カルシウムchを塞ぐと…?

片頭痛のお薬について、代表的な治療薬トリプタン系、そしてそれに続いて予防薬の方も見ており、以前見ていたモノクローナル抗体系に続き、前回はβブロッカーの記事を参考にさせていただいていました。

 

予防薬はまだいくつか効果的なグループがあり、ちょうど上手いこと程よい長さだったため、今回も引き続き片頭痛予防薬としても使われるナイスな低分子を紹介していくといたしましょう。

 

今回は、カルシウムチャネル・ブロッカー

 

my.clevelandclinic.org

 

まぁ「チャネル」については、もういつの間にか結構前になっていますが、呼吸の反応を見ていたシリーズで、「イオンポンプとイオンチャネル」みたいな感じで紹介していましたが…

 

con-cats.hatenablog.com

 

…まぁ細胞ってのは膜で仕切られており、イオンは自由に移動することができないようになってるんですけど、「ポンプ」は濃度勾配に逆らってイオンの移動を可能にするスゴいやつで、「チャネル」は濃度勾配に逆らってまでイオンを動かすことはできないものの、イオンの通り道となり、細胞間でのイオンのやり取りに非常に重要な役割を果たしているタンパク質ですね。

 

この分野だとなぜか「チャネル」と表記されるものの、テレビやまぁ今時はYouTubeとかでもおなじみ「channel」と全く同じ単語なので、普通に「イオンチャンネル」と呼んでも間違いではない感じですがそれはともかく、「カルシウムチャネル」は言うまでもなく、カルシウムイオンの通り道となるもので、「カルシウムチャネル・ブロッカー」は当然、この通り道を塞ぐ分子になっているという感じになります。

 

医療薬学的なまとめを、今回も早速上記クリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事からお借りさせていただきましょう。

 

カルシウムチャネル遮断薬(Calcium Channel Blockers)
(※医学分野では、「カルシウム拮抗薬(拮抗剤)」という日本語表記の方が一般的かもしれません)

カルシウム拮抗薬は、体内でのカルシウムの利用を制限する薬の一団です。細胞がカルシウムを使う方法を遅らせることで、血圧を下げ、心臓のリズム障害などを予防することが可能になります。

 

概要

カルシウム拮抗薬とは何?

カルシウム拮抗薬とは、必須ミネラルであるカルシウムの体内での利用を制限する薬剤のグループです。心臓や循環系が機能するためにはカルシウムを必要としているため、この薬は高血圧や心臓のリズム障害や、その他様々な症状を治療します。

 

どうやって作用するの?

カルシウムは電解質であり、水に溶けるとプラスの電荷を帯びます。体内では、電解質に含まれるイオン(電荷を持つ原子のこと)を、細胞内外に物質を輸送するために使っています。身体は常にバランスを取ろうと機能し続けています。つまり、カルシウムイオンが細胞内に入るときはナトリウムイオンが出て行くし、逆もまた然りという具合です。

こういったイオンは、チャネルを使って細胞に出入りしますが、これはちょうど細胞内部への玄関口のような役割を果たしています。こういったチャネルには一種のセキュリティ機能が備わっており、適切な電荷の種類(プラスかマイナス)と大きさを持つイオンだけが出入りできるようになっているのです。

カルシウム拮抗薬は、特定のカルシウムチャネルが身体の特定の部位にのみ存在する傾向があるという事実を上手く利用しています。これにより、どのチャネルに作用するかによって、薬の標的を定めることが可能になっているわけです。

問題となっている細胞には、それぞれ多くのカルシウムチャネルが存在しています。適切な投与量であれば、カルシウムチャネル遮断薬(場合によってはカルシウムチャネル拮抗薬)は、その一部―全てではありませんが―をブロックするだけです。これにより、カルシウムを細胞内に取り込む方法が少なくなるため、細胞がカルシウムを使用する速度が遅くなります。

 

この薬はどんな症状を治療するの?

カルシウム拮抗薬の主な用途は、心臓および循環器系疾患の治療です。アメリカでは、以下の治療薬として既に承認されています:

  • 高血圧症
  • 不整脈(不規則な心拍リズム)
  • 胸の痛み(狭心症
  • 冠動脈痙攣縮
  • 肥大型心筋症(心臓の肥大)
  • 肺高血圧症
  • くも膜下出血(脳と頭蓋骨の間の空間への出血)

正式に承認された用途に加えて、カルシウム拮抗薬は適応外で処方されることも多いです。これは、ある疾患の治療薬として正式に承認されていないものの、それでも安全に治療できるというエビデンスがあるということを意味しています。適応外処方は合法的な慣習であり、医療従事者が安全かつ責任を持って行う限り、医学的に許容されている行為です。

カルシウム拮抗薬の適応外使用には以下が含まれます:

また、カルシウム拮抗薬には、若い内から高血圧になると重篤化してしまう疾患を遅らせたり予防したりする効果がみられる可能性があるという点からも、研究が進められています。こういった病気には、認知症パーキンソン病アルツハイマー病が含まれます。

 

カルシウム拮抗薬は一般的に処方されているの?

カルシウム拮抗薬は、特に高血圧に対して、非常に一般的に処方されています。アメリカでは毎年数百万人の成人がカルシウム拮抗薬の処方を受けています。

 

カルシウム拮抗薬には違う種類があるの?

カルシウム拮抗薬には2つの主要なタイプがあります。

  • ジヒドロピリジン(dy-hy-dro-py-rid-eens(英語だと「ダイ・ハイ・ドロ・パィ・リドゥ・ィーンズ」って感じですね)と発音します)。このタイプは血管を標的として弛緩させるため、高血圧の治療に非常に効果的です(ただし、クモ膜下出血を治療するニモジピンは例外です)。
  • 非ジヒドロピリジンアメリカではジヒドロピリジン系以外のカルシウム拮抗薬が2つ承認されています。この薬は血管だけでなく心筋も標的とし、心拍障害の治療に有効です。

 

 

リスク/メリット

カルシウム拮抗薬の利点は何?

カルシウム拮抗薬にはいくつかの利点があり、そのおかげもあって一般的に処方されています。

  • 効果的である。カルシウム拮抗薬はあらゆる年齢や人種の方に有効で、関連する多くの心臓や循環器の問題を治療することが可能です。
  • 特定の病態を対象とすることができる。使用される薬の種類によって、異なる効果が発揮されやすいです。
  • より良い選択肢となり得る。多くの薬は血圧をコントロールするのに役立ちますが、中には特定の人々にとって良い選択ではないものもあります。これは、他の健康状態、既に服用している薬、生活環境やその他の要素が原因で起こることがあり得るものです。そういった場合には、カルシウム拮抗薬が治療薬として適しています。
  • 他の薬と併用できる。特定の治療薬では、カルシウム拮抗薬と他の薬、特に高コレステロールなどの症状を治療する薬が併用されています。併用療法を行うことで、薬が服用しやすくなり、複数の問題を一度に治療することができます。

 

この薬で起こり得る副作用や合併症のリスクは何?

一般的に、カルシウム拮抗薬には以下のような副作用の可能性があります:

ジヒドロピリジン系薬剤:

最も一般的な副作用は以下の通りです:

  • ふらつき感やめまい
  • 顔面紅潮
  • 頭痛
  • 手足のむくみ
非ジヒドロピリジン系薬剤

これらの薬は以下を引き起こしやすいです:

  • 便秘
  • 遅い心拍(徐脈)
  • 心臓の血液ポンプ機能の低下

カルシウム拮抗薬の多くは、歯茎が歯の周辺で過成長してしまう、歯肉過形成を引き起こす可能性があります。また、胃食道逆流症(GERD)や胸やけの症状を増強させてしまうこともあるかもしれません。

 

この薬を服用していて、飲み忘れた場合はどうすべき?

  • カルシウム拮抗薬が有効で安全であるためには、服用量が非常に重要です。そのため、この薬の服用を忘れた場合、服用量を2倍にすることさえ危険な場合があるため、決して余分に服用することで「遅れを取り戻そう」とすべきではありません。これは特に、心拍のタイミングと強さに強く影響する、ベラパミルに当てはまります。これはつまり、飲み過ぎると命に関わる可能性があるということです。

 

この薬を服用すべきではない理由は何?

一般的に、特定の心臓疾患や低血圧の患者さんはカルシウム拮抗薬を服用できないことがあるかもしれません。その他、この類の薬を服用できないかもしれない理由としては、妊娠中、心臓病、肝臓病、または特定のタイプの不整脈が挙げられます。

 

カルシウム拮抗薬は他の薬と相互作用するの?

カルシウム拮抗薬は多くの薬と相互作用する可能性があります。特に血圧を下げる薬や心拍数に影響を与える薬では顕著です。また、カルシウム拮抗薬とグレープフルーツ(果実でもジュースでも)を一緒に摂ることも、この薬の体内吸収に影響を及ぼす可能性があるため、避けるべきといえます。

一般的に、薬の相互作用に関する情報は、かかりつけの医療従事者または薬剤師に尋ねるのが最善です。相互作用について質問がある場合は、遠慮なくご相談ください。

 

回復と見通し

カルシウム拮抗薬はどのくらい服用できるの?

一般的に、口から服用するカルシウム拮抗薬は、長期間使用しても安全です。多くの場合、永久的に服用することが可能です。しかし、医療従事者に相談せずに突然服用をやめることは絶対にしてはいけません。

 

この薬の服用をいつかやめることはできる?

場合によっては―薬を飲む理由にもよりますが―これ以上薬を飲まなくてもいいところまで健康状態を改善できることはあるかもしれません。食事や運動によって血圧を下げることがその一例です。

そのような場合は、医療従事者に相談すれば、カルシウム拮抗薬の服用を中止する方法を考えてくれるでしょう。決してこの類の薬の服用を急にやめてはいけません。

しかし、不整脈や心肥大のような、カルシウム拮抗薬(またはその症状に対する別の薬)をいつまでも飲み続けなければならない症例も存在します。

 

いつ医師に連絡するか

いつ医療機関を受診すべき?

カルシウム拮抗薬の服用に関連した電話や予約のタイミングについては、かかりつけの医療従事者がアドバイスしてくれます。一般的に、各種症状、特に心臓や循環器系に関連する症状に急激な変化があった場合は、電話または予約を入れてください。

以下のような症状がある場合は、直ちに医療機関を受診してください:

  • 息切れ
  • 胸の痛み、特に痛みの強さや頻度が突然変わるもの
  • 不規則な心臓のリズム(不整脈)または動悸(鼓動が高鳴ったり、ドキドキしたり、拍動が飛ぶのを感じる状態)
  • 不意に失神したり、ふらつきやめまいが何度も起こる場合

また、以下のようなアレルギー反応に関連する症状がある場合は、直ちに治療に当たってください:

  • 原因不明の中等度から重度の発疹または皮膚の炎症
  • 顔の、特に目、唇、もしくは舌、または腕や脚の腫れ

 

作用する対象が違うだけで、「細胞内の特定の部位をブロック」することには変わりませんから、概ねベータ・ブロッカーと同じような話でした。

 

今回も、アイキャッチ用に分子の構造式をウィッキー先生からお借りさせていただきましょう。

 

代表例のリスト表の一番上に挙がっていた、アムロジピンの構造がこちらです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/アムロジピンより

六角形リングであるベンゼン環の頂点のひとつが窒素Nになっているのが「ピリジン」なので、全ての「ジピン」には中央にあるこのリングがある感じですね。

 

そこまで「片頭痛の予防」に特化していたわけではないですし、やはりどちらかといえば高血圧の薬のイメージが強いですが、逆に言えば高血圧も一緒に抑えられるということなので、片頭痛の予防に使うのもありかもしれません。

 

また、途中で出てきた「(高血圧の薬は)グレープフルーツジュースと一緒に飲んではいけない!」というのも有名な話ですね。


ずっと前触れたことがあった気がするけど…と思ったら、めちゃくちゃ昔のサプリメント記事(↓)で触れたことがありました。

con-cats.hatenablog.com


「言われなくてもグレープフルーツジュースなんて誰も飲まなくない?(笑)」と毎度思えるのですが、当然、↑の記事でも同じことを書いていて我ながら笑えました。

 

では次回も、また別の片頭痛予防薬グループを見ていこうかなと思います。

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