これも大きいよ、PG5にシガテラ毒素!

前回は、「分子って結局何だよ」って話から、「この世で一番大きい分子は何だろう」という疑問について考え、現状、あらゆる生物の中で最も大きなDNAを持っていると思われる、キヌガサソウなる白い花のオシャレなやつを紹介していました。

 

とはいえDNAは、A, C, G, Tという4種類の塩基が繰り返しつながっただけで(概算ですが、キヌガサソウの染色体は、40億個もの塩基が結合した、ひとつながりの巨大分子だと思われます)、正直、

「何かそんなのズルいっていうか、ただ小さいものがいっぱいつながっただけで元はザコじゃん、そんなのを王者とは認めたくないね」

…と思えるような気がするかもしれません。

 

まぁそもそも「一番大きい分子」とかクソほどどうでもいい、これっぱかしも気にならねぇよ……って話だと思うのでズルいも何もないんですけど(笑)、せっかくならこう、チマい分子を1つずつ繋げただけで大きくなったようなエセデカブツなんぞではなく、それ自身が何というかアイデンティティを持った巨大分子みたいなものに、一体どんなものがあるのかも見てみたいものです。

 

そんなわけで補足として、アホみたいに横につながり続けただけのDNA分子のようなセコ技で長さを稼いでいるやつではなく、デーンと鎮座するタイプの巨大分子を、今回まずは探索してみるといたしましょう。

 

といってもそんなのは検索して出てきたものを賢しらに貼るだけのしょうもない話なんですけど、「largest molecule」で検索したらサクッと出てきました、どうやら現在「世界で最大の分子」といえる物質は、チューリッヒ工科大学で合成された人工物、PG5という分子のようですね!

 

en.wikipedia.org

 

https://en.wikipedia.org/wiki/PG5_(molecule)より

例によって炭素の鎖(主役なので、画像からはただの折れ線みたいに省略されていますが)をメインに、ベンゼン環やらたまにOやらNやらなんかがある、いわゆる有機化合物になるわけですけど、こちらは約2000万個の原子がつながって出来たもので(もちろん全て共有結合で)、分子の体重すなわち分子量は、おおよそ2億 (g/mol) ということで、1モルあたり2億グラム=20万kg=200トンもの重さということになりますけど、まぁ「モル」って個数があまり想像しづらいので全く何の感動もないのが残念ではありますが(笑)、水素分子は1モルあたり2グラムなので、水素ガスの1億倍の重さ……ってこれも結局、全然驚きも「へぇ~」感も一切ないですね(笑)。

 

ただ、この構造を見て、「いやだいぶ広がってて色んな原子がついてる分子だけどさ、でも、2000万個も原子あるかぁ?」と思えたんですけど、下の方をよく見たら、どうやら実際の分子はこの画像の構造が1万600個つながってできているもののようで、結局こいつも「この扇形のようなものが大量につながっている、同じものの繰り返し」といえる、な~んか騙された気がするぜぇ~と思えるやつだったかもしれません。

 

そもそも結局有機物=炭素が基本の物質って点でDNAと近いというか、「人工物ならもっとこう、何かメカメカしい巨大物があるんじゃないの?」という気もするかもしれないんですけど、「分子」の定義が「共有結合でつながったもの」であり、「金属」というものは、あれもある意味境目がなく「ひとつながりの物質」といえるわけですけど、あいつらは「金属結合」でつながった物質になりますから、基本的に金属がつながってできた物質は「分子」とは呼べないんですね。

 

つまり全く同じ理由で、実は食塩=塩化ナトリウムNaClも、これはイオン結合で生じる物質であり、正確には「分子」ではありません。

 

ナトリウムは金属なので、基本的に金属が絡むと分子ではなくなりますから(もちろん分子の端っこや真ん中に金属原子が鎮座することはありますけど、メインの構造として沢山つながることはない)、分子といえば自動的に有機物が基本になるというのが筋であり……

もちろん炭素以外の元素がつながってできた分子もありますが、炭素というのは共有結合を作れる腕が4本もあるため、幅広く広がりやすい・伸びていきやすい性質があるので、生物は炭素を軸に生体分子を作っている……というか、それを選んだ生物がこの地球上で天下を取った、っていう流れの方が正確かもしれませんけれども、複雑な機能をもつ高分子の主役は炭素であり、自然、超巨大分子も炭素がメインの有機化合物になる、という形だといえましょう。

 

何だか取り留めもない話で内容が前後していますが、PG5に戻ると、サイエンスニュースの集まるPhys.orgというサイトで、この分子が合成されたという報告のニュースとともに、原子間力顕微鏡を用いてこの分子の姿を捉えた画像も掲載されていました。

それがこちらで(↓)…

https://phys.org/news/2011-01-giant-molecule.htmlより

筒状の物質がタバコモザイクウイルスというウイルスで、PG5がウイルスに抱き着いているような感じの面白い顕微鏡写真が撮れたと研究者らは興奮していたようですが、まぁ「ウイルスと同じぐらいの大きさ」と言われても、「いやウイルスの大きさなんて分からんし…」と、これもぶっちゃけ別に何の感慨も感動もないのが残念な所かもしれませんが(笑)……

そんなわけで流石に肉眼では見えないものの、ウイルスという、それだけで人間に感染して病気を引き起こすような高機能な物体と同じ大きさの分子だということで、これは相当の大きさだといえましょう。


…しかし、「だから?こいつは何なん?」という話でもあるわけですが、どうもこの分子自体に大した意味はなく、「巨大生体分子(やウイルス)に匹敵する大きさの安定分子を人工合成するのは、有機化学者の夢である」というそんな前置きから↑の記事も始まっていた通り、どうやら、

「安定した構造の巨大分子を合成できたというそのこと自体に価値がある。将来、この合成法を、分子工学や創薬の分野に応用できるであろう」

…みたいな結論のニュースというか論文だったように見受けられますけど、実際DNAを人工合成しようと思っても、ある程度の大きさのDNAであれば楽に合成できるものの、キヌガサソウの染色体ぐらい大きなものを作るのは今の技術では全くお話にならないぐらい不可能ですから、これだけ科学技術の発展した今でもなお、「生体分子が生体反応で合成する分子」の方が、遥かに正確で、複雑で、場合によっては大きなものも合成可能なんですね。

 

…と、「場合によっては」と書いた通り、一応、(単に同じものをつなげただけではなく、独立した物質といえるもので)大して意味ない安定存在型の分子であれば、PG5が世界で最大のものなので、大きさだけなら「天然分子よりも人工分子の方が大きいものがある」ともいえる感じで…

(でも改めて、重合分子を認めるならば、40億塩基が一列につながったキヌガサソウのDNAの方が、PG5よりも桁違いで大きい(長い)分子ですけどね)

…例えば、構造が判明している中で最大の天然有機化合物は、マイトトキシンという、名前からも推測できる毒素のようで……

ja.wikipedia.org

 

…サムネにも一部表示されている芋虫のようなボールモデルはまぁ何の情報もないのでまた構造式をお借りすると…

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/マイトトキシンより

…と、これも似たような六角形リングがドドドっと並んでるばっかりですけど、とはいえ必ずしもDNAのように「構成単位の物質を単純に並べただけ」という、いわゆる重合化合物ではなく単独存在型の大きな分子といえますから、これが真の最大分子(天然もの)といえるのかもしれませんね。

 

億や何千万という数が出てきた「繰り返し型」分子とは違い、こちらは炭素164個、分子量は3422という小ぶりな分子になりますけど、改めて、アイデンティティがある(=「全く同じものがいくつも繰り返し並んでるだけ」みたいなわけではない)分子としては、天然に存在するものだとどうやらこれが最大級で、「フグ毒として有名なテトロドトキシンの約200倍の強さ」という、意外とヤベェ奴のようです。

 

そもそも魚介類由来の食中毒「シガテラ」研究から見つけられたものだそうで…

 

ja.wikipedia.org

 

…全然関係ないですけど、「稲中卓球部」で有名な古谷実さんの作品で僕は「シガテラ」が一番好きなので、流石は古谷さん、目の付け所がビッグですなぁ…などと、しょうもないまとめで、今回も予定とは違う脱線ネタのみで記事を見繕ってしまった形でした。

 

次回はまた、(そもそもそれも本題でも面白話でも何でもないものの…)コンデンシンからのネタに戻っていこうかなと思っています。

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