補酵素とは

ダラダラと続けていました睡眠・自律神経ネタも、いよいよネタが尽きてきました。

 

…と思いきや、また一つ多少広げられそうなネタが浮かんだため、今回も関連ネタへの脱線を続けさせていただきましょう。

 

今回はズバリ、こないだ「ストレスのかかる現代社会では確実により重要な、大切なやすらぎ物質」として見ていた(↓)、副交感神経により伝搬される、安静作用を司る神経伝達物質アセチルコリンについて!

 

con-cats.hatenablog.com

 

こないだの記事ではWikipedia記事のリンクを貼っていましたが、同じくWikiスタイルのサイトで、生命科学的な記述がウィキペよりも遥かに充実していることの多い、脳科学辞典の記事(↓)を今回は参考に貼らせていただきますが……

 

bsd.neuroinf.jp

 

まぁ貼るだけで別に特に引用はしないものの、上記解説記事にある通り、アセチルコリンという低分子は、より小さな分子である、コリンアセチルCoAという分子から、体内で生合成されるものになっています。

 

(こないだの記事で、「食べても血中で分解されがち」と書いていた通り、自分で合成するのが基本な分子なのでした。)

 

コリンもアセチルCoAも、生体内の代謝反応の至る所で顔を出す重要分子なのですが、まぁコリンは色々な誘導体が存在するもので、コリン自身の構造は結構複雑だし、むしろ誘導体の方が圧倒的によく見かけるので高校の理科ではコリン単独を目にする機会はあまりない気がするものの…

(まさしく、「アセチルコリン」という分子が一番なじみ深いものかと思います)

…一方、アセチルCoAの方は、代謝で最も重要な反応といえる「呼吸」で登場してくる分子なので、これは高校生物を履修された方なら必ず聞き覚えがあるであろう分子ですね。

 

また、高校化学の有機で「アセチル基」を学びますが、まぁこのブログでも楽しい有機化学講座のいくつかの記事で触れたことがあった通り…

(例えばこちら、芳香族化合物の誘導体を見ていた記事(↓)なんかで見ていましたね。

con-cats.hatenablog.com

…割と面白そうなタイトルの記事だったので、リンクカードを貼ってアピールさせていただきましょう(笑))

 

…まぁこの「アセチル基」ってのは、要は酢酸からOHが外れた状態の、「CH3CO-」(最後の「-」はマイナスのことではなく、炭素原子から出ている「腕」を指しているものなので(込み入った話はあんまりどうでもいいですが、腕が一本余って、他の原子の腕と共有結合できる状態のものを「官能基」と呼んでいる、なんて話でした)、酢酸イオンとは違うのですが…)、まぁ具体的な化学式とかは本当にどうでもいいんですけど、いわば、「ほぼ酢酸がくっついたようなもの」と考えて問題ない感じですね。


なので、「アセチルコリン」は「コリン」に酢酸(正確にはアセチル基ですが)がくっついたものといえるわけですけど、では、大元の「アセチルCoA」とは一体何なのでしょうか?

 

そもそも初見の方には「何て読むねん」って話なわけですけど、これはコアではなく「コエー」と読むもので、これは何ぞやと申しますと、ズバリ「コエンザイム・A」の略称で、日本語にすると「補酵素A」と呼ばれるものになります。

 

ja.wikipedia.org

 

実はこないだタンパク質の結晶の話とかでしばしば酵素の話をしていたとき、「あぁ~補酵素とかにも脱線して、1記事作ってもいいかなぁ」などと思っていたのですが、ちょうどいい機会が訪れました、今回は補酵素について触れてみるといたしましょう。

 

酵素」というのはアミノ酸がズラーっと大量につながってできたタンパク質(特に、何らかの化学反応を促進する特別な機能を持ったタンパク質のことを、酵素と呼ぶ感じですが)だったわけですけど、「補酵素」ってのは読んで字のごとく、酵素を補う分子であり、これ自身はタンパク質ではない、大変小さな分子であることがほとんどになっています。

 

とりあえず具体例として、「A」とかいう名前を堂々と冠しているだけあって最も代表的な補酵素といえる「CoA」(改めて、「補酵素A」のことですね。略して書けばCoAなだけです)の構造を(↑の記事のサムネイルではごく一部しか表示されていないため)ウィ記事からお借りしてみますと…

https://ja.wikipedia.org/wiki/補酵素Aより

 

…と、ついでなので「アセチル基」のついたアセチルCoAも見ておきますと…

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/アセチルCoAより

…まぁ、(特にアセチルCoAの方の画像が)小さすぎて正直よぉ分からないかもしれませんが、左端がSHで終わっているCoAに対し、そこがアセチル基になっている(構造式では炭素原子も水素原子も省略される(=炭素は線のみ、炭素につながった水素は完全に略)ので分かりにくいですけど、CH3COがくっついてる感じ(Oは二重結合でつながっています)ですね)感じなのがお分かりいただけるかと思います。

 

まぁ詳しい分子構造に触れる意味もないんですけど、実はこれ、高校の頃は当然そこまで詳しく学ばないので知りませんでしたが、実は右の方にある「Oが頂点の五角形」の部分に、リング2つが組み合わさったものが右上にペロッとついており、さらにはリン酸(PとO)がちょいちょいつながっているということで、実はこの人、DNAを構成する4種類の塩基 (A, C, G, T) の1つである、アデニン(まぁより正確には五角形の糖含め「アデノシン」、さらにはリン酸も含めて「ATP」といえますが)と、ほとんどそっくりの構造になってるんですねぇ~。

 

まぁ構造というか物質としては、「タンパク質ではない」というのが非常に大きな特徴といえますが、あんまり生体分子に詳しくない方には「その物質がタンパク質かどうかとかなんて知らんがな」って話かもしれませんけれども、このCoAみたいな低分子が何十何百何千とつながってできたDNAやタンパク質とは全く違うものだ、というのは重要…かはともかく、大きな違いである感じですね。


そんなわけで巨大分子であるタンパク質に比べてごくごく小さな分子なのがコエンザイムこと補酵素なのですが(あぁ今さらですけど、enzymeが「酵素」で、co-が「共に」みたいな意味を作る接頭辞ですから、まさにコ・エンザイムで「補・酵素」なんですね)、機能としては非常に大きな意味を持つもので、例えて言うと、いわば酵素全体のスイッチをONにするための重要な分子といいますか、この補酵素がくっついて初めて機能を発揮するという酵素が世の中には多く存在しているのです。

 

これも高校生物の酵素の単元(化学でも酵素は習いますが、補酵素は生物でしか出てこなかった気がします)で習う話ですけど、「補酵素がないと働かない酵素」のことを「アポ酵素」と呼び、「アポ酵素補酵素がくっついて、機能を発揮できるようになった完全体」のことを「ホロ酵素」などと呼んでいます。

 

ちょうど↓の「補酵素」記事(「補酵素A」という具体的な1つの分子ではなく、一般的な補酵素全般についての記事ですね)にもまさにその説明がありますが…

 

ja.wikipedia.org

 

要は「アポ酵素補酵素 ⇔ ホロ酵素」というそれだけの話なんですけど、説明が上手なことでおなじみ、僕の高校の頃の先生は、「『ホロ』ってのは、『ホロコースト』で『全てを破壊しつくす大量虐殺』って意味があるっしょ?要するに結局『全酵素』って言ってるってことだから、覚えやすいね」と教えてくれたため、どちらが完全体を指す用語なのかはすぐに覚えられた感じでした。

 

…とはいえ、まぁ僕が研究で扱う酵素補酵素を要求するものではないことが多いからかもしれませんが(いうまでもなく、補酵素なしで機能を発揮する酵素も、普通に沢山存在します(というかむしろ多数派))、正直、専門課程に進んでこの方、「アポ酵素」や「ホロ酵素」なんて単語には、わざわざ覚えさせられた受験生物以外ではとんとお目にかかったことすらない気もするんですけどね(笑)。

 

でもまぁ知識として、「スイッチ・鍵」のような、小さな分子がくっつかないと機能を発揮できない酵素もこの世には存在しており、そういうのをアポ酵素と呼び、鍵である補酵素が結合して完全無欠のホロ酵素となる……みたいな話は、教養として知っておくのも悪くはないといえましょう。

(別に取り立てて良いことも何もない気もしますが(笑))

 

補酵素A」も、「何かのアポ酵素補酵素」としてではなく、ぶっちゃけ「代謝の途中産物」としてしか出てこないレベルなので、長々と色々まとめた割に結局「補酵素」は言うほど「酵素を補う物質」でもなく、(アセチル化されたり、他にもスクシニル化やマロニル化など、色々な誘導体があるように)単なる「色々な物質がくっつくことで、それ自身が生体反応で様々な役目を持っている、小さな巨人分子」と考えても問題ない気がするかもしれませんね。

 

…と、補酵素についてはもうちょい触れようと思っていた話があったものの、例によってまた時間切れとなったため、次回持ち越し・記事水増しシメシメとさせていただこうかと思います(笑)。

 

補酵素ネタに脱線する前に、肝心のアセチルコリンの方で最後1つ触れておくと、先ほど貼ったアセチルCoAのウィ記事に以下のような記述がある通り……

ヒトの体内では、消費されない過剰のアセチルCoAは、脂肪酸生合成の原料となり、中性脂肪を生成する(脂肪酸の合成の記事を参照)。

…最初に書いていたように、やすらぎ物質であるアセチルコリンの原料がアセチルCoAといえるわけですけれども、アセチルCoAは過剰にあると脂肪に変換されてしまうものでもあるわけです(=脂肪酸生合成の、第一ステップにも関わっているのがこいつです)。

 

これは言い換えれば、アセチルCoAがあまりにも欠乏するとアセチルコリンの合成も滞って困ってしまう形だといえるわけですけど、逆に、アセチルCoAがあまりにも豊富にありすぎると、それはそれで脂肪がブクブク……

 

…ということで、これはまぁネタのための極論で、必ずしもそうとは限らないですけど、「太ってる人は一般的におだやかでのんびりした人が多い」という印象があるのは、アセチルCoAを十分作る能力に秀でているから(なので、安静&落ち着きを司る副交感神経が優位でありやすい)なんてことも言えるのかもしれませんね!


(アセチルCoAがいっぱいあれば、やすらぎ物質であるアセチルコリンをドバドバ作ることができるものの、同時に脂肪もドブドブ作られてしまう、ということになるので…。

 逆に、まぁホント偏見の極みで、必ずしもそんなこたぁ言い切れませんけれども(笑)、どちらかといえば痩せててガリガリな人は、何かいっつもせかせかイライラしてそうだ…という印象が、ある程度全体的には強いっちゃ強い気がしないでもないわけですが、それはやっぱり、アセチルコリン生合成が得意じゃない、ひいてはアセチルCoAが少なめであり、脂肪の変換反応が起こりにくいため…なんて話にもつながるのかもしれません。)

 

では、次回もまた、もう少し補酵素ネタを続けてみる予定です。

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