筋肉はどうやって動くのか?(種の比較編)

消化酵素の話から唐突にアメちゃんの話をしていました。

特に他にネタも浮かばなかったので、いそいそと以前のネタに戻っていこうと思いますが、一つだけ……前回の記事では書き忘れてましたが、「浅田飴はおいしい」ということも、やっぱこれ触れておきたいっすね(笑)。

 

シュガーレスで、寝ながら舐めても安心!とか言ってましたが、シュガーレスとは思えないぐらいの上品な甘みがあり、あんまりスースーしすぎないのも、案外アンチの多いハッカ・ミント系が目立つノド飴界にあって、流石の実力者といえましょう。

 

っていうか浅田飴、親に「ホレ」ってぽんと渡されたことしかなく、買ったことがなかったのでおいくら万円なのか知らず、ちょっと気になりました。

 

Amazon浅田飴ストア公式がヒットしてきましたが…

 

www.amazon.co.jp

まぁわざわざスクショまでは取らないものの、12%割引中で現在1缶50錠入りで、1300円……地味に結構高須クリニック(笑)。

 

かなりいいものなだけあって、やはり案外値段が張るものだったんですね…これからは心して舐めるようにしなければなりません……(まぁ1粒26円と考えたら、まま、そんなもんか、って気もするものの…)。

 

(なお、今さらですがAmazonその他のリンクにはアフィリエイトの類は一切貼っておらず、クリックされても僕が1円も得することはないのでご安心ください(笑))

 

結局浅田飴で少しまたスペースを稼ぐ形になりましたが、そろそろ戻っていくといたしましょう。

 

といっても別に決まりきったネタの途中だったわけではなく、消化酵素の話に脱線して、そこで分子レベルでタンパク質が分解(=アミノ酸の結合が切断)される様子を述べたついでに、他の脱線ネタについてもちょっと分子レベルの話をしてみるのもよかろうか、と思い、メモ帳にこのネタで1回稼ごうと控えておいた話に戻ってみる感じですね。

 

それがズバリ、ペプシンとかトリプシンと一緒に挙げていた、筋肉(のみならず、あらゆる細胞)に多量に含まれるタンパク質、アクチンについて!

 

アクチンというのは、これも高校生物で一応サワリだけは習った気がする、筋繊維を作る分子であり、まさに我々が今こうして文字を打ったりデバイスを操作してネットを楽しんだり歩いたり走ったりできるのは、アクチンが上手いこと作用しているからに他ならないわけですね。

 

と、記事タイトルにもしたその「筋肉の動く仕組み」については、特に高校生物で学ぶこと以上に語ることもなく一瞬で終わりそうだったので、もうちょい別の視点からもアクチンについて触れてみますと、上述の通り、アクチンというのは必ずしも筋肉のみならず、あらゆる細胞で沢山作られているもので、それもそのはず…(これも以前の記事でチラッと書いていましたが)アクチンは細胞骨格を形成する分子、つまり細胞の形そのものを作るのにも使われる分子、つまり細胞そのものともいえるぐらいの分子のため、あまねく全ての細胞で必ず合成されているのもむべなるかな、という話なのでした。

 

そんなわけで、アクチンは超重要分子であるがゆえ、「生物種間で、最も違いが少ないタンパク質」の一つだと言われています。

完成された分子だけに、進化が進んでも変化のしようがほとんどなく(下手に変わると、機能を失って、細胞を形成できなくなるから)、ずーっと同じ形のものが使われているんですね。

 

以前進化系統樹がどうたらの話をしようと思っていた内容に通じるものになりますが、今回はせっかくなので、いかにアクチンが色んな生物で形を変えずにそのまま使われているかを垣間見てみるといたしましょう。

 

まずアクチンには、ヒトの場合6種類の微妙~に配列の違う分子(若干構造は異なるけれど、基本的に機能は同じもので、専門用語で「アイソフォーム」などと呼びます)が存在するのですが……

珍しく、天下のWikipedia大先生にはその辺の記述が完全になかったので、その辺もバッチリ書かれていた脳科学辞典wikiの記事の方を参考リンクとして貼っておこうと思います(↓)。

 

bsd.neuroinf.jp

まぁその辺は大した話でもないのでどうでもいいのですが、一応、6つのアイソフォームは、αが3種にβが1種とγが2種となっています。

兄弟分子のあるアルファとガンマは、骨格筋・平滑筋・心筋のみで合成されているものなんかがあるのですが、1つしかないベータアクチン、遺伝子名としてしばしば「ACTB」とも表記されますが、こちらがあらゆる細胞で合成されるタイプでして、以前書いていた、各種タンパク質を使う実験で「同じ量の細胞を使ったことを示すために、アクチンの量が同じことを示す」という、いわゆる内部標準として非常によく使われるのがこのβなので、今回はβアクチン=ACTBを見ていくといたしましょう。

 

タンパク質の配列(アミノ酸配列)は、これまで見てきた通り色々なデータベースサイトで取得可能ですが、今回は検索したら上に出てきた、タンパク質情報に強い、UniProtからお借りしようと思います。

 

www.uniprot.org

…って、リンクカードにはタンパク質名が表示されないみたいなのでカードにする意味はなさそうですが、こちらのページの「Sequence(配列)」の項目から、ダウンロード可能です。


Downloadをクリックしたら、こんな感じ(↓)の便利なスタイル(=1行目に「>」とともに種やタンパク質名の簡易表記、2行目以降に、余計な数字とかがない純粋なアミノ酸1文字表記での配列が並ぶ…この形式をFASTA形式と呼んでおり、遺伝子情報を扱う際のスタンダード形式となっています)が得られます……

 

https://rest.uniprot.org/uniprotkb/P60709.fastaより

 

…まぁそんな表記についての細かいことはともかく、これがヒトのACTBのアミノ酸配列、ってことですね。

 

最初に比べてみるのはそうですね……まぁ、そもそもこの分子に触れたきっかけになっていたのが「牛肉を食べたら、このアクチンをいっぱい摂取することになりますが、ペプシンでどう消化されるでしょうか?」みたいな話だったので、人類の友達・我らがウシくんの配列を見てみるといたしましょう。

 

リンクカードは無意味なので、まぁURL付きのスクショ画像が良さ気でしょうか。

 

https://www.uniprot.org/uniprotkb/P60712/entry#sequencesより

このスクショ画像上部にあるDownloadボタンをクリックすれば、先ほど貼っていた余計な情報を排したFASTA形式が得られるわけですが、まぁそれもともかくとして、パッと見は、先ほどのヒトのACTBと、こちらボバインさんのACTBは、かな~り似てますね……。

 

とはいえ1文字ずつチェックしていくのも大変なので、こういう場合は機会に頼るのがよいでしょう。


ここで便利なのが、配列の相同性を示してくれる便利なソフト、CLUSTAL-W(クラスタル・ダブル)ですね。

実は、ずーっと前、tRNAの配列比較をする際に既に紹介してみたことがあったんですけど(↓)…

con-cats.hatenablog.com

…DNA/RNAに限らず、タンパク質でもしっかり相同性を出してくれるということで、今回再登場をお願いするとしましょうか。

 

CLUSTAL-Wは、FASTA形式のデータをそのまま貼り付けるだけで、ちゃんと「『>』で始まる行が名前で、それ以降が、どれだけ改行とかスペースが挟まっていても、配列のみのデータとみなす」という仕組みで正しく解析を行ってくれる優れものです。

 

ヒト・ウシ両方の配列を貼って、実行(Execute Multiple Alignment)をした結果がこちら!

 

https://www.genome.jp/tools-bin/clustalw、実行結果より

 

♪トゥットゥル~

完全に、全アミノ酸がパーフェクトに一致していることが、明らかですね!


(まぁ、これも375アミノ酸全てに、一致を意味する「*」がついていることを目視でチェックする必要があるわけですけど、流石にズラッと並んでるマークに欠けがあったら、人間は即座に認識できるといえましょう。

 一応、1行=60文字分の「*」でページ内を文字列検索すれば、全ての行(最後除き)でヒットすることから、欠けがないことは機械的にもチェック可能です。)

 

ということで、ヒトとウシのβアクチンは、100%完全一致していることが分かりました。

流石はアクチン、ヒトとウシは、まぁ僕らは友達ですけど流石に結構違う生物ではあると思うんですが(笑)、筋肉や細胞を作るベータアクチンは、全く完全に同じものを作って使ってる、ってことなんですね。

 

よく、「ヒトとチンパンジーの遺伝子の違いはたったの2%。残り98%は、チンパンどもと全く同じDNAなのです」なんて話を聞くと思いますが、それはこういう話の積み重ねによるものなのだ、ってことだといえましょう。

(正確な差は何パーだったかな、と思ったら、我らがハセマリさんのnote記事(↓)がトップにヒットしてきて…

note.com

…最新のゲノム比較では、1.23%の違いしかないということですね。

 我々はみな、約99%、ほぼチンパンジーと、区別ナシ!(笑))


(ちなみにハセマリさんは、↓の記事なんかで触れたことがあった、可愛らしい教授の先生です。)

con-cats.hatenablog.com

ということで、ヒトとウシは100%一致でしたが、もうちょい進化の道のりを遡って、小型哺乳類、実験動物でおなじみマウスならどうでしょうか?

 

マウスの学名・Mus musculusさんのACTB配列は、こんな感じ……

 

https://www.uniprot.org/uniprotkb/P60710/entry#sequencesより

 

同じ375アミノ酸で、パッと見はやはり似ていますねぇ……。

 

果たして我々牛人連合は、ネズカスごときと同じアクチンを使っているというのか?

 

クラスタルWの結果やいかに…?!

 

https://www.genome.jp/tools-bin/clustalwより


…ぎょえーん、Human, Mouse, Bovine、3種仲良く完全一致!!

 

なんと、ネズミにまで遡っても、100%全く同じ分子を使っているんですね、流石はアクチン!

 

(ちなみに今さらですが、一番最初に見ていたRNA分解酵素は、ヒトとウシの時点で結構違いがありましたね↓)

con-cats.hatenablog.com

むーん、じゃあ、流石にもうちょい進化の系譜を遡って、こないだいくつか見てきたモデル生物では登場しなかったけどよく実験で使われるのといえばこいつ……

中学理科の教科書で、必ずどなたもご覧になった記憶があるのではないでしょうか、アフリカツメガエル=学名から、界隈では「Xenopus(ゼノパス)」と呼ばれる、両生類の雑魚ならどうでしょうか?

 

ゼノパス氏のACTBアミノ酸配列はこちら…

 

https://www.uniprot.org/uniprotkb/P15475/entry#sequencesより

おっ!376アミノ酸!!(=「Length(長さ)」に書かれています)

 

アミノ酸の数の時点で違いますから、100%一致はなくなった、バンザーイ、やっぱりカエルみたいなキモいやつと人間は違うんですよ、体毛ナシの粘膜剥き出しカスはこれだから……

 

実際どのぐらい違うのか、比較してみますと~?

 

https://www.genome.jp/tools-bin/clustalwより

うん、やっぱり、違いがあったら一目瞭然ですね!


ゼノパスは、何気に2アミノ酸めにいきなりA(アラニン)という、我々高等生物では存在しないアミノ酸が入っており、更にそれのみならず、10番目ぐらいのV(バリン)がI(イソロイシン)になっているわけですけど、ここで注目いただきたいのが、「*」が空白ではなく「:」になっている点ですね。


バリンとイソロイシンは、同じ脂肪族の単純アミノ酸で、性質が極めて近いため、「変わってはいるけれど、そこまで構造や機能に大きな影響を与える変化ではなく、マイナーチェンジと言える」ということを示してくれているわけです。


なので、全く違う性質のアミノ酸よりも、そんなに離れたものではないといえるため、進化的に相同性スコアをつけるなら、これはそこまで大きな減点にはならない…みたいな感じになっています。

 

ちなみに、一番下の方、こちらも右から10アミノ酸ちょいぐらいに、完全なる空白が目に付きますね。

これは、S(セリン)⇔ L(ロイシン)の違いで、まぁどちらも小型&リングなしなので近いアミノ酸(どちらもコドン6つ対応の、かなりメジャーアミノ酸ですし)とはいえ、SにはOH基があってそれなりに水に溶けやすい…みたいな性質がありますからこれは進化的に遠いアミノ酸であり、マークなしの空欄、「かなり大きな変化」だとみなされる感じなわけです。

 

とはいえ全体で見れば、1アミノ酸の追加と、ほぼ影響のない1アミノ酸の変化+もう1アミノ酸の違いということで、やっぱりヒトとカエルでも、ほぼほぼ同じ分子だといえますから、流石は大切な分子アクチン、色んな生物でも保存されているのがマジマジと確認できるといえましょう。

 

じゃあ…ってんで、一気に進化的にかなり遠い、単細胞の酵母なんかはどうなのか、最後に見てみましょうか。

大腸菌は、原核生物なので、あまりにもクソザコすぎる結果、アクチンすらもっていません(笑))

 

https://www.uniprot.org/uniprotkb/P60010/entry#sequencesより

 

お、こちらも375アミノ酸ではあるけれど、比較してみると…

(ウシとマウスはヒトと同じなので省略しました)

 

https://www.genome.jp/tools-bin/clustalwより


うん、やっぱり流石に、「:」や、さらにスコアの落ちる「.」なんかが、カエル以上にYEASTとの比較では目立ちますね!

 

…と、案外配列比較だけで時間を食い、まさかの「筋肉の動く仕組み」に全く到達することなく時間切れとなってしまいました。

途中「記事タイトルにした通り…」と書いていたこともあり、それを編集する時間もなかったので、苦肉の策で「(種の比較編)」というパート割をしたものの(笑)、筋肉についてはまた次回とさせていただきましょう。

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