogenic Diet (Keto Diet) for Epilepsy)
ケトジェニック・ダイエットは、制御されていないてんかん症を持つ患者さんのための治療法です。この食事―高脂肪で低炭水化物―は、脳が機能するためのエネルギーを産み出す方法を変えることで効果を発揮するものになっています。仕組みは完全には理解されていませんが、この食餌療法は多くの患者さんでてんかん発作の減少に成功しています。
概要
ケトジェニック・ダイエットとは何?
ケトジェニック・ダイエット、またはケト・ダイエットとは、医療的または治療的な食事―病状を管理または治療するために考案された食餌療法です。ケト・ダイエットは、薬物療法を行ったにもかかわらずてんかんが続いている小児に推奨されています。
ケト・ダイエットは、高脂肪、程よいタンパク質、そして非常に低含量の炭水化物でできています。典型的なケト・ダイエットは、脂肪70~80%、タンパク質20%、炭水化物5~10%で構成されています。
ケト・ダイエットが有効な病状は?
医師は通常、乳幼児を含む全ての年齢の小児のてんかん治療にケト・ダイエットを勧めています。食品の選択肢が限られているため、長期的にこの食餌を維持するのが難しいという理由で、ケトジェニック・ダイエットは通常、成人ではあまり選択されません。
ケト・ダイエットは、アルツハイマー病や自閉症スペクトラム障害など、その他の神経(脳関連)疾患に用いられてきています。
糖尿病や肥満度IIIの方も、ケト・ダイエットが有効な場合があります。ケト・ダイエットは、他の糖尿病食の推奨よりも遵守しやすく、肥満の方の体を脂肪が燃焼し始めるように再教育することが可能です。
ケト・ダイエットを実践すると、体内で何が起こるの?
ケトジェニック・ダイエットでは、体内での食べ物の使われ方がリセットされます。通常は、食事に含まれる炭水化物(砂糖やでんぷんなど)がエネルギーのほとんどを産み出しています。ケト・ダイエットは摂取する炭水化物の量を減らすことで、代わりに脂肪をエネルギーとして燃やすように体に教え込むのです。
手順の詳細
子供がケトジェニック・ダイエットを始めると、何が起こるの?
ケト・ダイエットのスタートは、1ステップで完了するものではありません。食事療法を開始する際には、お子様はモニタリングのために入院することになるでしょう。病院のケトジェニック・ダイエット・チームには、神経科医、登録栄養士、および登録看護師が含まれることがあります。
お子様のケト・ダイエットチームは、以下のようなことを行います:
- まず、お子様に少量の水または無糖の水分を与えます。
- 24時間以内に新しい食事を開始します。乳児の場合は、ケトジェニック調製済みの即席ミルクを使用することもあるかもしれません。
- 食事療法開始後48時間は血糖値を注意深くモニターします。ケト・ダイエット開始中には低血糖が起こる可能性があります。
- カルシウムやビタミンなどのサプリメントの必要性を継続的に評価していくことになります。
ケトジェニック・ダイエットはどのようにてんかんを改善するの?
ケトジェニック・ダイエットは1920年代からてんかん発作を抑えるために用いられています。発作が抑制されるメカニズムはよく分かっていません。低糖質成分と高脂肪成分の両方が、脳の「興奮性」を独自に変化させ、その結果として発作を起こす傾向を抑えているのかもしれません。
リスク/メリット
ケトジェニック・ダイエットのリスクは何?
ケトジェニック・ダイエットはてんかん発作の治療に成功していますが、リスクがないわけではありません。この食事療法の長期的な使用で起こる副作用には以下が含まれます:
- 骨密度の低下や骨折
- 便秘
- 高コレステロール
- 腎臓結石
- 通常より遅い成長
- 不活発さ(疲れやすい)
医師は、ケト・ダイエットを使用するタイミングをどうやって判断するの?
他のてんかん治療で発作が止まらなかった、または軽減しなかった場合、お子様の担当医がケトジェニック・ダイエットを勧めてくるかもしれません。ケト・ダイエットを実施している間、お子様は1~3ヶ月に1回、来院して血液検査や尿検査を受けることになります。
こういった血液検査や尿検査では、栄養状態やその他の問題がないかをチェックします。
回復と展望
ケト・ダイエットはてんかん発作にどの程度有効なの?
ケト・ダイエットはてんかんに有効であることが長期にわたって証明されています。ケト・ダイエットを開始したお子様の約40~50%は、発作が50%減少します。また、おおよそ10~20%のお子様は発作が90%以上減少します。
ケト・ダイエットは自分だけでも可能?
ケト・ダイエットは医療従事者の厳重な監視が必要ですので、自己判断で行うべきではありません。ケト・ダイエットを始める前に、かかりつけの医師に相談してください。
医師に連絡する時
いつ医師に連絡すべき?
以下のような場合は、お子様のかかりつけ医療機関に連絡する必要があります:
- この食事療法を行っても、発作が悪化するまたは続く場合
- お子様に、この食事療法に含まれる食品にアレルギー反応がある場合
その他の詳細
てんかん管理の目的で、ケト・ダイエットはどのくらいの期間続けることが可能?
てんかんの管理状態が良好であれば、担当医はお子様のケト・ダイエットを数年経過した時点で終わりにすることがあるかもしれません。医学的な理由でケト・ダイエットを継続するかどうかについては、かかりつけの医療従事者にお尋ねください。
クリーブランド・クリニックからのメモ
てんかんは、お子様やご両親にとって、共に生きていく上で困難を伴う病気です。てんかん患者さんの約3分の2は、適切な薬剤を使用することで発作を抑えることが可能です。てんかんが薬剤抵抗性であった場合は、てんかん手術やケトジェニック・ダイエットのようなその他の選択肢を検討する必要があります。お子様がてんかんをお持ちの場合は、ケト・ダイエットを試してみることを医療従事者にご相談ください。
いつもよりもあっさりとまとまっていて、分かりやすい記事でした。
そう、ケトンというのは、以前見ていた「楽しい有機化学講座」シリーズ…ではなくごく最近の呼吸とかを見ていたシリーズでチラッと見ていた通り(この記事(↓)辺りからいくつか見ていました)…
ちょうどサムネ画像にもある通り、炭素Cと酸素Oが二重結合でつながった、炭素の残り2本の腕に両方ともCがくっついているもので、まぁ一番簡単なケトンはアセトンになりますけど、マニキュア除光液にも含まれるアセトン、まぁ除光液はあんまり油っぽくはないものの(というか除光液なんて使ったことないので分かりませんが、少なくともアセトンは全く油っぽくはありません)、しかし炭素の数が増えることで、ケトンってのは基本的にコテコテの脂肪っぽい物質と言えるといいますか、まぁ生化学では脂質代謝であるβ酸化で登場することからも脂質成分の代名詞とも言えるわけですけど、まぁそんな化学的な話はともかく、記事にもあった通り、とにかく「高脂質な食事をとる」という、パッと聞きの印象は「身体によくなさそう」というものなんですね。
とはいえもちろん、医学的に計算された食餌になっていることは間違いないので、信頼に足るセラピーなのは間違いないのですが、何気に西洋医学にしては珍しく、「理由は分からんけど、経験的にめちゃくちゃ効果的」という話みたいですけど、いずれにせよてんかんやその他の神経系疾患に非常に効果がみられるものだと、そんなお話でした。
実際にどんなものかをウィ記事英語版からお借りしてみると…
…まさに味気ない粉末をただ飲むだけの形が基本のようで、「大人には長期間継続するのは厳しいでしょう」と書かれていた通り、食事の楽しみは全くなくなってしまう、本当に「治療食」って感じになってしまうようですね。
まぁ僕は食事に一切のこだわりがないのでイケる気がしますけど(笑)、食事がつまんなくなってしまうのは間違いないので、「子供なら黙って飲むしかない」というのも可哀想ですし、「身体の代謝サイクルが矯正されたら卒業」とも書かれていましたから、なるべく多くの子に速やかかつ素晴らしい効果があることを心から願いたい限りです。