ビタミンA:光を吸収して色をもたらす、とても大切な栄養

五大栄養素の内、三大栄養素以外のサブキャラであるビタミン・ミネラルについて、ここ何回かの記事でミネラルについては一通り見終え、前回からビタミンの話を始めていました。

ビタミンについても、我らが厚労省監修の日本人の食事摂取基準(2020年版)を参考に見ていきたいと思いますが、何気に以前サプリメントの記事で触れたことがあった通り、ビタミンには大きく分けて水溶性脂溶性の2つのグループが存在します。

長々とやってきた有機化学入門講座が何となく役に立つ日がついに来た感じで、結局、水溶性というのは-OHとか-COOHとか-NH2とか、何かそういう炭化水素以外のいわゆる電離しやすい官能基がからんで水に溶けやすくなったもの、一方脂溶性というのは、炭素と水素の鎖がビヨーンと伸びてるのとかベンゼン環とか、そういう炭素と水素ばかりで水になじむ成分がなさそうなもの(専門用語で非極性とかいいますが、まぁそんな用語はどうでもいいでしょう)であると、そういうイメージですね。

ビタミンとしてはっきり具体的な物質まで明らかになり重要視されているものとして、上記日本人の食事摂取基準では脂溶性4種類・水溶性9種類の計13個が挙げられていました(他にもマイナービタミンはありますが、そもそもビタミンに含むかどうかが議論されるレベルのものがほとんどなので、そんなやつらは無視してOKでしょう)。

例によって、医薬基盤・健康・栄養研究所の解説記事が、全く同じように13種のビタミンをまとめてくれていましたね。

こちらの方が分かりやすい表になっていたので、こちらを引用しましょう。

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https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail178.htmlより

結局前回も書いた通り、ビタミン○とアルファベットの名前がついていますが、これは仮の名前というか通称みたいなもので、それぞれ具体的な物質名も当然存在するわけです。

例えばおなじみビタミンCは、実は物質的にはアスコルビン酸という名の分子なのでした。
(まぁアスコルビン酸もある意味慣用名であって、ルール通りの名前(一度も触れたことがありませんでしたが、化合物の名前はIUPAC命名アイユーパック;International Union of Pure and Applied Chemistry)という規則に基づいて付けられるのが、いわば正式名ですね。ただ、複雑な分子だと長すぎて不便なので、ほとんどの場合、慣用名が使われるわけです)だと、(R)-3,4-ジヒドロキシ-5-((S)- 1,2-ジヒドロキシエチル)フラン-2(5H)-オンになります。
 これを聞いてパッと「ビタミンCか!」と分かる人は、重度の化学&ビタミンCマニアでもない限りこの世に存在しないので(「アスコルビン酸」なら「ビタミンCね」と分かる人は結構な数存在すると思いますが)、「分かりやすい名前の方が使われる」というのは、この世の常といえましょう。)


というわけで以上13種のビタミンを順に見ていこうと思いますが、まず最初はやっぱりアルファベットのスタートであるAから、通称ビタミンAこと、物質名レチノールですね。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ビタミンAより

上の表でも別名が挙げられていましたが、レチナール、レチノイン酸という似たような名前もビタミンAの一種とみなされており、これらは「発音が違うだけで同じもの」というわけではなく、微妙に異なる構造の物質となっています。

具体的には、レチノールが、久々登場の「~オール」という語尾になっていることから明らかなように、これは末端にOH基(ヒドロキシ基)がある(上の画像でも確認できると思います)、アルコールの一種ですね。

一方レチナールは、これは別名レチンアルデヒドともいわれる通り、OHが酸化されてアルデヒド基(-CHO)になったもの…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/レチナールより

そしてレチノイン酸は、さらに酸化されてカルボキシ基(-COOH)になった、カルボン酸になります。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/レチノイン酸より

お酒の代謝が、エタノールアセトアルデヒド→酢酸であったのと、まさしく同じパターンの変換ですね。


まぁ、先ほど「水溶性の分子は、OH基とかCOOH基とかがあるのが特徴」とか書いていたのに、脂溶性ビタミンであるこいつらにもそれがあるじゃん、って話なんですけど、水になじむ官能基が1つあるぐらいでは意味がないぐらいに、非極性の炭素の鎖の部分が長いので、全体では圧倒的に水ではなく油になじむ分子になっている、って感じといえましょう。

分子レベルの構造はともかく、このビタミンAは一体どんな役割をもっているのでしょうか。

それが、タイトルにも挙げた通りで、最大の特徴は「光を吸収」することにあります。

そもそも光というのは、日常生活では可視光線のことを指すことが多いですが、白い光(太陽光や、蛍光灯)には、全ての色が含まれているのです。

具体的には異なる光の波長に応じて(波長については物理の知識ですが、めんどいので詳しい説明は省略)、目に入ると人間にとって異なる色に感じられるわけですけど…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/可視光線より

この機会にちょっと光と色について軽く語ってみると(僕自身、高校生物(まさにこの辺のレチノールとかについて習う章)で教わるまで、全然その辺のことを意識していなかったというか知らなかったので)、「色を感じる」というのは「光を感じる」というのと全く同じことなのです。

つまり、何かの物質の色を感じるというのはどういうことかと考えてみると、まず全色含んだ光が自分の目に見える範囲に照らされたうえで(太陽とか、天井の蛍光灯とか。全ての色を含んだ光線は、白く見えます。逆に、何の光もないと、当然黒ですね)、我々が何かを見てその物質の色を感じる仕組みというか理由というのは、「その物質に照らされた光の内、特定の波長の光線だけを反射したもの(光)」が目に届いているから、といえるわけです。

どういうことかというと、例えば赤い物質があったとすると、その物質は、「赤色の波長の光線以外は吸収され、赤色の波長の光線のみを反射する」性質をもってるから、照らされた白色光の内赤色光線のみがその物質から我々の目にまで届き、その結果、我々はその物質が「赤い」と感じる、ということなのです。

その証拠に、光を発するものが存在しない真っ暗な部屋だとその物質を見ることができませんし(当たり前かもしれませんが、これは結局、「色を見るというのは、光を見ていることである」ということの裏返しですね)、その赤い物質に暗い部屋で赤い光線を含まない光のみをあてた場合、照らされた光の中には反射する(反射できる)光が存在しないので、「光を照らしたのに何も見えない」ことになります。
(まぁ、「赤い光線を含まない光」が想像しづらいので、イマイチな例えかもしれませんが、例えば青い光線を当てても、その光はその物質表面で吸収されるだけで何も返ってこないので、その物質が見えるようにはならないでしょう。)

なので、白い物質は「全ての光を反射している」(から、その物質から全色が自分の目に届いて、白く見える)、逆に黒い物質は「全ての光を吸収している(反射する光が一切ない=この目には何も届かない=黒くなる)」という性質があるといえるわけですが、だからこそ、白いシャツを着ると全ての光線が反射されるので熱くなりづらく、逆に黒い服全ての光線を吸収しているので、太陽に照らされるとめちゃくちゃ熱くなる、ということにつながるわけですね。

言い換えると、例えば青い物質は「青い光以外を吸収=青い光だけを反射」している物質なので、その物質自体は、実は青とは敵同士の関係ともいえるんですね(青だけをはねのけているということだから)。

イマイチうまい説明じゃなかった感じですが、結局、色を識別するというのは、まず全色含む白色光が天から降り注ぎ(それを直接見たら当然白い光ですが)、光を直接見るのではなく、視界に存在するあらゆる物質が、その光からその物質自身の嫌いな色(まぁ嫌いというか、「物質自身の色」ですが)のみを反射して、それが人間の目に届くことでそれぞれの物質がそれぞれの色に見える、という話なんですね。
(例えば青い壁だったら青以外の光を吸収&青い光線を反射してるから青く見えるし、赤い絨毯だったら、赤以外の光を吸収&赤い光線を反射しているから赤く見えるということ。
 光の三原色という話にも通じますが、色に関しては、青・緑・赤の3つで全ての色を表せることも知られています。つまり例えば黄色は緑と赤が混ざった光線で黄色く見えるので、黄色い机は、青い光だけ吸収して、赤と緑を反射している、って感じですね。)


だから、真っ黒な壁・床・天井の部屋に真っ黒な家具を置いた場合、光を反射する物質が一切ないので(全て吸収されて、自分の目に返ってこない)、どれだけ明るい光を照らしても、何も見えない(もちろん光を発する電球は見えますけどね)という状況になるわけです。

脳がバグることで有名な、一時的に世界一黒い物質だった(はず…常に更新され続けていますが)黒色無双(↓)は、ほぼあらゆる波長の光を吸収する物質ってことですね(黒くても、普通の物質ならある程度の光は多少なりとも反射するので、その微妙に反射した光線のおかげで、表面の材質や立体感などは見てとることができるわけです。反射する光を極限まで抑えると、↓のように、何もない穴みたいに見える(改めて、返ってくる光が全くないから)ということですね)。
 これで塗りつくした部屋(自分にも塗って)がどのぐらいの漆黒になるのか、一度閉じ込められてみたいものです。)

dailyportalz.jp

この、「色を感じる」という人間が生きる上で一番重要ともいえる行為において、大切な役割を果たしているのがビタミンAなんですね。

…と、今回はビタミンAを終わらせるつもりでしたが、光の話で無駄に長くなってしまい(ちょっと時間もなかったので)、終わりまでたどり着きませんでした。

ビタミンAの機能やら何やらについては、次回もう一度、もう少しだけ見ていくとしましょう。

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