一番でっかい分子は何?

前回の記事では、DNAが染色体構造を取るときに働くタンパク質(正確には、複数のタンパク質分子が集まってできた、「タンパク質複合体」ですが)「コンデンシン」と呼ばれるものを、ごくごくサワリのみ、むしろタンパク質分子というものが実際どういうものなのかを、またまたあの謎のリボンモデルと絡めて見ていた感じでした。

 

これに関して、ちょっと補足というか脱線で広げられそうなネタを思いついたため、今回はそちらに触れてみようと思います。


そのネタに逸れるために、前回も貼った5つのタンパク質分子が描かれたイラストを再度貼らせていただきましょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/コンデンシンより

…と、まずその前にまた別の補足ネタから触れてみますと、何度も「タンパク質分子」と気軽に「分子」呼びしているわけですが、

「そもそも分子ってのが何だかんだで結局イマイチよぉ分からん……このコンデンシンとやらは『5つのタンパク質分子』って言ってたけど、なぜ1つの分子ではないわけ?」

……と気になる方が、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。

 

これに関しては、分子というのは「ひとつながりの物質」であり、上記コンデンシンを形成する5分子は、単に互いに接触して弱い力でくっついているだけで、「つながっている」わけではないので別の分子とみなされるわけですね。


とはいえそう書いても、「いや、『つながる』って何だよ、『くっついてる』と何がどう違うんだよ」という疑問になるのももっともなんですけど、まぁこれは分かりやすく説明するのが中々難しく、一言でいうと「共有結合をしていること」以外の何物でもないのですが……

 

共有結合に関しては、割と最近……と思ったら、もうすぐ1年経ちそうな勢いで時の早さに唖然としましたけど、原子とか分子とか電子とかを見ていた一連のシリーズで触れたことがありました(↓)……

 

con-cats.hatenablog.com

 

…そう、「2つの原子が、電子を共有することで作られる結合」のことで、この辺の話は化学を学んでいないとどうしても理解することが不可能なレベルで、「はぁ?訳わからん、イミフすぎて腹立ってきた、もうえぇわ」となってしまいがちな話なのが残念なのですが……

 

いずれにせよ、上記5種類のタンパク質分子は、20種類のアミノ酸が、前回実際具体的に配列も示していたような並び方で順番に、「ペプチド結合」と呼ばれる共有結合の一種でつながってできたものですから(ペプチド結合は、「-COOH」と「-NH2」とから「H2O」が取れることで「-CO-NH-」という結合が生まれるものになっています)、これはまさしく「アミノ酸共有結合でつながった分子」なんですけど…

上記5つの分子同士の間には共有結合はなく、あくまで別の、異なる独立した分子同士が弱い力で寄り添いあっているだけなので、例えば熱を加えたりpHを変えたりして、環境が大きく変われば簡単に離れてしまうものになっている形です。

(一方、分子はちょっとやそっとの力では切断されず、ひとつながりの物質のままでいられます。もちろん、過酷な条件では、分子が切れることもありますけどね。)

 

まぁその「弱い力」ってのも「何だよそれ」って話かもしれませんが、これまた共有結合以上に聞いてもよぉ分からんものになってるわけですけど……

…例えばちょうどこないだも「DNAの二本鎖形成で使われる力」として出てきていた水素結合とか、あとは「ファンデルワールス」という、高校化学でも名前だけは登場するし頻出してくる割に、原理は極めて難しいのでただの呪文のように「分子間に働く力として、そういうのもある」という話に落ち着くものなんかもありますが(参考:ウィキペディア(↓))…

 

ja.wikipedia.org

 

…まぁ初見だと「カタカナの並び」に見えて「わーるすか」と読めてしまうかもしれないものの最後は漢字の「力」なので「ファンデルワールスりょく」なわけですが、名前はともかく、こちらは、

電子や電気の偏りに依らない(一方、共有結合も水素結合も、「電子の偏り」が重要なポイントです)もの

…であり、ある意味「分子の間に働く引力」みたいなものですけど、まぁ詳しいことは僕も完全には理解できてないレベルなので…

(実際、巨視的には電気的な偏りがないものにも働くものの、微視的には電子より更に小さいレベルでの「電気双極子モーメント」のゆらぎによってどうちゃらこうちゃらと↑のウィ記事にも書かれている通り、究極的には電気の力の一種といえなくもない気もするものの、まぁ一般的には「電気的な相互作用には寄らない力の一種」と考えられるものですね)

…死ぬほどどうでもいいというか細かすぎるのでその辺は気にしない方がいい…という感じで説明は放棄したい所です(笑)。

 

いずれにせよ、「分子」に関して言えば、

「分子って小さいものじゃないの?あんなアメリカンクラッカーみたいなやつも分子って呼んでいいわけ?」

なんて感じの疑問を持たれる方もいらっしゃるかもしれないものの、これはもう、先述の定義の通りで、共有結合でつながったものは全部「分子」ですから、例えばわずか3つの原子から成る水分子「H2O」が分子なのはもちろんのこと…

(HとOが2本の共有結合でつながっています。まぁそれより小さい、最小の分子は水素原子がお互いに共有結合でつながった水素分子H2ですけどね)

…タンパク質としてつながる前の構成単位「アミノ酸」も、「グリシン」「アラニン」…などなど20種類ありますけど、そもそもこいつらも全て分子といえますし、このアミノ酸分子がつながったタンパク質も、これまたより大きな新しい「分子」を形成する…と、そういう話なわけですね。

 

繰り返しですが、アミノ酸1分子は、炭素原子C、水素原子H、酸素原子O、窒素原子Nと、あとは一部硫黄原子Sもありますけど、こいつらが全て共有結合でつながったものなので「分子」であり、さらにこのアミノ酸分子がペプチド結合(上述の通り、具体的にはCとNの間に新たに生まれる共有結合のこと)でつながっていくのがタンパク質でになるわけですが、当然これも新しい、より大きな「分子」が生まれるということで、結局分子ってのは共有結合を新しく別の分子と形成することで、いくらでも大きい分子になり得るわけですね。

 

分かりやすい超巨大分子でいえば、まさに、4種類のヌクレオチドの内1つずつが、リン原子Pと酸素原子Oの間で形成する結合(名前はホスホジエステル結合でした)がひたすらつながっていくDNAなんかですと、A, C, G, Tの4種類の塩基が延々とつながっていく結果、人間の最大の染色体である1番染色体は(大きさ順に番号が振られているので、1番が最大最長です)、実に約2.5億個のヌクレオチドが本当にズラーっとつながり続けてできた1つの巨大分子ですから、クソデカの極みなわけですね。

 

(普段はヒストンやそれこそコンデンシンの力で上手いこと縮こまっているものの、この2.5億塩基のDNAを一直線に伸ばしてやったら、実に2メートル程度の長さになるってんですからその凄まじさは明らかといえましょう。)

 

…と、ふと「ヒト1番染色体もデカいけど、一番デカいDNAってどんぐらいの長さになるんだろう?」と気になったので早速調べてみた所……

「(1本の)染色体」ではなく、「その生物の持つ全染色体」=「ゲノム」の大きさでの質問しか上手いこと目に付かなかったのですが、我らが匿名質問サイトQuoraに、そのものズバリの回答がありましたね!(↓)

 

www.quora.com

 

こちらを参考にさせていただくと、何と世界中の全生物で最大のゲノムを持っているのは、我らが日本に生息する雑草、学名Paris japonica(パリなのかジャパンなのかどっちや、って感じですが(笑))の、和名がキヌガサソウという、まさかの植物!

 

ja.wikipedia.org

 

まぁ何気に動物より植物の方が染色体の数が多かったりゲノムサイズが大きかったりするのはよく知られていることなのでそこまでの驚きでもないのですが、その大きさ、実に149ビリオン=1490億塩基!!

 

とはいえこれは全染色体の合計サイズで、キヌガサソウの染色体数は2n=40と、40本の染色体(ただし、「八倍体」の生物とのことなので、5種類の染色体を8本ずつ持っている変なやつですね)で、1本の染色体サイズは……マイナー生物であるからか、まだ全ゲノム配列が解明されたわけでもないようで、詳しい情報は見つからなかったものの、まぁ40本で約1500億塩基ということですから(人の場合は46本で約30億塩基で、1番大きい1番染色体が2.5億塩基でした)、大体一番大きいのだと1500億を40で割ったのよりも少し大きい、1染色体で40億塩基ぐらいの大きさでしょうかね。

 

まさかの、染色体1本が、ヒトの持つ全遺伝子DNAよりも大きなサイズという、「そんなにデカいのに、雑草としてひっそり咲くしか能がないんすね(笑)」と思えなくもない感じかもしれませんけど(笑)、まさに「遺伝子の数・大きさ」と「生物としての大きさ・複雑さ」との間にはそこまで関連性がない…ということの好例といえるかもしれません。

 

…と、実は元々考えていた脱線ネタは全く違う話だったのですが、最初の前置きでふと触れてみた「分子」ネタが意外なほど伸びてくれました。

 

そんなわけで今回は「分子とは何か」から、超巨大分子にまで花を咲かせましたが……あぁ、アイキャッチ画像が特になかったので、無駄にDNAを持ってるキヌガサソウさんの、↑のサムネ画像よりももっと花が開いて美しい画像を同ウィキP記事からお借りさせていただきましょう。

https://ja.wikipedia.org/wiki/キヌガサソウより

では、元々触れようと思っていた別ネタは、また次回見ていく形にしようかなと思います。

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