大豆はどうかな~?

前回の記事では、当初見ていた古~いデータをきっかけに、何気にコドンレベルで出現頻度がまとめられている表がGenescript社のページで見つかっていたため、それを用いて我らが人間様のもつ全タンパク質に登場するアミノ酸の頻度をチェックしていました。

 

表のデータをグラフにまとめたものを掲示し、そこで時間切れとなり力尽きていたため、グラフの再掲から参りましょう。

 


縦軸は千分率であり、全部の数字を合計すると1000になっているわけですが、ロイシンが約100、つまりヒトの全タンパク質のおよそ1/10ほどはロイシンでできているということで、まあまあ中々、BCAAの一員であるロイシンはやはり結構目立つ形ですね。

 

ちなみに言うまでもありませんが、アミノ酸は20種なので…

(ちなみにこのデータには停止コドンまで含まれているので21項目あるわけですが、停止コドンは当然タンパク質の終わりに1つしかないため、圧倒的に少ない感じですね。なのでまぁ無視していいでしょう)

…素直に考えると、1つのアミノ酸の割合は5%(上記千分率なら、「50」という数字ですね)ずつであればちょうど「平均的な出現確率」と言えるわけで、10%の出現頻度を誇るロイシンは、平均より2倍もよく出てくるものだといえるわけですね。

 

グラフを見てみると、ちょう~ど10種類ずつで「50より上か下か」が分かれているので、そこまで「圧倒的に特定のものだけがめちゃくちゃよく出てくる」寡占状態ではないし(トップのロイシンで平均の2倍程度なので当然ですが)、逆に「超絶レアすぎて、ほとんどのタンパク質では存在すらしないであろうアミノ酸」というものもまた存在しない感じだといえましょう。

 

…一応、頻度最下位のトリプトファンは1.28%なわけですけど、まぁ「理論的平均値より1/4ほど」ではあるものの、トップのロイシンから見ても1/8程度の頻度で出てくるともいえるわけで、タンパク質は基本的に数百程度のアミノ酸から成るため(ヒトの作るタンパク質の平均アミノ酸数は300といわれていますね)、Trpは「ややレア」ではあるものの、ほぼ間違いなく存在はしているものだといえましょう。

 

そんなわけで、ロイシンが我々のタンパク質=身体の中には一番含まれるアミノ酸ということで、「じゃあやっぱりロイシンをたっぷり摂取する必要があるんだね」という気もするわけですけど、とはいえしかし、ロイシンは対応コドンが6つもあることからも分かる通り(ちょうど、その辺が前回見ていた古い論文の議論ポイントでした)、基本的にどの生物でも多く含まれるアミノ酸になっていますから、例えばタンパク質を多く含むお肉なりお豆なりを食べたら、ちゃんとロイシンも普通に豊富に摂取できるということで、結局は高タンパク質の食事をしていればそこまで特定のアミノ酸が不足するなんてことはないように思います。

(とはいえ、こないだ見ていた通りBCAAは必須アミノ酸であり、我々は自分では絶対に合成できないので、タンパク質が不足しがちといわれる現代人の食生活では、もしかしたらBCAAをサプリで積極的に摂取するのは大いに意味があるともいえるのかもしれません。)

 

そんなわけで、せっかくなので例えば納豆を食べたときにどんな感じでアミノ酸を摂取できるのか、具体的にチェックしてみましょう。


とはいえ大豆の可食部のタンパク質の全てを見るわけにもいかないんですけど、そういえばちょうどこないだ陽子・電子関連の話を見ていたときに、「大豆に最も含まれるタンパク質」に触れていましたね(↓)。

 

con-cats.hatenablog.com

すっかり何だったか忘れていましたが、そうそう、「グリシニン」というタンパク質でした。

こいつが大豆の過半数を占めるタンパク質だということで、まぁ納豆を食べるってのはグリシニンを摂取しているようなものだと考えられなくもないといえましょう。

 

この時はタンパク質データベースであるUniprotからアミノ酸配列をゲットしていましたが…

 

www.uniprot.org

…まぁ意味ないにも程がありますけど、今回は取得した配列を画像ではなくテキストでペタッと貼り付けてみるといたしましょう。

 

MAKLVFSLCFLLFSGCCFAFSSREQPQQNECQIQKLNALKPDNRIESEGGLIETWNPNNKPFQCAGVALSRCTLNRNALRRPSYTNGPQEIYIQQGKGIFGMIYPGCPSTFEEPQQPQQRGQSSRPQDRHQKIYNFREGDLIAVPTGVAWWMYNNEDTPVVAVSIIDTNSLENQLDQMPRRFYLAGNQEQEFLKYQQEQGGHQSQKGKHQQEEENEGGSILSGFTLEFLEHAFSVDKQIAKNLQGENEGEDKGAIVTVKGGLSVIKPPTDEQQQRPQEEEEEEEDEKPQCKGKDKHCQRPRGSQSKSRRNGIDETICTMRLRHNIGQTSSPDIYNPQAGSVTTATSLDFPALSWLRLSAEFGSLRKNAMFVPHYNLNANSIIYALNGRALIQVVNCNGERVFDGELQEGRVLIVPQNFVVAARSQSDNFEYVSFKTNDTPMIGTLAGANSLLNALPEEVIQHTFNLKSQQARQIKNNNPFKFLVPPQESQKRAVA

 

Met (M) で始まりAla (A) で終わる、495アミノ酸から成るのが、大豆の代名詞ともいえるグリシニンというタンパク質だということですね。

 

早速、各文字の登場回数を数えてみましょう、カウント…ドン!

グリシニンに登場する各アミノ酸の数をカウントした結果

おぉ~、なんと、まさかの大豆ではロイシンLがトップではなく、その上に2人、大豆に最も多く含まれるのはQE


こぉ~れは意外でしたが、QとEというのは何のアミノ酸だったか覚えていらっしゃるでしょうか、「NQ」と「DE」の後ろ側ということで、これはグルタミングルタミン酸になるわけですけど、「グルタミン」は皆様ご存知、おなじみ「味の素」で知られる「うま味」の主成分といえるアミノ酸で、そう考えると、大豆にはコク・うま味があるっちゃありますから、この「QEを多く含む」という結果はまさに納得のものといえましょう。

 

そしてその次にはやはりLeuが来ている通り、何だかんだロイシンの摂取もしっかりできるのには間違いない感じですね。


そこからはまぁ、N=Asn=アスパラギンが来ているのはやや番狂わせ感もあるものの、とはいえ最初に見ていた例のアミノ酸順位はヒトタンパク質のデータであり、植物はまた少し違っているのも当然ですし、Wトリプ・Mメット・Hヒス・Cシスといった下位雑魚の顔ぶれは相変わらずで、やはり種にかかわらずそない多く含まれるもんでもないというのは一緒といえますしね、大豆くんも我々と同じ生物なのです、ってことが再認識できる感じだといえましょう。

 

…と、せっかくなのでGenscript社の公開していたデータにはヒト以外のよく研究で使われる生物種のコドン・アミノ酸頻度の表も掲載されていたため、そちらのデータをまとめて1記事こさえてみようと思って始めた話だったのですが、大豆に含まれる特定のタンパク質だけで結構いい分量になったため、「その他の生物種データと比較」については、まぁ正直「やっぱり大体似てるけどちょっと違いますね」の一言以上の話は絶対ないんですけど(笑)、なかなか時間のない日が続いているため、ケチって記事水増しを図るべく、そちらは次回持ち越しとさせていただこうと思います。


一般的には全く面白い話でもないですけど、逆に専門的にはその具体的なデータ(=アミノ酸レベルで、使われているものの違いを一覧で)をまとめておきたい気もしたので、次回はまさに自分のための記事となりそうです。

 

と、もう一つ、上のヒト・アミノ酸頻度データで見ておこうと思った話に最後触れておきますと、そもそもこのネタに脱線したきっかけは、「ペプシンで認識されて分解される2アミノ酸の並びは、どのぐらいの確率で出てくるものなんだろう?」という疑問点でした。


そんなわけで、ヒト由来のタンパク質で見るならば…

(まぁ「ヒト由来のタンパク質」を食べて消化することはまずないので、あんまり適切な例ではないかもしれませんけど(笑)、あくまで計算のための理論値ってことですね)

ペプシンの認識配列は「[DE]-[FHYW]」という並びでしたから、一番最初のグラフから数字を拝借すると、D=4.83%、E=6.98%、F=3.73%、H=2.53%、Y=2.76%、W=1.28%だったので…

(4.83%+6.98%) × (3.73%+2.53%+2.76%+1.28%) = 1.22%


…と、何気に前半の酸性アミノ酸は理論値2/20より大きい12%弱だったのに、後半の芳香族アミノ酸は何度も見てきた通り軒並み出現率が雑魚過ぎて、理論値である4/20を大幅に割った合計10%ちょいしかないため、掛け合わせて理論値として考えていた1/50=2%よりもかなり小さい、1.22%程度でしか現れない配列だ、ってことが分かった感じですね。

 

ちなみに、せっかく最メジャー大豆タンパク質であるグリシニンの配列を用意したので、グリシニンは胃の中でペプシンによってどのぐらいの数に分解されるかというのも見ておくと……

ペプシン認識配列、[DE][FHYW]でグリシニンを正規表現検索した結果

495アミノ酸のタンパク質なので、(これはヒトのデータですがまぁ同じとしたら)1.22%の確率とすると、大体6箇所出てくる計算になるわけですけど、まさにドンピシャ、合計で6箇所ほどペプシン認識配列が見つかった感じですね!

 

2番目のEFと3番目のEHはかなり近いので、実際はほぼ5箇所で切れるような形であるのも同然とはいえるものの、胃の中でちゃんと大豆タンパクはざっくりと消化されるようにできているのです……ということが分かりましたから、これで安心して納豆を食べられるというものです。

(いや別に「ペプシンは1.22%という低確率でしか切れないのに、ちゃんと納豆を胃で消化してくれているんだろうか…」とか不安になってなど全くいませんでしたけどね(笑))

 

では次回は他の生物種のアミノ酸頻度をまとめて、お茶を濁す回としようかと思います。

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