片頭痛の予防薬をここ最近見ており(モノクローナル抗体系、βブロッカー、カルシウムチャネル・ブロッカー、SNRIとSSRI)、前回はてんかん薬のHEALTH LIBRARY記事を参考にさせてもらっていました。
その中で、またいくつか気になる医療用語・ネタがあったのですが、一番「何じゃそりゃ」と思ったのが「脳深部刺激療法」と呼ばれるもので、リンクをクリックしてみたら何か脳に電極をぶっ挿しているようなイラストが出てきて、
「すわっ?!まさかのロボトミー…?」
…と思ったのですが決してそうではなく、これは大変有効な神経系疾患の治療法だそうで実際非常に面白そうに思えたのですが、記事がエライ長かったため、そもそもの「てんかん」についての記事(これもかなりのボリュームでした)と同じく、ちと面倒くさそうなので後回しにさせていただくとして(笑)……
…他にもいくつか目に付いた用語の中で興味深かったものに、ズバリ、「抗てんかん薬の、あり得るかもしれない副作用」として挙げられていた、スティーブンス・ジョンソン症候群という見慣れない疾患……これが中々恐ろしそうなものだったため、片頭痛予防薬はまだもう少しだけ残っているものの、今回はこちらに脱線させていただくといたしましょう。
リンクカードのサムネ画像にもある通り、かなり痛ましい感じの症状になるようなので、画像はオリジナルよりも小さめな、縮小表示のスクショに留めておこうかと思います。
スティーブンス・ジョンソン・シンドローム、略してSJSですね。
スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson Syndrome)
スティーブンス・ジョンソン症候群および中毒性表皮壊死症(Toxic Epidermal Necrosis:SJS/TEN)は、薬剤や病気に対するアレルギー反応によって引き起こされる、非常に重篤な皮膚剥離症状です。入院治療には、問題のある薬剤の使用中止、電解質の補充、皮膚ドレッシング材の適用、および鎮痛剤と抗生物質の投与が含まれます。
概要
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)とは何?
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)および中毒性表皮壊死症(TEN)は、皮膚に発疹や水疱ができ、やがて皮が剥けてしまう重篤な皮膚疾患です。目、性器、口を含む粘膜も影響を受けます。この症状になったら、ほとんどの場合で入院措置を受けることになります。
SJSとTENを別の病気と考える人もいますが、同じ病気だけど重症度が異なるものであると考える人もいます。SJSはTENよりも症状が軽いです。(例えば皮膚剥離は、SJSでは全身の10%以下であるのに対し、TENでは全身の30%以上に及びます。)しかし、どちらの症状も生命を脅かす可能性があるものになります。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)には他の病名があるの?
はい。ライエル症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群/中毒性表皮壊死融解症、およびスティーブンス・ジョンソン症候群中毒性表皮壊死スペクトラムとも呼ばれています。特定の原因に関連している場合は、薬剤性スティーブンス・ジョンソン症候群やマイコプラズマ誘発性スティーブンス・ジョンソン症候群と呼ばれることもあるかもしれません。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)に罹るのはどんな人?
SJSの多くの症例は小児や30歳未満の成人で起こりますが、それ以外の方、特に高齢者でも起こります。SJSは男性よりも女性に多くみられます。小児では肺炎のような感染症がSJSの最大の原因ですが、成人では薬剤がSJS/TENを引き起こす最も大きな原因となっています。
スティーブンス・ジョンソン症候群を発症する危険因子は何?
この疾患の発症には、遺伝的な偏りを含む、複合的な要因が関与しているのではないかと考えられています。環境因子が誘発される遺伝子を起こすこともあるかもしれません。こういった遺伝的要因のひとつとしては、SJSやTENの発症リスクを高める可能性のある、特定のヒト白血球抗原(HLA)が含まれ得ます。
症状と原因
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)の症状は何?
スティーブンス・ジョンソン症候群の症状には以下が含まれます:
- 皮膚の痛み
- 発熱
- 体の痛み
- 皮膚上での赤い発疹または赤い斑点
- 咳
- 皮膚の上や、口、喉、目、性器および肛門の粘膜上の、水疱やただれ
- 皮膚の剥離
- よだれの垂れ流し(口を閉じるのが痛いため)
- 眼球閉鎖(水疱および腫脹による)
- 排尿痛(粘膜の水疱による)
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)の原因は何?
スティーブンス・ジョンソン症候群の原因には以下が含まれます:
SJSが薬によって引き起こされた場合は、薬を飲み始めてから約1~3週間後に症状が現れます。インフルエンザのような症状(発熱、咳や頭痛、皮膚痛)に続いて、まず発疹が現れ、次に皮が剥けます。TENの場合は、髪や爪が抜ける方もいらっしゃいます。
スティーブンス・ジョンソン症候群を起こしやすい薬は何?
スティーブンス・ジョンソン症候群を最も引き起こしやすい薬剤としては、以下が含まれます:
- 抗菌性サルファ剤
- フェニトイン(ディランチン®)、カルバマゼピン(テグレトール®)、ラモトリギン(ラミクタール®)、フェノバルビタール(ルミナル®)を含む、抗てんかん薬
- 痛風や腎結石の治療に使用される薬である、アロプリノール(アロプリム®、ジロプリム®)
- ピロキシカム(フェルデン®)、ネビラピン(ビラミューン®)、ジクロフェナク(カンビア®、フレクター®)を含む、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
- 抗生物質
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)の発症リスクを高める要因は他にある?
以下のような状態・症状をお持ちの場合は、SJSのリスクがかなり高くなります:
- 骨髄移植
- 全身性エリテマトーデス
- ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
- 関節および結合組織のその他の慢性疾患
- ガン
- 免疫力低下
- SJSの家族歴
- ヒト白血球抗原-Bと呼ばれる特定の遺伝子の変異
診断と検査
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)はどうやって診断されるの?
医療従事者が、SJSとTENを以下のように診断します:
- 罹患した皮膚や粘膜の観察(典型的には、少なくとも2つの粘膜が罹患しています)
- 痛みの程度
- 皮膚がどのくらいの速さで侵されたか
- 皮膚がどの程度侵されているか
- 皮膚生検の実施
管理と治療
スティーブンス・ジョンソン症候群はどうやって治療するの?
スティーブンス・ジョンソン症候群の治療法には以下が含まれます:
- 原因となった薬剤の服用を中止する。
- 電解質を静脈内輸液で補充する。
- 患部の皮膚に非粘着性のドレッシング材を使用する。
- 回復を促進するために、場合によっては経管補給で、高カロリー食を使用する。
- 感染を予防するために、必要に応じて抗生物質を使用する。
- 鎮痛薬を投与する。
- 集中治療室や熱傷治療室の利用も視野に入れた、病院内での治療を行う。
- 皮膚科および眼科の専門家チームの力を借りる(目に異常がある場合)。
- 症例によっては、免疫グロブリンの静脈注射、シクロスポリン、ステロイドの静脈注射、羊膜移植(目の場合)の治療を行う。
スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)の合併症は何?
SJSおよびTENの最も重篤な合併症は死亡です。SJSでは症例の約10%、そしてTENでは約50%が死亡します。その他の合併症には以下のようなものが含まれましょう:
- 肺炎
- 敗血症(大量の細菌感染)
- 循環性ショック(血圧が下がり、瀕死の状態になる急性の状態)
- 多臓器不全
予防
スティーブンス・ジョンソン症候群は予防できる?
いいえ。スティーブンス・ジョンソン症候群は、ほとんどの場合、薬によって誘発されるため、その薬に対する有害反応を―薬を服用する前に―知る方法は存在しません。この症状を誘発した薬剤が特定された場合、以後その薬剤や関連する薬剤を避けることが必要となりましょう。
見通し/予後
スティーブンス・ジョンソン症候群を患った人の見通しは?
スティーブンス・ジョンソン症候群の症例は患者さんごとに異なり得ます。皮膚は数週間たらずで再生しますが、症状が深刻な場合は回復に数ヶ月かかることもあり得ます。以下のような長期的な反応が現れることもあるかもしれません:
- 皮膚:乾燥、かゆみ、皮膚の色の変化
- 目:慢性的な腫れかつ/または乾燥、慢性的な違和感、見えにくさ、光に対する過敏症(羞明)
- 過度の発汗
- 肺障害、慢性閉塞性肺疾患、喘息
- 爪の欠損または変形
- 毛の欠損(脱毛症)
- 排尿障害の原因となり得る、粘膜の乾燥
- 慢性疲労症候群
- 味覚障害
SJSは、1回目の発症の引き金となった薬剤と同じ薬剤に曝露された場合に再発することがあります。このような場合、2回目の発症は通常、1回目の発症よりも重症になります。
SJSは患者さんの10%、そしてTENでは患者さんの30%が死に至ります―その主な原因は敗血症、急性呼吸窮迫症候群、および多臓器不全です。
何か悪い菌をもらってしまった…とか、不潔にしていたせいで…とかならまだ諦めがつくと言いますか納得できなくもないですけど、別の疾患治療のために飲んだ薬がまさかの裏切り…というと言い方が悪いですけど、それが原因で極めて重篤なSJSにかかってしまう可能性があるということで、これは本当に恐ろしいですね。
言うまでもなく、予防どころか予想も予知も不可能で、誰でもいきなり発症し得る、ほぼ完全に運次第というのもあまりにも怖すぎますし、(仕組み的に不可能とはいえ)この世からなくなって欲しい病気のひとつだと思えます。
致死率は、30%だったり50%だったりと同じ記事内でもバラバラでしたが(笑)、極めて高いことに変わりはないといえましょう。
Wikipediaの方にも、衝撃度の高い写真とともに詳しい説明記事が存在しました。
とはいえ、原因となる薬は、それ自体が副作用を恐れて服用をやめるわけにもいかない大変な疾病に対してのものなので、本当に発症しないことを祈る他ないものといえそうです。
薬を服用して違和感が出たら、こういう症状の可能性もすぐに頭に浮かべるのが大切といえるかもしれませんね。