前回はDNA抽出実験における塩の役割について一人で勝手にお気持ちを表明していましたが、「塩水の方がDNAは溶けやすい」というちょっと不適切さを感じる記述において、「塩水の方がDNAは自由になる」という意味ならそれは正しいですね…などと言い、それに関して、細胞の中でDNAがグルグルと巻きついてくっついている相棒的な分子、ヒストンというものに軽く触れていました。
まぁ、ヒストンについては、染色体について触れていた時にちょこっとだけ述べていたことはあったわけですが(この辺の記事で↓)…
…普通に今回書こうと思っていた内容が、既に3年前の、最初に貼った染色体記事でほとんど触れられてしまっていたんですけれども、「よくまとめられているな」と我ながら良いまとめに思えたため、自分の手柄を上手いこと使って記事水増しを図るべく、書こうと思っていた点をコピペさせていただきましょう(笑)。
つまり、ヒストンはちょうど、ミシンのボビンみたいなもので、DNAという長い糸を、グルングルンに巻き取って、めっちゃくちゃコンパクトな形にしているということですね。
ということで、染色体は、(もちろんそれだけではないけど、主に)DNAとヒストン(タンパク質)からできている、ということになります。2メートルはあるDNAが、大体0.000001メートルぐらいの大きさにまでまとめられているという感じですから、ヤバすぎますね。
「いや、流石に、そんなん可能か…?」と思えますが、実際それを可能にしているのがヒストンなのです。ヒストンすげぇ~!
でもまぁ、別に染色体の研究でもしない限りそんなことはどうでもいいので、これは覚える必要はないですね。
多分今後ヒストンが出てくることは二度とないので、忘れてもらって構いません。ヒストンさんとは、スゲぇ!といういい印象を持ったまま、ポジティブな形でお別れしましょう(笑)。
今後ヒストンが出てくることは二度とないと思っていたのに、ネタ切れに苦しんだ結果破れかぶれでまた顔を出して来やがりました、3年前はボロクソに言ってしまってごめんよ(笑)。
そう、この時に書いていた通り、ヒストンというのはまさにミシンのボビンのようなもので、時に数億塩基ものヌクレオチドがひたすら順番につながった超長いヒモ状の分子であるDNAが、本当に上手いことグルグルと巻かれる形でコンパクトに収まる手助けをしてくれているのが、高機能分子タンパク質からできたヒストンさんだったんですね。
ちなみに「ボビン」、子供の頃って謎のカタカナは常に単なる呪文でしたけど、大人になって色々知識を得た後どういう意味の語だったのかを振り返ってみるとこういうのは「そういう意味だったのか!」と分かるものです……ボビンというのは………え、何なんだボビンて?(笑)
生命科学系の研究をしていると、どうしても「bovine」という語、ベタ読みで「ボヴィン」ですがまぁ英語だと「ボヴァイン」なわけですけど、ウシ属を意味する単語が浮かび、ウシとミシンのあれが関係あるのか…?と思ったら、1ミリも関係ありませんでした(笑)。
特にサムネイル画像がない記事だったので(画像自体はいくつかありましたけど)リンクカードを貼る意味もあまりないですが、ウィッキー先生はまさに語源に触れてくれていました、これは、
ボビン (bobbin) という英単語(1520年代)は、フランス語で糸巻きを表す bobine を語源とする
ってことなんですねぇ~。
確かに、何かフランス語っぽい響きがある気がかなり、プンプンとします。
まぁそんなボビンの話はともかく、ボビンというと「車輪のついた筒」のような構造をイメージするのではないかと思うのですが、ヒストンのコアの部分というのは……まぁアミノ酸がつながったタンパク質なので、模式図的には例のリボン構造みたいなやつがギュッと集まったものにはなるわけですけど、更に簡略化しちゃえば、まぁ単なる球状のボールみたいな物質にDNAが巻きつく形になっています。
ウィ記事「ヒストン」の、トップ画像をお借りさせていただきましょう。
図の説明文には、
コアヒストンの種類とヌクレオソーム構造 (右上の図でH2A, H2B のH3,H4に対する位置が反対になっている気がします)
などとありますけど、学習者の方が書いたのであろう、自信なさげな質問というか意見みたいな文があって何か笑えましたが(笑)、ん~これはどうなんでしょう、「反対になっている気は、別にしません」と思えますけど、しかし消されずに残っているということは、もしかしたら間違ってるのかもしれません。
まぁ各用語の詳しい説明はとりあえず置いておいて、このヒストン記事にはなかったものの、説明文中にあった「ヌクレオソーム」記事には各ヒストンの構成分子の構造の画像も掲載されていましたので、こちらをお借りしてみると…
…この通り、H2AとH2Bというものがまずペア(専門用語では二量体=ダイマーと呼ばれますが)を形成し、またそれとは別にH3とH4も独立に二量体を形成しまして、さらにそれぞれの二量体同士がまたペアを作ることで四量体を作り上げ、そして最終的に四量体同士がペアとなり八量体、いわゆる「ヒストンオクタマー」(「オクト」は、タコがオクトパスであることからも分かる通り、「8」を意味する言葉ですね)となり「コアヒストン」になるのがこいつらの特徴なのですが……
…その四量体同士が組み合わさる際の相互作用相手は、H2BとH3が、H2AとH4がそれぞれくっつく形になることが知られているようで、翻ってヒストン記事の画像を見てみますと、まぁ正直角度的に若干見づらいのももっともなんですが、赤のH2Bは青のH3と端っこの方でドッキングしていますし、黄色のH2Aと緑のH4もバックグラウンドでしっかりくっついているように見えますから、少なくとも両者の記述に矛盾は見つからないような気が……
…と思ったんですけど、念のため調べてみたら、Wikipedia以外のあらゆる文献が、「H2AはH3と、H2BはH4と相互作用する形でオクタマーが形成される」と記述していますね!
(主にResearch Gateという、論文を紹介するサイトに挙げられていたページから一例を挙げますが、どのヒストン解説図でもこうなっています…)
…ということで、これは珍しく、ウィッキー先生がミスしていると言いますか、日本語版の学習者の指摘は大変正しいものだったと、バカにしたことを深くお詫びしたい限りです。
(まぁAは3と、Bは4と相互作用する形の方が、どう考えても自然ですしね、普通にウィキペカスがおかしかったのも自明と言えましょう(笑)。)
しかし、2つの独立したウィキペディア記事で両方間違ってるってのも、何というか珍しいとでも言いますか、もしかしたら論文や教科書を見ずにウィキペディアで勉強する学生に対する、ヒストン界隈の偉い先生による罠のようなものが張られているのかもしれませんね(笑)。
一応、ヒストンの構造に関しては、「クロマチンリモデリング」という名で知られる再構成も非常に有名で、ひょっとしたらウィ記事を書いた人はリモデリングされた異常な構造とごっちゃになってしまったとか、そういうこともあったのかもしれませんが、まぁあんなちゃんとした画像を作る人がそんな普通ではないものをあえて採用するとかあんまり考えづらいので、単なるミスでしょうか。
いずれにせよ、専門外なので僕はそこまで正確に把握していなかったんですけど、正しいと思われる情報を知ることができて何よりでした。
といった所で、ヒストンそのものには全く触れず、「ウィキペディアのおかしな所」を見ただけで今回も時間切れとなってしまった感じです。
ヒストン並びに染色体に関しては、せっかくなのでまた次回ちょろっとだけ見ていこうかなと思います。