ヨウ素について見てみよう

引き続き日本人の食事摂取基準(2020年版)で取り上げられているミネラルを見ていきましょう。

既に多量ミネラルは終え、微量ミネラルの話になっており、前回マンガンを見ていました。

もうクソドマイナー元素に突入しつつありますから、書くことは何もないかと思いきや、今回も辛うじてまだネタのある成分だったかもしれません。

というわけで続いてはヨードでおなじみ、ヨウ素ですね。

10. ヨウ素(I)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ヨウ素より

ヨウ素は非金属ですが、金属光沢のある固体、しかも昇華性がある物質(固体が、液体を経ずにいきなり気体になる)として有名といえましょう。

昇華物質は高校化学で習う代表的な有名物質で4つほどあり、他の3つは今までどこかの記事で軽く触れたこともあったので(ドライアイス二酸化炭素、防虫剤のナフタレンとパラジクロロベンゼン)、これで揃い踏みという感じでしょうか。

 

謎の名前ヨウ素(漢字では沃素…ほとんど見かけない表記ですね)ですが、これはWikipediaにズバリ書かれているように、気体がすみれ色であることから、すみれ色を意味するギリシアiôdêsをもとにフランス語でiodeと命名された呼称由来ですね(当然、元素記号のIも)。

身近な物質としては、やはりヨードチンキ、イソジンといったうがい薬が圧倒的に有名といえましょう。

ヨウ素の溶液であるイソジン(正確にはポピドンヨードと呼ばれる複合体の水溶液)は、色も、ニオイも、どなたもご存知ではないかと思います。

ちなみにこの手の薄めて使う殺菌消毒剤は、何となく濃い方が効きそうな印象もどうしてもある気がするものの、定められた濃度が断トツで一番効果的なことが立証されているので、指示通りに薄めて使うことがとても重要ですね。

イソジン公式サイトにも、その旨ポイントとして明記してありました(↓)。

 

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https://www.isodine.jp/aboutより

消毒用エタノールなんかも、70-80%に薄めるのが、100%エタノールより圧倒的に殺菌効率が高い、というのと同じです。
(まぁエタノールは、希釈してもそんなにボリュームが変わらないので、既に薄めている形で売られていることがほとんどですが。
 イソジンは、薄めて売ると体積が増えすぎてあまりにもかさばりすぎるので、不便だけど、濃縮された原液の形で売られているという感じでしょう。)


物性としては、元々このネタを始めるきっかけとなった物質の同定・判定に使われるものとしても知られており、中学理科でおなじみヨウ素でんぷん反応(でんぷんが紫)と、あともう一つ、高校化学で習うヨードホルム反応というのも有名です。

ヨードホルム反応というのは、酢酸の一部であるアセチル基(CH3CO-)(および、ヨウ素には酸化作用があるので、酸化されてアセチル基をもつことになる物質…具体的には、エタノールアセトアルデヒド→酢酸という代謝の流れをずーっと前見ていた通り、エタノールなんかが代表的なヨードホルム反応陽性物質)が存在すると黄色い沈殿が生じるという検出反応ですが…

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ハロホルム反応より

…まぁでんぷん含め、そんなもんを検出したい機会もほぼないので、割とどうでもいい話といえましょう。
(お酒の検出で使われている、というわけでも別にないですしね。)


生体内での機能としては、やはり甲状腺における代謝甲状腺ホルモンの合成)という話がほぼ全てになる感じではないかと思われます。

生体内にはヨウ素約13ミリグラムとかその程度含まれているとのことですが、その内90%ほど、12ミリグラムぐらいは甲状腺に存在しているとのことです。

甲状腺とは…?

パッと「ここです」と指せる人は、医学解剖学をかじったことのある方でもない限りあまりいらっしゃらないかと思いますが、のどぼとけのすぐ下にある、ちょうちょのような形をした器官ですね。

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https://www.koujyousengan.jp/about/function.htmlより

人によるかもしれませんが、実際にのどの辺りを触って、「これか」と確認することも可能です。

この甲状腺は、その名の通り甲状腺ホルモンを分泌しているわけですが、このホルモンは、生体反応の非常に多くの機能……あえて一言でまとめるなら新陳代謝に関与しているホルモンといえますね。

そんな重要な甲状腺ホルモンですが、重要なだけあって、多すぎても少なすぎても良くないことが知られています。

多すぎる場合は、恐らく名前はどこかで聞いたことがあると思われる、バセドウ病という疾患を発症することが最もよく知られており、少ない場合は橋本病として知られる症状なんかが見られることになります。

どちらも共通して非常に疲れやすくなるむくみが見られるなどの症状があり、あとはそれぞれに特徴的な異なる症状(汗の量の違いなど)もありますが、甲状腺の病気は結構身近なものなので、いくらでもまとめられた情報があるため、詳しいサイトをご覧いただくのが一番ですね。

分かりやすくまとめられていた画像を、あすか製薬の記事から拝借いたしましょう。

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https://www.aska-pharma.co.jp/mint/womanhealth/joseinobyoki/byoki06.htmlより

バセドウ病で特に分かりやすいものとしては、目玉が出てくるという非常に大きな特徴があるわけですけど、これは公表されていないのであまり勝手なことをいうのもアレかもしれませんが、サッカーの本田圭佑さんなんかが、一時期凄くバセドウ病に特徴的な症状を示されていて、お医者さんの間では「非常にバセドウ病の疑いが強いですね」といわれていたのを記憶しています。

幸い、今は本田さんも大分改善されたようですが、甲状腺の病気は圧倒的に女性の方が罹りやすいといわれているものの、男の中の男のような本田さんが恐らく罹られていた例からも明らかなように性別問わず罹る可能性のある病気なので、上記症例で当てはまる点が複数あるなど、不安を感じる方が万一いらっしゃったら、お医者さんに診てもらうのがとても大切といえましょう。


まぁ甲状腺の病気は、必ずしもヨウ素の摂取状況だけによるものでは全くないわけですが、甲状腺ホルモンの合成にヨウ素が必要となるのは確固たる事実なので、ヨウ素甲状腺は切っても切り離せない関係にあるもの(多すぎても少なすぎてもいけないワガママな感じですが)という感じですね。

ちなみにヨウ素海藻類に圧倒的に多く含まれているものなので、海産大国日本では、不足することはまずないといわれているものの、そうはいっても個人の食生活次第で海藻をあまり食べない方もいらっしゃるでしょうし(かくいう僕も全く食べてませんしね)、やはり地の利を生かして、ワカメやコンブなどを積極的に摂取するようにするのは、ヨウ素欠乏を防ぐ上では、とてもいいことかもしれません。

ちなみにヨウ素といえばやはり、震災後、放射性物質として取り上げられることもあったので、そのイメージも強いかもしれませんね。

ヨウ素放射性物質131Iと呼ばれるもので、これは原子力発電所での核分裂反応の結果生じる物質なんですけど、まぁこないだの記事で見ていた通り、こいつらは放射線を出してDNAにダメージを与えるわけですが、ヨウ素半減期はわずか8日と、割とすぐに放射能が失われていくためそこまで深刻な心配はないとはいえるものの、やはり、甲状腺に大きく集積するため、放射性ヨウ素を大量に体内に取り込んでしまうと、甲状腺ガンだとか、その他甲状腺の疾患に罹るリスクが増大するので、注意が必要ということですね。

幸い、震災から10年経過しても、原発付近で特に甲状腺の疾病が有意に上昇したという話は聞かないので、恐らく目に見える影響はなかったのではないかと予想されます。

まぁそんなのは気をつけても気をつけようのない話かもしれませんが(放射性物質にはニオイも味も痛みもないので)、もし気になる方はマメに健康診断(人間ドックやガン検診)を受けるようにするとよいでしょう、という、一般的な健康アドバイスに帰着される話かもしれませんね。


ということで、一気に終わらせるつもりが、ヨウ素も意外と重要な元素で、ネタの水増しに成功した結果、いい分量になってしまいました。

ラスト3つは、最早3バカとでもいいますか、本当に何もないので、次回でミネラルの話をスパッと終わらせたい限りです。

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