鬱にも頭痛予防にも効くSNRI

ここ最近参考にさせてもらっております片頭痛予防薬の各グループ、これまでにモノクローナル抗体系βブロッカーを経て、前回はカルシウムチャネル・ブロッカーを見ていました。

 

片頭痛予防薬にはまだまだいくつか効果的なグループがあるわけですけど、基本的には適応外処方、つまり本来の目的は別の病気の治療にあるけれど、実は別の症状にも効果がある(この場合片頭痛の予防効果)から目的外で使われる…というものが多く、今回もそのタイプですね。

 

それがズバリ、略称SNRI、フルネームでは「セロトニンノルアドレナリン再取り込み阻害薬」とういもので、まぁ長ったらしいものの地味に名前が全てを表してくれているものだといえましょう。

 

神経伝達物質というのは、神経終末端から分泌されて次の神経の先端にあるレセプター(受容体)にくっつくことで作用するわけですが、このシグナル物質は、せっかく分泌されたのに、またすぐに元の神経細胞に再取り込みされることもあるのです。


元の神経細胞に再取り込みされてしまうと、まぁもちろんまた後で再利用できるから分解されてしまうよりはマシとはいえ、「次の神経の受容体にくっついてシグナルを伝える」という本来の機能が発揮できなくなることには変わりありませんから、これはある意味情報伝達の上ではネガティブな作用になるわけですね。

 

今回の薬は、そんな「再取り込み(Reuptake)」を阻害するもの(Inhibitor)ということで、特に幸福物質セロトニンSerotonin)・興奮物質ノルアドレナリンNoradrenaline)の再取り込みをブロックすることから、本来の用途は抗うつ剤として知られるものになります。

 

my.clevelandclinic.org

 

クリーブランド・クリニックは、アドレナリンは「アドレナリン」表記を優先してくれるのに、なぜかノルアドレナリンは「ノルエピネフリン」表記を優先するというよく分からない感じですけど、まぁどっちも同じものなので、気にせず元記事の表記に従う形で参りましょう。

 

SNRI(Serotonin and Norepinephrine Reuptake Inhibitors; セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)

SNRIセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)は、うつ病の症状に加え、線維筋痛症全般性不安障害といったその他の症状の治療薬としてもFDAに承認されている薬剤です。この薬は、脳内の特定の化学情報伝達物質を活性のある状態に保つことで作用します。最も一般的に処方される抗うつ薬の1つです。

 

概要

SNRIとは何?

SNRIセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)は抗うつ薬の一種で、主にうつ症状の治療に役立つものです。医療従事者は、この薬を、他の症状に対しても処方することがあります。

 

SNRIにはどんな種類があるの?

現在、アメリカで医療従事者が処方しているSNRI(およびその商品名)には、以下のものが含まれます:

(※注:これらはアメリカでのブランド名なので、日本の商品名とは異なる&日本で展開されていないものはカタカナ表記も正確ではない可能性があります。)

 

SNRIはどんな疾患の治療に役立つの?

アメリカ食品医薬品局FDA)は、精神疾患や疼痛関連疾患など、種々の異なる症状に対して異なるSNRIを承認しています。

以下のSNRIは、大うつ病性障害の治療薬としてFDAに承認されています:

  • デスベンラファキシン
  • デュロキセチン
  • レボミルナシプラン
  • ベンラファキシン

ミルナシプラン線維筋痛症の症状の治療にのみFDA承認されています。

デュロキセチンは、以下の治療薬としてもFDA承認を受けています:

ベンラファキシンは、以下の治療薬としてもFDA承認を受けています:

 

適応外使用

医療従事者は時に、SNRIを他の疾患に対して処方することがあります。これは適応外、すなわちFDA非承認状態における薬の使用とみなされます。適応外使用の例としては、以下が含まれます:

  • 不安障害
  • 更年期障害に伴う、ホットフラッシュ(ほてり・顔面紅潮;閉経後の典型的な症例)や寝汗
  • 化学療法に起因する末梢神経障害
  • 尿失禁
  • 注意欠陥/多動性障害(ADHD
  • 強迫性障害(OCD)
  • 片頭痛予防

 

SNRIはどのくらい一般的?

SNRI―そして抗うつ薬全般―は、アメリカでは一般的に処方されている薬です。特にデュロキセチン(サインバルタ®)は、アメリカで年間最も多く処方されている薬の一つです。

 

手順の詳細

SNRIはどう作用するの?

SNRIは、脳内のセロトニンとノルエピネフリン濃度を増加させることで作用します。セロトニンとノルエピネフリンは、神経伝達物質(化学的な情報伝達物質)です。

どちらの神経伝達物質も、情緒、睡眠覚醒周期、および記憶の調節に重要な役割を果たしています。セロトニンは食欲、社会的行動、および性欲にも影響を及ぼします。ノルエピネフリンは、警戒心、覚醒度、および注意力を高める物質でもあります。

これらの神経伝達物質は、情報を伝達した後、通常、脳の神経細胞によって再吸収されます(再取り込みと呼ばれます)。その名前―セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬―が示すように、SNRIはこれらの化学物質の再取り込みをブロック(阻害)することで作用しています。つまり、脳内でより多くのセロトニンとノルエピネフリンがアクティブな状態であり続けるということです。

SNRIの種類によって、セロトニンとノルエピネフリンのバランスに与える影響はそれぞれ異なります。

 

SNRISSRIの違いは何?

SNRISSRI選択的セロトニン再取り込み阻害薬)はどちらも抗うつ薬の一種ですが、両者は異なる方法で作用しています。

SSRIセロトニンの再取り込みのみを阻害し、脳内のセロトニン濃度を高めます。一方SNRIセロトニンとノルエピネフリン両方の濃度を増加させます。この2つの薬は作用が異なるため、副作用も異なります。

研究者は当初、SSRIよりもうつ症状の治療に効果的であるものとしてSNRIを開発しました。しかし、SNRIの方がより効果的であるという確定的な研究結果は、実は得られていません。

 

リスク/メリット

SNRIの副作用は何?

SNRIの各タイプやブランドにはそれぞれ固有の副作用があります。注意すべき副作用の可能性について、必ずかかりつけの医療従事者や薬剤師に相談するようにしてください。

一般的に、SNRIのよくある副作用には以下が含まれます:

  • 吐き気や嘔吐
  • 口の渇き(口腔乾燥)
  • 便秘
  • 疲労感と眠気
  • めまい
  • 過度の汗(発汗症)
  • 性的機能障害

SNRIの副作用は通常軽度で、時間とともに改善します。不快な副作用が現れた場合は、かかりつけの医療従事者に相談してください。用量を調節したり、別の薬を試すことを勧められるかもしれません。

 

SNRIのリスクや合併症は何?

SNRIに関連する、可能性のある合併症は以下が含まれます:

 

自殺念慮または自殺行動

子供、ティーンエイジャー、および25歳未満の成人の場合、SNRIを服用すると、特に初めて服用する際や異なる用量を摂取する際に、自殺念慮や自殺行動が増加することがあるかもしれません。

ご自身やお子様が自殺念慮や自殺行動を起こした場合は、直ちに薬を処方した医療従事者に連絡してください。電話で988をダイヤルすれば、自殺・危機管理ライフラインにつながります。

(※注:もちろんこれはアメリカの場合で、日本だと厚労省協賛の「#いのちSOS」0120-061-338などがあるようです。)

 

セロトニン症候群

セロトニン症候群とは、体内のセロトニンが多すぎるために生じる、生命を脅かす可能性のある薬物反応です。

セロトニン症候群は稀ですが、SNRIを新たに服用したり、用量を増やしたり、セロトニン系に作用する複数の薬を服用したりした場合に起こることがあり得ます。この症状は、MAOIやリネゾリドなど、セロトニン濃度を上昇させる他の薬剤に加えてSNRIを服用した場合に起こることが最も多いです。

新しい薬の服用を開始する前に、現在服用している薬やサプリメントを必ずかかりつけの医療従事者に伝えるようにしてください。そして、薬は必ず処方された通りに服用しましょう。こういった措置はセロトニン症候群の予防に役立ちます。

セロトニン症候群の症状には以下が含まれます:

  • 神経過敏
  • 吐き気と嘔吐
  • 下痢
  • 瞳孔散大
  • 引きつり、不随意収縮、痙攣や硬直といった、筋肉の問題
  • 発汗および震え
  • 眼球振とう

重篤な症状には以下が含まれます:

  • 錯乱またはせん妄(精神状態の変化)
  • 心拍数の急上昇(頻脈)
  • 高血圧
  • 発熱
  • 脳卒中などの発作
  • 意識喪失

このような症状がある場合は、直ちに医療機関を受診してください。セロトニン症候群は、すぐに治療しないと命に関わることがあります。

 

SNRI離脱症状とは何?

SNRIの「離脱症状」は、実際には「抗うつ薬中止症候群 」と呼ばれています。少なくとも6週間SNRIを服用していた場合、突然服用を中止すると起こる可能性があるものです。

抗うつ薬中止症候群の症状には以下が含まれます:

  • 疲労、頭痛、痛み、発汗といった、インフルエンザ様症状
  • 不眠症
  • 吐き気
  • めまいやふらつき
  • 灼熱感、ヒリヒリ感、「ブーン」という感じ、または軽い電気ショックなどといった、感覚の問題
  • 不安、イライラ、焦燥感

こういった症状は通常軽度ですが、不快な場合もあります。医療従事者に相談することなくSNRIの服用を中止しては絶対にいけません。抗うつ薬の服用を中止する最も安全な方法は、かかりつけの医療従事者の指導のもと、ゆっくりと止めていくことです。

抗うつ薬は中毒性の薬ではないため、抗うつ薬中止症候群は、厳密には離脱症状ではありません。オピオイド、アルコール、あるいはニコチンといった他の物質のように、抗うつ薬に生理的に依存するということはあり得ないのです。

 

回復と見通し

SNRIはどのくらいで効果が出るの?

通常、SNRIの効果が十分に感じられ、症状の改善が認められるまでには6~8週間かかります。この期間を過ぎても症状が改善されない場合は、かかりつけの医療従事者にご相談ください。

 

いつ医師に連絡するか

いつ医療機関に連絡すべき?

効果がどの程度あるのかを評価するためにSNRIを服用している間は、かかりつけの医療従事者と定期的な面談をする必要があります。

それ以外の場合は、以下のようなことが見られた際に、かかりつけの医師に相談してください:

  • 煩わしい副作用が現れた場合
  • 症状が改善しない、または悪化した場合
  • 服薬の中止を考えている場合

 

救急医療を受けるべきなのはどんな時?

セロトニン症候群の症状がある場合、または自殺念慮がある場合は、911に電話するか、最寄りの救急治療室に行ってください。
 

クリーブランド・クリニックからのメモ

SNRIセロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬)は、うつ病やその他の症状の治療に役立ち得る、一般的な処方薬です。ご自身に最適なSNRI抗うつ薬を見つけるには時間がかかることがあります。不安や質問があれば、かかりつけの医療従事者に相談してください。必ず助けになってくれますよ。

 

片頭痛の予防は、この薬の本当におまけ程度の作用に思えましたが、鬱的な症状があり、しかも片頭痛もたまにあるような方には、頭痛の予防もできて非常にいい薬といえるかもしれませんね。

 

今回も、そんなの見ても何も分からないし全くもってどうでもいいにも程がありますが、この薬の分子構造をアイキャッチ画像に使わせていただきましょう。

 

僕は薬はマジで全く使わないタイプなので詳しくないんですけど、記事内にあった通り、商品名サインバルタ(一般名デュロキセチン)が、SNRIを代表するどころか全ての薬の中でアメリカ国内で最も消費されているもののひとつだということで、こちらさんの構造をお借りしようかと思います。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/デュロキセチンより

そんなに複雑な構造でもないと言いますか、これ自身、どことなく神経伝達物質っぽい構造をしている気もしますけど、あくまでこれは受容体をブロックする(←神経伝達物質のフリ・真似をして)のではなく、再取り込みブロックという形で働くものですね。

 

上記ウィ記事によるとイーライリリーと我らが塩野義製薬が共同開発したもののようで(共同ではなく、同時期に開発を行っていただけかもしれませんが)、非常に信頼できる効果があるようです(とはいえ、副作用の強さのみならず、うつ病への効果も人によりまちまちなので、何度も口を酸っぱくして書かれている通り、医師の判断で自分に合ったものを探す必要があるのは間違いないといえましょう)。

 

僕はまぁ幸い、ハッピーホルモンドパドパの脳内お花畑野郎なので、鬱になることは絶対にないとほぼ断言できるのですが、とはいえ誰でもかかるのが心の風邪こと鬱病といえるので、本当に「もうダメだ」と思ったときには専門家や薬の力に頼ることを忘れないようにしたいものですね。

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