いくつか更なる改訂を細々と&カバーデザインの裏話

前回までの五節(日本語版への序文西遊記やがて恭己になるなんとも…ややこしいタイトルの由来)で、新しく大きく追加された部分はおしまいでしたが、Frankさんからはいくつか他にも改訂部分をいただいていました。

細かい点も多いのでその全てには触れませんが、その内でめぼしいものを、せっかくなので「ここが新しくなりました」というお知らせの意を込めて、いくつか取り上げさせていただきましょう。

 

なお、これまでの記事で、「That Type of Girl(そっち系のひと)~第二版~」と勝手に書いてしまっていましたが、Frankさんからは明確に「(いくつか今後の予定との兼ね合いも含めて)私は第二版とは呼んでいないよ」というメッセージをいただいていました。

(といっても、「第二版と呼ばないでくれ」という意味のメッセージではなく、最初Frankさんのページでリンクが見当たらなかったとき、以前ブログ記事でも書いていましたが「『第二版はこちら』みたいなリンクがあるのかと思ってたから、既存のリンクが更新されていることに気が付かなかったよ!」というメッセージを送って、それに対する返事で、第二版とは呼んでいない理由に関する説明をもらっていたというだけですね。)

どうでもいい点ですが、一応公式には「第二版」ではない(メールの件名も、「That Type of Girl expanded edition(そっち系のひと、拡大版について)」という形でした)ことにご注意ください、という覚え書きでした。

 

では今回は順に、改訂された段落を取り上げていきましょう。

最初は名前に関する考察の章で、ちょうど、タイトルの由来でも触れていた部分ですね。

二箇所ほど加筆修正がありました。

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漫画はどんな名で呼ばれようとも

(旧翻訳)

(「青い花」という名前は)何か他のものへの言及なのだろうか?西洋文学で青い花について最もよく知られている例は、18世紀のドイツのロマン派詩人・哲学者ノヴァーリス(ゲオルク・フィリップ・フリードリヒ・フライヘア・フォン・ハルデンベルク)の未完小説『Heinrich von Ofterdingen』(英訳は『Henry of Ofterdingen』。※訳注:邦題はまさに『青い花)にて言及されているものである。

(新翻訳)
……ノヴァーリス(ゲオルク・フィリップ・フリードリヒ・フライヘア・フォン・ハルデンベルク)の未完小説『Heinrich von Ofterdingen』にて言及されているものである。英訳タイトルは『Henry of Ofterdingen』だが―この疑問により密接な関連のある点として―日本語タイトルは『青い花』と訳されており、志村の作品と同名である


(旧翻訳)

志村が『青い花』というタイトルをつけたとき、ドイツ・ロマン派の「blaue Blume」を意識したかどうかはわからないが、ヘンリーとマチルダの関係(およびノヴァーリスとソフィーの関係)に見られる年齢や身分の差は、『青い花』では否定されていることは確かである。

(新翻訳)
志村はドイツの小説家や詩人に親しみを持っているようなので(エピソードタイトルについての付録を参照)、彼女が作品タイトルを『青い花』にしたとき、ドイツ・ロマン派の「blaue Blume」や、特にノヴァーリスの小説を意識した可能性は十分あるだろう。しかし、私の考えでは、ヘンリーとマチルダの関係(およびノヴァーリスとソフィーの関係)に見られる年齢や身分の差は、『青い花』では否定されているように思われる。

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ノヴァーリスの小説「青い花」は、日本語タイトルが実は「青い花」という形だったという点に、考察本そのものでも触れるようになった感じですね。

それに伴い、一つ目の段落で触れていた「訳注」は省略しました。

 

続いては、「読書後に向けて」の章から、「ヘチマの花物語」の冒頭にて、今回の第二版加筆で一つ新タイトルが追加されたことに伴い、「最後の前の章」ではなくなったことから、いくつか修正がありました。

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ヘチマの花物語

(旧翻訳)

最終章の前座にあたる本節では、続く百合の現在と未来を展望していく節に先立ち、このジャンルを生んだ世界を今一度振り返って締めくくるとしよう。

(新翻訳)
本節では、このジャンルを生み出した20世紀初頭の日本社会の最後の振り返りとして、その社会を労働で支えた、知られざる少女や女性たちの物語を紹介しよう

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ちなみにこの「最後の前/前座」という点については、元の英文だと「penultimate」という初めて見た気がする単語が使われていたのですが、これはultimate(ウルティメート=究極の・最後の)という単語に接頭辞であるpenが付いたもので、pen-というのは「head(頭)」や「almost(ほとんど)」を意味する語ですから、これは難解そうに見えて案外分かりやすい言葉なんですね。

↓の接頭語辞典にもあるように…

www.etymonline.com
pendragon(ペンドラゴン=竜の頭、ドラゴンを統べる者)なんて、SF作品やゲームなんかで良く目にする気もします。

 

話は戻って改訂についてですが、あとはエリカ・フリードマンさんの本が初稿時点では発売日未定だったのが現在では既にリリースされたため、その部分の変更など細かい点は他にもいくつかあったんですけど、その辺は小さい改訂すぎるので省略するとして、あと他に大きな改訂だと「付録3:誤植」の部分になるんですけれども、そちらは結構大きく追加されていた部分だったので、また例によって記事の水増しのために、次回にまわさせていただこうかと思います。


なお、改訂以外にも、Frankさんは印刷版の単行本発刊にあたり色々と最後の詰めの作業をされていらっしゃるようで、僕も微力ながら日本語の点に関して口を出させてもらってるんですけど、日本語版はペーパーバックの本を出されるようで、その表紙のデザインチェックや裏表紙にある説明文の翻訳などを依頼された際、一点とても面白い点が目についたので、今回の記事最後に紹介させていただきましょう。

まぁまだ公開・出版前なので画像は貼り付けないで言葉だけの説明だけになっちゃいますが、デザインのPDFを見せてもらったら、全体的にとてもいい感じのナイスカバーだったんですけど、問題は背表紙の部分!

(ちなみにまた英単語豆知識ですが、メッセージを送る際、背表紙を英語で何といえばいいのか分からなかったので、「厚さは約1 mmになったよ」というメッセージをもらっていたことから「何て呼べばいいか分からんのだけど、例の1 mm厚の部分が…」と書いてメールを送ったところ、返事で、「その部分は英語でspineと呼ぶよ」という追加返信をいただいていました。

 spineというのは日本語にすると脊髄で、解剖学や生命科学に精通してる方ならスパイナル・コードとかでおなじみの語ではあるんですけれども、まさかの、本の背表紙のことを英語ではいわば「脊髄」と呼ぶとは!

 面白いですね。とはいえ日本語も、「背」表紙なので、やや近いのかもしれません。でも英語の「背中」はbackであり、back-coverというと「裏表紙」を意味しそうな気がしたため(というか確実に裏表紙)、当初Frankさんに送るメッセージでは何と呼べばいいのか分からなかった、という流れだったのでした。)

…と、話が逸れましたが、背表紙の部分は、当然縦書きになるんですけど、Frankさんのファミリーネームである「ヘッカー」が、いただいたカバーデザイン画像ではこのようになっていたのです。





これ、あまりにも当たり前で意識すらしていなかったんですが、そういえば教わらなきゃ、縦書きにした際、なぜか伸ばし棒だけ90度回転させなければいけないなんて夢にも思わないですよね。

しかし漢数字の「一」だったとしたらそれは回転させないわけで、非常に不思議に思えましたが(まぁ、よく考えたら、漢字の「一」に限らず、伸ばし棒以外は一切回転させないわけですけど)、「日本人なら(なぜか)100%絶対に犯さないミスだし、これは新鮮で面白い!」と思えましたねぇ~。

(もちろんバカにしてるわけではなく、当たり前と思ってたことだけどよく考えたら謎だなぁという面白さであり、実際僕も単語や文法どころか文字すら読めない例えばアラビア語への翻訳をするとして、このようなエラーを避けることなんてどう考えても絶対にできませんもんね。)


Frankさんには画像を使って説明しましたが、それに伴い、追っていただけた修正版では、

「他にも、『そっち系』の『つ』、それから『ヘッカー』の『ッ』が、上の文字との間隔がなぜか開きすぎており、おかしく思えたので修正しておいた。

 調整には非常に時間がかかったのだが、均等になったと思う。どうだろうか」

…というコメントで追加修正された画像をいただいていたんですけど、これも、「あぁ、そりゃそう思うよなぁ…!」と思える、非常に興味深い点でした。

 

いうまでもなく、Frankさんの修正により、縦書きでまさに「そつち系」「ヘツカー」と書かれているような印象の文字列になってしまっており、これはむしろおかしくなってしまったという形だったんですね。

なので、「そっかぁ、そう思うよねぇ。でも実は、「っ」と「ッ」(まさに「っ」のカタカナ版で、同じ文字)は、実は「つ」「ツ」の小さいバージョンであり、文字が等間隔に並んでいないように見えても、むしろそれで正しいんだよ、驚くべきことに!」という返信メッセージを送っておきました。

現時点では「なるほど、次回また改訂しよう。まだ、日本語版の最終ページ数が確定していないから、それが分かり次第、デザインも仕上げるとするよ」という段階で、追っての変更デザインは今の所まだ作製されていない状況ですね。


ただ、改めて最初にいただいたバージョンを見直してみても、Frankさんの使われている組版ソフトは日本語ネイティブのものではなく、恐らく縦書き機能とかはおまけ程度のもののようで、元々の縦書き文字列も、よく見たら若干違和感があるといえる感じだったかもしれません。

(画像がないと何のこっちゃかもですが、通常、小さい「っ」「ッ」は縦書きだとやや右下に配置されて然るべきだと思うんですけど、Frankさんのデザインだと何となくど真ん中に配置されている感じがあって、ちょっとしっくり来ないかな、って気がする感じですね。

 ちょうど、志村さんの作品に「おとなになっても」があり、この背表紙の「っ」が右下に寄っているのがよく分かる形だったので、これを送って「参考までに」と追加メッセージを送ろうと思います。)

 

では、次回は追加改訂項目の続きに参りましょう。

『こいいじ』8巻、https://www.amazon.co.jp/dp/B07B8BWT8Pより

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