時間稼ぎというか記事水増しというか、ここ最近の記事では神経・脊髄の話に端を発して、いわゆる三大幸福物質(ホルモン)と呼ばれる、ドーパミン、セロトニン、オキシトシンについて、世界の最先端を行く誉れ高きクリーブランド・クリニックの解説まとめ記事を翻訳引用していました。
今回も、味をしめて…というわけではないものの、そんなに面白いってほどの話でもないですが健康な精神を保つためにそこそこ有益な話に……もそんなになってない気もしますけど(笑)、「これ以上のことはまだ分かっていない」ということを知り、いかがわしい健康情報などに惑わされないよう、最新の医学的情報をまた一つまとめさせてもらおうかな、と思った次第です。
(まぁただのネタ切れに苦しんでいる状況での記事水増しに他ならないのですが(笑)。)
今回の対象は、何気に「幸福物質」としてドーパ・セロト・オキシの三兄弟に並んで挙げられることも多い(ハブられることも多いですが(笑))、第四のハピハピ物質に行ってみましょう…それが、β-エンドルフィン!
Endorphins(エンドルフィン(複数形))
エンドルフィンは、体が苦痛やストレスを感じたときに分泌されるホルモンです。脳で生成され、体内で情報伝達物質として働きます。エンドルフィンは苦痛を和らげ、ストレスを軽減し、気分を改善するために体内で合成されます。エンドルフィンは、運動、食事、性交、マッサージやその他様々な方法で増やすことが可能です。
概要
エンドルフィンとは何か?
エンドルフィンとは、痛みやストレスを感じたときに体内で分泌される化学物質(ホルモン)です。エンドルフィンは、運動、マッサージ、食事、セックスといった快楽的な活動時にも分泌されます。エンドルフィンは痛みを和らげ、ストレスを軽減し、健康・幸福感を高めてくれます。
エンドルフィンは脳の一部である下垂体と視床下部で作られます。エンドルフィンは神経伝達物質、つまり体内で働くメッセンジャーの一種です。エンドルフィンは脳の報酬中枢(オピオイド受容体)に結合し、神経系を介して情報を伝えています。
エンドルフィンは、体内を意味する「内在性(endogenous)」と、アヘン系鎮痛剤である「モルヒネ(morphine)」という語に由来します。つまり、両者を合わせたエンドルフィンは、天然の鎮痛剤であることを意味しているわけですね。エンドルフィンは、気分を良くし、ポジティブな精神状態にしてくれるため、「気持ちいい」化学物質なのです。
エンドルフィンにはどんな種類があるの?
体内には20種類以上のエンドルフィンが存在します。β(ベータ)-エンドルフィンは、ストレス緩和や疼痛管理に関与するエンドルフィンです。β-エンドルフィンは、体内で、モルヒネよりも強い作用を有しています。
機能
エンドルフィンにはどんな働きがあるの?
エンドルフィンは、体が苦痛やストレスを感じると分泌されます。体がエンドルフィンを分泌するのは、人間が生存するためのものなのです。痛みを感じると、体内の神経が痛みの信号を脳に送ります。脳がエンドルフィンを分泌し、苦痛シグナルを受け取る神経細胞をブロックしてくれるのです。
これが、痛みを止める本質的な仕組みとなっています。苦痛を感じたり、ストレスがかかったりする状況でも、人体の機能を継続させる手助けをしてくれているわけです。苦痛を避けることを求めるのは自然なことなので、気分が良くなったら、より何かをしやすくなるわけですね。
エンドルフィンの効能は何?
エンドルフィンには多くの効能があります。研究によると、以下のような効果があるとされています:
- うつ症状の緩和: 運動中に分泌されたエンドルフィンは、うつ病の症状軽減に役立つことが示されています。
- ストレスや不安の解消: エンドルフィンのレベルが上がると、ストレスや不安が減少することが示されています。
- 自己認識の改善: エンドルフィンが自信の度合いを高め、自尊心の向上につながることが研究で示されています。
- 体重減少への貢献: エンドルフィンの分泌により、食欲が制御されることが示されています。
- 出産時の苦痛の緩和: エンドルフィンのレベルが高いほど、出産時の痛みが軽減されることが研究で示されています。
解剖学的知見
体内でエンドルフィンを分泌させるものには何がある?
エンドルフィンを分泌させる最も簡単な方法のひとつは、運動することです。運動すればするほど、体内のエンドルフィンの合成量は増大します。多くの人は、よく走った後に「ランナーズ・ハイ」を体感します。しかし、ランナーズ・ハイを感じるために走る必要はありません。エンドルフィンの分泌に役立つ他の運動には以下のようなものがあります:
- パワーウォーキング(しっかり腕を振って行う、早足歩行)
- 水泳
- ダンス
- ハイキング
エンドルフィンを分泌させるためには、他に以下のような方法があります:
- セックス
- 鍼治療
- マッサージ
- 食事
症状と障害
エンドルフィンが少ないと出る症状は?
中にはエンドルフィンが十分に合成されない人もいます。エンドルフィン不足の症状には以下のようなものがあります:
- うつ病
- 不安・焦燥感
- 体の痛み・苦痛
- 中毒症
- 睡眠の問題
- 衝動的な行動
エンドルフィンが少ないと、どのような健康状態になる?
エンドルフィンは体内でドーパミンの分泌を促進します。ドーパミンも神経伝達物質のひとつです。ドーパミンの分泌は我々の情緒に影響を及ぼします。エンドルフィンが不足している人は、うつ病の兆候を示すことがあります。これはドーパミンが不足しているためです。エンドルフィン欠如によるその他の影響には、以下のようなものが含まれます:
- 線維筋痛症:全身に慢性的な痛みを引き起こす疾患。
- 自傷行為: ストレスに対処するために、人は時にわざと自分を傷つけてしまいます。自傷行為によってエンドルフィンの急激な分泌が得られるのです。
- 運動中毒: ランナーズ・ハイの感覚に病みつきになることもあり得ます。そういった人は、毎日何時間も運動しています。
ケアする
エンドルフィン濃度を高めるにはどうすればいい?
身体は様々な方法でエンドルフィンを合成・分泌します。運動以外にも、次のような方法が可能でしょう:
- ダークチョコレートをひとかけ食べる。
- 芸術作品を造る。
- 好きな曲を演奏する。
- 鍼治療を受ける。
- 瞑想する。
- メッセージをもらう。
- アロマセラピーを試す。
- 友達と笑う。
- 好きなテレビ番組を見る。
- NPOでボランティアをする。
その他のよくある質問
エンドルフィンとドーパミンの違いは?
エンドルフィンとドーパミンは、どちらも人々を幸せにする体内の化学物質ですが、その働きは異なります。エンドルフィンは痛みを自然に和らげます。エンドルフィンが脳の報酬中枢(オピオイド受容体)に結合すると、それに応じてドーパミンが放出されます。
例えば、エンドルフィンはランナーの筋肉痛を自然に和らげてくれます。そしてドーパミンが分泌され、ランナーズ・ハイにつながるのです。ドーパミンは、何度も何度も繰り返し何かをする気にさせてくれます。つまり、エンドルフィンとドーパミンは協同して機能してくれているんですね。
セロトニンはエンドルフィンなの?
いいえ。エンドルフィンとセロトニンは、どちらも人々を幸せにする体内の化学物質ですが、その働きは異なります。セロトニンは気分や健康・幸福感を安定させる働きがあります。また、体内の他のシステムも上手く機能させてくれています。エンドルフィンは痛みを和らげたり、ストレスを和らげたりする働きに特化しています。
医療機関に連絡すすべきタイミングはいつ?
エンドルフィン欠乏症である以下のような症状がみられたら、すぐに医療機関に連絡してください:
クリーブランド・クリニックからのメモ
エンドルフィンは、痛みを和らげ、ストレスを軽減するために体内で分泌される、重要な化学物質です。また、精神的な健康・幸福感を高める働きもあります。エンドルフィンを増やす方法は沢山あります。新しいスポーツに挑戦したり、辛いものを食べたり、セックスをしたり、冗談を言って笑ったり、面白い映画を見たりしましょう。エンドルフィンのレベルが心配な場合は、かかりつけの医療機関にご相談ください。
…毎度やや冗長というか「同じこと何回言うねん」と感じることもままありますが、大変丁寧で分かりやすい記事ですね。
ズバリ、エンドルフィンというのは苦痛を和らげてくれることで気分の平穏をもたらしてくれる、ストレスの多い現代において大変重要な物質だといえましょう。
こちらは初出であり、クリーブランド・クリニックの記事では生化学的なことは一切触れられていなかったので、ウィッキー先生の力を借りて分子構造をチェックしてみようと思いますが……
…あぁ、そもそもの話ですが、エンドルフィンは解説記事で複数形になっていたことからも分かる通り、微妙に中身の違う兄弟分子が複数いまして、一番有名なのはここに挙げた「β-エンドルフィン」かなと思います。
四大幸福ホルモンとして挙げられるのも、ベータが多いですね。
そして、分子構造は↑のスクショ画像だとあまりにも小さくてよく分からない感じですが、特に構造式までは不要でしょう……しかしそう、名前を見れば明らかな通り(英語だから少し分かりにくいかもしれないものの)「チロシル・グリシル・グリシル・フェニルアラニル……」と、アミノ酸の形容詞形が連続していることから分かるように、これまたただアミノ酸がつながっただけの分子だったんですね!
こないだのオキシトシンが「9つのアミノ酸」でしたが、こちらは31アミノ酸で、ここまで長くアミノ酸がつながっていると、もうこれはタンパク質=プロテインと呼んでも差し支えない分子だといえましょう。
(もちろん市販のプロテインはもっと大きなタンパク質が中心であり、この31アミノ酸がこの通りに並んだ「β-エンドルフィン」というタンパク質は、恐らく含まれていないと思いますが…)
実際のアミノ酸配列は、三文字表記で、
「Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Thr-Pro-Leu-Val-Thr-Leu-Phe-Lys-Asn-Ala-Ile-Ile-Lys-Asn-Ala-Tyr-Lys-Lys-Gly-Glu」
であり、兄弟分子であるα-エンドルフィンは、
「Tyr-Gly-Gly-Phe-Met-Thr-Ser-Glu-Lys-Ser-Gln-Thr-Pro-Leu-Val-Thr」
(要は、ベータの最初16アミノ酸で切れてるやつですね)
そして、γ-エンドルフィンはこのアルファ型にロイシン(Leu)がくっついただけ(=ベータの最初17アミノ酸)ということで、やはり一番長いベータ型が一番重要な機能を担っているという感じのようですね。
オキシトシンのときにも触れましたが、アミノ酸がつながっただけのこの分子は胃でズタズタに消化されて小さなアミノ酸になりますから、これは経口摂取しても無意味になっています。
例によってサプリを検索してみましたが、案の定、関連商品である別の成分のサプリ(前回に続き、またネイチャーメイドの5-HTPが出てきて笑いましたが(笑))しか出てこなかったです。
とはいえ、(その他の神経伝達物質もそうですが)生化学実験では純品を使いたいこともあるため、試薬会社では純品を買うことも可能になっています。
化学・生化学試薬類の世界最大手、我らがSIGMAで検索したら、ちゃんと出てきましたね(↓)。
お値段ズバリ、1 mgで、494ドル…円安で騒がれている現在の為替だと、なんと約7万7000円!
1ミリグラムは、砂糖の小さじが1/3グラムぐらいとのことなので、小さじ1のエンドルフィンはこの約300倍ですから、まさかの小さじ1杯分で2500万円以上!!
Fuu~、そう考えると、我々は宝石にも近い物質を自分の頭ん中で作ってるとも言えるんですねぇ~。
宝石級の価値があるのみならず、物理的精神的どちらの苦痛も軽減してくれる素晴らしい物質……運動やその他健康的なアクティビティで誰でも脳内で分泌可能ですから、ぜひヘルシーさを保って、しっかりと合成していきたいものです。
では、いい加減しつこい気もするものの、何気にクリ・クリの医薬学まとめ記事もそこそこ話題が豊富なので、何か面白そうな物質があったらまたピックアップしてみようかなと思っています。