SBF誤植ネタの追加・改訂

既にこれまでの記事でちょくちょく触れていた点がメインになりますが、『青い花』考察本『That Type of Girl(そっち系のひと)』の誤植の章に、初版後いくつか新たに発見された誤り・おかしな翻訳や表現の項目が追加されています。

それに関してまずそもそも論として、原文では「Errata」というタイトルであるこの付録・その3にあたる章を、日本語翻訳の際に「誤植」と訳していたのですが、必ずしも、いわゆる誤植(タイプミス・打ち間違い=Typoの類)のみに限られた話でもなかった…というかむしろ意味をなさない純粋なタイポなんてたったの1つぐらいで、ほとんどは「翻訳の際に意味の取り違えが起こった上での誤り」という点でしたから、どうも、自分で決めておいて何ですが、この「誤植」という日本語タイトルは良くなかったかな…とずっと気がかりだったのです。


今回の追加分も、ほとんどが翻訳の解釈違いに起因するポイントであったため、今更ながらFrankさんに「変更いける?」と尋ねてみた所、幸いにしてまだ製本版の制作前で問題ないようで、普通に日本語版の該当タイトルは「正誤表」に変更しておくことにしました。

まぁそもそもErrataの日本語訳は「正誤表」が最も適当な語になるわけですけど、当初「いや『表』ってわけではないしな…」と思い、出版系のネタだし「誤植でいいかな」と要らぬアレンジを加えてしまったのが大元の原因だったわけですが、まぁこういう正誤箇所一覧のことを正誤表というわけですし、原点に戻った形ですね。

(※と思ったんですが、やっぱり「表」って何だかな…と思ったので、改めて、Frankさんに「再訂正いける?色々考えた結果、『正誤一覧』でいこうと思う」とメッセージを送っておきました。ということで、再変更で、これが最終案のはずです(笑)。)


なお、前回の改訂部分と今回の追加・改訂分は、言うまでもなくFrankさんの発行されるPDFおよび製本版にはしっかり収録されるわけですけど、僕のブログ記事の方は、今ここで変更点を述べているわけですし、元々どんなだったかの履歴を分かりやすくするためにも、以前、その部分を翻訳していた記事については、そのままにしておこうと思います。

全部が改訂されて最新になった情報を一覧で見られるのは、本家のPDFや製本版の特権として、そちらをご覧下さい、という形の方がきっと良いでしょうしね。

(というか、改訂前の本をお持ちの方には、改訂前の翻訳も一応存在した方が便利といえそうですしね、よく考えたら。
 今回のまとまったアップデート前に、適宜タイムリーに送られていた変更ポイントで、既にいくつか微妙に更新してしまった点もあった気がしますが、多分そんなに大きいものはないはずなので、ブログ記事で公開してあるほとんど全ては、英語版初版の翻訳になっていると思います。)

 

相変わらず前置きが長くなりましたが、メールでいただいていた追加段落の方の翻訳を、順に掲載していこうと思います。

(「誤植」改め「正誤表」改め「正誤一覧」章のどこに挿入された段落なのかは、別に重要でもないですし(単純に、ページ順ですしね)、前後の段落は省きましょう。

 なお、第三巻は「誤植などの問題はないようだ」という形でしたが、今回追加されたので、その文は削除・置き換えがされた形ですね。)

 

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「付録3:正誤一覧」への追加項目

英語版第一巻
SBF, 1:84、二コマ目:「But you'd make a hot heroine!」(日本語訳:「でも京子ならサービス要員キャラとかやれそうなのにねえ」。原文:「京子なら妖艶なお姫さまとかやれそうなのにねえ」)。日本語の原文(『青い花』(1) p.84)は、2:242(『青い花』(4) p.62)の一コマ目の台詞と完全に同一であり、京子が恭己の言ったことを思い出している場面を描いている。しかし、この同じ文章が、英語版では全く異なる意味で訳されている:恭己は2:242で、京子が「otherworldly princess」(「妖艶なお姫さま」)にもなれそうだと述べた形になっている。2:242の英訳の方が、日本語の原文の意味により近いように思われる。

英語版第二巻
SBF, 2:116、三コマ目:「She never thinks whether it’s right for her.」(日本語訳:「京子はそれが自分にも当てはまるとはまるで考えていないんだ」。原文:「それがそのまま自分にも当てはまるとはまるで考えていなかった」)。英語版の文では、恭己が、京子のことを念頭に置いた上で、そう考えていることが暗示されている。しかし、原文の日本語(『青い花』(3) p. 116)ではこの読み方は正しくなく、ちょうど京子が自分に向けてしていたのと同じように、恭己自身も各務先生に対して同じ行動を取ってしまっているという、恭己による自分自身への批判を表しているように思われる。翻訳の代替案としては、「I had no idea at the time that I was acting the same way.」(自分が同じような態度を取ってしまっていたとは、当時は思いもよらなかった)などが考えられるであろう。
 
SBF, 2:159、一コマ目:「You’ll forget all about her after graduation.」(日本語訳:「卒業したら きっとあの人のことを忘れてしまうわ」。原文:「卒業したら きっと忘れてしまうわ」)。日本語の原文(『青い花』(3) p. 159)は、2:171(『青い花』(3) p. 171)の三コマ目の台詞と完全に同一のものである。しかし、この同じ文章が、英語版では全く異なる意味で翻訳されている:後者の2:171では、「You’ll forget me after I graduate.」(「卒業したらのことを忘れてしまう」)と訳されている(太字強調は著者追加)。後者の方が正しい翻訳であるように思われる:つまり、2:159でも、織江は日向子に、日向子は自分(織江)のことを忘れてしまう、と言っているのだ。2:171で日向子は、河久保が日向子に「日向子は自分(河久保)のことを忘れるだろう」と言った後に、自分が織江に言われたことを思い出しているのである。


SBF, 2:265:日本語版の対応するページ(『青い花』(4) p. 85)では、全てのテキストが薄い書体で書かれており、これは日本語の漫画作品において、以前の会話シーンの回想を示すために使われる形式である。しかし、英語版では、前後のページである2:264と2:266と同じように、現在の会話に使われる通常書体でテキストが書かれている。

英語版第三巻
SBF, 3:175、一コマ目:「And Kazuo Ogatsuka came to help...」(原文:「…お手伝い 復帰してくださったオガツカヅオさん」)「Kazuo Ogatsuka」は「Kazuo Ogatsu」の誤りである。

SBF, 3:332、六コマ目:「Tengui Cloths」(原文:「てぬぐい」)。「Tengui」は「Tenugui」の誤りである。

英語版第四巻
SBF, 4:94、三コマ目:「Manjome」(家の表札)。「Manjome」は「Motegi」の誤りである。

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なお、英語版2巻=日本語版3巻若草物語、ヒナちゃんと織江お姉ちゃんと河久保さんの所ですが、こちらは、いただいた正誤訂正文章に誤りが含まれている、という面白い形になっていました。

まぁ間違っていたことをわざわざ報告するのもあれですが、別に晒し上げという意図ではなく、ここは結構解釈が難しい所で、ちゃんと読めてない方もいるかもしれないので、お気をつけいただきたい点かもしれません…という意味で、あえて取り上げておく形ですね。

Frankさんの当初の文章では、「卒業したらきっと忘れてしまうわ」の部分が「日向子の発言」と解釈されており、後半の説明文の織江と日向子が逆になり、またそれに伴って「日向子が言われた台詞」ではなく「日向子が言った台詞」と書かれていました。


ここは実際、吹き出しの形も発言者を指し示しておらず、ややこしいことはややこしいんですけど、少なくとも日本語オリジナルの台詞をちゃんと読めば、逆であることは100%断言できる形になっています。

実は、既に「英語版を読んでいて気になった点」シリーズの日本語版3巻の回で触れていたんですけど、改めて自分の説明を再引用しておくと、こういうことですね。

(原文に、括弧で補足を足しています。)

織江:「卒業したら(日向子さんは私のことを)きっと忘れてしまうわ」(悲しくてシクシク泣いている)

日向子:「そんなこと言わないで」(織江を慰める)


(泣き続ける織江、冷静に考えを巡らす日向子)


→次ページ


日向子:
「あなたみたいな(大げさに悲しむ)人が、案外あっさりと(人のことを)忘れるものよ」(極めて冷静な言葉を織江に投げかける)


織江:
「ひどい!」


なお、英語版だともしかしたらそうは読み辛いのかなぁ、とも思いましたが、追っての返信で、「そうだね、それが正しいと思う。私の書き間違いだったよ。英語版の方を訂正しておいた」というメッセージをいただいていたので、ややこしいけれどやはり英語版でもちゃんとそう読める形ですね。

いずれにせよ、英語版公式訳の、「卒業したら彼女(姿子先輩)のことを忘れてしまうわ」というのは、あまりにもおかしいミスというのには違いない感じですね。

この場面、いつだって冷静でクールなヒナちゃん先生と、ピュアで可愛らしい織江お姉ちゃんが描かれており僕はめちゃんこ好きなので、SBF公式翻訳のミスはちょっと残念というかもったいない所でした。

多くの人の目に訂正が触れてくれるといいですね。

 

という所で、これでほぼ完全に『青い花』考察本翻訳関連のネタは終わってしまいました。

もちろんまだFrankさんは作業中で、僕もいくつか手を貸している状況なんですけど、特にブログで触れることはもうなさそうかな、って感じですね。

次回からは、放浪息子の英語版で気になった点でも見ていこうかなと思いますが、まだな~んにも考えていないので、どうするかは未定です。

いずれにせよ、せっかくなので、もうちょい志村さんの作品ネタを続けさせていただこうかな、と思っとります。

『こいいじ』9巻、https://www.amazon.co.jp/dp/B07G12FV5Jより

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