青い花の同人誌『That Type of Girl』日本語訳その41:付録3・誤植

今回は、英語版『青い花』=Sweet Blue Flowers(SBFと略)でFrankさんが見つけた誤植についての章ですね。

なお、以前の記事でちょうど該当部分の画像(日本語版4巻の人物紹介ページ)を掲載していた時に触れていた部分、「上田良子さんの名前の秘密」について、これ実は英語版の脚注で触れられていた点らしく、Frankさんもこの点について考察をされていました(この記事の数日後ぐらいに、何となく終わりの方を見ていたらこの情報を目にして、「あ、Frankさんも触れてたんだ、というか、英語版には脚注があったんだ!」と思ったんですが、まぁまた後で触れればいいか、と思いそのまま放置していた感じですね(笑))。

ところがどうやらFrankさんは「地名のはずなのにバス停の名前だなんて、そんなバカな」みたいな感じに思ったらしく、これに関して別の推論をされていました(なので、この「誤植」の章で取り上げられていた感じ)。

追って、「『上田』という姓が地名でも使われ得るというのは日本人には常識なので、そうではなく、ここではフルネームの話をしており、バス停の話で合っているよ」とメールで説明した所、「なるほど」と納得され、該当部分は改訂版では削除するとのことです。

(一応せっかくなので、その段落の訳も載せておこうと思います。)


しかし一方、これまでの記事を見ていく中で見つけた「日本語版との相違」がいくつかあったので、そこは逆に改訂版で追加していただけるようです。

英語版のPDFでは改訂されていると思うので(FrankさんのウェブサイトのPDFにアップされているのは、まだ初版かもしれませんが)、メールでいただいていたそちらの部分の訳も追加しておくとしましょう。


今回は英語版の誤植ということで、元の英文も表記して、その英文の日本語訳の前に『青い花』日本語版の原文も載せる…などややこしい感じになってるかもしれませんが、まぁ見りゃ分かると思うので、上手いこと読んでいただければと思います(該当部分は、太字で強調などしておきました)。

 

恒例の記事トップを飾る画像は、こないだの『放浪息子』の裏表紙に戻りまして、英語版2巻は……

英語版『放浪息子』2巻裏表紙、https://www.amazon.com/dp/1606994565より

…え?これは、ニトリンじゃないですよね?

まさかの、我らが佐々ちゃん??

なぜ主役のニトリンを差し置いて佐々ちゃんなのか大変不思議ですが、あーちゃんの妹分にも思える佐々ちゃんなら誰からも文句はありませんね。

なお、英語版3巻はなぜかAmazonでは裏表紙が公開されていなかったので、3巻の画像は使えなさそうですが(まぁ、Amazonが公開していたら使っていい、ってのも、いやそれはおかしいだろ、って話かもしれないんですけど…)、調べたら3巻でようやくニトリン、そして4巻もまたニトリンという、謎が謎を呼ぶ順番だったものの、こちらは『青い花』英語版より更に豪華なハードカバーということで、コレクション用途に大変良さそう……ですが、Frankさんの記事でもそう書いてあった気がしますけど、まさかの、青い花が英語版だと全4巻だけど日本語版の全8巻をカバーしているのと違って、まさかのまさか、放浪息子は全15巻中の、ちょうど折り返し地点に過ぎない8巻時点で翻訳が止まってるってことなんですかね…??

en.wikipedia.org
…やっぱり9巻以降の英語版は、空白…!

これは可哀想過ぎる…!!

これだけの名作が途中で刊行ストップとか、そんなバカな話ある?…と思えるので、これは何とか翻訳版の続きが出てくれることを祈りたい限りですね。

『おとなになっても』は各国語版が刊行され続けているようなので、そちらを盛り上げるためにも、ぜひ放浪息子の翻訳版の刊行再開も心から願います…!

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That Type of Girl(そっち系のひと)
志村貴子青い花』に関する考察

著/フランク・へッカー 訳/紺助

 

(翻訳第41回:243ページから244ページまで)

付録3:誤植

ごくわずかではあるが、VIZ Media版(英語版)『青い花』に、いくつか誤りやその他の問題が存在するのを見つけた。ハイフネーションの問題(スペースの都合で、正しくない位置にハイフンが入る場合がある)は別として、以下が、本文における誤植と関連する問題の完全なリストと思われるものである。

英語版第一巻

SBF, 1:206(『青い花』(2) p. 10)、一コマ目:「But you're a principle character!(原文:先輩 主役じゃないですか)」この「principle」は「principal」の誤りである。

 SBF, 1:288(『青い花』(2) p. 92)、一コマ目:「Lots of families have attended Matsuoka since the Meiji period.」(原文:「それこそ明治の御世から代々…なんて人が少なくないもの ここは」→ 『松岡は』となってしまっている。)文脈を考えると、明らかに、松岡(Matsuoka)に言及するのではなく、藤が谷(Fujigaya)に言及すべきである。

 SBF, 1:337(『青い花』(2) p. 141)、三コマ目:「Interview with Kyoko Sugimoto.」(原文:「杉本恭己さんに聞く」→『杉本京子』となっている。)「Kyoko」は「Yasuko」の誤りである。

英語版第二巻

(※初版記載の段落)SBF, 2:358(英語版のみ収録の注釈ページ):上田良子の人物紹介(2:183/(『青い花』(4) p. 3))に「よく似た地名があった気がするんだけど 気のせいかなあ…」と書かれており、「わたしの名前で検索してみてね」と読者にアドバイスしている。そして、この巻末資料には、「岐阜県に、上田良子と同じ漢字を使いながら、発音の異なるバス停がある」と書かれている。

 私見では、志村は、日本語版Googleで「上田」という漢字を検索すると最初に出てくる、長野県上田市を指していた可能性が高いのではないかと思う。

(※改訂版記載の追加段落)SBF, 2:116(『青い花』(3) p. 116):恭己が心の中で、「She never thinks whether it's right for her.」(原文:「それがそのまま自分にも当てはまるとは まるで考えていなかった」→『あの子(京子)は、それがそのままあの子自身に当てはまるとは考えたことがない』という意味になっている。)と独白している。どうやら日本語版原典の台詞はこの解釈とは異なるようで、実際は、京子が自分に向けてしていたのと同じように、恭己自身も各務先生に対して同じ行動を取ってしまっているという、自分自身への批判を表しているように思われる。

英語版第三巻

誤植などの問題はないようだ。

英語版第四巻

(※改訂版記載の追加段落)SBF, 4:121(『青い花』(7) p. 119)、四コマ目:「Asuka Arai」これは日本語テキストの誤読と思われ、日本語版では「Tomoka Arai(新井香)」とされている。「Asu-」と「Tomo-」に対応する漢字は非常によく似ているため、このような誤読が起きたのであろう。

 SBF, 4:234-36(『青い花』(8) pp. 54-6): ここでは、英語版第二巻で日向子があきらの担任になるシーン(2:204-5/『青い花』(4) pp. 24-5)の台詞とアクションが繰り返されている。恐らく、英語版第四巻のページは、英語版第二巻の出来事の回想を意図しているのだろう。しかし、英語版第四巻の台詞の書体は、漫画の回想部で通常使われるスタイル(斜体、薄い書体)ではないため、不注意な読者には、この部分の出来事が現在起きていることであるかのように見えてしまう。

 これは、『青い花』の日本語版から引き継がれた誤りだと思われる。日本語版でも、回想の台詞には薄い書体が使われるが(『青い花』(8) p.51など)、上述の英語版第四巻234~36ページに相当する、日本語版第八巻54~6ページではそうなっていない。

 SBF, 4:262(『青い花』(8) p. 82)、一コマ目:「I'll be in the bathrrom.(トイレ行ってくる)」この「bathrrom」は「bathroom」のミスタイプである。

(※改訂版記載の段落)SBF, 4:271(『青い花』(8) p. 91)、三コマ目:「Atsushi Tanaka」これは日本語テキストの誤読と思われ、日本語版では「Atsushi Taguchi(田あつし)」となっている。「-中」と「-口」に対応する漢字が似ており、また、渡された記名済みの紙はシワクチャであった。これらの要因から、誤読が生じたと思われる。

 SBF, 4:336(『青い花』(8) p. 156)、六コマ目(※訳注:正しくは五コマ目):「Your friend is in the hospital, right? For appendicitis? How unfortunate…」(原文:「お友達入院ですって?かわいそうね 虫垂炎だって」)、4:337(次のページ)、一コマ目: 「How mean! She left her friend and came back alone!」(原文:「ひどいのよ こいつ 後輩に面倒押しつけて 自分だけ帰国して」→『友達を置いて』となってしまっている)」「No, I didn't! We came back together!」(原文:「ちーがうわ!いっしょに帰ってきたっつの」)この流れは、最もストレートな読み方で解釈すると、意味をなさない。

 「Your friend」という言及(SBF, 4:336(『青い花』(8) p. 156))は、上田が伝えた情報(4:338(2ページ後))によると、明らかに川崎のことである。また、「her friend」(英語版337ページ)というのも川崎のことであり、恭己は病気の川崎を一人イギリスに残してきたことを(姿子(?)から(※訳注:漫画では手しか描かれていないが、口調や話の流れから、これは公理であると思われる))非難されている、というのが素直な読み方である。

 恭己のこの発言だと、川崎も日本に帰国したことを示唆することで、この非難に反論しているように見える。しかし、後の上田の発言によると、川崎はまだイギリスで他の人の世話になっていることになっており、つじつまが合わない(英語版338ページ)。

 恭己への非難の言葉の日本語版原文を見てみると「後輩」(「年下」という意味)という言葉が使われており、これは上田を指していると思われる(『青い花』(8) p. 157)。要は、恐らく恭己が上田を一人残して(つまり川崎の世話をさせるために)日本に来たという非難なのだろうが、(恭己が主張するように)実際はそうではないのだ。これは、英訳が、日本語の意味をよく捉えていないケースなのかもしれない。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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最後の点、こないだの索引を訳している時に、「上田(?)」となっていた所、一瞬危うく「※訳注:実際は川崎であると思われる」と書こうと思ってしまったぐらいに、僕自身も混乱してしまったポイントでした。

実際にイギリスに残してきたのは川崎さんだけど、姉が非難しているのは「後輩(=上田さん)に、川崎さんの面倒を押し付けて一人で日本に戻ってきた」という形になっているので、かなりややこしい点なわけですが、Frankさんの指摘する通り、英語版の記述はその辺をごっちゃにしてしまっており、ややおかしい形になっていますね。


あとは同じ最終巻の回想の部分、これは確かに初読時一瞬「ん?」と思った記憶もありますが、明らかに分かるので(その前の話が回想=黒背景で終わっていることもあり)、まぁそこまで問題ないとは言え、やはりハッキリと回想スタイルの方が分かりやすかったとも言えるかもしれませんね。


そろそろ残りも少なくなってきましたが、続きも順番に進めていきましょう。

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