前回の記事では、世界最高の病院のひとつ・Cleveland Clinicがまとめている愛情ホルモン「オキシトシン」の解説記事を勝手に翻訳引用して紹介していました。
結局今日もネタを考える時間があまりにもなさすぎたため、似たような…というか全く同じパターンで、クリ・クリの記事をまとめさせていただきましょう。
今回は、三大幸福物質の1つ、メンタルの安定や落ち着いた平和な心を維持するのにとても重要とされる、幸せホルモンことセロトニンです!
どんな有益情報があるのでしょうか、早速参りましょう。
Serotonin(セロトニン)
セロトニンは、脳の神経細胞間や全身にメッセージを伝える化学物質の一種です。セロトニンは、気分、睡眠、消化、吐き気、創傷治癒、骨の健康、血液凝固、性欲などの各種身体的機能に対して重要な役割を果たしています。セロトニン濃度が低すぎても高すぎても、身体的・心理的な健康問題を引き起こす可能性があります。
概要
セロトニンとは何か?
セロトニンは5-ヒドロキシトリプトアミン(5-HT)としても知られる、モノアミン性の神経伝達物質です。また、ホルモンとしても作用します。
神経伝達物質であるセロトニンは、脳の神経細胞(中枢神経系)と全身(末梢神経系)で情報を伝えています。こういった化学的な情報は、自分の体がどのように働くかについての指示を伝達しています。
セロトニンは、学習、記憶、幸福感に影響を与えるだけでなく、体温、睡眠、性行動、空腹感を調節するなど、体内でいくつかの役割を果たしています。セロトニンが不足すると、うつ病、不安神経症、躁病、その他種々の健康状態に影響を及ぼすと考えられています。
体内にあるセロトニンのほとんどは腸に見られます。セロトニンの約90%は、胃腸を覆う細胞に存在しています。セロトニンは血流の中に放出され、血小板によって吸収されます。およそ10%のみが、脳で作られています。
セロトニンは必須アミノ酸のトリプトファンから作られます。必須アミノ酸とは、体内で作ることができないアミノ酸のことであり、食事から摂取する必要があります。
セロトニンは体内で何をしている?
セロトニンは、体の中で多くの機能に関与しています:
- 気分:脳内のセロトニンは、私たちの気分(ムード)を調節しています。セロトニンはよく、体内において自然な「気分の良くなる」化学物質と呼ばれています。セロトニンが正常レベルであれば、集中力が増し、情緒が安定し、より幸せで穏やかな気分になります。セロトニンのレベルの低さは、うつ病と関連付けられています。不安障害、うつ病、その他の気分障害の治療に使われる薬の多くは、しばしば脳内のセロトニン濃度を高めることを目的としています。
- 消化: 体内のセロトニンの大部分は消化管にあり、腸の機能の調整を手助けすることで、腸を保護する役割を担っています。腸はセロトニンの分泌を増やすことで消化を促進し、刺激物や有害物質を体外に排出することを可能にしています。セロトニンはまた、食事中に食欲を減退させることにも一役買っています。
- 吐き気: 吐き気は、セロトニンが分解される速度よりも早いペースで腸内に放出されることで引き起こされます。この化学的な情報は脳で受け取られ、吐き気として認識されます。吐き気や嘔吐を抑えるために使われる薬は、脳内の特定のセロトニン受容体をターゲットにしていることが多いです。
- 睡眠: セロトニンは、もうひとつの神経伝達物質であるドーパミンとともに、睡眠の質(どれだけよく、どれだけ長く眠れるか)に関与しています。睡眠・覚醒のサイクルを調節するホルモンであるメラトニンを作るためにも、脳はセロトニンを必要としています。
- 創傷治癒: セロトニンは血液中の血小板から放出され、傷の治癒に役立ちます。セロトニンはまた、最も微細な血管である細動脈をより細くし、血流を遅くして血栓の形成を助けます。これは創傷治癒における重要なプロセスになっています。
- 骨の健康:セロトニンレベルは骨の密度に関与している可能性があります。腸内のセロトニン濃度が高いと骨が弱くなり、骨の損壊(骨折)や骨粗しょう症につながる可能性があります。
- 性の健康:セロトニンは―神経伝達物質であるドーパミンとともに―セックスに対する欲求にも関与しています。
セロトニンレベルが低いと、どのような問題が起こる?
セロトニンレベルの低下は、以下のような多くの健康状態と関連している可能性があります:
体内および疾患におけるセロトニンの役割については、研究者がまだ多くのことを調べている段階です。
セロトニン濃度が低くなる原因は?
セロトニン濃度が低くなる原因は、通常1つではありません。専門的には、セロトニンレベルが低いこととして、次のような理由が挙げられます:
セロトニンを増やすにはどうすればよい?
セロトニンレベルを上げる方法には以下のようなものがあります:
セロトニン濃度を高める食品
多くの食品には、セロトニンの原料となるアミノ酸である、トリプトファンが自然に含まれています。以下のようなトリプトファンを含む食品を食べることで、セロトニンレベルの増加を試みましょう:
- サーモン
- 卵
- チーズ
- 七面鳥
- 豆腐
- パイナップル
- ナッツ類、オート麦、種子類
トリプトファンを多く含む食品を食べたからといって、それだけでセロトニンレベルが上がるとは限りません。これは複雑なプロセスなのです。アミノ酸を吸収するのに必要となるインスリンを分泌するには、炭水化物が必要です。また、トリプトファンが血中に入ったとしても、脳に吸収されるためには他のアミノ酸と競争しなければなりません。トリプトファンを含む食品を食べることでセロトニンレベルがどのように上昇するかは、研究者がまだ調べている所です。
日光
日光を十分に浴びないと、人によっては情緒障害である季節性感情障害にもつながり得ます。セロトニンレベルだけでなく、ビタミンDレベルも高めるために、毎日10~15分の日光浴を心がけましょう。自然の日光を浴びることができない地域にお住まいの方は、必要な日光を毎日浴びるために、光療法を利用することを検討してみてください。
サプリメント
栄養補助やハーブ系のサプリメントも、セロトニンレベルを高めてくれます。これには、以下のようなものがあります:
- 栄養補助食品: トリプトファン、プロバイオティクス、SAMe(S-アデノシルメチオニン)
- ハーブのサプリメント: 高麗人参、セントジョーンズワート、シリアンルー、ナツメグなどを含むものが挙げられます。
運動
定期的な運動はセロトニンレベルを高めることが知られています。週5回・30分の有酸素運動に加え、週2回の筋力トレーニングを行えば、情緒障害と心臓の健康状態が改善され得ます。
セロトニン濃度を増加させる薬には何がある?
様々な健康状態がセロトニンの影響を受けるため、セロトニンやセロトニン受容体は、製薬業界における一般的な開発ターゲットとなっています。セロトニン濃度を増加させるためのより一般的な薬には、以下のようなものが含まれます。
種々の異なるクラスに属する抗うつ薬は、セロトニンの再吸収とリサイクルを阻害し、より多くのセロトニンが脳内に残ることを可能にしています。このような作用を持つ薬には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(例えば、パロキセチン[商品名パキシル®])、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(例えば、ベンラファキシン[商品名イフェクサー®])、三環系抗うつ薬(例えば、アミトリプチリン[商品名エラビル®])があります。抗うつ薬のもうひとつの種類であるモノアミン酸化酵素阻害薬(例えば、フェネルジン[商品名ナーディル®])は、セロトニンを分解する酵素を阻害します。
その他にも、様々な病状のために服用される多くの薬が、セロトニンを増加させます。頭痛薬のトリプタン系、オピオイド系鎮痛剤、デキストロメトルファン含有咳止め、および吐き気止めなどがその例に含まれます。
セロトニン濃度が高くなると、どのような問題が起こる?
セロトニン症候群は、セロトニン濃度が上昇しすぎた場合に起こる症状です。通常、セロトニン濃度を上昇させることが知られている薬剤の投与量を増やしたり、セロトニンを増加させることが知られている別の薬剤を服用した場合に起こります。
中程度の症状としては、震え、大量の発汗、錯乱、落ち着きのなさ、高血圧、筋肉の痙攣、下痢などがあります。重篤な症状には、高熱、痙攣、失神、心拍異常などが挙げられます。
セロトニン症候群は、重症の場合、早期に発見し、迅速に治療しなければ、命にかかわることもあり得ます。
その他のよくある質問
ドーパミンとセロトニンの違いは?
ドーパミンとセロトニンはどちらも神経伝達物質です。つまり、脳の神経細胞間や体の他の部位との間で、化学的なメッセージの伝達者としての役割を担っている物質です。どちらもポジティブな気分や感情に関与しているため、「幸せホルモン」とも呼ばれています。セロトニンは幸福感、集中力、そして落ち着きと関連しています。ドーパミンは報酬や意欲に関連しています。ドーパミンとセロトニンは、うつ病や情緒障害など、いくつかの精神疾患にも共同で関与しています。
ドーパミンとセロトニンには、それぞれ異なる機能も存在します。ドーパミンは体の動きや協調性をコントロールしています。セロトニンは、腸の働きや食欲など、消化機能の調節を助けます。ドーパミンは空腹感を引き起こし、セロトニンは逆にそれを抑制します。ドーパミンは主に脳に貯蔵されており、セロトニンは主に腸内に見られます。
時には、これらの神経伝達物質が一緒に働いて、体内の化学的バランスを注意深く保つこともあります。バランスが崩れたときには、もう一方の神経伝達物質が過剰に分泌されることもあります。どちらかが多すぎても少なすぎても、身体的・心理的症状が引き起こされ得るのです。
クリーブランド・クリニックからのメモ
セロトニンは、気分、睡眠、食欲、不安、消化、血液凝固、性欲などの身体機能において重要な役割を果たしています。セロトニンに影響を及ぼす、またはセロトニンの影響を受ける健康状態にある場合は、かかりつけの医療従事者に、セロトニンについて知っておくべきことを尋ねてください。体内のセロトニンレベルの変動を防ぎ、潜在的な薬物相互作用を減らすために、医療従事者に相談することなく薬の服用を中止したり、服用量を変更したり、栄養補助食品やハーブのサプリメントを服用したりしないでください。
…今回も大変分かりやすい記事でした。
何気に、セロトニンは腸に最も多く存在する物質であり、下痢に関わるというのはよく知られた話だったんですね。
とはいえ基本的には幸福物質の名に恥じることなく、なるべくしっかり合成・分泌・利用される状態を保つことが健康な生活を送るコツといえましょう。
(まぁどうすればそれを保てるかは、まだハッキリしていないんだと思いますが…。)
オキシトシンとは違い、こちらは単一のアミノ酸であるトリプトファンが少し形を変えただけのものですから、気軽に飲めるサプリも存在するということですね。
Google検索したら、当然出てきました、やはり色々あるようです!
我らがネイチャーメイドにもセロトニンの別名である「5-HTP」の名で売られているようですね。
(ちなみにこれは「5-ヒドロキシトリプトファン」なので、普通に名前が示す通り、トリプトファンにヒドロキシ基-OHがついただけのものなんですね。
しかし一応、5-HTPはセロトニンの前駆物質で、セロトニンそのものはそこからもう少し形を変えた「5-HT」になるわけですが、そこは体内で容易に変換されるのでしょう、これを飲めばセロトニンを摂取したも同義といえそうです……参考:ウィ記事の変換経路の図↓)
僕は「セロトニンの分泌に自信マン」なのであえて摂取はしませんが、メンタルがあんまり安定しないなぁ…という方は、こういったサプリを飲んでみるのもありかもしれませんね。
では、次回もせっかくなので、今回の記事でも途中話に挙がっていましたが幸福物質三巨頭の一角、ドーパミン記事も見ておこうかな、と思います。