呼吸とは

前回の記事ではCoQ10について触れていましたが、ちょうどアセチルCoA…というかこないだの4-7-8呼吸法を話に出したあたりでも「その話に逸れるのもいいなぁ」などと思っていたんですけど、まさにCoQ(コ・キュー)を見ていたついでに、今回は呼吸の話と洒落込んでみるといたしましょう。

 

まぁ呼吸なんて幼稚園児でもしていると言いますか、ミミズだってオケラだってアメンボだって…を通り越して、植物どころか微生物などの全生物がしていることで、今さら何を、って話ではあるのですが……


一般的に呼吸というのは、

「酸素を吸って、二酸化炭素を吐くこと」

…という印象でしかないわけですけど、実はそれは呼吸のホンの一面しか見ていない、クソ浅解釈でしかないんですね。

 

改めて、幼稚園児レベルだと「息しないと苦しいから」というのが呼吸の目的となるわけですけど、まぁ何気に究極的にはそれで合ってるわけですが(笑)、それでは話が広がらないので無理くり細かい点を深掘りしていきますと……

先ほども書いていた通り、ちょっとモノを知ってる小学生だと、呼吸というのは「酸素を吸って、二酸化炭素を吐く」という知識までは持っているものの、酸素O2二酸化炭素CO2にそのまま変化することは物理・化学の法則上あり得ないので、これもあまりにも中途半端な話になっていますから、そういう知ったかぶったキッズに正義の鉄槌を加えるために、我々アダルツはより細かく詳しい知識を身につけなくてはいけないわけなのです。

 

…とはいえ、実際肺で行われる行為、いわゆる外呼吸ではまさにその通りのガス交換(酸素⇔二酸化炭素)が行われているので、「浅い解釈」というのもそれはそれで捻くれたモノの見方ともいえるわけですけどね。

肺で行われるのは呼吸の出発物質と最終排出物のみの交換で、途中の過程を一切無視していると言えますから、今回見ていくのはその途中の反応、いわゆる内呼吸(細胞内で行われる反応なので、細胞呼吸とも呼ばれますが)の方になる形です。

 

実はごく簡単にではあるものの、何気に中学理科でも呼吸の仕組みは学ぶんですよね。

確か光合成とセット…ではなかったかもしれませんが、光合成の全く逆の反応として、呼吸についてはもうちょい詳しく、以下のように習っていたように思います。


ここで、有機物の化学式が中学で出てきたかは覚えていませんが(詳しい構造式とかには絶対触れなかったですけど、何気に化学式だけは触れられていたような気もしますね)、基本的には呼吸反応を考えるとき、登場する有機物は全ての糖の基本物質、グルコースブドウ糖)C6H12O6 になります。

 

なので、特に意味も分からずに、とりあえず両辺の原子数を揃えて反応前後の原子の収支は整うよう、

  • C6H12O6  + 6O→ 6CO+ 6H2O (+エネルギー)

…なんて式を中学の頃に(発展事項だったかもしれませんが)書かされていた記憶も、あるようなないような気がします。

 

まず「なんでブドウ糖なのか?」ですが、これは「有機物ってめっちゃ色んなものがあるじゃん、むしろブドウ糖なんて食べてる記憶がないんやが…」という話にも思えるんですけど、結局、お米やパンに多量に含まれるデンプンはブドウ糖がズラーっとつながったもので、最終的にはブドウ糖1分子にまで消化されて使われますし、食事としての炭水化物の基本はデンプンですから、やはり誰がどう考えても糖の基本・王者はブドウ糖といえるんですね。

(もちろん、誰がどう考えても、日常生活における糖の基本・王者なら砂糖といえますが、生化学の世界ではそうじゃないんですね、残念ながら。)

 

結局「呼吸」というのはこの「ブドウ糖」を様々な酵素の力を借りて変形・分解していく反応になっているわけですが、当然、炭素が6つつながってできたブドウ糖は、最終的には炭素がわずか1つの二酸化炭素にまで分解されるわけですけど、その途中には様々な分子が出てくる感じになっています。


まぁ、それっぽい用語で「代謝産物」「中間産物」などと呼ばれますけど、例えばその中の一つに、ここ最近見ていたアセチルCoAなんかも顔を出してくる感じなんですね。

 

その辺の詳しい代謝経路は、今回見ようと思っていたもののどう考えても時間不足なので次回に持ち越ししようと思いますが、ちょっと話を戻すと、ずーっと前の「楽しい有機化学講座」シリーズで、糖の基本単位「単糖」には、ブドウ糖の他にもいくつかあると紹介していたわけですけれども…

(この記事↓から、何回かにわたって糖を見ていた感じですね。)

con-cats.hatenablog.com

 

…結局、他の単糖も、代謝で変形・分解されていく中で、ブドウ糖代謝経路と全く同じ物質に変換されて、以後、同じ経路を辿る……という形になっているため、結局あらゆる糖の代謝経路ってのはブドウ糖のそれに落ち着くわけですね。

 

それどころか、他の三大栄養素、タンパク質と脂質も、それぞれ実は分解されていくことでブドウ糖代謝経路にある中間産物と全く同じ物質に落ち着くため、「呼吸をすることでエネルギーを取り出す反応」は、ブドウ糖を出発物質にしてそれの流れを抑えればあらゆる有機物の代謝経路を網羅していることになりますから、ブドウ糖で考えるのが一番基本にして王道だと、そうなっているのでした。

 

(例えば具体的に、脂質の場合はまさに、色々分解された結果アセチルCoAに落ち着くため、そこで「ブドウ糖代謝経路」と合流可能なわけですね。)

 

まぁ先ほど書いた通り時間不足につき具体的なその代謝経路については次回にまわすとして、呼吸の反応式で出てくるもう一つのよく分からんもの(先ほど上で書いていた反応式……あの書き方だと、モノかどうかすら不明)に「エネルギー」というのがありました。

 

これは結局何なのか?

 

カロリーなのか?そもそもカロリーって何なん??みたいな気もするかもしれませんが、まぁカロリーは「熱量」で、熱を生み出す力なわけですけど、実際の呼吸で生まれるものは実はそういう「力」みたいな概念ぽいものではなく、「形のある物質」でして、それがズバリ、生体分子で一番重要といえるかもしれない超絶重要分子、ATPなんですね!

https://ja.wikipedia.org/wiki/アデノシン三リン酸より

そう、ちょうどついこないだアセチルCoAの話で、「この補酵素Aってのは、DNAの4つの構成物質の一つ、Aにそっくりなんですね!」と書いていたその「A」のことで…


(サムネイルで小さいですが、実際、似ていますよね↓)

con-cats.hatenablog.com

 

…ATPってのはDNA4種類の塩基の1つであるのみならず、実は呼吸で作られるエネルギーそのものでもあったのです。

 

具体的には、ATP(略さない日本語名だと、上記ウィ記事のタイトルの通り、アデノシン三リン酸ですが)の構造式の左側にあるPとOから成るリン酸基、これが3つあるから、トリプルの「T」なわけですけど、このリン酸基同士の結合は「高エネルギーリン酸結合」と呼ばれており、この内の一番端っこの結合を切断してやると、自由に使えるエネルギーがフワッと(なのかガチっとなのかビヨーンとなのか分かりませんが(笑))発生しまして……

生命・細胞というのは、筋肉を動かす・生きるための酵素反応を起こす・生物そのものであるタンパク質を合成する……などなど、あらゆる生命活動においてこの「ATPを分解する」ときに発生するエネルギーを使って反応を実行しているんですね。

(逆にいえば、「細胞や生体分子が使える形のエネルギーは、ATPである」…というか、「ATPを分解したエネルギーしか、細胞や生体分子は使えない」ということ。)

 

要は、糖や有機物=食べ物の持つエネルギーは、もちろん食べ物自身かなりの高エネルギーを持ってるんですけど、それを細胞という小さな場所ではそのまま使えないので、食べ物を摂取したら消化・代謝を経てATPという分子を合成してやり、実際に細胞などのミクロの世界で使われるエネルギーはそのATPを分解することで得られていると、やや回りくどいですがそういうことになっているわけです。

 

要は、あらゆる細胞で使える電池みたいなもの(=ATPのこと)を作っているのが「呼吸」という反応といえますから……「呼吸とは、何のためにしているもの?」という問への、大人向けの回答はズバリ、

「ATPを合成するため」

…というのが最も簡潔にして本質を捉えたものになっている形だといえましょう。

 

時間不足で色々もうちょい書きたかったことに触れられませんでしたが、また次回改めて見ていこうと思います。

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