β-カロテン\ベジータベータ/

ビタミンAは光・色の認識に重要な栄養素であるという点から光の話に派生しており、もうどこまでいってどこから再開だったかまったく覚えていませんが、途中になっていたビタAの話の続きに戻るといたしましょう。


簡単に振り返ると、ビタミンAというのは、まだ具体的に何の物質かは分からないけれど生命活動に必須の成分であることが分かった頃に付けられた仮の名前で、これは後にレチノールという物質であることが判明していました。

レチノールというのは端っこに炭素の輪っかがついた、炭素と水素が結構な数つながった脂肪鎖みたいな感じ(二重結合含む)で、輪っかと逆の端っこにはOH(ヒドロキシ基)がついていることから、アルコールの一種である……という話を以前の記事でしていました。

そして、アルコールの代表格・エタノール(お酒)同様、レチノールのOH基も生体内で酸化されてアルコール型→アルデヒド型→カルボン酸型へと変化し、それぞれレチノール→レチナール→レチノイン酸と呼ばれる物質であることまで触れていた感じですね。

まぁ正直分子構造とかの話は面白くも何ともないのですが、まぁせっかく有機化学講座とかでネチネチ触れてきた話でもあるので、ちょっとだけ触れながら話を進めていくとしましょう。

レチノールやレチナールを総称して、「~様(よう)物質」を意味する-oid(例:アンドロイドは、ギリシャ語で人を意味するAndorと、「-のようなもの、-もどき」を意味する-oidの合成語で、人に似た、人造人間とか人型ロボットのこと)をつけて、レチノイドとも呼ばれますが、実はビタミンAことレチノイドは、必須栄養素ではあるものの、レチノイドを直接摂取しなくても、似たような物質を摂取することで体内で変換することが可能となっています。

レチノイドにそっくりのその物質というのが、ズバリ、カロテノイド
(カロテノイドも、-oidという末尾から明らかなように、「カロテン様の物質」という意味ですから、これは固有名詞ではなくグループ名を意味する総称です。)

カロテノイドの代表格といえば、みなさまご存知、β(ベータ)-カロテンですね。

そしてβ-カロテンといえば、僕はこのCMがパッと頭に浮かびますが…

www.youtube.com

こちらはコカコーラ社の、β-カロテンを多く含む飲料「ベジータベータ」ですが、あれ、まぁこれも記憶にはあるけど、何かもっとこう、タイトルにも挙げたみたいに、ナレーターが「β-カロチン」といったらギャラリーが笑顔で「ベジータベータ!」と合唱するみたいな、そんな感じだった気がするけれど……

検索したら、中谷美紀さんの94年のこれ(↑)と、他にウサギの出てくる95年のこれ(↓)と…

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あと、博士みたいなおじさんが棒読みでベータカロチンの良さをアピールする91年のこれ(↓)なんかがヒットしましたが(おじさんバージョンは93年もあり)…

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…って、これ、商品開発者のおじさんか誰かかと思ってたら、全野球ファンにめっちゃくちゃ嫌われてる、広岡さんだったのかよ!

正直このCMがベジータベータで一番印象に残ってるけど、これがあの噂の(昭和脳極まれり&自分の世代礼賛で、特に若年層から白い目で見られがちの)広岡達朗さんだったとは、全く知らなかったぜぇ~。
(まぁ別に広岡さんに興味があるわけでも何でもないから、どうでもいいんですけどね(笑))

しかし、この広岡さんバージョンが一番印象にあるけど、やっぱりどうも記憶にあるやつとは違うような…と思ったら、記憶にあるのはファイブミニプラス(この記事で触れてました。そもそもDNA・タンパク質の話に派生したのはこの「思い出の飲み物」シリーズの途中からで、完全に中途半端な形で続きが待ってるままになってますが、戻れるのは一体いつに…)とか、C.C.レモンとか、その辺の歌に合わせて商品名を連呼するものとごっちゃになってるだけだったかもしれないですね。

ところで目ざとい方は気が付かれたかもしれませんが、このCMではβ-カロンとなっているのに、記事タイトルではβ-カロンなのは何でや?という点、これは、あるときを境に呼称が変わったためですね。

調べたら、NHKの「ことばの疑問」記事(↓)によると、2000年の食品標準成分表の改訂時に、カロチン表記がカロテン表記に改められたということで、ちょうど21世紀から、カロテンになったという形のようです。

www.nhk.or.jp
まぁcaroteneなんで一応カロテンの方が正しいっちゃ正しいといえる気もするんですけど、「carotene pronunciation」で検索して出てくるGoogleの発音(↓)でも、「キャーラティーン」みたいな感じですし、カロチンで育った身としては、いやカロチンで別にえぇやん…と思えるのが正直な所かもしれませんね。

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https://www.google.com/search?q=carotene+pronunciationより

でもまぁこれも、自分にとって最初に聞いたものがヒヨコの刷り込み効果同様自然に感じられるだけで、インシュリンインスリンとかと同じく、これで育った子達はカロテンの方が普通に感じるのかもしれませんね。

発音はともかく、またつまらん構造の話を軽く見ておくと、そもそもカロテンも「カロテノイド」として、β-カロテン以外にいくつか種類が存在しています。

違いは端っこのリングだけで、レチノールにもそのままの形で残っているβ環と、それとは微っ妙~に構造の違うε(イプシロン)環と、あと環状ではないψ(プサイ)と呼ばれる構造の3種類があり、それぞれの組み合わせで違う名前がついている感じですね。

レチノールに一番近いものといえる、両端がどちらもβ環なのがβ-カロテンで…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/Β-カロテンより

一方のみがε環(もう一方はβ環)になっているものがα(アルファ)-カロテン

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https://ja.wikipedia.org/wiki/Α-カロテンより

そしてβとψの組み合わせがγ(ガンマ)-カロテンで…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/Γ-カロテンより

εとψの組み合わせがδ(デルタ)-カロテン…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/Δ-カロテンより

εとεで、(これはそのまま)ε-カロテン…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/Ε-カロテンより

…というなんともややこしい感じですが、まぁ、メジャーなものはβ-カロテンで、実際効率よくレチノイド(ビタミンA)に変換されるのはβ-カロテンのみなので、他のは無視していいでしょう(一応α-カロテンからもレチナールは生成されますが、効率はβより低い)。


ちなみに、両方が非環状のもの(両端ともψ)も当然ありまして、これは、名前が少し違うけど誰もが恐らくどこかで聞いたことがあるであろう、コペン

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https://ja.wikipedia.org/wiki/リコペンより

(別名としては、ψ,ψ-カロテンとも呼ばれるようですね。)

まぁこれも昔はリコピンと呼ばれていましたが、どこかで聞いたことがあるも何も、トマトの栄養としてかなり有名なやつですね。

めっちゃくちゃ体にいい、トマトを食べれば元気になるのは、このリコピンのおかげ!…と僕は子供の頃聞いた覚えがありますけど、リコピンはビタミンAの仲間・一種だったということなのでした。

Wikipediaの画像にもある通り、トマトを象徴する栄養ということで、これは赤い色をしています。

β-カロテンも、よく考えたら緑黄色野菜に含まれることで有名な栄養成分でした。

そう、これで話がつながりましたが、こいつらは色のある分子である=光を吸収しているということで、だからこそ、「ビタミンAは光や色の認識に重要な栄養素である」という仕組みなわけですね。
(もちろんビタミンAは目の中で光を認識するだけではなく、その他の重要な効果(抗酸化作用や代謝促進など)もありますし、別に色のある物質なんて世の中いくらでもあるじゃん、って話なので、特別こいつらだけが光認識に使われている理由付けにはちょっと弱いかもしれませんけどね。)
(また、おさらいですが、リコペン可視光線の内、青や緑の光を中心に吸収している=赤い光のみを反射しているから人間の目には赤く見える、という話でした。)


あとちなみに、カロテノイド由来の分子として、キサントフィルというグループも存在します。

カロテノイドの水素原子がOH基になっていたりと微妙~に違うだけのものですが、当然、これも色をもった(似た構造だけに、概ね赤・黄系)色素分子として知られているものですね。

代表的なキサントフィル分子がWikipediaに列挙されていたので貼っておきましょう。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/キサントフィルより

一番有名なのは、アスタキサンチンでしょうか。

まぁ正直「何なのかよく知らねぇけど、何か体に良さそうな気がする」パターンの謎栄養素って印象が強いですけど、これも結局カロテノイドの一種ということで、まぁβ-カロテンによく似たものですから、体に良さそうなのも納得といえましょう。
(特に抗酸化作用が知られていますが、結局、レチノイド・カロテノイドは最初に振り返っていた通り酸化されやすい物質なので、体内の細胞や構成成分が酸化される代わりに自らが酸化されることで体を酸化=老化から守ってくれる、というメカニズムですね。
 もっとも、アスタキサンチンの抗酸化効果・健康効果は有効性の確かなものではなく、イマイチ眉唾なものともいわれていますが…。)

あとは、ルテイン、これは、目にいいサプリに配合されているのをよく見ますし、僕が昔飲んでいたファンケルの快視サポートにも含まれていたので個人的には印象が強いといいますかよく覚えている栄養素ですが、まぁどうでしょうね、この記事でも書きましたが、まぁ正直、体感できる効果は1ミリもなかったですよね。

でもまぁ体感効果はなくとも、プラシーボ効果はあったかもしれないし、いずれにせよカロテノイドの一種で悪い栄養ではないですから、摂取して悪いことはなかったのではないかと思われます(「そう思い込みたいです」の方が正確かもしれませんが(笑))。

ビタミンA=レチノイドに関していえば、β-クリプトキサンチンが、構造的にβカロテンに非常に似ている(βカロテンに、OHが1つついただけ)ことからも明らかな通り、ビタミンAに容易に変換されるプロビタミンA(ビタミンA前駆体のこと)として知られています。

でもまぁこれは前二者よりも、なぜかあんまり健康業界やサプリ関連では注目されてる気はしませんね。

アスタキサンチンルテインの方が何か響き的に良さそう、というその程度の話なのかもしれませんが、いずれにせよこれらレチノイド・カロテノイド・キサントフィルは、いわゆるビタミンA(その前駆体)として、人間にとって重要な栄養素には違いないという話ですね。

引っ張る話でもなんでもないですが、ビタミンAが光や色の認識にどう働いているのか、次回はごくごく簡単にその辺に触れて、ビタAシリーズを終わらせようかと思います。

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