(おさらい)遺伝子や染色体について死ぬほど分かりやすく…

「X染色体について知っておこう」シリーズ(別にそんなシリーズでもなかったですけど(笑))、前回ターナー症候群について触れていました。

 

こちらは、XO(前回引用していた記事によると、「X0」と書く方が普通なのかもしれませんが、僕はXO(ゼロではなくてオー)と習った気もします)という性染色体型で、要はX染色体が1本欠けている人のことであり、オスを決定づけるY染色体がないから当然とは言えるものの、外見などは完全に普通の女性と変わりないということを、写真付きで紹介させてもらっていた感じですね。

 

ターナーから続いてもう少し他の脱線ネタへと続ける前に、前回「遺伝子・染色体の数というのは、普通の細胞では『2n』、生殖細胞では『n』という形になっている」みたいな背景知識の説明を今さらしていました。

 

せっかくなので、脱線ネタも大した量がなさそうですし、これまた特に詳しく書かずにしれっと話に出していた「染色体」とかその辺についてのおさらいから始めてみようと思います。

 

前回、ちょうどその補足説明でも書いていた通り、染色体ってのはヒトの場合、1番染色体から22番染色体までの「常染色体」が22本、そして「性染色体」としてX染色体かY染色体かが1本の、合計23本が1つの細胞の中に1セットとして存在しているわけですが、上述の通り、通常の細胞だと「2n」という形で、この23本セットが2組、合計46本存在している形になってるわけですけど(言うまでもなく、父親由来の23本と、母親由来の23本とから成り立っています)、そもそも染色体って何やねん、って話だったかもしれません。

 

…ってまぁ、染色体については、ここ最近のシリーズではなく、ずーっと前、アミノ酸飲料から脱線して始まった分子生物学入門シリーズで触れたことが一度、遠い昔にあったんですけどね(↓)。

 

con-cats.hatenablog.com

 

改めて読んでみたら書こうと思ってたことは大体書かれていたので、以前の自分の記事に丸投げでもいい気もしましたが、まぁ簡単に再度触れてみようと思います。

 

そもそも「遺伝子」とか「染色体」とか「DNA」とか、誰しも必ずどっかで聞いたことが言葉かと思うんですけど、こいつらは意外と、いざ「説明しろ」と言われたら言葉に淀んでしまうことが多い用語になっているのではないでしょうか。


かく言う僕なんぞも、中学・高校で学んで、受験も生物選択であり、テストで聞かれたことにはそりゃ答えられましたけど、マジで単なる棒暗記だったというか、「実際こいつらは何なの?概念なの?物質なの?」みたいなことは、割と専門課程でちゃんと学ぶまで……というか、実際に学生実験とかで、この目で「色んな用語が現実的にどういう意味なのか」をじっくり観察してみるまで、全くちゃらんぽらんなままだったという体たらくな気がします。


そんなわけで、どれだけ説明されても、実際に自分の手と目で見て納得しないと、なかなか人間、心から納得できないようにも思えるのですが、まぁ「昔の自分に向けて」みたいな感じで、改めてなるべくこの辺の話にほとんど馴染みがない方でも何となく掴んでもらえるのではないかと思う説明を加えてみましょう。


(まぁ、以下していくような説明も、昔、↑でリンクを貼った記事の前後でしたことがあったんですけどね、例によって時間不足ネタ不足なので、その辺の基礎話で中身の水増しをしようと思います(笑))。

 

まず「DNA」ですけど、これはズバリ「物質」で、例えば塩を買ってきて「これが塩化ナトリウムという物質」とか、砂糖を買ってきて「これがスクロースという物質」などと示せるように、まぁDNAはあんまり市販では売っていないので目にする機会はないですけど、「これがDNA」という風に、目の前に形あるモノとして示すことができる物質ですね。


とはいえ塩化ナトリウムや砂糖(どちらも、世界中どこでも全く同じ物質:NaClと、C12H22O11という、1つの完全に決まった分子)とは違い、「一口にDNAといっても、色々なパターンがある」ものであり、例えばタンパク質は、

「20種類のアミノ酸が大量につながってできたもの。筋肉もタンパク質の一種だし、髪の毛なんかもタンパク質の一種だけど、中身(アミノ酸のつながり方・数)が全然違う」

…という物質なわけですけど(さらに言えば、同じ「肉」であっても、鶏肉と牛肉と人肉でも、微妙~に(というか相当)違うアミノ酸の集まりになっています)、それと全く同じで、DNAというのは…


「4種類のヌクレオチドが大量につながってできたもの」


…であり、まぁ「ヌクレオチド」ってのが「アミノ酸」と違って日常生活では馴染みがなさすぎるので腹立つのりなんですけど(笑)、これはズバリ「A, C, G, T」で表される4つの分子のことであり(「ヌクレオチド」以外に、「塩基」とも呼ばれますが)、これが一列につながってできたもの、例えば……

ATGCATTACGGGACT…

…のようにズラ~っと、本当に尋常じゃない数の塩基が並んだのが、「DNA」の本体というか中身であるわけです。

 

要は、「鶏肉(の主成分)はタンパク質だし、大豆(の主成分)もタンパク質である」のと全く同じように、一口に「DNA」といっても、色んな中身のやつが存在する、でも全て4種類のヌクレオチドがつながってできた高分子である、ってのが、「DNA」という物質なんですね。

 

…で、DNAはそのようにA, C, G, T、合計4つの塩基が大量に並んでできたものなわけですけど、実はこの世界においてDNAのその「並び」というのは特別な意味を持って存在していることが多いものでして、そのDNAの配列こそが、「遺伝情報」と呼ばれるものになっています。


(もちろん、人工的にGとTだけをつなげたDNA、「GTGTGTGTGT…」みたいなものも立派な「DNA」ではありますが(仮にこの10文字で終わっていても、DNAにしては短いですが立派なDNA分子ですね)、まぁそれは別に何の情報も持っていない、単なる無意味なモブDNA分子って感じとはいえるものの…)


例えばヒトの細胞からDNAを採取してきたら、それは「ヒトの遺伝情報が詰まったDNA」と言えますし、ネコの細胞からDNAを採取してきたら、それは「ネコの遺伝情報が格納されたDNA」と言える感じですね。

 

ということで、「遺伝情報」というものは、もちろん中身を見れば具体的なA, C, G, Tの並びになっているので一応「形ある物質」であるとは言えるものの、これはあくまで「概念」に近い物で、例えば「牛のタンパク質」と言った場合、「牛肉」も「牛乳」も含んでおり、「具体的に『これ』と指すことのできる特定の物質ではない、あくまで概念的な総称」ってのが近い考え方でしょうか。

 

そこからもう少し発展して、一番よく聞く「遺伝子」ってのは何なのかというと、これはズバリ、「ひとカタマリの、何か1つの機能を持つ生体分子を指定している遺伝情報」というのがその意味となります。

 

つまり、以前何度も話に出していた、胃の中で消化酵素として働く「ペプシン」という生体分子がありますけど、人間は誰しも自分の細胞の中に「ペプシン遺伝子」というものを持っているんですね。


ちなみにペプシンはタンパク質で、生物の作る機能性分子は基本的にどれもタンパク質なんですけど、先ほど「何か1つの機能を持つ生体分子」と書いていたのには理由があって、ちょうどこないだ触れたばかりの「X染色体の不活性化」に働く分子「Xist」って分子は、これは何気にRNA分子だったので、たまにRNAとして機能する遺伝子もあるということから、「タンパク質」ではなく「機能を持つ生体分子」とぼやかしていた感じでした。

 

…というか話が前後しますが、そのDNAに刻まれた遺伝情報というものは、まずRNAという、めっちゃDNAと似てるけど微妙~に違う分子(具体的には、酸素原子が1つ多くくっついており、4つのヌクレオチドの中の1つ「T」が「U」になっています。ちなみに残り3つ、A, C, Gは完全に同じです)に変換され、それが実働部隊となってタンパク質を合成するという、

  • DNA → RNA → タンパク質

というのが、大腸菌からヒトまで、現在地球上に存在する全ての生物が使っている「生命を作る流れ」すなわち最重要な生体反応なわけですけれども、基本的にはタンパク質が目的物質(体そのものの分子)ではあるものの、たまに「RNAにまで変換された時点で機能を発揮する遺伝子」も存在する、という話なわけですね。

 

まぁそれは本題ではないので、今は気にしなくてもよいでしょう。

 

いずれにせよ、人間は「ペプシン遺伝子」「Xist遺伝子」「ジストロフィン遺伝子(筋肉をつくるためのタンパク質)」「オプシン遺伝子(目の中で、色を判別するためのタンパク質)」などなど、実に約2万個もの遺伝子が、全ての細胞の中に格納されているのです。


…で、そう聞くと「細胞の中って、具体的にはどこに?」と気になると思うのですが、何万個もの遺伝子は乱雑にバラバラに細胞の中にあるわけではなく、秩序立って・きっちり整理されて存在しているのです。


それこそがズバリ、「染色体」であり、結局「染色体」ってのは、沢山ある遺伝子が乗っかった、クソデカDNAの集まりだと、そういうことだったのでした。

(より詳しくいえば、DNAのみならず、それに加えて秩序立った構造を形成するために、ヒストンというタンパク質も一緒になって存在している、染色体の主成分と言えます。要は、ヒストンという土台に、めちゃくちゃ長いDNA(=何百万個のヌクレオチドがつながった、一本のヒモみたいな分子です)がグルグル巻きになってできたのが染色体ってことですね。)

 

その辺が整理できますと、これまで「X染色体上に乗ったオプシン遺伝子」みたいに書いていた話が大変分かりやすく受け止められるのではないかと思うんですけど、あらゆる遺伝子は、23本ある染色体の「どこ」に存在するのか……詳しく書けば、「何番染色体にあるか」のみならず、「何番染色体の、何番目から何番目の塩基が、その遺伝子か」という部分まで、既にヒトゲノム計画でヒトの全DNA配列が解読済みの今は、概ね分かっている形なんですね。

 

例えばこないだ見ていたXist遺伝子ですと、こちらは当然X染色体に存在するもので、遺伝子情報を「Gene」データベースから再度チェックしてみますと(↓)……

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/7503より

 

(上段のまとめ情報に加え、せっかくなので下段のゲノムビューアも入れたら、小さくて何のこっちゃ分からない画像になってしまいましたが……)

まぁ細かい見方はともかく、読まれたヒト遺伝子データベースのバージョンによって番号は多少変わるものの、最新の「GRCh38.p14」というバージョンでいうと、上段の表の「Location」にある通り、X染色体73820651番塩基から73852753番塩基までが「Xist遺伝子」と割り当てられていると、そうなっているんですね。

 

ちなみにDNAでは3万塩基超ですが、これがRNAに変換される際は一部省かれる(飛ばされる)部分も存在するため、実際に機能する「RNA版のXist」としては、こないだ触れていた通り、1万9296塩基から成るようです。

 

もちろん具体的に配列も分かっており、

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NR_001564.2より、最初の2100塩基ぐらい


…2万字弱はあまりに長すぎて分割せざるを得ませんでしたが(笑)…

 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NR_001564.2より、最後の1700塩基ぐらい

…という、最後1万9296番目の塩基までが「Xist遺伝子DNA」(まぁこれはDNAの内必要な部分だけがつながった「RNA配列の情報」なんですが、上図では「U」が「T」となっていますし、「不要な部分を除いた遺伝子DNAの情報」ともいえましょう)であり、実際4種類のRNAヌクレオチドを買ってきて、塩基配列情報にある通り、

ccuucaguucuuaaagcgcu…(上記画像の、tをuに変換済み)

…のように頭から1つずつ、2万塩基弱のヌクレオチドを延々とつなげていけばあら不思議、気付いたら「Xist」として働く分子が出来上がっていると、そうなっているわけですね!

 

もちろん他の遺伝子は他の染色体に乗っており、例えばこないだ出てきた呼吸で重要な機能を持つGAPDHなんかは、例によってデータベース(↓)をチェックしてみますと…

www.ncbi.nlm.nih.gov

 

…この遺伝子は12番染色体の「6534517番から6538371番」に乗っていると、そういう感じで、各染色体には様々な遺伝子が鎮座しているというのが、生命の仕組みになってるという話でした。

 

という所で、「おさらい」はサクッと終わらせてX染色体の話の続きに行こうと思っていたのですが、案外かなり長くなりました。

果たして「死ぬほど分かりやすい」話だったのかは疑問符がつくというか、「こんな長文、誰が読むかよ」って気も正直するものの(笑)、お読みいただければ多少、全く不慣れな方でもある程度整理できる感じになったのではないかと期待しています。


では、次回はまたX染色体の話に戻ろうかと思います。

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