モノクロなる抗体

クリーブランド・クリニックのHEALTH LIBRARY記事で気になった用語を見ていくことで無限に話を広げておりますシリーズ、前回片頭痛のオーラこと「前兆」について見ていましたが、片頭痛については他にもいくつか面白そうな話題がありまして、やはり一つは前々回片頭痛記事でも最後にチラッと触れていました、オードリーの若林さんが試されて「本当に人生が変わった」と大絶賛されていたことで有名な片頭痛薬・エムガルティ(一般名:ガルカネズマブ)が挙げられましょう。

 

せっかくなのでこの薬についても、個別記事が存在していたため見てみようかと思ったのですが…

 

my.clevelandclinic.org

 

…どうも、流し見しても「使用上の注意」みたいな情報がメインで仕組みとかどういうものかみたいな話ではなさそうだったため、まぁ「気になる」レベルの人がそんなに見る必要はなさそうかな、と思える感じでした。

 

ただし、このガルカネズマブがリストアップされていました、治療薬の分類である「モノクローナル抗体」というグループについては、こちらにも独立記事があり、「あぁ、どんなものか知るためには、これ見ておく方が薬の説明書を見るより多少は面白そうかな」と思えたため、今回はこちらを見ていくといたしましょう。

 

何気にモノクローナル抗体というのは、医療に限らず基礎生命科学研究でもめちゃくちゃ使われているものでして(実際に実験でよく使っています)、まぁ僕も免疫が専門って訳ではないですが、少なくとも臨床医学よりは免疫に関する生化学的な知識は持ち合わせているので、多少自分でも説明ができるかもしれません。

 

…というか、免疫についての話って以前の記事でまとめたことなかったっけ…?…と思ったら、抗体(免疫グロブリン)についてはこの辺の記事(↓)でチラッとだけ出したことがあったものの……

 

con-cats.hatenablog.com

 

…免疫についての細かい話は、そういえばまだ触れる前だったと言いますか、例のずーっと途中状態のまま放置中の分子生物学記事「世界一甘いタンパク質『ソーマチン』を作ってみよう」…みたいなシリーズを見終えたら、まぁ免疫とかの話もしてみようかなぁ、コロナも流行ってるし……と思っていたらなぜかずっと全然違う方に脱線し続け、コロナのブームも無事にほぼ去った感じなので、もう完全に後回しになってる感じですね(笑)。

 

免疫もまぁ面白いっちゃ面白い話なので、せっかく触れるならもっと時間のあるときにしっかり触れてみたい気もしますし、とりあえず今回はクリ・クリ記事の「モノクローナル抗体」記事を翻訳引用させていただくといたしましょう。

 

医療機関の記事なので、結局これも仕組みや分子の話よりも、臨床的な応用面についてとかがメインなように思えますが、どんな感じでしょうか。

 

モノクローナル抗体(Monoclonal Antibodies)

モノクローナル抗体とは、免疫系を刺激するために実験室で作られるタンパク質のことです。モノクローナル抗体を用いた治療は、しばしば輸液センターにて、主に点滴静注という形で行われます。

 

概要

モノクローナル抗体とは何?

モノクローナル抗体(moAbsまたはmAbsとも呼ばれます(※日本語なら、略す場合モノクロ抗体とかモノクロと呼ばれる感じですね))とは、体内において抗体と呼ばれるタンパク質と同じ働きをする、研究室で作られたタンパク質です。抗体は免疫系の一部です。抗原(異物)を探し出し、破壊するためにしっかりと結合する性質を持っています。研究室で作られたモノクローナル抗体は、人間の免疫系を刺激するのに役立ちます。

「モノクローナル」という言葉は、実験室で作られたその抗体がクローンであるという事実を指しています。ある1つの抗体の、完全に同一なコピーだということです。製品の一般名には、しばしば名前の最後に「mab」という文字が含まれていることが多いです。

 

モノクローナル抗体とポリクローナル抗体の違いは何?

この2種類の抗体の違いは、その名前の中にあります。「モノ」は「1つの」という意味であり、「ポリ」は「多数の」という意味です。モノクローナル抗体はただ1つの抗体のクローンであり、1つの抗原にのみ結合します。ポリクローナル抗体は数種類の免疫細胞から作られ、複数の抗原に結合します。

 

モノクローナル抗体はどのように使われるの?

モノクローナル抗体は、診断、疾病の治療、および研究に使用されます。以下の用途で使われます:

  • 研究室で物質を同定するためのプローブ(獲物を探り当てる釣り針のようなものを指す言葉)、あるいは妊娠や排卵を見るために用いられる家庭用検査キットとして
  • 移植に使用する組織や血液の適合検査
  • 診断
  • 病気の治療

 

モノクローナル抗体はどのような病気を治療するの?

モノクローナル抗体は以下の疾患の治療に使用されています:

米国食品医薬品局(FDA)によるモノクローナル抗体療法の承認件数は、1986年にヒトに対する最初のモノクローナル抗体医薬品が承認されて以降、増加の一途を辿っています。

 

モノクローナル抗体による治療は一般的?

モノクローナル抗体による治療は、治療法の増加に伴い、より一般的になってきています。

 

手順の詳細

モノクローナル抗体はどう使われるの?

ほとんどの場合、モノクローナル抗体は大部分が静脈内(intravenous; IV)に注射されます(点滴と呼ばれることもあります)。しばしば、一度に数人が治療を受けられる、輸液センターで投与されます。

初めて治療を受ける場合は、その手順や何を考慮しておくかについて学ぶために、恐らく誰かと一緒に行く必要があるでしょう。初回の治療では、医療従事者が重篤なアレルギー反応がないかどうかを調べることになります。

場合によっては、皮下注射の形でモノクローナル抗体が処方されることもあります。自分自身で注射する方法を教わることになると思われますが、多くの場合、腹部や大腿上部に注射します。

モノクローナル抗体には、以下のものがあり得ます:

  • そのままの形で治療法として投与されるもの。これはネイキッドな(=裸の)モノクローナル抗体として知られています。
  • 放射性粒子として合成され、別の薬剤と一緒に投与されるもの。これは結合型、タグ型、誘導型、あるいは標識型モノクローナル抗体として知られています。
  • 2つの特定の抗原に結合することで、同時に両者を攻撃するように改変されたもの。これは二特異性モノクローナル抗体として知られています。

 

リスク/メリット

モノクローナル抗体を使用する利点は?

モノクローナル抗体を使用する上でのキーとなる利点のひとつは、一部のガンなど特定の疾患の治療に成功した薬剤の製造に使用されていることです。

治療法としてモノクローナル抗体を使用するもう一つの利点は、他の治療法よりも精度が高いことが挙げられます。これによって薬効が向上し、副作用を軽減することが可能になっています。

モノクローナル抗体の品質は全ての製造バッチで一律であり、これは診断薬としてだけでなく治療薬としても重要なポイントです。

今では、モノクローナル抗体の大量生産が可能になりました。

 

モノクローナル抗体を使用することによるリスクや合併症は何?

急性輸液反応は一般的であり、これはモノクローナル抗体治療中、または治療直後に起こるものです。これは、モノクローナル抗体治療に対して身体が強い免疫反応を起こした場合に起こります。急性輸液反応の一般的な徴候は、発疹、発熱、硬直/悪寒、息切れ、発汗、血圧の変化、および心拍数の増加です。点滴の速度を落としたり、投与量を減らしたりすることで、こういった反応を抑えることが可能です。

急性アナフィラキシー、サイトカイン放出症候群(CRS)および血清病など、望ましくない免疫反応に関連した、より深刻ではあるもののあまり一般的ではないリスクもあります。

急性アナフィラキシーは、生命を脅かすこともある大規模なアレルギー反応です。血清病は、自分の体の免疫系が抗血清、つまり自分のことを助けるために医療チームが使用してくれているタンパク質を含む血液製剤を攻撃してしまうことで起こります。CRSはサイトカインストームとも呼ばれ、臓器障害につながる可能性があります。

モノクローナル抗体療法に関連するリスクには、治療対象の病態に特有のものがあります。例えば、腫瘍崩壊症候群は通常、がん治療によって引き起こされる病態で、腎不全を引き起こす可能性があるものです。

 

回復と見通し

モノクローナル抗体を投与した場合、回復にはどのくらいの時間がかかる?

点滴時間はまちまちです。ただし一例を挙げるならば、COVID-19のモノクローナル抗体治療を緊急使用許可で受けた場合、点滴に約1時間かかり、その後、点滴に対する反応を観察するためにさらに約1時間かかりました。

かかりつけの医療従事者が、初めて点滴を受けるときには、成人の家族や友人を同伴することを勧めてくるかもしれません。もし酷い反応がなければ、それ以降の治療では同伴者の必要はないかもしれません。治療後の体調がよければ、仕事や学校に復帰できる可能性もあります。これは医療従事者への質問です。その答は、ご自身が何のために治療を受けているのか、そして全身の健康状態によって異なるでしょう。

 

いつ医師に連絡するか

治療について医師に相談すべき?

これまでにモノクローナル抗体による治療を受け、予想される反応がある場合は、かかりつけの医療機関に連絡するか、救急外来を受診してください。

モノクローナル抗体が治療する疾患と診断された場合、この種の治療がご自身に適しているかどうか、かかりつけの医療従事者にご相談ください。

 

クリーブランド・クリニックからのメモ

抗体は免疫系の一部です。モノクローナル抗体は、人の体にある抗体のクローンであり、実験室で作られ、ご自身の免疫系を刺激することを目的としています。治療法としてのモノクローナル抗体は、他のタイプの治療法よりもターゲットが絞られており、一部のガンを含む一定の種類の疾患の治療に成功しています。かかりつけの医療従事者が、ご自身の治療を受けている疾患や全身の健康状態に応じて、モノクローナル抗体を処方することがあるかもしれません。

 

まぁ抗体なんてどなたも聞いたことがあるもので、基本的には異物をやっつける機能を持ったタンパク質なわけですが、モノクロは「均一に作られた純品抗体だ」ってことですね。

 

ちなみに↑の記事でも説明されていました、モノクロと対をなす存在といえるポリクロについては、こちらは必ずしも純品ではないもので、混ざりものといえるものなのでグレードは低いようにも思えるものの、純品ではないからこそ、「複数のものが一緒になってより強く結合できる抗体」「より難しい対象に結合できる抗体」なんかもあるため、必ずしもモノクロの方が優れているというわけでもないようにも思えます。

 

とはいえ医療用途の場合、「完全に分子が分かっている」ものじゃないと安全の懸念とかロット間の差とかもありますし、薬として使うのはモノクロ抗体一択なのかもしれませんね。

 

なお、どちらも合成には生物の力を借りるわけですけど、ポリクロ抗体は非常に古典的なもので、実験動物に、それとくっつく抗体を作りたいという意図における「それ」にあたる異物=抗原を何度か注射してやり、動物に抗体をガンガン作ってもらう、ってのが基本になります。

これは生物のもつ自然な免疫反応によるもので、この時作られる抗体は一種類ではないですから、ポリクロ抗体には分子レベルで少し異なる抗体も含まれるという感じですね。

 

一方モノクロは、何気にこれもまだ現在の科学技術では「モノクロ合成マシーン」みたいなのに抗原を放り込んだらそれにくっつく抗体が作られる……といった便利な代物は存在せず、こちらも生物の力を借りているのですが、「ハイブリドーマ」と呼ばれる特殊な細胞を使って完全に同じコピーだけをガンガン増やす……という仕組みになるのですが、まぁかなりどうでもいいので詳細は省略しましょう。

 

実際のモノといいますか、分子としては、どの解説記事でもそう描かれている通り、こんなY字状の分子になります。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/抗体より

まぁこんなイラストを見せられても、「具体的には何者なんだよ」って話になるわけですが、これは何度か書かれていた通りタンパク質なので、アミノ酸がズラーっとつながって、結果ちょうどY字のような硬いの分子になっている感じですね。

 

抗体についても見ていきたい所ですが、また時間がなくなってしまいました、次回ちょろっと見てみるか、とりあえず説明はまたの機会にするとして、別のHEALTH LIBRARY記事を見ていくかどちらかにしようかな、と思います。

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