トリプタン…どんな薬なんだろう?

セキツイ動物の話から脳脊髄、神経伝達物質を経て、ずっと参考にさせていただいているクリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事で目に付いた泌尿器系の話やら頭痛の話やらに広がり続けている感じですが、頭痛の治療法として最近の記事では鍼治療やカイロプラクティックといった代替療法的なものを見ていましたけれども、その前にはオードリーの若林さんが強く推奨して、頭痛界隈がザワザワするほど話題になっていたらしい、一般名ガルカネズマブなんかも話に挙げていました。

片頭痛の予防薬としてすこぶる効果の高い薬という話ですが、今回は頭痛の話でもう一つ何度も目に付いていた、トリプタン系の薬剤について、名前が可愛らしくて面白そうだというただ一点の理由で(笑)、そちらに脱線させていただこうと思います。

 

幸い僕は(中高生の頃は寝不足が多いこともあってちょいちょいありましたが、最近はめっきり)頭痛もないので、特に気になるわけでも知っておきたいというわけでもないんですけど、まぁ頭痛は誰でもいつでも発症するものですし、知っておいて損はないといえましょう。

 

妙に可愛い名前のこちらトリプたんは、一体どういう薬なのか…?今回も早速例によって↓のクリ・クリ記事を翻訳引用させていただく形です。

 

my.clevelandclinic.org

 

トリプタン系薬剤(Triptans)

トリプタンとは、脳内における血液の循環の仕方や、脳が痛みのシグナルを処理する方法を変えることで片頭痛を治療する薬の一種です。片頭痛の第一選択薬であり、月経時片頭痛群発頭痛を治療できるタイプのものもあります。また、錠剤、点鼻薬、注射薬など、様々な形態の薬剤が存在します。

 

概要

トリプタンって何?

トリプタンは片頭痛を治療する薬です。片頭痛の治療の第一選択薬であり、関連する頭痛症状を治療することも可能です。片頭痛を予防することはできませんが(2、3の例外を除いて)、片頭痛が起こっている間、痛みを止めてくれるものになっています。

片頭痛は単なる酷い頭痛ではありません。片頭痛というのは、痛み、視力低下や歪み、吐き気、光や音に対する過敏性、その他多くの症状(特に前兆のある片頭痛)を引き起こす、脳に関連した症状なのです。これらの症状に耐えられず、片頭痛が終わるまで暗くて静かな場所で横になるしかない方もいらっしゃいます。

1980年代に発見されたトリプタンは、片頭痛の治療と理解にキーとなる大きな進歩をもたらしてくれました。1990年代初頭、スマトリプタン(商品名: イミトレックス®)がヨーロッパおよびアメリカで片頭痛の治療薬として初めて承認され、その後もいくつかの薬が続いています。

 

トリプタン製剤はどんなもの?

現在、7種類のトリプタン系薬剤がアメリカ食品医薬品局FDA)から承認されています。全てのトリプタン系薬剤は片頭痛を治療しますが、いくつかのものは特定のタイプの片頭痛を治療します。また、小児やティーンエイジャー向けの治療薬として承認されているものもあります。このタイプの薬を簡単に見分ける方法として、全ての薬の名前が「~トリプタン」で終わることが挙げられます。

以下の7種類が、FDA承認済みのトリプタンです:

  • アルモトリプタン(商品名: アクサート®)。経口剤(口から飲む錠剤)です。(この薬は、この商品名ではもうアメリカでは入手できませんが、ジェネリック医薬品はまだ使用されています。)
  • エレトリプタン(商品名: レルパックス®)。経口剤です。
  • フロバトリプタン(商品名: フローヴァ®)。経口剤です。
  • ナラトリプタン(商品名: アマージ®)。2種類の経口剤として処方されます。
  • リザトリプタン(商品名: マクサルト®)。経口剤です。
  • スマトリプタン(商品名: イミトレックス®、オンゼトラ®、トシムラ®)。経口剤、経鼻剤(スプレーまたは粉末を鼻から服用)、皮下注射剤(皮膚の表面に浅く注射)があります。非ステロイド性抗炎症薬のナプロキセンと一緒に服用する経口剤(トレキシメット®)もあります。
  • ゾルミトリプタン(商品名: ゾーミッグ®)。経口剤と経鼻剤があります。

 

トリプタンはどう働くの?

トリプタン系薬剤は、脳が片頭痛を管理する一助となることで作用します。トリプタンにはいくつかの異なる作用があり、その作用が、この薬剤がなぜ働くかに寄与し得るものとなっています。しかし、トリプタンの作用を理解するには、なぜ痛みを感じるのか、その背景となるプロセスを知ることが役立ちましょう。

 

痛みの仕組み

全身の神経は、実際には痛みを感じません。その代わり、体内や体表に傷害や病気の可能性があるサインを感知すると、神経は脳にシグナルを送るのです。脳はそのシグナルを受け取り、痛みの感覚に変換します。

また、脳には神経終末がないため、痛みを感じる信号を脳自身が受け取ることもありません。これが、研究者が片頭痛の仕組みをまだ完全には解明できていない理由のひとつになります。真実の説明をするためには、恐らく複数のプロセスの関与を考える必要があり、そのいくつかは以下の通りです:

  • ニューロンの活性化ニューロンは神経系細胞の一種であり、脳、脊髄、神経を構成しています。片頭痛は、脳が片頭痛の症状、特に痛みへと変換する形で、特定のニューロンを活性化させているようです。
  • 血液循環片頭痛には血管幅の変化が関与しているようで、これにより血管を流れる血液の量が影響を受けます。トリプタン系薬剤は血管の幅に作用するので、この説を支持しているものだと言えましょう。
  • 炎症。炎症というのは、身体の自己防衛と自己修復のプロセスの一部です。片頭痛には、炎症を引き起こすあるいは助長する化学物質が関与しているようです。

 

トリプタンはそのプロセスにどう影響するのか

神経伝達物質は、神経系の様々な部分にある細胞同士をつなげています。この細胞群には受容体があります。受容体というのは鍵穴のようなもので、神経伝達物質がその鍵です。適切な神経伝達物質が適切な種類の受容体にはめ込まれると、細胞が活性化され、特定の仕事をするように指示が送られます。

トリプタンは主に3種類のセロトニン受容体を活性化します:

  • 5HT1B受容体: この受容体は脳の血管の幅をコントロールし、血管を流れる血液の量を変化させます。これは血液循環に影響を及ぼすものであり、この作用が、研究者に、トリプタン製剤を開発させる最初のきっかけとなりました。
  • 5HT1D受容体: この受容体は、脳の特定の部分から神経伝達物質が放出される仕組みに影響を与えます。影響を受ける脳の部位は三叉神経系で、これは痛みの感じ方に関与しています。
  • 5HT1F受容体: この受容体も脳の神経伝達物質の放出に影響を及ぼし、痛みのシグナル伝達を制限します。

専門家は片頭痛について多くのことを理解していますが、こういったプロセスや部品がどのように組み合わさっているのかを理解するためには、さらなる研究が必要です。それが将来、予防療法を含む、より効果的な片頭痛治療につながることでしょう。

 

トリプタンはどんな症状を治療するの?

トリプタン系薬剤は、前兆のあるものもないものも含む片頭痛、そして群発頭痛を治療します。どちらがご自身に合っているかは、かかりつけの医療従事者にお尋ねください。

 

適応外処方とは何?

「適応外処方」とは、医療従事者が、ある疾患の治療薬として特定の承認は得ていないものの、効果がある可能性が非常に高く、問題を引き起こす危険性がほとんどない医薬品を処方することです。適応外処方は、合法的、倫理的であり、医学的に推奨される行為となっています。

トリプタン系薬剤は、全て非常に類似した仕組みで作用するため、適応外処方が一般的な薬です。承認されている薬が効かなかったり、問題のある副作用を引き起こしたりした場合、担当の医療従事者が代替薬として適応外の薬を処方することがあるかもしれません。同様に、ほとんどのトリプタン系薬剤はティーンエイジャーの治療薬として承認されていませんが、それでも医療従事者はティーンエイジャーに適応外処方をすることが可能です。

 

トリプタンは一般的に処方されているの?

アメリカ医療研究品質局によると、2020年(入手可能なデータのある最新の年)には95万5000人がリザトリプタンを、166万人がスマトリプタンを処方されています。つまり、アメリカでは、毎年数百万人がトリプタンを服用していることになるわけです。

 

リスク/メリット

トリプタンの潜在的なメリットは何?

トリプタンは他の薬に対して非常に多くの利点を有するため、片頭痛の治療において画期的なブレークスルーとなりました。その利点には以下が含まれます:

  • 副作用が少なく、重症度も低い。トリプタン系薬剤は、片頭痛の治療に使用される旧来の薬剤に比べ、副作用が遥かに少ないです。また、トリプタン系薬剤の副作用は、一般的にそれほど重くもありません。
  • 中毒性がない片頭痛を治療する他の多くの薬、特にオピオイド鎮痛薬には中毒性があります。トリプタンはそうではありません。
  • 安全である。一般的に、トリプタンは非常に安全な薬物です。特にスマトリプタンは、一部の国(ドイツやイギリスなど)では店頭販売(OTC)が許可されているほど安全です。
  • 多くの剤形がある。トリプタンには、口から飲む通常の錠剤や顆粒錠剤、鼻腔スプレー、鼻腔パウダー、そして注射剤など、様々な形があります。

 

トリプタン製剤の考えられるデメリット、副作用、合併症には何がある?

トリプタンにはいくつかの副作用の可能性があります。また、特定の疾患や健康状態にある場合など、特定の理由でトリプタンを服用できないこともあります(これらは「禁忌」と呼ばれます)。

トリプタン系薬剤のはっきりした弱点は、片頭痛を予防できないことです。唯一の例外は月経時片頭痛です。一部のトリプタン系薬剤は、生理が始まる2日前に服用すれば、月経時片頭痛の予防に役立ちます(この手の薬剤の予防的使用方法については、かかりつけの医療従事者から具体的な指示があることでしょう)。

トリプタン系薬剤のもう1つの考えられる弱点は、服用頻度です。片頭痛を和らげるために複数回の服用が必要な方もいらっしゃいます。トリプタン系薬剤の中には服用頻度に制限があるものがあり、あまり頻繁に服用しすぎると、副作用を引き起こしたり、長期的な効果が薄れたりすることがあります。服用回数が多すぎると、頭痛の頻度が悪化することさえあり得ます。

 

トリプタンの副作用

トリプタンの副作用には以下が含まれます:

  • 胸の痛み(まれ)
  • めまい
  • 眠気または疲労
  • 顔面紅潮
  • 吐き気
  • 首の痛み
  • 発汗
  • 手足のピリピリ感、しびれ、または「ピンや針が刺さったような」感覚(知覚異常)
  • 脱力感

 

回復と見通し

トリプタンはどのくらい服用できるの?

トリプタンは常用する薬ではありません。これは「救助」薬であり、つまり片頭痛から自分を「救う」ために服用する薬です。何年も、あるいは何十年も、必要に応じてトリプタンを使用できる方もいらっしゃいます。

また、年をとるにつれて片頭痛の回数が減ることも一般的です(特に、女性や出生時に女性と割り当てられた方であれば、閉経後)。そういった方々は、片頭痛が自然になくなるか、頻度が非常に少なくなるため、単にトリプタンを服用する必要がなくなることがあるかもしれません。

 

トリプタンを服用していても、仕事や車の運転はできる?

トリプタンは仕事や運転の能力に影響しません。実際、片頭痛のせいで仕事や車の運転ができない多くの方は、トリプタンが効いていれば仕事を続けることができています。

 

トリプタンを服用できない理由は何?

トリプタンを服用できなくなるかもしれない理由には、以下が挙げられます:

  • 薬物相互作用。トリプタンは、エルゴタミンが含まれる片頭痛治療薬など、他の薬と相互作用する可能性があります。薬物相互作用についてかかりつけの医療従事者がアドバイスできるように、服用している全ての薬、ビタミン、サプリメントを必ず伝えるようにしてください。
  • 心臓や循環器系の問題に関する既往歴やリスク。心臓病、管理されていない高血圧症、または末梢動脈疾患(PAD)がある場合は、トリプタンを服用できないことがあるかもしれません。また、不整脈(不規則な心拍リズム)、心臓発作、脳卒中、または一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴やリスクがある場合にも、かかりつけの医療従事者から服用を控えるよう助言されることがあります。
  • 妊娠中または授乳中。妊娠中の方、妊娠の可能性がある方、または授乳中の方は、トリプタンの使用についてかかりつけの医師に相談する必要があります。

 

いつ医師に連絡するか

いつ医療従事者に連絡すべき?

トリプタン製剤の副作用で生活に支障が出たり、トリプタン製剤の効果がなくなったりした場合は、かかりつけの医療機関に連絡してください。

 

医師の診察を受ける必要があるのはどんな時?

トリプタンの重篤な副作用は、起こり得ますが極めて稀で、この薬を服用した方の1%未満にしか見られません。心臓や脳卒中に関連する症状が出た場合は、直ちに医師の診察を受ける必要があります。

心臓に関連する症状には以下が含まれます:

  • 胸の痛みや不快感(トリプタンに関連した正常な感覚と問題を示唆する感覚との違いについて、かかりつけの医療従事者が説明してくれます)。
  • 動悸
  • 心拍数が速すぎる(頻脈)、または遅すぎる(徐脈)ことを含む、不規則な心拍リズム
  • 息切れ(呼吸困難)

脳卒中に関連した症状、特に片麻痺がある場合は、助けを求めてください。片麻痺(片側の脱力、しびれ、または麻痺)が片頭痛の症状なのか、脳卒中の症状なのかを見分けることは不可能であり、様子を見ていると治療が遅れ、脳の永久的な損傷や死につながる可能性があります。

片頭痛は、脳卒中と似た多くの症状を引き起こします。このような症状があり、かつこれまでに片頭痛を起こしたことがない場合は、今すぐに救急医療が必要です。

片頭痛の既往があり、脳卒中のような症状がある場合は、用心しすぎるに越したことはなく、医療機関での治療を受けるのが最善です。医療機関片頭痛と診断された後、緊急治療が必要であることを示してくれる注意すべき症状について、医療従事者と相談するようにしてください。

 

その他のよくある質問

片頭痛に最適なトリプタンは何?

片頭痛に最適なトリプタンは個々人によって異なります。最も処方されているのはスマトリプタンですが、人によっては合わないこともあります。かかりつけの医療従事者が、あなたのニーズに合った適切なトリプタン―および経口、経鼻、注射かそれ以外かという、適切な薬剤の形―を見つける手助けが可能です。

 

クリーブランド・クリニックからのメモ

トリプタンが開発される前は、片頭痛の治療は非常に困難でした。現在では、何百万人もの人々がこの薬のおかげで片頭痛の症状から解放されています。片頭痛があっても、その症状で苦しむ必要はありません。かかりつけの医療従事者や片頭痛の専門家に、トリプタンがご自身の助けになるかどうかを相談してみてください。片頭痛が治まるまで、その日一日を思い通りに過ごすか、世界から隠れて過ごすかという違いは、トリプタンによってもたらされるかもしれませんよ。

 

意外と歴史がある、画期的な素晴らしい薬だったんですねぇ~。

流石は名前が可愛いだけありました(笑)。

 

記事にもあった通り、様々なバリエーションのある薬のようですけど…

https://en.wikipedia.org/wiki/Triptanより

…分子構造的には、左上のスマトリプタンが元祖であり、ここから色々な派生類似トリプタン兄弟分子が作られてきた感じですね(一番下の、アルファベットと数字のコードネームっぽいやつは開発中の薬です。今でもまだまだ開発が進んでいるものだと言えましょう)。

 

とはいえ、「片頭痛に悩まされたことがない人の突然の頭痛は、極めて危険」とありましたし、「片頭痛か?何だか猛烈に頭が痛いぞ…」となったら、薬よりもお医者さんに即かかるのが重要といえましょう。

突然の頭痛は本当に冗談抜きに危険なので、気を付けたい限りです。

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