悪い方のボツリヌス

前回はボトックスについて、美容のみならず幅広い用途で利用できるその万能っぷりを見ていました。

 

しかしそこでも触れられていた通り、実はボトックスの有効成分はボツリヌストキシンという毒素(トキシン、トキシックは「毒、毒性」という意味の語ですね)であり、これは摂りすぎると中毒症になる(深刻な場合は命に関わる)ものであり、前回「功」の面を見たので今回はボツリヌス毒素の「罪」の方も見てみるといたしましょう。

 

前回のボトックス記事でも説明文中にリンクが貼られていました、ボツリヌス中毒症についてのHEALTH LIBRARY記事(↓)を例によってお借りする形ですね。

 

my.clevelandclinic.org

 

そういえば以前食中毒についてはチラッと見たことがありましたが……

con-cats.hatenablog.com


…ボツリヌスに特化していたわけではなかったので、今回集中して見ておきたい所です。

 

早速参りましょう。

 

ボツリヌス症(ボツリヌス菌)(Botulism (Clostridium Botulinum))

ボツリヌス中毒症は稀な症例ではありますが、身体の神経系を攻撃する深刻な病気です。ボツリヌス症のタイプには、食餌性、乳児、および創傷ボツリヌス症が含まれます。ボツリヌス症は通常、ボツリヌス菌(学名:Clostridium Botulinum)と呼ばれる細菌によって引き起こされます。症状には、筋力低下や麻痺が挙げられます。治療法としては通常、毒素が更なる障害を引き起こすことを防ぐための抗毒素が使われます。

 

概要

ボツリヌス症(ボツリヌス菌)とは何?

ボツリヌス症は、ボツリヌス菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる深刻な病気です。この細菌は、体の神経系を攻撃し得る毒(毒素)を産生します。ボツリヌス中毒を治療せずに放置すると、命に関わることがあります。

ボツリヌス症は稀です。しかし、死に至る可能性があるため、ご自身やお子様にボツリヌス中毒の症状が出た場合は、911に電話するか、最寄りの救急病院に行く必要があります。症状としては、まぶたの垂れ下がりや、顔、目、のどの筋肉に影響を及ぼすその他の徴候があるかもしれません。やがては呼吸に関係する筋肉に影響を及ぼすこともあり得ます。

 

ボツリヌス菌に感染するとどうなるの?

ボツリヌス菌の毒素は神経を攻撃します。その結果、体を動かしたり、話したり、飲み込んだりするための筋力の低下や麻痺が引き起こされ得ます。この毒素が呼吸をコントロールする神経を攻撃した場合、命に関わることもあります。

ボツリヌス症にはいくつかの異なるタイプがあります。最も一般的なものとして、食餌性ボツリヌス症、乳児ボツリヌス症、創傷ボツリヌス症があります。その他、医原性ボツリヌス症や成人腸管毒素ボツリヌス症は、稀なボツリヌス症です。

 

食餌性ボツリヌス症

食餌性ボツリヌス症(ボツリヌス食中毒)は、ボツリヌス菌の芽胞に汚染された食品を食べた場合に起こり得ます。食品が不適切に保管されると、細菌が増殖する可能性があります。細菌が増殖すると、細菌から食品中に毒素が放出されてしまいます。

食餌性ボツリヌス症は一般的に、自家製の缶詰食品の保存や保管が不適切な場合に起こります。稀ではありますが、不適切に缶詰にされた市販食品でもボツリヌス中毒を引き起こす可能性があります。他の食餌性ボツリヌス症感染源には、以下が含まれます:

  • ハーブを沁み込ませた油
  • アルミホイルで焼いたジャガイモ
  • チーズソースの缶詰
  • 瓶詰めのニンニク
  • トマト缶詰
  • ニンジンジュース
  • 常温放置または冷蔵せずに長時間放置された食品

 

乳児ボツリヌス症

赤ちゃんが罹るボツリヌス症は、ボツリヌス菌の芽胞を摂取することで発症します。芽胞が赤ちゃんの腸に到達すると、成長して毒素を放出してしまうのです。芽胞の発生源は、必ずしも分かっているわけではありません。しかし、芽胞は一般的に土や埃の中に含まれています。土や埃が空気中に舞い上がると、赤ちゃんがそれを吸い込んでしまう可能性があります。

芽胞はハチミツにも含まれている可能性があります。ボツリヌス菌の芽胞を摂取しても、健康な年長児や成人ではボツリヌス症を発症することはありません。しかし、理由は不明ですが、生後12ヶ月未満の乳児ではこの毒素が放出されてしまいます。このため専門家が、赤ちゃんは少なくとも1歳になるまではハチミツを食べるべきではないとアドバイスしているわけです。

 

創傷ボツリヌス症

創傷ボツリヌス症は、ボツリヌス菌の芽胞が傷口に入り込むことで発症します。芽胞が傷口に入ると増殖し、細菌が成長し、血液中に毒素を放出することが可能になってしまいます。

創傷ボツリヌス症は、注射針を使って静脈に薬剤を注入する人に多く発症します。稀に、手術や重傷を負った後に発症することもあり得ます。

 

医原性ボツリヌス症

医原性ボツリヌス症は、ボツリヌス毒素(ボトックス®)を注射しすぎた場合に発症することがあります。ボトックスには、精製および大きく希釈されたボツリヌス菌が使用されています。ボツリヌス毒素治療は、しわなどの美容上の理由で受けられるものです。あるいは、片頭痛などの医学的な理由で受ける場合もあり得ます。

ボトックス・ボツリヌス症は稀です。しかし、ボツリヌス毒素注射は、免許を持った医療従事者のみから受けるようにしましょう。医療従事者は、最も安全で適切な注射量を把握しています。

 

成人腸管毒素ボツリヌス症

成人腸管毒素ボツリヌス症は、成人腸管結腸症としても知られています。ボツリヌス菌の芽胞が腸内に侵入して起こる、非常に稀なボツリヌス症です。芽胞は成長し、乳児の場合と同じように毒素を産生してしまいます。消化器系に影響を及ぼす深刻な健康状態にある場合は、このタイプのボツリヌス症を発症する可能性が高くなるかもしれません。

 

ボツリヌス症はどのくらい一般的?

ボツリヌス症は稀です。2018年には、242件のボツリヌス症確定症例がアメリカ疾病予防管理センター(CDC)に報告されました。そのほとんどが乳児ボツリヌス症でした。

 

症状と原因

ボツリヌス症(ボツリヌス菌)の徴候と症状は何?

乳児ボツリヌス症の症状は、軽度から重度まで様々です。乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス菌の芽胞に暴露されてから3~30日後のどのタイミングでも発症する可能性があります。乳児ボツリヌス症の症状には、以下が含まれ得ます:

  • まぶたの落ち込み(眼瞼下垂症)
  • 表情の喪失
  • 流涎
  • 泣き声が弱まる
  • 哺乳の遅れまたは不良
  • 咽頭反射の低下
  • 便秘
  • 衰弱または締まりのなさ
  • 呼吸困難

年長児や成人のボツリヌス症の症状は、通常、顔、目、喉の筋肉から始まります。治療を行わないと、症状が体の他の部分に広がることがあり得ます。徴候は、ボツリヌス菌の芽胞を摂り込んで数時間から数日後に現れます。症状には以下が含まれます:

  • まぶたの落ち込み(眼瞼下垂症)
  • 目の二重やかすみ
  • 口の渇き(口腔乾燥)
  • 不明瞭な発話
  • 飲み込むことが困難になる(嚥下障害)
  • 呼吸困難
  • 手足の脱力感または麻痺
  • 吐き気や嘔吐

 

ボツリヌス症を引き起こすものは何?

ボツリヌス菌と呼ばれる細菌がボツリヌス症を引き起こします。時折、近縁種であるクロストリジウム・ブチリカム(Clostridium butyricum)やクロストリジウム・バラティ(Clostridium baratii)という細菌がボツリヌス症を引き起こすこともあります。ボツリヌス菌やその芽胞に接触しても、発病しないことはあり得ます。しかし特定の条件下では、芽胞が発育・増殖することがあります。

その後、成熟したこの細菌は、毒素を放出します。毒素が放出されると、速やかに血流に広がり、神経に付着します。ボツリヌス症は、その神経が機能しなくなったときに発症するわけです。芽胞の発生・増殖を許してしまう条件には、以下が含まれます:

  • 低酸素または酸素不足
  • 酸性度、糖度、塩分が低い
  • 調理温度が低すぎる(沸騰させても芽胞が死滅しない場合があります)
  • 定量の水の存在
  • 保存温度が高すぎる

 

ボツリヌス症(ボツリヌス菌)にはどうやって感染するの?

ボツリヌス菌は、感染した傷口や汚染された食品から感染します。しかし、口や皮膚の傷口から体内に入ると病気になる毒素は、ボツリヌス菌が放出します。

 

ボツリヌス菌は一般的にどこに見出されるものなの?

ボツリヌス菌の芽胞は一般的に土の中に存在しますが、しかしこれが病気につながることはほとんどありません。ボツリヌス菌は、野菜、魚、肉などの保存食品に含まれていることがあります。家庭で缶詰にして保存された食品は、食料品店で売られている食品よりも汚染されている可能性が高いです。1歳未満の乳児は、ハチミツからボツリヌス菌の毒素を摂取する可能性があります。

 

診断と検査

ボツリヌス症(ボツリヌス菌)はどうやって診断されるの?

ボツリヌス症を診断するために、かかりつけの医療従事者が身体検査を行います。症状について質問され、筋力低下や麻痺がないかを調べてくれるでしょう。

ボツリヌス症は、脳卒中髄膜炎、およびギラン・バレー症候群といった、他の疾患の症状に似ていることがあります。そのため、ボツリヌス中毒の診断を確定するためには、かかりつけの医療機関が更なる検査を行う必要があるかもしれません。

 

ボツリヌス症の診断にはどんな検査が行われるの?

ボツリヌス症の診断を確定するために、かかりつけの医療従事者が、血液、便、または嘔吐物に毒素が含まれていることを示す検査を実施します。ボツリヌス症が疑われる食品サンプルの毒素検査も可能です。

医療従事者が行うその他の検査には、以下のものがあるかもしれません:

  • 脳スキャン
  • 髄液検査
  • 神経や筋肉の機能検査(筋電図)

検査結果が得られるまで、数日かかることがあります。そのため、ボツリヌス症が疑われる場合は、医療従事者が直ちに治療を開始することもあり得ます。

 

管理と治療

ボツリヌス症(ボツリヌス菌)はどうやって治療するの?

ボツリヌス症の原因や重症度に応じて、かかりつけの医療従事者は様々な治療法を選択し得ます。最も一般的な治療法では、医療従事者が抗毒素(アンチ・トキシン)と呼ばれる薬を投与します。抗毒素は、血液中の毒素の活動をブロックします。これにより、毒素がこれ以上ダメージを与えるのを防ぐわけです。しかし、抗毒素は既に傷ついたものを治すことはできません。治癒するまで数週間から数ヶ月の入院が必要になるかもしれません。

呼吸に問題がある場合は、かかりつけの医療従事者が患者さんに呼吸装置(人工呼吸器)を装着させることもあります。人工呼吸器というのは、呼吸を補助する機械です(※日本語なら明らかですが(笑)、英語だとventilatorなので分かりにくいのかもしれません)。呼吸に影響を及ぼす麻痺がなくなるまで、人工呼吸器を使用します。

創傷ボツリヌス症に罹患した場合は、傷口の汚染部分を外科的に除去する手術が必要になることがあるかもしれません。手術後は、感染が再発しないように抗生物質を服用する可能性があります。

 

ボツリヌス症は治せる?

ボツリヌス症を根治させる特別な治療法はありませんが、軽度の神経損傷は回復可能です。抗毒素は、毒素によるそれ以上の損傷を止めてくれます。

 

ボツリヌス症の合併症や副作用は何?

ボツリヌス症は、嚥下や呼吸で機能する筋肉を麻痺させます。多くの場合、抗毒素が有効ですが、呼吸障害や感染症で死亡する人もいることはいます。それ以外に、ボツリヌス症に起因するかもしれない健康問題には、以下が含まれます:

  • 極度の疲労(倦怠感)
  • 長期的な衰弱
  • 息切れ(呼吸困難)
  • 誤嚥性肺炎および感染症
  • 神経系の問題

 

ボツリヌス症の治療後は、何が予期される?

ボツリヌス症の重症度にもよりますが、回復には数週間、数ヶ月、あるいは数年かかることもあります。迅速な治療を受けたほとんどの方は、2週間以内に完全に回復します。

 

予防

ボツリヌス症はどう予防できる?

最も一般的なタイプのボツリヌス症は、予防のための対策を講じることが可能です。

食餌性ボツリヌス症
  • 調理後2時間以内に食品を冷蔵する。適切な冷蔵は、細菌が芽胞を作るのを防ぎます。
  • 全体を余す所なく加熱調理する。
  • 傷んだり膨らんだりしている食品容器は避ける。(こういったものは、細菌によってガスが発生しているサインの可能性があります。)
  • 家庭用缶詰は、圧力鍋で250°F(121℃)、30分間殺菌する。
  • 悪臭のする保存食品は捨てる。
乳児ボツリヌス症
  • 1歳未満の乳児にはハチミツを与えない。
  • ボツリヌス症が発症した場合、発症を遅らせるために母乳(胸水)を与える。
創傷ボツリヌス症
  • 注射薬を乱用しない。
  • 赤み、圧痛、腫れ、膿といった感染の徴候がある創傷は、医師の手当てを受ける。
  • 汚れや土で汚染された傷口は完全に洗浄する。
医原性ボツリヌス症
  • ボトックス注射は、免許を持った医療従事者のみから受ける。

 

見通し/予後

ボツリヌス症の見通しは?

ボツリヌス症は、治療せずに放置すると命に関わる可能性があります。しかし、迅速な診断と治療を受ければ、ほとんどの人は病気から完全に回復することができます。患者さんは、生涯を通じて正常な機能を取り戻しています。

 
クリーブランド・クリニックからのメモ

ボツリヌス症は、身体の神経系を攻撃し、衰弱や筋肉の麻痺を引き起こす深刻な病気です。ボツリヌス症は稀です。しかし、治療せずに放置すると、命に関わり得ます。ご自身やお子様がボツリヌス症に罹ったら、911に電話するか、最寄りの救急病院に向かってください。迅速な医療処置により、ボツリヌス症は治療可能です。

 

記事には画像がなかったので、ちょうどウィッキー先生に患者さんの症例写真があったこともあり、こちらをお借りさせていただきましょう。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/ボツリヌス症より

やはり、眼瞼下垂(まぶたの落ち)が一番の特徴のようですが、ウィ記事にある通り、ボツリヌス中毒三大タイプの内、傷口由来のものは、薬物汚染が酷いあるいは公衆衛生が劣悪な場所でしか見られず、どうやら日本では今まで一例も報告がないとのことですね。

 

メインは食中毒と、あとはやっぱり有名な「赤ちゃんにハチミツはダメ」がまさにこの話に由来するものでした。

 

極めて毒性が強いものとはいえ、そこまでコンタミ(汚染)することもないようなので、気を付ければ避けられるもののようです。

 

まさにちょうど食中毒の季節到来な感じですが、どなた様も衛生管理にはぜひ十分気を付けられることを願ってやみません。

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