ありがとうオリゴ糖

これまでの記事で、1つの分子として存在する単糖(代表例:グルコース(主役)、フルクトース(甘い)、ガラクトース(メジャーの中のマイナー)、リボース(遺伝子で使われてる!)などなど)、単糖が2つつながった二糖(代表例:スクロース(グル+フル、砂糖!)、ラクトース(ガラク+グル、乳製品!)など)、そして3つつながった三糖(無名だけど一例:ラフィノース(ガラク+グル+フル))なんかに触れていました。

しかし、今さらながらの想定質問として、「『1つの分子として存在』って何よ?そもそも『つながる』ってどゆこと?例えばグルコースとフルクトースを瓶の中に入れてシェイクしたら、そいつらが手をつないで、砂糖ができあがるってこと?」という疑問を感じる方がいらっしゃるかもしれませんが、これは、そうはなりません。

結局、分子というのは、「炭素(糖の場合、酸素と水素もありますけど)が手をつないで、それ自身で手つなぎが完結して、安定して存在している形」のことであり、今までペタペタ貼っていた構造の図を見ると分かる通り、「分子」として名前付きで存在する物質は全て、炭素原子Cに着目すれば全炭素Cがそれぞれ腕を4本出して別の原子と手をつないでいますし(まぁ水素Hは図からは省略されるので4本腕が見えてないこともありますが、それは表示されてないだけですね)酸素Oも必ず2本の腕を伸ばして何かと結合している…といった感じで、過不足なく、各元素特有の本数の腕を伸ばして(=余っている腕が1つもない)、1つの物質として落ち着いて存在しているわけです。

つまり、単糖というのは、その形でもう完全に安定しているので、例えばグルコースとフルクトースをボトルの中で混ぜても、あるいは両方を同じ水の中に溶かしたりしても、決して砂糖ができあがることはありません。

逆にいえば、砂糖も既にグルコースとフルクトースが手をつないだ形で安定していますから、砂糖をハンマーで砕いても、その衝撃でグルコースとフルクトースに分かれるなんてことはありませんし、水に溶かしても、砂糖のまま溶けて、砂糖水になるだけなわけです。
(もちろん砂糖を砕けば砂糖の粒は小さくなりますが、それは、砂糖分子1000万個の塊だったのが10万個の塊にまで小さくなったとかそういうことであって、あくまでも砂糖分子は砂糖分子のまま存在し続けているんですね。)


じゃあどうやれば別の分子になるのか?というと、これは、分子レベルのミクロの世界の働きマン、おなじみの超有能物質である酵素(タンパク質)の力を借りるということになるわけです。

つまり、グルコースとフルクトースと、さらに「スクロース合成酵素」という酵素を一緒に混ぜてやれば、この酵素グルコースとフルクトースそれぞれの特定の位置にある-OHをつなぎあわせて(おさらいしておくと、2つの-OHから、H2Oをいけにえとして奪い取って周りに捧げることで、-O-という新しい結合が爆誕するわけですね。具体的には、グルコースの1番炭素のOHと、フルクトースの2番炭素のOHです)スクロースが合成される(<グルコース>-O-<フルクトース>という形)わけです(また、スクロース1分子ができるごとに、副産物として、水分子も1つ生じます)。
(なお、実際は「仕事をしやすい場」を整えなければいけないので、例えば真水じゃなくて体液に近い濃度の塩水じゃないとこの酵素は上手く働けないとか色々ありますが、話を単純化すると、材料と酵素があれば反応が起きる、という感じですね。)

逆に、スクロース(砂糖)と「スクロース分解酵素」という消化酵素の一種(実際はスクロースを分解するだけでも色々なものがありますが、スクラーゼという名前のついたものが代表例として挙げられます。○○分解酵素は、一般的に、「○○アーゼ」という名前が付いていることが多いです)とを混ぜてやれば、砂糖分子が、グルコースとフルクトースに改めて別れて存在するようになる(先ほどの合成とは逆の反応なので、この反応には、水分子が必要)ってことですね。

基本的に人間は消費者であり、物を分解することで生きている生き物ですから、(上記の通り、大抵の場合、分子を分解するときには水分子が必要になることがほとんどなので、)そういう意味でも人間には水が重要水を飲むことが欠かせないんですね。
(以前、お酒の分解にも水分子が必要、なんて話もしていましたね。)


そんな感じの前フリでまた長くなりましたが、こちらは次に触れる予定の多糖類の話にも多少からんでくるような話だったので、改めて今回触れておきました。

いい加減、その本題の多糖類へと話を進めていきましょう。


…と思いきや、もう一つだけ余談、身近でよく聞く糖として、ちょうどこのタイミングで触れておきたかったやつ、オリゴ糖について!

糖を問うシリーズ番外編:オリゴ糖 

オリゴ糖というのは、これまで見てきたあらゆる糖(ブドウ糖、果糖、乳糖など)とは完全に違い、これは実は固有名詞ではないのです。

オリゴというのは、単一を意味する「mono(モノ)」、多数を意味する「poly(ポリ)」と同じ類の言葉(ギリシャ語由来の接頭辞)で、oligoは「少数」を意味する言葉になります。

なので、「オリゴ糖」という名前の分子が存在するのではなく、これはいわば日本語にすると「少数の糖がつながった糖」としか主張していない名前で、具体性に欠けるグループ名でしかないんですね。
(よって、「これがオリゴ糖の構造です」という画像は存在しません。あるとすれば、「これがオリゴ糖の一例、○○という名前の糖の構造です」となりますね。)

ちなみに僕は玄米を食べ始める前、食パンを食べていた頃に、ちょうどスーパーで見かけた「ありがとうオリゴ糖」という商品(まだ売ってるのかな?と思って検索したら、むしろCMのダンスが有名みたいで、逆に知名度は伸びてる感じでしょうか。ありがとうオリゴ糖って、ギャグというか、例の、えなりかずきさんの「こんとんじょのいこ」(「簡単じゃないか」のえなり風発音)の、ありがとうバージョンみたいで笑えますね)を、「たまにはハチミツ以外にも手を出してみよう。体にも良さそうだしね」という感じで試してみましたが…

f:id:hit-us_con-cats:20210714061457p:plain

熊手蜂蜜の商品ページ(https://www.kumate.co.jp/products/archives/35)より

ハチミツに慣れていた舌からすると、衝撃的でした。

残念ながら悪い方に衝撃的で、「うわぁ!何じゃこりゃ!?想像してたのより1億倍ぐらい味がなくて、何か気持ち悪い!ぶっちゃけマズい!!味のないスライムを食べているようだ!!」という感じで、ヤベェもん買ったか?!と一瞬思ったものの、慣れてきたら、まぁ何というか上品な甘さともいえる感じで、基本的に味より機能を重視する合理主義者の僕にとっては、「まぁ腸に届いてビフィズス菌のエサになるらしいしね、一瞬驚いたけど、冷静によく考えたら落ち着きのある大人なテイストで悪かぁないし、結構いい商品なんじゃあないでしょうか」という感じで、激ヤバな第一印象から一転、その後もしばしば買っていたぐらいです。

ファンケルの発芽玄米を買うまで(かつ、大学から徒歩圏に住み始め、時間も完全に自分の自由が利くようになって、昼は自宅に戻って食べていた学部3年生以降のことなので、そんなに長期間ではないですが)の、昼に毎日食パンを食べていた間、ハチミツと交互(というか、切れかけたときに、セールになってた方を選ぶ)に買っていて、毎度、オリゴ糖からハチミツに切り替わったときは、
「あっっっま!!ハチミツってこんなに甘かったか?!」
…となり、ハチミツからオリゴ糖に切り替わったときは、
「味、無(な)っっっ!こんな、なんつーかただの粘性液体を食べてる感じだったか…?!」
と、常に新鮮な驚きを感じて楽しんでいたことを今でもよく覚えています。

…ということで、体にいいといわれるオリゴ糖ですが、実際オリゴ糖」という名前の糖(固有名詞)は存在しませんよ、というお話でした。

ありがとうオリゴ糖やその他オリゴ糖系のシロップは、(上記画像にもあった通り)イソマルトオリゴ糖という、マルトースに似た形の二糖や三糖が含まれるようですが…

 

f:id:hit-us_con-cats:20210714062013p:plain

昭和産業の解説ページ(https://www.showa-sangyo.co.jp/pro/glucose/isomalto01.html)より

そんな感じで、オリゴ糖というのは、二糖から、まぁ多くても概ね十個ぐらいの単糖がつながったものの総称なわけですね(所詮「少数の」という意味ですし、定義すら曖昧です)。

だから、いうなれば、同じく二糖の砂糖も、オリゴ糖の一種…??

まぁ流石に砂糖(二糖)だけが含まれる物質をオリゴ糖と呼ぶのは語弊がある気もしますが、一応、他にも三糖以上の糖を混ぜれば、砂糖を含んだものでも(仮に砂糖がメインであっても)「オリゴ糖配合!」という表記は決して詐欺にはならないと思うので、成分表示には注意した方がいいかもしれませんね。
(まぁそんな詐欺紛いのことをしたら信頼を失うだけですし、そんな消費者庁激オコ案件になりかねないことをする食品企業があるとも思えませんが。)


…と、本当は今回多糖類に話を進める予定でしたが、思いの外オリゴ糖の話が長くなったので、次回にしましょう。

ついでなので、もう2, 3、「固有名詞じゃないので注意」糖だけ挙げて、今回はおしまいとしますか。

糖を問うシリーズ番外編その2:液糖 、黒糖、グラニュー糖、ザラメ糖等々

液糖は、ジュースとかの成分表示で「果糖ブドウ糖液糖」という表記でめっちゃ見かける気がする、何となく身近なものですが、果糖やブドウ糖が固有名詞(代表的な単糖)である一方、液糖というのもまた、オリゴ糖と同様、そういう名前の特定の分子は存在しません

基本的に、砂糖やブドウ糖やその他の糖を加工して、液状化しただけの糖というものですね。

なお、成分表示で散見される「果糖ブドウ糖液糖」というのは実は一単語で、食品業界で使われる用語なんですね。

www.suntory.co.jp

上記サントリーのQ&Aページによると、ブドウ糖の割合が果糖より多いと、「ブドウ糖果糖液糖」と表記されるとのことです。

でもまぁ、何度も触れてきたとおり、果糖(フルクトース)の方がブドウ糖より遥かに甘い物質なので、大抵は「果糖ブドウ糖液糖」なんじゃないかな、って気もしますが。


あとは黒糖なんかも「○○糖」という単語ですが、これもそういう名前の固有分子があるのではなく、「砂糖を煮詰めてカラメル色に焦がしたもの」というものにすぎない、いわば甘味料の一種ですね。

また、ラニュー糖とかザラメ糖とかも、サトウキビから砂糖成分をどれだけ精製や加工したかの違いで、要は白米と玄米みたいな違いにすぎず、広い意味ではどちらも「物質としてはお米です」というのと同様、どちらも単に砂糖の一種になります。

まぁブドウ糖が単糖の分子、砂糖が二糖の分子、でも液糖や黒糖は加工されただけのものだし、オリゴ糖はただのグループ名で具体性に欠ける……なんてことを知ってても別に生活が豊かになるわけでも何でもないので、マジでどうでもいい話でしかないんですけどね。


では次回こそは、多糖類の話に参りましょう。

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村