良い日傘とは…

前回はビタミンAの話から広がった光と色の話がさらに広がって、紫外線について見ていました。

ちょうど似たような身近な題材で、もう一つとても面白いご質問もいただいていたので、そちらにも触れてみるといたしましょう。

(なお、質問をいただいていたのは光の話の割と最初の頃のことで、既に説明を試みた部分と被る話もあるかもしれませんが、これはご質問いただいたアンさんが理解されていないということではなく、質問をもらったタイミングが記事を出したタイミングと合っていないからに過ぎないためです、ということにご注意いただければと思います。)

Q8. 波長の短い紫の光の方がエネルギーが大きいということは、例えば、紫色の傘をさせば紫外線(紫色の光?)も反射してくれるから体へのダメージが少ないってこと…?

 あれ、待てよ?わからなくなってきた…赤色セロハンは赤い光しか通さないから赤以外のものは赤色の光を吸収して黒く見えるとかいう話だったから……じゃあ、赤いセロハンってゆうか赤の傘の方がいいの?あぁ、傘とセロハンでは意味が違うのかな…?

 一応話の理解としては、「赤いセロハンを通せば、他の色の光(紫外線)はカットされてる」ってことでいいのか?つまり、ビニール傘なら(セロハンと同じ?)赤色が良くて、違うしっかりした素材の傘なら紫色がいい…??

A8. 日傘もいい題材ですねぇ~。

まず紫外線は先述の通り目に見えないので、色うんぬんより「UVカットの素材かどうか」が重要なわけですが(UVカットガラスとか、透明でも紫外線を吸収できるものもあれば、シルクのように透明度がなくても紫外線はバンバン通過してしまうことが知られているものもあります。「その素材が紫外線を通すかどうか」は、(何せ紫外線は目に見えませんし)一目で分かるハッキリとした一般ルールはなく、測ったデータを見てみるまで分からないといえる感じですね)、まぁ可視光線で紫の光のエネルギーが大きいのはそうなので、ひとまず「紫色の光を受けたくない場合はどうすればいいか」という話に着目してみると、おっしゃられた通り、紫色の傘を差せば、基本的には傘で遮った(反射した)光線分はカットできてる感じですね。

なので、ハイパワーな紫の光線を遮りたければ、紫色の傘がより優れている……といいたいところですが、実は、光は上からのみ降り注ぐわけではなく、地面や壁などあらゆる方向から跳ね返りまくっているため、必ずしも上からの光を防げばOKとは限りません。

むしろ逆に、紫の傘の場合、「傘の内側を見て、紫色に見える」ということは、それすなわち下から照り付けてきた光の内、こちらは逆に「紫色の光線だけが、自分に当たってしまっている」(=傘の内側に当たった光の内、反射してくるのは紫色の光になるから(だからこそ、自分の目には紫色に見える))ともいえるわけですね。

でももちろん、跳ね返りの光は直射日光より圧倒的に小さいですし、紫色の光線を浴びたくない場合、直射日光に含まれる紫の光線を直接浴びるよりは、傘で反射して防御している意義は断然あるといえましょう。

結局改めて、反射吸収透過かで、光がどうなるかは変わるわけですね。

それぞれのパターンを見ていくことで、順番に「良い日傘」というものを考えてみるとしましょう。

まず赤いセロハン傘なら、赤以外の波長の光が概ねカット(吸収)されているということですが、赤い光線はそのまま透過しますから、カット率はほぼゼロ、赤っぽい光の大部分は直でガンガン浴びることになります。

(なお、おもちゃのカラーセロハンみたいな安い素材だと特にですが、通す光・通さない光の厳密性は全然ない感じですね。赤い光は「625-780 nm」とされていますが、当然、赤セロハンは例えば620 nmの橙色の光線とかも、大部分そのまま通していることでしょう。

 透過する波長が厳密なものはフィルターと呼ばれますが、個人的には蛍光顕微鏡の「蛍光キューブ」とか呼ばれるものなんかでよく使っています。こういうやつ(↓)ですね。

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https://www.thermofisher.com/jp/ja/home/life-science/cell-analysis/cell-analysis-learning-center/molecular-probes-school-of-fluorescence/imaging-basics/fundamentals-of-fluorescence-microscopy/Using-filters-to-capture-your-signal.htmlより

…こちらは特定の波長の光を一方向にのみ通すものなので、セロハンとは違い、真っ正面からではなく角度をつけて横から見ると、本来のフィルターが通す色とは全然違う色として見える(通さない光を反射しているから)ことになり、面白いです。

 関連して、セロハンみたいな物質の反射とかを考えると意外とややこしいというか奥が深いのですが、とりあえず今は深追いは避けておくとしましょう。)

いずれにせよ、セロハンみたいなペラい透明の素材が効果的に紫外線をカットするとも思えないので、肝心の目に見えない紫外線には恐らくほとんど効果がないですし、その色近辺の多くの波長の可視光線もノーガードで素通りですから、これは考えるまでもなく、日傘としてはカスでしょう。

(もちろん、単純比較するのであれば、紫色のセロハン傘(想像したら、センス悪すぎて笑えましたが……って、それいうなら赤セロハン傘もだけど(笑))よりは、赤ビニ傘を差す方が確実にダメージは小さいと思われます。
 通す可視光線のエネルギーの違いのみならず、紫外線は目に見えないとはいえ、波長的には紫に近いわけで、紫外線の透過率は恐らく、「紫っぽい光は全部素通り」な紫セロハンの方が断然高くなると予想されるからですね。
(でもそれはあくまで「同じセロハンという素材で比べるなら」の話であって、セロハン自体の素材が持つ紫外線カット率は赤セロハンだろうと何だろうとゴミであることには変わりない気がしますけどね。もちろん、何となく自分のイメージで書いているだけで、現実的な実際のデータは不明ですが…(使ってるセロハンの素材による、ともいえますね。パッと調べた限り、セロハンは一般的に70%程度のUV透過率ということで、やっぱりほぼ素通りのようです))。)

一方、日傘として光線の反射に期待する場合は、白い傘が最適といえましょう。白はあらゆる可視光線を反射してくれるからですね。

なので、日傘の外側は白がいいと思われます。何せ日差しを吸収していては、傘そのものにめちゃくちゃ熱がこもりますからね、上から降り注ぐものは、まず反射して跳ね返しちゃうのがベストといえましょう。


そして、光の吸収に期待する場合は、もちろん、黒い傘が最適ですね。黒はあらゆる可視光線を吸収するから、光が我々の目に返ってこずに、黒く見えるという仕組みでした。

なので、地面や横からの反射光がさらに反射して自分に当たらないように、傘の内側は黒がベストといえそうですね。


ということで、反射と吸収の両方を踏まえて、ベストな日傘はどういうものかを考えてみると、個人的には、「外側は白・内側は黒い素材の日傘」が、可視光線をブロックする上では最適ではないかと思われます。

燦々と降り注ぐ夏の直射日光はまず白い面で反射して跳ね返してしまい、傘自体に熱がこもりにくいようにする一方、上から以外の、下や横から照りつけてくる日差しに対しては、これらを反射しちゃうと位置関係的に自分に直撃してしまいますから(傘の内部でカンカンカンと反射して、ちょうど自分に返ってくる感じですね)、こちらは黒い面で吸収して引き取ってもらう(多少熱がこもっても、自分に光が当たるよりマシ)、という意図のものですね。

当然、紫外線に関しては、紫外線をカットする能力が高い素材を使うのは当然で、「その上で色を着けるなら、そんな感じのがいいのでは」という話です。


…と、日傘について検索してみたら、まさにドンピシャ完全に同じことをおっしゃっている記事が見つかりました。

www.i-iro.com
詳しく丁寧な解説の、素晴らしい記事ですね!

照り返しについては、記事内にリンクが貼られている気象庁のページにある通り、アスファルトからだと10%程度、砂浜だと最大25%もの反射率になる(夏だとあり得ませんが、新雪だと、まさかの80%!当たり前ですが、白っぽい感じの表面だと照り返しも激しくなるということですね)ということで、反射されてきた光をしっかり抑えるのも、直射日光が強烈に強い夏の熱さを抑える上ではとても大切だということですね。

(紫外線に関しては、そういえば冬のスキー場なんかで、雪の反射により、いわゆる雪目になってしまうことにご注意を……なんてこともよく聞きますね。

www.bausch.co.jp

キラキラしているスキー場とかは気分も高揚するし、遮るものなしに自分の目で直接景色を楽しみたい気もしますが、飛び交う紫外線の量は結構ヤベぇので、吹雪いていなくてもしっかりゴーグルをするのが大切だという話ですね。)


もうちょびっつだけ話が膨らみそうなご質問が残っているので、次回もまたこの辺の話しを少しだけ続けてみる予定です。

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