いろいろな糖のまとめ:一番甘いのはどいつ?

前回の記事では、糖の王様グルコースブドウ糖)の、名前と構造について見ていました。

今回は、続いて順番に、各種いろいろな構造の糖を見ていくとしましょう。

データがあるものは、甘さについても触れてみたいですね。
(文献によってデータは違いますが、割と新しいデータで、上手くまとまっていたWikipediaSweetnessの記事の数値を使わせていただきましょう。
 こちらは、一番身近な糖である砂糖の甘さを1.0として、その糖が「どのぐらい甘いか」の比となっています。)

まずは改めてグルコースから…。

1. グルコースブドウ糖

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ブドウ糖の代名詞ともいえるお菓子、ラムネ(森永の商品ページより)

重要度★★★★★

甘さ(砂糖が1とすると): 0.74~0.8

エネルギーを生み出すためのメイン物質・出発物質であるグルコースですが、甘さは実は砂糖よりも小さくなります。

まぁ、ブドウ糖そのものの代表例ともいえるラムネの画像を上でも貼りましたが(ラベルに「ぶどう糖90%」という強調表示もされてますね)、好きな人には申し訳ないですけど、ラムネとか代表的なクソマズのガッカリお菓子ですもんね。

最も大事な糖といえるのに、人間にとって最も甘さを感じる物質ではないというのは面白いですが、まぁ「代謝で使われる」ことと「脳が甘いと感じる」こととはさほど関連性は薄い(というか両立が難しい)ともいえますし、あまりにも美味しすぎる快楽物質だったら逆に過剰摂取で人類(生物)は糖尿病なんかで滅んでいた可能性もありますから、程々なのがちょうどいいのかもしれませんね。

他に触れようと思っていた話もいくつかありますが、大量の糖がまだ控えているので、とりあえずサクサク進めるとしましょう。

2. ガラクトース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ガラクトースより

重要度★★★★

甘さ(砂糖が1とすると): 0.65

こちらは、グルコースが六角形リングの頂点左上から反時計回りに、上→下→上→下→(上 or 下)にOHかCH2OHがついていたのとは違い、上→→上→下→(上 or 下)になっているもので、4番炭素(めっちゃややこしいので覚える必要はないですが、糖では、酸素Oの、上のリング図でいう右隣の炭素(時計でいう3時の位置)が1番となり、そこから時計回りに2→3→…で、最後出っ張りの炭素が6番となります)につくOHの位置が逆転しているだけですね。

ただそれだけの違いなのに、日本語名が存在しない、マイナーな糖に落ちぶれます。

とはいえ、これとグルコースがつながった二糖はまあ有名で、名前もそれにちなんで覚えられるものといえましょう(また後で登場します)。

 (ちなみに、こちらも、グルコース同様、構造としてαとβが存在します。
 なお、αとβの違いは、「最後(1番炭素)のOHが上か下か」ではなく、1番炭素のOHと、5番炭素のOHとの位置関係によって決まります(リング構造では5番炭素のOHは頂点のOになっているので、これの判別には、魚の開きのフィッシャー投影図が分かりやすいですかね)。
 同じ側(シス)ならαで、反対側の位置(トランス)ならβです。
 上のWikipedia画像左上の構造図はD-ガラクトースですが、これは、1番炭素のOHが上ならβ、下ならαになるので、上の画像ではβ-ガラクトースが描かれている感じですね。)

またもちろん、マイナーとはいえ、生体内では重要な物質でもあり、一番なじみのある話では、ABO式血液型……以前、チラッと、「あれは赤血球の表面にある抗原によって決まっている」と書いたことがありますが、その抗原というのは、実は糖が何個かつながったものであり、全血液型に共通して存在する部分に、こいつが登場します。

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https://ja.wikipedia.org/wiki/ABO式血液型より

ま、だから何だよ程度の、それだけの話なんですけどね。

甘さも、グルコース以下の、カスみたいな存在といえましょう。

3. フルクトース(果糖)

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https://ja.wikipedia.org/wiki/フルクトースより

重要度★★★★☆

甘さ(砂糖が1とすると): 1.17~1.75

五角形を形成することが特徴的で印象的な、フルクトース

こちらは、まさにその名の通り果物に多く含まれる糖で、日本語名果糖もフルクトースも、非常に分かりやすく覚えやすいネーミングですね(フルーツ→フルクトース)。

そしてこのフルクトース、なんと、甘さが砂糖よりも圧倒的に甘い

ちなみに、甘さスコアに結構な幅があるのは、取る構造の違いによるものです。

グルコースは、αやβや線状のものが行ったり来たり、水の中では常に変換し続けている」と前回書きましたが、こちらフルクトースも、水溶液中では複数の構造を取るものであって(糖は基本そうですね)、五角形フラノースと呼ばれる)と六角形ピラノースと呼ばれる;例によって名前はどうでもよし)の構造が、めまぐるしく常にいったりきたりしている感じなんですね。

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 https://ja.wikipedia.org/wiki/フルクトースより

で、五角形フラノース型の方が断然人間には甘く感じられるそうで、各構造のバランスは、低温になると五角形になりやすくなる性質があるため、低温になるほど甘くなるという仕組みになるわけです。

だから、果物は、基本的に冷たい方が甘く美味しく感じられるんですね!

とはいえ、甘さの比較データで最初参考にしようと思っていた査読付き論文(1970年と、クソ古い論文なので、やめました)では、フルクトースの甘さは砂糖と同等かやや落ちる程度となっていたので、50年の月日が経って人間の感じる甘さが変わったとも思えませんし、実際そこまでの差はないのかもしれません。

(ちなみに、上記の1970年の論文では、被験者に各種の糖を溶かした水を飲んでもらって甘さの得点(砂糖水の何倍甘いか?)をつけてもらうという、大分「ざっくりだな…」と思える研究だったようです。
 ただ、そのざっくり判断によると、別に砂糖より甘くはないとのこと…。
 Wikipediaのデータは、本に載ってるもののようで原典にはあたっていませんが、まぁもう少し科学的な、客観的な数値で判断していると期待したい限りですね。)


ちなみに、当初、今回一気に全部の糖を抑えようと思っていましたが、どうやらこのペースだと今回は辿り着かないので先出しでネタばれだけしておくと、このフルクトースとグルコースが仲良く手をつないで存在する形(二糖)が、みなさまおなじみの砂糖(スクロースと呼ばれる物質になるのです。

つまり、フルクトースは砂糖の構成成分なわけですが、グルコースが足を引っ張るのか、単体よりむしろ甘みが減っちゃうんですね。

ただこれも後ほどまた触れますが、糖が手をつないだら基本的に甘みは失われていくので、それは普通に自然な話なのかもしれません。


なお、重要度は星4.5としましたが、これは全く適当な勝手な評価です。

甘くて美味しそうだから、ガラクトースより星半個(そもそも白抜きの星が半分扱いなのも自分で書いててよく分かりませんが)増やしたろ、的な、そんなもんです(笑)。

まぁ代謝の中間物として結構顔を出してくるので、実際重要なことには違いありません。


なお、これも最後にまとめで触れようと思っていましたが、天然に存在する糖で一番甘いのは、実はこいつになります。

ただし、人口甘味料では、フルクトースを断然超える甘さの物質が存在するんですけどね。

今回はスペース的に間に合いませんが、またいずれ触れるとしましょう。

4. リボース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/リボースより

(日本語版の構造はちょっと見慣れない格好のやつなので、おなじみの表記の図を、英語版からも。)

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https://en.wikipedia.org/wiki/Riboseより

重要度★★★★★

下の英語版Riboseページの一番左のやつが、やっぱり一番見覚えある形ですね。

ずーっと前の記事でも、実は登場していました(というか、この有機化学入門講座を始めることになったきっかけ?!)。

そう、リボースという名でうっすら覚えてらっしゃる方もいることでしょう、これは、まさかの、DNA・RNAの、ヌクレオチドの一部分

1番炭素A, C, G, T(U)のいずれかの塩基がつながり、2番炭素のOHがHになったら、酸素がなくなったということでデオキシリボースになり(DNAで使われるほうですね)、別のリボース同士の3番と5番の炭素が手をつなぐることで、延々と伸びていって長~いDNAやRNAを作る……という例のあれ、この「リボース」は、実は、糖だったのです。

だから、DNAは、「ヌクレオチドから構成される」という話でしたが、実はそのヌクレオチドには糖が含まれるので、「遺伝子は糖からできている」というのも、あながち間違いではない話になります。

(もっとも、遺伝子の多様性というか種類を産み出しているのは、あくまでも、別の種類が存在して暗号の文字として使われる塩基(A, C, G, T)の部分なので、「糖からできている」ってのはやっぱり語弊がありますけどね。)


味としては、甘さの情報はありませんでしたが恐らくほぼ無味で、エネルギーを産み出すためのものというより、DNA(ヌクレオチド)を構成する物質としての方が有名(というか、それが全て)ですが、まぁ生物にとっては大切な遺伝子に含まれるものですから、ある意味グルコース以上に重要な糖ともいえましょう。

ただまぁ、別にたまたまDNAに採用されただけで、グルコースのように様々な反応を経て変換されたりなんだりしてエネルギーを産み出すみたいなそういう奥深さや特徴は何もない、平凡な分子ですけどね。

しかし、代表的な炭素5つの糖(五炭糖ともいいます)なのは間違いありません。


単糖についてはこの辺で十分かなと思いましたが(実際、高校化学で触れるのもこの程度)、まぁ名前ぐらいは聞いたことがある程度のやつら、マイナーズを、一応構造だけは見ておくとしましょうか。

5. マンノース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/マンノースより

重要度★

またグルコースのOHの場所だけ違うバージョンで、こいつは2番炭素グルコースと違う形になります。
(例によって、5番炭素から、上→下→上→下→(上 or 下)がグルコースでしたが、こいつは上→下→上→→(上 or 下)ですね。)

ただそれだけで、これまたガラッと性質が変わって、名前から推測できる気がしますが、こいつがつながった多糖はマンナンと呼ばれる物質で、蒟蒻畑でおなじみ(まぁ会社名に使われてるからなじみがあるのかもしれませんが)、人間の代謝ではあまり使われない物質なので、ダイエットに最適な糖といえる感じでしょう。

日常では割と親しみのある物質といえますが、代謝されないというのは逆にいえば生化学的には面白くない物質なので、授業とかで顔を出すことはほとんどないかもしれません。

6. アロース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/アロースより

重要度☆

続いては、3番炭素のOHがグルコースと違う形(上→下→→…)の、アロース

Wikipediaによると希少糖の中では一番研究されているらしいですが、名前も正直初めて聞いたし、どうでもよし!

あと他にも、5番炭素が違うイドース、そしてガラクトースの2番炭素のOHが反対になってるタロース、3番のグロースという冗談みたいな名前のガラクトース兄弟分子、そしてマンノースの3番炭素のOHが逆のアルトロースなんてやつらがWikipediaには存在しましたが、マイナーリーグの更に下部組織に存在するようなやつらなので、もう構造も省略です。
  

7. フコース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/フコースより

重要度★☆

こちらは、さっきガラクトースの血液型抗原の話でも、既にちゃっかり顔を出していた物質です。

何かというと、ガラクトースの6番炭素のOHから酸素Oがいなくなって、ただのCH3になったものなので、いわば、デオキシガラクトースと呼ぶこともできるやつですね。

しかし、フコース自体も、何となく耳にしたことがある物質な気がするのですが、これは、海藻に含まれることで有名なフコイダンの構成物質(フコースが綿々とつながったもの=フコースの多糖がフコイダンです)として、多少はおなじみといえる感じでしょうか。

ま、血液型でも重要だし、海藻のネバネバ成分としても有名なので、マイナーズの中では、割と光るものがあるやつといえるかもしれません。
 

8. アラビノース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/アラビノースより

重要度★

こちらは、リボースの2番炭素のOHが上下逆向きになったやつですが、まぁ、リボースさんの兄弟分子も一つぐらい触れておこうという意図で取り上げただけで、特に何もないです(笑)。

一応、非常に珍しい、天然でL体の方が多く存在する糖として有名みたいですね(まぁ、よく見たらフコースもL体メインのやつみたいですが)。

また、何となく、アラビノースって聞いたことある気もしますが、ダイエット食品なんかで注目されている感じでしょうか?

まぁ、生化学的には、マイナーではありますね。

9. リブロース

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https://ja.wikipedia.org/wiki/リブロースより

重要度★★

単糖最後は、リブロース

名前が面白い(お肉のリブロース?)からピックアップしただけで、特筆すべきことは何もない、ただの炭素5つの糖なんですけど、まぁ大学で習う生化学の話(高校生物でも習うんだったかな?名前ぐらいは資料集とかに載ってたかもしれません。光合成の章ですね)で、こいつは結構重要な位置で出てくるので名前は生命系の学生にはおなじみではありますが、特に取り立てて面白いネタはないですね。

一応、光合成の重要な中間産物であると同時に、リボースの原料としても使われています(名前も似てますし、同じ五炭糖ですしね)。


続いて二糖類、多糖類へと話を進めたかったのですが、流石に長くなりすぎているので、改めて次回へ続くとさせていただきましょう。 

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