手をつないだら、甘くなくなってしまう…

……まるで恋愛だな…。


…と、「何か上手いこといわなきゃ…(使命感)」という強迫観念のもと、正直これっぱかしもまるで一切そんなこと思ってない、自分でも「は?」と思えるしょうもない話から始まりましたが、これはただ「まるで将棋だな」みたいなセリフを吐いてみたかっただけ(いやさらにしょうもない話でしかないですけど(笑))なので、忘れてください。
 

前回、主な単糖類についてまとめてみました。

続きまして今回は、その単糖のいずれか2つが手をつなぐことで生まれる新しい分子、二糖類から順番に見ていこうと思います。
  

10. スクロース(ショ糖・砂糖)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/スクロースより

重要度★★★★☆

甘さ(砂糖が1とすると): 1

こちら洋名スクロース(古くはシュクロースと呼ばれていたようですが、僕が習った頃はもうスクロースでした。インリンとインシュリンも同様ですね)、ズバリ、科学的な和名ではショ糖、一般的には砂糖と呼ばれる物質になります!

(一応、正確には、砂糖という言葉はより広い意味の甘味を持つ調味料全般のことを指す意でも使われますが、基本的に多くの人が思い浮かべる白砂糖の主成分は、このショ糖です。)

洋名の覚え方としては、「シュガーだから、シュクロース(スクロース)」と習いましたが、まぁ実際sucroseもフランス語でsugarを意味するsucreから取って名づけられたとのことで、これは正しい覚え方といえましょう。
(なお、サッカロースと呼ばれることもありますが(英語でも)、これは古い用語なので、今現在ではほぼ使われません。)

甘さは、砂糖を1とすると、この「砂糖」は1!(当たり前)

誰もが知る、甘く、美味しいお砂糖ですが、前回触れた通り、これは、構成物質であるフルクトースよりも甘さでは劣るんですね。

…というか触れるの忘れてましたが、このスクロースは、単糖であるグルコースフルクトースが、OH基を差し出し合い(グルコースの1番炭素のものと、フルクトースの2番炭素のもの)、今まで他の例(エステルなど)でもよくあった、「2つのOHから、Hが2つとOが1つ、つまりちょうどH2O水分子が1つ取れる」ことで、Oを介して手をつなぐようになる…という形でつながったものになります。

これが、グリコシド結合と呼ばれる結合で、炭素の場所と、つながったOが糖リングの下にいくか上にいくかでα・βの区別もされて、より正確には、このスクロースの場合にはα-1,2-グリコシド結合となりますが、まぁそんな細かいことはマジでどうでもいいので無視しましょう。

結局、スクロースの1.7倍は甘い糖であるフルクトースが、グルコースと結びつくことで、1/1.7の甘さに甘んじてしまうということなんですね。

これに限らず、糖は、複数の分子がつながっていくごとに甘さを失う感じになります。
(まぁ、スクロースより甘くないグルコース分子から見れば、つながることで甘さが増してるので、必ずしもそうは断言できないかもしれませんが、これはより甘いフルクトースのおかげでそうなっただけともいえますし、一般的にはそう考えて間違いないでしょう。)

まぁフルクトースより甘さは減るとはいえ、この世界を代表する甘味といえる知名度No. 1の糖が、このスクロースですね。

ただ、甘くて美味しいスクロースですが、近年は一気に嫌われ者になってきており、実際にスクロースは様々な健康被害を引き起こすことが知られています…というか誰しもが身をもってご存知といえましょう。

具体的には、肥満虫歯が代表的な大きな害ですが、まぁこの飽食の時代においては、砂糖は1粒も食べなくても一切何の問題もないといわれるぐらい、甘い以外にいい点が1つも存在しないゴミカスといえるかもしれませんね。

でも、(いつもこのパターンですが、)個人的には、まぁそりゃめちゃくちゃな量の砂糖を摂りまくるのは明らかに良くはないけど、多分、徹底して「死んでも1粒とて食べてたまるか!砂糖は毒!!」みたいな食生活は、むしろそっちの方が心身に悪影響があるんじゃないかな、って気もします。

『毒も喰らう 栄養も喰らう。両方を共に美味いと感じ血肉に変える度量こそが食には肝要だ』ではないですが、結局何度もいってるとおり、少量の砂糖なんかより細かいことを気にしすぎるストレスの方がずっと、遥かに、確実に悪影響が大きいと思うので、無理して我慢するのはやめた方がいい気がするけどなぁ、って、そんな感じですね。
(もちろん、無理せず自然と…なら、砂糖は控えめにすることに越したことはないのも間違いないとは思いますが。)

油断すると無駄に長くなり続けるので、次に進めましょう。
 

11. ラクトース(乳糖)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ラクトースより

重要度★★★★☆

甘さ(砂糖が1とすると): 0.16

こちらは、ガラクトースグルコースが手をつないでできる、ラクトース

和名は乳糖ですが、洋名との関連付けは、酪農と結び付けてもいいし、ラクトアイスとかいうように、ラテン語lactisがmilkを意味するので、まぁミルクっぽいイメージの糖ということは簡単に湧くことでしょう。
(そして構成糖は、基本糖グルコースに、名前そのもののガラクトースですね。)

いうまでもなく、乳成分に多く含まれることでついた名前ですが、どちらも砂糖より甘くないグルコースガラクトースが組み合わさったということで、甘さスコアは、知られている糖で最低レベルの、わずか砂糖の16%!
(…って、上記Wikipediaラクトースページには「ショ糖の0.4倍の甘さを有す」って書いてありますね。やはり、参照してるデータによって、甘みの強さのスコアなんてのは変わるものなのかもしれません。)

まぁ無味の糖よりはいいのかもしれませんが、牛乳やアイスはそれなりに甘い印象ですけど、その甘さは乳糖以外から来るものだということですね。


乳糖といえば、やはり乳糖不耐症という、「牛乳を飲んだらお腹を下す」ことで知られる難消化性が第一に浮かびますが、これは、乳糖消化酵素であるラクターゼ(もちろん、これはタンパク質です)の働きが弱いことによるものです。

これは日本人に限らず、さらには人間に限らず、哺乳類全般に見られる現象で(哺類のくせして、って感じですが(笑))、基本的に哺乳類は成長とともにラクターゼの活性が低下するように遺伝子が設計されています。

もちろん、どの程度牛乳を飲んで育つかやその他もちろん遺伝子の個人差で、活性が落ちても普段飲むぐらいの牛乳程度なら問題ないまま、という人もいるわけですが、原則として誰でも、加齢に伴い牛乳は徐々に飲めなくなっていくんですね。

まぁその辺の話から、「乳糖は毒!牛乳は体に不要、飲むな!」ということが叫ばれることもありますけど、これはやっぱり、乳製品ファンとしては「そんなことないと思うけどな…」と思いたいですし、不自然に徹底制限するのもまた良くない影響の方が大きい気がする、というのは、さっきの砂糖の話と同様ですね。

12. マルトース(麦芽糖

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https://ja.wikipedia.org/wiki/マルトースより

重要度★★★★☆

甘さ(砂糖が1とすると): 0.33~0.45

続いては、糖の王様グルコースが2つくっついた形という、主役2つセットでこれこそ一番メインの二糖なのでは?…と思いきや、なぜか先の2つより断然マイナー感の強いやつ、マルトース(麦芽糖です。

名前は、「麦は丸いからマルトース」とか覚える人もいますが、こちらはもっと本質に直結した話があるので、個人的には「モルツ」をイメージして覚えるの一択ですね。

モルツは、「粒選り麦芽100%」でおなじみのビールですが、まさに麦芽を意味する英語ですから、maltが麦芽であることとマルトースが麦芽糖であることの2つを同時に覚えられるので、「麦はマル」とかアホみたいな覚え方はやめて、断然、こう覚えるのが良いでしょう。
(いや、さっきの似たような無意味な語呂「ラクトースが酪農」はいいのかよ(笑)
…と思ったら、酪農のラクは、これもやはりラテン語lacに由来するかも、と考える説もあるようですね。参考→乳科学 マルド博士のミルク語りより)


…って、それはともかく、そもそも「麦芽糖」自体を覚えてなかったらどうすんねん、って話ですが、何気にこれは中学理科でも登場するんですよね。

これは未だに覚えている話なんですけど、麦芽糖は唾液のアミラーゼによって生じる糖として知られていますが、中学の理科の授業で、「アミラーゼが働くことでできるのは?」と先生が質問して、その日の出席番号の生徒から始めて順番に答えていくという、よくある中学校の風景があったんです。

ただ、これは確か資料集にしか載ってないような結構な予備知識みたいな話だったはずで、クラスの半数以上というかほぼ全員が連続で「分かりません」で次の人にバトンタッチしていき、先生のイライラも頂点に達しつつある所で、ついに満を持して次に当たりますは公立中で圧倒的に優秀で一目置かれていた紺助少年ことこの僕、幸い資料集か何かで見た記憶があったので、「麦芽糖?」と不安混じりに答えたところ、先生ニッコリ、「みんなもちゃんと紺助くんを見習って勉強しとくように」みたいな感じになりました、という、まさしく自慢以外の何物でもない、純度100%のウザ自慢でした(笑)。

(いやでも、「何で誰も予習していないんだ!」みたいな怒りが先生から漏れていたので、あれはまさに無事クラスを救ったヒーローでしたね。)

ちなみに、その後「だから、お米をよく噛むと段々甘くなるでしょう?それは唾液(アミラーゼ)の力で麦芽糖ができるからだ、ってことを覚えておくように」と続きましたが、ぶっちゃけ、米とか、噛んでて甘くなります…?

まぁ理論上実際に甘くなるはずで、いわれてみれば確かに多少は甘くなる気もしないでもないですが、正直噛み続けてもただ唾液で薄まるだけで、いうほど甘くなんてならんことない…?っていうかむしろ、何なら一口目が一番美味しいまであるし、ずっとクチャクチャしててもキモくなるだけちゃいます…?と思ったものの、優等生の僕は別にそんなことで先生に噛み付くことはしなかったのでした。


マルトースについては、そんな僕の自慢話ぐらいしかない感じですかね?

もちろん、後で出てくるグルコースが大量につながった多糖から生じるものなので、生体内で重要な物質であることには間違いありませんが。

あぁ、構造について触れていませんでしたが、こちらはグルコース1番4番炭素がα-グリコシド結合でつながったもので、さらに、4番炭素がつながった方(つまり、画像右側)のグルコースがα-グルコースかβ-グルコースかで、マルトース自体にもαとβの違いがありますが、まぁ気にする必要もない話でしょう。


なお、マルトースも、グルコースが手をつなぐことで、ちょうどグルコースの半分程度に甘さが減ってしまっていますね。

やっぱり、手を取り合ったら、甘さが失われていく…。

まるで芸術だな…。(意味不明)

13. トレハロース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/トレハロースより

重要度★★

甘さ(砂糖が1とすると;これまで出していた数値とは違うデータ、上記Wikipedia掲載の数値): 0.45

こちらも同じくグルコースが2つくっついたものなのですが、マルトースとは結合の仕方が違って、これは、1番炭素同士、しかもα-グルコースのペアがグリコシド結合でつながったものであり、同じ形の同じ場所の炭素が手をつなぐことから、一方は他方を裏返ししたような状態でつながる感じで、糖のリングは直線状ではなく、立体的に位置する状況になります。

高校化学や一般的な代謝学でこの二糖はほとんど登場しませんが、何となく名前は聞いたことがある気もしないこともないですね。

こちらは、ほぼマルトースと同じ甘みを有するもののようですが、それ以上に結構色々な役割がある有能物質のようで、例えばお餅や団子が硬くなるのを防ぐ効果、また熱や酸にも強いので、安定剤として様々な食品や化粧品なんかにも配合されているとWikipediaにありました。

そしてまた面白い話として、以前は天然に存在するキノコから抽出するしか方法がなく、非常に貴重で高価だった(1 kgあたり、3-5万円)のが、1995年に、岡山にあるバイオ企業・林原社が、トレハロースを生み出す酵素を岡山の土にいる微生物の中から発見し、以降、大量生産が可能となり、1 kgあたり数百円で発売を開始した…という、「いや価格破壊起きすぎ(笑)。そんな凄い酵素を発見したんだから、もっと高く売ってもえぇんやで(ニッコリ)」といいたくなるような、素晴らしい革命を起こした、なんて話があるようですね。

林原社のウェブサイトにも、当然その話は記事として紹介されていたので、リンクを貼っておきましょう。

www.hayashibara.co.jp
さらなる応用が今でも盛んに研究・開発されているようで、今後ますますのトレハロースのご活躍をお祈り申し上げたい限りですね!
 

14. セロビオース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/セロビオースより

重要度★★☆

二糖最後は、セロビオース

こちらもまたグルコース2つのカップルですが、こちらはβ-グルコースのペアによるβ-1,4-グリコシド結合になっており、先ほど最初に「覚えなくていい、無視しろ」といった割に何度も出てくるこの結合ですけど、まぁこの画像だとめちゃくちゃ分かりにくいものの、1番と4番炭素は分かりやすい糖の図(六角形で、Oの頂点が右上に来るあれ。スクロースの画像がそれですね)でいう所のちょうど六角形の左端と右端に位置するもので、つながりやすい(かつ、さらにつながっていきやすい)形なんですね。

実際このセロビオースは、この二糖より、もっと何個も1,4-結合でつながり続けたものが有名であり(天然では通常、この二糖の形では存在しません)、その大量につながったものが、これは中学生でもおなじみ、セルロース

また詳しくは続いて触れる予定ですが、セルロースはもちろん植物の細胞壁の主成分である糖ですけど、細胞壁=繊維質だから当然、水には全く溶けず、それと似た感じでこのセロビオース水にはほとんど溶けず(砂糖をイメージすれば分かる通り、基本的に糖は水によく溶けるものですが)、甘みもほとんどないとのことです。

まぁセルロースはめちゃくちゃ重要な糖の一つですけど、このセロビオースは、比べると大分マイナー感がありますね。

でも、セルロースを形成する構成単位としてはまあまあ重要で、受験生なら名前も結合様式も覚えておかなければいけない物質の1つといえましょう。


ということで、以上代表的な二糖類でした。

例によって無駄話でめちゃ長になってしまったので、続きはまた次回とさせていただきましょう。

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