ビタミンB(後半6つ)と、飲んでた思い出

前回ビタミンB1~B6まで、ごく簡単に構造や多く含まれる食品なんかを見ていました。

続き、残る6つ(半分は欠番ですが)についても、ごく浅~い紹介で、とっとと終わらせちゃいましょう。


・ビタミンB7

ビオチン:生化学実験でもめっちゃ使う!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ビオチンより

もちろんビタミンB群ですから生体反応に必須の栄養素なんですけど、個人的には、実際に自分もしばしば使っていることもあり、生命科学系の研究で汎用されることでおなじみの物質です。

何に使われるか…というかこいつのどんな性質を活用するのかといいますと、ビオチンとアビジンの結合

このビオチンは、アビジンというタンパク質に、尋常じゃなく強い力でくっつくことが知られています。

分子を形成する結合ではない(=原子同士が手をつないで1つの分子になるアレではない)、単に分子同士が接触してくっつくパターンの結合においては、世界で最も強い結合の1つとなっているぐらいです。

一度ビオチンとアビジンを同じチューブの中に入れてくっつけてしまうと、熱を加えてアビジンをぶっ壊しでもしない限り、どうやっても離すことができない、超強力磁石みたいなものなんですね。
(アビジンはタンパク質=アミノ酸がつながった高分子で、(全てのタンパク質がそうであるように)特別な構造を取っている分子なので、熱を加えて高温にさらすと、その構造が壊れてしまいます。
 卵を加熱するとゆで卵になって状態が変わるのも、またタンパク質からできている人間がヤケドをすると、元には戻せないぐらいの傷を負ってしまうのも、それが理由ですね。)
(例によって、これを見ても別に何が分かるわけでもないけど、アビジンタンパク質の構造モデルがこんな感じ↓)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/アビジンより

具体的には、解離定数という「2つの分子がどの程度強く結合するか?」を表す指標があるんですが(単位M)、ビオチンとアビジンのそれは1 fM (フェムトM)、つまり10のマイナス15乗=0.000000000000001 M程度ということが知られています。

これは、数字が小さいほど強く結合することを意味する数字なんですけど、例えば「カッチリと強く結合します」と以前書いていた、抗原と抗体なんかですと、どんなに強い抗原抗体のコンビでも、大体1 nMが関の山といえますが、これでも免疫反応を余裕で遂行できるレベルのクソ強相互作用なのです。

つまり抗体ですら10のマイナス9乗=0.000000001 M(いや0並べても見辛いだけであんまり違いは分からん気もしますが(笑))程度の結合なので、ビオチン&アビジンは、抗原&抗体の100万倍以上も強く結びつくゴールデンペアなんですね。

その性質を使って、例えば自分の興味ある配列のDNAの末端にビオチンをくっつけたものを合成し、それをアビジンがくっついた樹脂(ビーズ)と混ぜることで「自分の気になるDNAが結合したビーズ」を作ってやり、そのビーズを細胞から抽出したタンパク質の懸濁液(=その細胞がもつ全タンパク質を含む)にぶち込むことで、いわばその「興味ある配列をもったDNA」を釣り針にして、そのDNA配列と結合するタンパク質を釣り上げることができる……みたいな実験なんかが、よくやられるわけです(釣れたタンパク質は、未知のものを探す目的だったら質量分析とかで解析する感じですね。もちろん、既知のタンパク質が釣れるか釣れないかを解析する類の実験としても、よくやられています)。

…って、いきなりそんな適当な説明をされても何のこっちゃよぉ分からんかもしれませんが、まぁアビジンが結合したビーズというものが各社から市販されているので(研究でよく使われるのは、ストレプトマイセス属の細菌が作るストレプトアビジンと呼ばれるものです)、そういうのを使うことで、ビオチン化DNAやRNAなどとともに、本当によく使われている手法なのです、という紹介でした。

(ビーズには、アガロースなんかがよく使われますね↓

www.cosmobio.co.jp
…関連商品に挙げられている、マグネットビーズ(磁性粒子)も最近はよく使われていますが、1ミリリットル=ほんの数滴程度で6万円とか、高すぎワロタって感じかもしれませんが、やっぱり研究試薬は化粧品もビックリなお値段といえましょう。)

 

一方生体内での働きに関して=栄養的には、画像の別称にあった通り古くはビタミンHという名前でも呼ばれていたように、これはドイツ語で肌を意味するHautからつけられていたものということで、特に皮膚の健康に関連するものとして知られています。

その名前からも明らかなように、欠乏すると、アトピーなどの皮膚炎になるといった症状がみられるとのことですね。

ただし、基本的に欠乏することはまずないとされている栄養素ではあるんですが、実は、生卵(卵白)には大量のアビジンが含まれることが知られており、上述の通りアビジンは超絶強い力でビオチンと結合しまして、アビジンと結合したビオチンは腸管から吸収されなくなってしまいますから、生卵を食べ過ぎるとビオチン欠乏症になる(可能性がある)ことが知られているようです。

ただし、上述の通り熱するとアビジンのビオチン結合力は失われるので、火を通して固まった卵なら全く問題ありません。

そもそも下に挙げられている通り、卵にはビオチンも含まれているので、生卵は食べ過ぎるとちょっと良くないけど(卵白には、ビオチンの比じゃなく、大量のアビジンが含まれているので)、卵自体は良いビオチン源であるという、何とも面白い感じといえるんですね。

多く含まれる食品(1食あたり):鶏レバー(生)(92.0 μg)、落花生(いり)(16.5 μg)、鶏卵 全卵 (ゆで)(13.8 μg)など


・(ビタミンB8)現在は欠番

イノシトール:これも、栄養というより、研究対象の分子な印象!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/イノシトールより

無駄にビオチンで長くなってしまったので、もうあっさり終わらせましょう。

「~オール」の名前の通り、OH基がついたアルコール(糖アルコール)の一種です。

ビタミンB8と呼ばれたこともあったようですが、今はビタミンBの定義からは少し外れるため、B群の一種とはみなされないことの方が多いように思います(WikipediaビタミンB群にも挙がっていません)。

度々お世話になってる栄養研のページには、ミネラル・ビタミン記事にはあった「多く含まれる食品」の情報はありませんでしたが、一応個別ページはあり、詳しい情報がまとめられています。

「・有効性」の項目から引用させていただくと…

俗に、「脂肪肝によい」「動脈硬化によい」「脳によい」「糖尿病によい」などと言われているが、人においては、多嚢胞性卵巣症候群強迫性障害、パニック症候群に対し有効性が示唆されているものの、うつ病統合失調症アルツハイマー病、自閉症には効果がないことが示唆されており、糖尿病性神経症に対してはおそらく効果がない。 

う~ん、「効果がない」「おそらく効果がない」と、証拠が明白でない効能は決して認めない栄養研、辛辣ぅ!

ま、ビタミンから降格されたこともあり、そんなに重要な栄養素ではない感じですね。

ただ、僕が大学院に入った頃、研究科全体の一番の大御所教授の研究テーマがこのイノシトール関連のことで、イノシトールイノシトール六リン酸(IP6)と聞くと、未だにそのビッグラボの先生のことを思い出します(やっぱり、講義で聞くのはその教授の専門のものが多いですし、耳なじみがあるという感じですね)。

まぁ栄養素としてはあんまり重要には思えないものの、イノシトールそのものは特に神経細胞で多くみられ、シグナル伝達(遺伝子スイッチみたいな、例のアレ)においてキー分子として働いているなど、研究対象としてはとても面白い物質といえるように思います。

ちなみにWikipedia画像の「myo-」とは耳慣れないな、って気もしますが、糖の構造でよくあった、OH基が上か下かで微妙に構造の異なる、立体異性体ってやつの一種ですね(立体配置の違いを区別するためにつけられる接頭辞)。

こいつは六角形全頂点が炭素ということもあり、結構な数の微妙に異なる立体バリエーションが知られている形です。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/イノシトールより

かなりどうでもいいですね。

…って、結局無駄に長くなった!…ま、残りこそは簡潔に……。


・ビタミンB9

葉酸:ほうれん草の葉っぱ由来!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/葉酸より

こちらも結構栄養成分表示で目にすることが多い気もする(B1, B2, B6, B12以外は、物質名で呼ばれることの方が圧倒的に多いですね)やつですが、めちゃくちゃメジャーっぽい名前である割に、意外と複雑な構造である(ため、高校化学・生物では触れません)ゆえ、何となくマイナー感ある化合物かもしれませんね。

しかし、大学の生命科学の講義ではビシバシ出てくるもので、還元されてジヒドロ葉酸DHF)になり、さらに還元されてテトラヒドロ葉酸THFやTHFAと略記)と呼ばれる形で働いている補酵素であり、アミノ酸代謝核酸ヌクレオチド代謝にて激クソ重要な役割を果たしています。

…が、まぁ詳しい話はてんで面白くもないし、深追い不要でしょう(アビジンビーズとかはちょっと詳しめに書いてたのに何やねん、って話かもですが)。

ま、もっと浅くて多少は面白い名前の話だけ触れておくと、そもそもほうれん草の葉っぱから得られたので葉酸という名前が付いたわけですが(英語ではfolic acid、ラテン語で葉っぱを意味するfolium由来)、ビタミンB9に分類される以外に、別名ビタミンMとも書かれていますね。

これは何かと思いきや、英語版Wikipediaによると、まさかのサルで行われた葉酸の研究にちなんで、MonkeyのM!…ま、ビタミンモンキーとか意味不明すぎるので、ほぼ使われていない呼称ですね。

生理学的側面としては、もちろん超重要な反応の補助を担ってはいますけど、葉酸の欠乏症はそんなに注意喚起されていませんし、例によって通常の食事をしていればあまり不足を心配する必要はないのかもしれません。

でも、特に妊娠期の女性では必要量が増えることもあり(やっぱり、赤ちゃんのために、アミノ酸やDNAをたくさん合成する必要があるからでしょう)、しっかり摂るようにした方が良い、といわれていますね。

食品パッケージの成分表示に掲載されていることが多いですし、多少は意識してもいいポイントかもしれません。

多く含まれる食品(1食あたり):鶏レバー (生) (520 μg;例によってレバー生は、鶏・牛・豚どれも大量に葉酸を含んでいます)、玉露(浸出液)(225 μg)、なばな (ゆで) (120 μg)、フォアグラ (ゆで)(88 μg) など、発見されたほうれん草以外にも、動物性食品・植物性食品どちらともより多く含むものは結構あるようですね。


・(ビタミンB10)現在は欠番

パラアミノ安息香酸:今見たばかりの、葉酸の一部!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/4-アミノ安息香酸より

よく見ると葉酸の構造の中にはこいつがいたように、酵素の力で葉酸に誘導される分子ですね。

必須なのはあくまで葉酸であり、これ自身は必須ではないとのことで、こちらも必須栄養素であるビタミンからは降格させられたようです。


有機化合物の名前の復習にちょうどいい(パラ位アミノ基がついた安息香酸、それぞれ記事で色々見てましたね)だけのザコ物質といえましょう。

(一応、PABAという略称で日焼け止めでも使われていたものの、皮膚ガンを誘発する危険性が叫ばれるなど安全性の問題から、今では別の物質に取って代わられたという、まさしくクソザコ物質ですね。
 もちろん誘導体は生体内でバッチリ使われているので、大切な分子であることには違いありませんが。)


・(ビタミンB11)現在は欠番

サリチル酸:欠番11番も、まさかの超有名有能物質!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/サリチル酸より

B4のアデニンも意外でしたが、まさかのサリチル酸までビタミンだったなんて!

この記事で見ていた、アスピリンサロメチールになる、有能なあいつですね。

正直、ビタミンが発見された頃はもうサリチル酸なんてとっくに知られてる物質だったでしょうし、なぜビタミンB11なんぞに分類…?と疑問もありますが、一応欠番情報は、この記事(↓)を参考にした形です。

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https://lauriegoldmanmd.com/2020/03/11/long-lost-b-vitamins-b4-b8-b10-b11/より

こんな有名物質がビタミンに分類されてしまっていたことは黒歴史なのか、あえてVitamin B11と並べて検索をしないと、Wikipedia等普通のお記事にはサリチル酸がビタミンB11だったという記述はどこにもされていないですし、軽く調べた限り特に歴史も見当たらなかったですね。

まぁ、ビタミンに分類されなくても重要物質には変わりありませんし、その辺はどうでもいい点といえるでしょうか。


ビタミンB12

コバラミン:ビタミンB群のトリを飾るはこれまでで一番複雑な物質、ちゃっかりミネラルも含むよ!

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https://ja.wikipedia.org/wiki/シアノコバラミンより

金属元素コバルトを含むことから名付けられたコバラミン、構造の真ん中ぐらいに、ちゃんとCo原子が存在しますね。

そのCo原子のすぐ上に付く官能基の違いによってコバラミンにはいくつか種類があり、最もメジャーでビタミンB12の代表格は、画像の通り、シアノ基CNがついたシアノコバラミンのようです。

シアノ基は、以前この辺の記事でちょっと触れたことがありますが、青酸カリのシアノ基ですし、そんなのがあって大丈夫なん?という気もするものの、KCNと、これだけ大きい化合物の中にあるCNとは全然性質も違うので、別に全く問題ないという感じですね。


まぁ、ビタミンにしてはひたすら大きい分子ですが、こいつは主に先ほどのビタミンB9・葉酸の生合成に働く物質として知られています。

もちろん他にも特にアミノ酸代謝なんかに深く関わっており、ビタミンB6と並び、ビタミン剤でよく名前を見る、代表的なB群メンバーといえる気がします。

多く含まれる食品(1食あたり):しじみ(生)(34.0 μg)、あさり缶詰(水煮)(25.6 μg)、ほっきがい(生)(24.0 μg)など、貝類の独擅場!
 この後にはレバーやさんまも挙がっていましたが、植物性食品の方は、焼きのりと味付けのりの1.7 μgという2つが挙げられているだけの、ゴミレベル!圧倒的に動物が多く含む栄養素ってことですね。

 

…以上でビタミンB群について一通り見終えましたが、繰り返し書いていた「B6とB12は、ビタミン剤のパッケージでよく見ますよね」というのは、何気に、このCMが強く印象に残ってるからかもしれません。

毎日TVしか見てなかった元TVっ子としては、今でも本当によく覚えている、たけしさんのこれですね、「Bと、タケシと、エスファイトー!!」

www.youtube.com

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これ以外にもいくつか別バージョンがありましたが、どれもよく覚えてますねぇ。

ビタミンB1・B6・B12」と、なぜかB1(ワン)だけ英語ですが、そのせいで僕もそう呼んでる気がします。どんだけエスファイトゴールドに影響受けてんだよ(笑)。
(…って、この並びならCMにつられてそう呼んでも、単独なら「Bイチ」と呼んでる気もしますけどね(笑))

しかし、このCMが流れている頃はまだ小さい子供だったので、エスファイトを買ったことはありませんでした。

代わりに、ビタミンBといえば、ジュディマリYUKIさんが、何で語ってらっしゃったか忘れましたけど(特によく見たのは活字だったように覚えてるので、何かのインタビュー記事とかがメインな気がしますが)、ことあるごとに「チョコラBB飲めばいいんじゃない?」「チョコラBBは神」「チョコラBBを飲めば人生が全部解決するから」みたいなことを(CMで起用されてたわけでもないのに)おっしゃっており、(自分でいうのも何ですが)肌は割とキレイだったけれど流石に高校生とかの頃はたま~にニキビができていたこともあり、大学に入って一人暮らしを始めて栄養に不安があったことから、「YUKIがいうなら間違いない!」と、以前記事で書いていた、講義でおすすめされてマルチビタミンを買い始める前の頃に、そういえばチョコラBBを買いに薬局(最寄駅前のサンドラッグ)にいったことがあったのを思い出しましたねぇ~。

ちなみになぜ薬局まで覚えているかというと、チョコラBBを買いに行ったのに、店員のお兄さんに「こっちの商品の方が、成分はほぼ同じなのに、小さい会社で宣伝に費用をかけてないから、圧倒的に安いですよ」と、まさかのチョコラBBを買いに行ってレジにまでもっていったのに売ってもらえなかったということが強く印象に残っているからですね。

販売元のエーザイからしたら「っざけんなよ(笑)」と思えるかもしれませんが、顧客のことを考えて素晴らしいアドバイスをしてくれる、優良店員さんでした。

当然、僕はいわれるがままにその弱小会社から出ている安い方を買いましたが、マルチビタミンを買い始める前まで、その安いやつを何度か買って、ちょいちょい飲んでた記憶がありますねぇ~。

もちろんそれだけが全てではないので、特に未成年の頃はチョコラBBのパチモンを飲んでもごくたまにニキビができて苦しんだりもしていましたが(今はもう、逆に若さが失われたせいか、全くできなくなっちゃいましたけどね)、飲まなかった頃よりは明らかに良い、効果の実感できる素晴らしい栄養素(サプリ)とはいえるように思います。

 

…と、ビタミンCまで終わらせようかと思っていましたが、無駄に長くなっちゃいました。

次回はまぁ順番的にもビタCですが、これはもう以前関連記事でチョロッと書いたこともありますし、語る話もない気もしますね。

速やかにビタミンを終わらせちゃいたい限りです。

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