アドレナリンとノルアドレナリンの違いは?

全米を代表する非営利医療機関クリーブランド・クリニックのまとめてくれているHEALTH LIBRARYの記事を勝手に翻訳引用しているシリーズ、四大幸福物質のドーパミンセロトニンオキシトシンエンドルフィンを経て、前回はアドレナリンの解説記事を見ていました。

 

アドレナリンは、下手したら(というか多分確実に)小学生でも聞いたことがある、闘争本能に火をつけて興奮状態に入るための神経伝達物質でありホルモンでしたけど、これに似たノルアドレナリンというものが存在するというのも、どなたも耳にしたことがあることでしょう。

 

今回は、予告通りクリーブランド・クリニックのノルアドレナリン記事をチェケラッチョさせていただくといたしましょう。

 

なお、前回見ていたアドレナリン記事は、アメリカでよく呼ばれるEpinephrineではなく「Adrenaline」という表題の記事になっており、アド派の僕としては嬉しくて前回キャッキャしていたわけですけど、なんと、ノルアドレナリンはNoradrenalineではなくNorepinephrineという表題の記事となっており、アルファベット順のHEALTH LIBRARY記事検索ページで、またしても一瞬「あれ、ノルアドレナリンがない?!」と驚いてしまいましたが、なんとこちらはノルエピ表記ということで、くぅ~見損なったぜクリ・クリさんよ、そこは高峰リスペクトからアドレナリンで統一して欲しかった…!と思えましたがそれはともかく(でも、一方はアドレナリンでもう一方はノルエピネフリン表記となるのも、よく分からないですけど(笑))、幸いにしてアドレナリンとノルアドレナリンの違いも上手くまとめてくれている記事になっていました。

 

早速翻訳引用させていただこうと思います。

 

my.clevelandclinic.org

Norepinephrine (Noradrenaline)(ノルエピネフリンノルアドレナリン))

ノルアドレナリンとしても知られるノルエピネフリンは、神経伝達物質であると同時にホルモンでもあります。ノルエピネフリンは、体の「闘争か逃走か」反応に重要な役割を果たしています。薬としてのノルエピネフリンは、限られた短期間の深刻な健康状態において、血圧を上昇させ、維持するために使用されます。

 

ノルエピネフリンとは何か?

ノルアドレナリンとも呼ばれるノルエピネフリンは、神経伝達物質であると同時にホルモンでもあります。神経伝達物質としては、神経終末を飛び越えて、別の神経細胞、筋肉細胞、腺細胞に神経シグナルを伝達するのに用いられている化学伝達物質です。ホルモンとしては、腎臓の上にある帽子型をした腺である、副腎から分泌されます。

神経伝達物質としてのノルエピネフリンは、ドーパミンから作られます。ノルエピネフリンは、脳の脳幹領域および脊髄の近くにある神経細胞群から作られます。

ノルエピネフリンは交感神経系の一部であり、これは危険に対する身体の緊急反応システム―「闘争・逃走」反応の一部となっています。医学的には、「闘争か逃走か」反応は、急性ストレス反応として知られています。

 

ノルエピネフリンは体内で何をしているの?

脳と脊髄の神経伝達物質であるノルエピネフリンは、以下のような作用を有します:

  • 警戒心、覚醒度、注意力を高める。
  • 血管を収縮させることで、ストレスがかかった時の血圧を維持する。
  • 睡眠・覚醒のサイクル、情緒、記憶に影響を与える。

 

ノルエピネフリン分泌の引き金になるものは何?

ホルモンとして、ストレスが副腎からのノルエピネフリン分泌を誘発します。この反応は体内で様々な変化を引き起こすもので、闘争・逃走反応として知られています。

 

闘争・逃走反応 (fight-or-flight response) とは?

闘争・逃走反応とは、危険から逃れる(吠えてくる犬から離れる)とか、恐怖に直面する(学校や職場でスピーチをする)といった、ストレスのかかる状況に対する体の反応を指します。この言葉は、我々の祖先が危険な状況に直面したときの選択―留まって戦うか、安全のために走って逃げるか―に由来します。

闘争・逃走反応の間、人間(人間の脳)は危険を察知します。次に、脳の視床下部と呼ばれる領域にある神経が、脊髄を下って、体へとシグナルを送ります。脳の神経系に、何をすべきかという情報を伝える神経伝達物質が、ノルエピネフリンノルアドレナリン)なのです。神経伝達物質であるノルアドレナリンは、以下の器官や組織に到達し、こういった急激な体の反応を引き起こします:

  • :光を取り込みやすくすることで周りのものをよく見られるよう、瞳孔が開く。
  • 皮膚: 戦うか逃げるかの選択ができるよう、血管が、血液を筋肉など他の酸素を必要とする部位に送るシグナルを受け取り、皮膚が青白くなる。
  • 心臓: 筋肉など、酸素を最も必要とする部位により多くの血液を送るため、心臓のポンプがより強く、速くなる。血圧も上昇する。
  • 筋肉: 筋肉はより多くの血流と酸素を受け取り、より強く、より速く反応できるようになる。
  • 肝臓: 肝臓に貯蔵されたグリコーゲンがグルコースに変換され、より多くのエネルギーを供給する。
  • 気道: 呼吸が深く速くなる。気道が開くので、より多くの酸素が血液に供給され、筋肉に送られる。

神経伝達物質であるノルアドレナリンは副腎にも届きますが、ここではホルモンであるアドレナリン(エピネフリン)とノルアドレナリン(ノルエピネフリン)が分泌されます。これらのホルモンは、血液を介して体のあらゆる部分に移動します。目、心臓、気道、皮膚の血管、そして再び副腎に到達するのです。これらの臓器や組織への「メッセージ」は、危険を脱するまで反応を続けるものになっています。

以上が闘争・逃走反応の簡単な説明です。神経系の他の部分も、他の臓器系、ホルモン、神経伝達物質と同様に関与しています。

 

ノルエピネフリンは、薬としてどのように使用されているの?

薬として使用される場合、ノルエピネフリンは、低血圧が問題となっている限られた短期間の状況においてのみ、血圧を上昇させ、維持するために使用されます。そういった状況には、以下のようなものが含まれます:

  • 心停止
  • 脊髄麻酔
  • 敗血症
  • 輸血
  • 薬物反応

ノルエピネフリンは通常、上記の症状に対して他の薬と併用されます。

また、ノルエピネフリンは治療にも用いられます:

  • 感染症後に血圧が極端に低下し、生命を脅かす状態である、敗血症性ショック
  • 脊髄の損傷によって引き起こされる、生命を脅かす状態である、神経原性ショック
  • 心臓の周りの空間に余分な液体がたまる状態である、心タンポナーデ(心膜炎)
  • 重症低血圧

 

薬として用いられるノルエピネフリンの副作用は何?

注射剤としてのノルエピネフリン投与による副作用のうち、医師の診察が必要なものは以下の通りです:

  • 皮膚の発疹や痒みや蕁麻疹、また顔や唇や舌の腫れなどといったアレルギー反応
  • 呼吸困難、喘鳴(喘息などで息が切れた状態)
  • 不整脈、動悸、胸痛
  • 注射した部位の痛み、発赤、炎症

 

ノルエピネフリンレベルが低い場合に生じる健康状態は?

ノルエピネフリンレベルの低下から生じる健康状態には、以下のようなものがあります:

 

ノルエピネフリンレベルが高い場合に生じる健康状態は?

ノルエピネフリンレベルが高い場合に生じる健康状態には、以下のようなものがあります:

  • 高血圧症
  • 急速または不規則な心拍
  • 過度の発汗
  • 皮膚の冷えまたは青白さ
  • 激しい頭痛
  • 神経過敏、ジッター(イライラし落ち着かない状態)
  • 副腎腫瘍である褐色細胞腫

ノルエピネフリン濃度が高い人は、心臓、血管、腎臓の障害に対して、危険性がより高いです。

 

ノルエピネフリンレベルを自然に高めるには何ができる?

ノルエピネフリンの濃度を自然に高めるには、以下の方法があります:

  • 定期的に運動する(1日30分を、少なくとも週5日)。
  • 十分な睡眠をとる(一晩7~9時間とるようにしましょう)。
  • 肉、鶏肉、魚、ナッツ類、卵、チーズを食べる。
  • 音楽を聴いたり、喜びを感じることをする(幸せを感じるとノルエピネフリンの分泌が増えます)。

 

エピネフリンとノルエピネフリンの類似点と相違点は?

種類 エピネフリン(アドレナリン) ノルアドレナリン(ノルエピネフリン

神経伝達物質

Neurotransmitter (NT)

はい はい、交感神経系の最も一般的なNTです;主にNTとして作用します

ホルモン

Hormone

はい、主にホルモンとして作用します はい
闘争・逃走反応の一部か はい はい
作られる場所/分泌される場所 主にどちらも副腎 主にどちらも神経
何から作られる ノルエピネフリン ドーパミン
作用・効能 ほぼ全身の組織で作用する 主に、血圧を増大させるまたは維持するために働く
いつ血流に分泌されるか ストレスがかかっている間 常時
医療での一般的な使用 重症喘息、アナフィラキシー重篤な状態からの低血圧     緊急の低血圧状態

 

クリーブランド・クリニックからのメモ

ノルエピネフリン神経伝達物質であると同時にホルモンでもありますが、主に神経伝達物質として作用しています。ノルアドレナリンとしても知られるノルエピネフリンは、体の闘争・逃走反応において重要な役割を果たしています。薬としてのノルエピネフリンは、限られた短期間の深刻な健康状態において、血圧を上昇させ、維持するために使用されます。

 

…というわけで、主にホルモンであるアドレナリンと、主に神経伝達物質であるノルアドレナリンという違いがあるものの、どちらも両面性を持つということで、似て非なるもの…というか、まぁ名前が示している通り、兄弟分子という感じですね。

 

しかし、「Nor-」という否定を意味しそうな接頭辞なのはなぜだ?と思ったら、英語版のノルアドレナリン記事に語源が掲載されていまして、これは「どちらも~ない」という意味の「nor」とは完全に違う、ギリシャ語で「near(近い)」を意味する接頭辞とのことで、それなら納得といえましょう。

 

分子の構造は以下の通りですが…

https://ja.wikipedia.org/wiki/ノルアドレナリンより


…まぁこれよりも、以前ドーパミン記事で貼り付けていた、両者を並べた画像の方が遥かに情報量が多い図かもしれませんね、再掲しておきましょう。

 

f:id:hit-us_con-cats:20210701061659p:plain

https://en.wikipedia.org/wiki/Norepinephrineより

…そう、こいつらはカテコールアミンと呼ばれるグループなわけですが、「ノル」の末端がNH2、一方「アドレナリン」の末端がNHから棒が一本出ているCH3というように、水素原子がメチル基(-CH3)に変わっただけなんですねぇ~。

 

なお、同じくカテコールアミンであるドーパミンの構造も同じく再掲しておきましょう。

f:id:hit-us_con-cats:20210701062037p:plain

https://ja.wikipedia.org/wiki/ドーパミンより

最後の表にもありました通り、ノルアドレナリンドーパミンから作られるということでしたし、そっくりなのも当然といえるかもしれません。

やはり、幸福物質と興奮物質は、何気に日本語の音もそっくりなように、大変近い分子だったのです、という話でした…!

 

過剰になるより不足してやる気や闘争心がなくなる方が現代人には多い気がしますし、健康的な生活を送り、しっかり分泌したいものです。

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