筋肉はどうやって動くのか?(ミクロの動き編)

消化酵素の分子メカニズムの一端を垣間見ていた話から脱線して、より身近な筋肉の方も、分子的なメカニズムをちょろっと紹介してみよう…と思い立った前回でしたが、「筋肉の構成要素の1つである超絶重要分子・アクチンが、いかに時を経ても保存されたままなのか?」について見ていたら時間切れとなってしまっていました。

(ちなみに、DNAやタンパク質の配列に関して、進化的により単純な生物で使われているものがそのまま残っていることを「保存されている」という感じで、これはいわば専門用語の一種ですね。

ja.wikipedia.org

…英語ではConserved sequence(そのまま「保存・配列」)で、前回見ていた種間の配列比較表とともに(まさに上記サムネイル画像にある通り)よく語られる形です。)

 

そんな訳で今回は筋肉が動く分子メカニズムについてちょろっと触れてみようと思うんですけど、まぁそもそも消化酵素の方も「分子メカニズム」とは言ったもののただ行われる反応の図をペッと貼っただけで、「どういう仕組みで電子が移動して結合が切断・形成されるのか」といった細部は一切無視の、非常に浅い話になっていた訳ですが、今回はそれ以上に、「こういうことが知られています、面白いですね」という程度の、単なる教科書知識をなぞるだけの形になりそうです。

 

まぁ、詳しい生化学・生物物理学的な仕組みなんて面白くないにも程があるというか、僕自身そこまで明快に語れるような内容でもないので、秘奥義・「興味を持たれた方は、生化学系の教科書をご覧いただくことがオススメです」に逃げる形とさせていただきましょう(笑)。

 

言い訳はともかく、筋肉が動く仕組みとしては、我らがアクチンともう一つ、ミオシンというタンパク質が密接に絡み合って作用していることが知られています。

 

ja.wikipedia.org

上記ウィキP記事リンクサムネイル画像にもある通り……ってまぁこんな小さい画像じゃ何も分かりませんが、今まで見てきたこの手のリボンモデルよりも何かリボンが小さく感じられる=全体として非常に大きい分子であることが推察されるのではないかと思うのですが、実際かなり大きいタンパク質でして、またUniProtのデータからお借りしますと、ヒトのミオシン1は、実に1939アミノ酸がつながってできているものということで、前回見ていたアクチンは375アミノ酸でしたし、こいつはデケェー!と言える感じですね。

 

しかも、サムネ画像にあるように、こちらも2つの分子が強固にくっついて、いわゆる二量体として働く分子として知られていますから、実質1つの機能単位は約4000ものアミノ酸からできている形だといえましょう。

 

実際に「1つがデカいものは集まってもデカい」ということで、ミオシンは「太いフィラメント」を形成し、一方のアクチンは「細いフィラメント」を形成することが知られています。

 

ちょうど先ほどの画像にあった通り、フライドチキン(色的にも(笑))というかオタマジャクシみたいな形をしていますが、これこそがミオシンの特徴でして、このミオシンの太いフィラメントから出ている「頭部」により、アクチンの作る細いフィラメントがズズズ…と滑るような形で、筋肉は動いているのです…というのが、一言で表す筋肉が動く仕組みの結論なのでした。

 

まぁ文字だけじゃ分かりにくいにも程がありますけど、その「太いフィラメント」とかは結構立派な生物学用語でして(まぁ「ミオシンフィラメント」とか呼ばれることもありますが)、「太いフィラメント」で検索すると、100パーセント確実にこの筋収縮の話のみがヒットしてくると思います。

さらに、その「滑る」自体もちゃんとした用語であり、筋肉が動く仕組みは「滑り説」などと呼ばれています。

 

ja.wikipedia.org

各フィラメントとそれらが収縮でどうなるのかの画像をお借りしようと思ったものの、このWikipedia画像はウィッキー先生にしては珍しく、あまりにも分かりにくいですね。

 

筋肉・モーター分子系の研究は、何気に日本の大学がかなりトップレベルで最先端にいらっしゃることが多く、分かりやすい解説もたくさん目に付いたため、今回はその中から検索して出てきたこちら…

 

www.jst.go.jp

…2007年に理研尾西さんが発表された論文の日本語まとめ記事になりますが、こちらの方が圧倒的に分かりやすかったので、こちらの図1をお借りさせていただきましょう。

 

(論文としてまとめられた新規発見はより細かい分子レベルのお話ですが、序盤の導入部が分かりやすい筋肉の解説まとめになっています。)

 

https://www.jst.go.jp/topics/20070723/index.htmlより

 

結局、筋肉というのは、まぁ巨視的に見たら動物のお肉でよく見る通り赤身のカタマリにすぎないんですけど、ミクロレベルでは、アクチンがつながってできる細いフィラメントの間に、ミオシンがつながってできた太いフィラメントが上手いこと位置しているのが1つの単位であり(この図では1つのみしか描かれていないものの、実際の筋組織では、上下左右ずっとつながっている感じです)、まぁ用語はマジでどうでもいいと思いますが、これをサルコメアなどと呼んでいる形です。


サルコメアでは、(先ほどもチラッと書いていましたが)太いフィラメントが細いアクフィラをズズズと引っ張るようにして滑らせることが可能になっており、複数のサルコメアが上手に共同して作動することで、我々は腕なり腿なりの筋肉を大きく動かすとができ、それに伴って、上手く配置されている腱や骨・関節が適切に作動し、歩いたりモノを掴んだりすることができる…って話なんですね。

 

ちょうどサルコメア1つの仕切りとなる部分は暗い色で見え、「Zライン(Z線とか、Z帯とも)」などと呼ばれることも図から分かりますけど(Zラインを境に、複数のサルコメアがいくつも並んでいる形ですね)、受験をするのでもない限り、そういう細かい用語はやっぱりまぁどうでもいいかな、って気もします。

 

とまぁ、こういうのを高校生物でも軽く習う訳ですけど、実際に動くものを画像だけでイメージするのもなかなか難しいもので、まぁ僕なんかはテストのために用語を覚えるだけ覚えた、って感じでしたね、当時はやっぱり(ゆーて、このアクションをイメージするのは別に全然難しくはないですけど(笑))。


しかし、今の時代は動画も発達していますから、こういうのが動画(もちろん実写では分からないレベルのミクロの世界なので、あくまで模式アニメーションになりますが)で学べるというのは、大変素晴らしいことだといえましょう。

 

とはいえそういうのをまとめるのも結構大変ですし、マクロのレベルからミクロのレベルへと視点を移して上手に解説してくれるものが中々見当たらなかったので、英語になってしまいますけど、 正直言葉なしでも十分分かりやすいものだといえましょう……Alila Medical Mediaというオンライン医療系学習教材を作製してらっしゃるチャンネルが素晴らしい解説ビデオを公開されていたので、こちらが大変オススメですね(↓)。

 

www.youtube.com

Myosin」は、(アメリカ)英語では「マイオシン」なんて呼ばれることも分かるかと思いますが、thin filaments/ thick filamentsという細い・太いフィラメントも、英語でもそのまんま使われる感じですね。

 

まぁ、動くというか滑るのはいいとして、何でさ?どういう仕組みでさ?というのも気になる所だと思うんですけれども、これも普通に動画内で、序盤のフィラメントが滑るアニメの次にちゃんと紹介されていましたね。

 

最初の方で「そこまで突っ込んで見てみても面白くないから…」と書いていたもののせっかくなのでサワリのサワリだけ触れてみますと、結局は何気に人間も「電気の力」で動いているというのが結論になります。


まぁ電池とかコンセントで動いている訳ではないんですけど、どういうことかというと、またまた登場の「イオン」、具体的には、直接筋収縮を引き起こすものとしてはカルシウムイオンが、アクチンフィラメントの周りにいる筋肉第三の登場人物・トロポニンというタンパク質分子に結合すると、その電気信号(カルシウムイオンは陽イオンでしたね)を受け取って形が変わり、具体的にはもう何ステップかあれやこれやすることで、ミオシンの頭がグイっと動かされると、そんな感じになっているんですね。

 

例によって、より詳しく知りたい方は、やはり生化学系の教科書にあたると全て網羅されているので一番何でも分かるとはいえますけど、より簡単にまとめてくれている資料もやはり豊富で、上の動画は英語なので分かりにくい場合は、こちら医学出版が1枚の画像にまとめてくれているPDF解説(↓)とか…

http://www.igaku.co.jp/pdf/1602_ope-04.pdf

 

…あとは、トロポニンではなく、同じ「カルシウムイオン検知器」である「カルモジュリン」という、非常によく研究されている似たような分子がメインの記事ではありますけど、例の何回か話に出しているタンパク質の結晶構造データが蓄積されているPDBプロテイン・データ・バンク)が提供する「今月の分子」という記事(元は英語で、日本のPDBJが翻訳記事を公開してくれています)が、これに限らず生体分子について非常に分かりやすくまたそれなりに楽しく伝えてくれているので……

 

numon.pdbj.org

…今回、「生命科学に興味が出た方は、教科書などの堅苦しい本に手を出す前に、『今月の分子』シリーズを読んでざっと色々な知識に触れてみるのも、大変オススメかもしれません」ということを紹介してみたかった形でした。

 

ということで、まぁそれっぽいこと言いながら実際は単にほぼ外部の解説に丸投げなだけの記事だった感じですけど(笑)、上手いことスペースも埋まって時間もなくなってしまったため、筋肉の動きについてはその辺とさせていただきましょう。

次回は……特に全くな~んも考えていませんが(笑)、また少しずつ途中状態だったネタに戻っていく予定です。

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