前回は「歯科治療不安への対処法」という短めの記事を見ていましたが、この記事で取り上げられていた関連ネタリンクに、「歯科恐怖症」「注射を怖がる子供の不安を和らげる方法」、そしてそれからもう1つ、「過去の恐怖体験が原因のひとつかも…」という文にリンクが張られていたので、「何かそういうトラウマにつながりやすい治療法の話でもあるのかな」と思ったら、「これ、リンクミスなのでは…?」と思える、「赤髪の人が麻酔を多く必要な理由」という記事が紹介されていました。
まぁ一応歯科治療も関連してくる話のようで、ミスではないのかもしれないものの(イラストもまさにそうなってますしね)、あんまり関係ないのでは…とは思えたんですけど、しかし、話の種として、これは非常に面白そう!
ということで今回は、「レッド・ヘッドの人が、より麻酔を必要とするのはなぜか」という興味深い記事を脱線ネタとして見ていこうと思います(↓)。
まぁ人種の違いで、日本人に生まれながらにして髪が赤い人はほぼいないわけですけど、とはいえ人によっては他よりも茶色がかった髪の人はいなくはないですし(というかそもそもの「Redheads」も、そんな真っ赤っかではなく、何というかもっと暗い茶色に近い感じのことが多いですしね)、もしかしたらそういう方にも関係がない話ではないのかもしれません……。
どんな話なのか、早速health essentials記事を参考にさせていただきましょう。
赤毛の人により麻酔が必要な理由(Why Redheads May Need More Anesthesia)
生まれつき赤毛の方の場合、痛みを感じるのはDNAのせいかもしれません
赤毛の方に質問です: 歯科治療中にノボカイン(※局所麻酔薬)の追加をお願いしたことはありますか?
もしそうであれば、それは、あなただけではありません。赤毛の方は、他の髪色の方と同じ効果を得るために、より多くの麻酔薬を必要としているのではないか、というのは、専門家が長い間疑ってきたことなのです。
「赤毛というのは、その方がどれだけの麻酔薬を必要とするかを示す、唯一の身体的特徴なんです」と麻酔研究者のダニエル・セスラーMD(医師)が語ります。「赤毛の方は、手術中に痛みを訴えることが多いのです。また、複数の研究で、赤毛の方は局所麻酔薬に強い抵抗性がある、ということも示されています。つまり赤毛の方は、医療処置中に眠り続けるために、より多くの全身麻酔を必要とするかもしれないわけですね。」
この話題に関する研究のほとんどは古く、限定的なものです。というのも、世界中で天然に赤い髪をしている方は、わずか2%にも満たないからです。しかし、専門家がより現代的でしっかりとした研究を行うにつれ、赤毛と麻酔に関連する遺伝学についてより多くのことが分かってきています。
赤毛の人は麻酔がより必要なの?
専門家は、2000年代初頭から赤毛の方の痛みに関する研究をしてきました。しかし、研究が本格化したのは2004年頃で、学術誌Anesthesiology(麻酔学)に掲載された論文において、赤毛でMC1R遺伝子に変異を持つ方は、20%も多く麻酔を必要とするという報告がされたのです。この論文発表から数十年の間に、いくつかの研究がこの研究結果を裏付けています(そしてさらに詳しく述べています)。それらについては後でもう少し詳しく見ていきましょう。
しかし、結果は常に一貫していたわけではありません。例えば、2012年の論文では、赤毛と麻酔効果との間に関連性は認められませんでした。2020年に発表された別の研究では、赤毛と痛覚の敏感さは、無関係な2つの遺伝的変化(突然変異)に由来する可能性があると報告されています。
研究は決定的なものではありませんが、経験は一種の証拠ではあります。赤毛の方には麻酔薬が効きにくいという伝聞症例は無視できないものと言えましょう。
「良いニュースとしては、赤毛であろうとなかろうと、その方ご自身に合った量の全身麻酔が受けられるということです」とセスラー医師が安心できる言葉をかけてくれています。「麻酔科医は、手術中に快適さを保つために適切な量の薬を投与する専門家です。麻酔科医が、患者さんそれぞれの状況に応じて、麻酔薬を調整してくれますよ」とセスラー医師がおっしゃっている通りです。「誰にでも同じ量を投与する麻酔科医はいません。」
赤毛、痛みへの敏感さ、そして麻酔薬に関する研究をもっと理解してみたいですか?セスラー医師が、その詳細をご説明くださいます。
「赤毛遺伝子」は、痛覚感受性に関連しているかもしれない
燃えるような髪を作るのと同じ遺伝子が、痛みに対する耐性も低下させているのかもしれません。メラノコルチン1受容体(MC1R)遺伝子は、皮膚、目、髪に色をつける色素である、メラニンを生成します。しかし、赤毛の方は、MC1R遺伝子に変異を持っています。その結果、黒色であるメラニンの代わりに、赤色の色素であるフェオメラニンが生成されるのです。
「この遺伝子変異を持つのは、赤毛の方だけなのです」とセスラー医師が明言しています。「しかし、MC1Rはメラノコルチン受容体の一種に過ぎません。他のタイプの同受容体は脳機能に関係しています。そして、MC1Rに影響を与える突然変異は、他のメラノコルチン受容体にも影響を与える可能性があります。」
赤毛の人は手術の際、より多くの麻酔が必要かもしれない
ヒト以外の研究でもヒトの研究でも、赤毛の個体により多くの麻酔が必要であることが報告されています。この関連性を最も強く立証した2004年の研究では、赤毛の方へのガス麻酔が、黒髪の方と比較して調べられました。
この研究は小規模なものでしたが、研究者は、赤毛でMC1R遺伝子変異のある方は、20%も多くの麻酔を必要とすると結論付けたのです。
2004年に行われたMC1R遺伝子変異を保有したヒト以外の生物の実験でも、他と同じ鎮静作用を得るために、麻酔薬を追加する必要性が認められました。
「もちろん、ブロンドの方、茶髪の方、あるいは黒髪の方でも、必要な麻酔の量は異なります。投与量はその方に合わせて決めなければなりません。しかし一般的に、赤毛の方は他の髪色の方よりも多くの麻酔薬を必要とします」とセスラー医師が情報を共有くださっています。
赤毛の人には局所麻酔が効きにくいかもしれない
Journal of the American Dental Association(アメリカ歯科医師会誌)によると、赤毛の方は他の方よりも歯科治療を怖がる傾向があるそうです。その理由は、痛みと、赤毛の方に対する局所麻酔薬(組織を麻痺させるために使用されるもの)の効き具合に関係しているのかもしれません。
一般的に使用される局所麻酔薬はリドカインで、これはクリームやジェルとして局所投与することも、皮膚のすぐ下に注射することも可能なものです。2003年の研究では、赤毛の方にはどちらのタイプのリドカインも効果が低く、その内注射型のリドカインで最も顕著な違いが見出されました。
「局所麻酔薬がもっと必要かもしれないことを担当の歯科医に伝えたり、思い起こさせたりするのは合理的なことです」とセスラー医師が話しています。また、局所麻酔が効くまでにより時間がかかるかもしれないということも、セスラー医師が赤毛の方に助言しています。数分多く待つことで、麻酔がより効果的になり、歯の痛みが軽減されるかもしれませんね。
赤毛の人は、ある種の(しかし全てではない)痛みに対して、より感受性が高いかもしれない
2003年、研究者は、赤毛の方は黒髪の方に比べて、電気刺激に対する感受性は高くないことを見出しました。しかし赤毛の方は、寒さや熱さによる痛みに対する感受性は高く、耐性が低かったのです。
「痛みには多くの種類がありますが、これまでにまだ2、3の痛みしかテストされていません」と語るのはセスラー医師。「しかし、赤毛の方が手術に伴う温度や電気刺激による痛みにどのように耐えられるかについては、より良い理解が進んだと言えましょう。」
麻酔が必要な赤毛の人へのアドバイス
生まれつき赤毛の方の場合、セスラー医師が以下のことを勧めています:
- 痛みへの恐怖に負けて、医療の受診を遠ざけてしまうことはやめましょう。必要な歯科治療や医療を受けなければ、将来、より多くの問題―そして痛み―を引き起こすだけになってしまいます。
- 医師や歯科医師に相談しましょう。ほとんどの医学生や歯学生は、大学の講義ではこのテーマについて学びません。特に天然で赤毛の方の場合は、ご自身の懸念をかかりつけの医療従事者に伝えるようにしましょう。
- 局所麻酔が効くまで長めに待つようにましょう。より多くの麻酔薬が必要な場合もありますが、局所麻酔薬が効くまで長く待つ必要がある場合もあり得ます。
「過去に不快な経験や痛い思いをしたことがあっても、医療や歯科治療を避けないようにしてください」とセスラー医師が強調しています。「担当医は、患者さんご自身が必要とする麻酔薬の量を含め、個人個人に合わせた治療を行ってくれますよ。」
まぁヒトを対象とした研究はどうしてもそうなりがちですが、完全に断言できるほど解明されたわけではまだないようではあるものの、毛を赤くする遺伝子(の変異)が、たまたま痛みをより強く感じさせ、しかも麻酔も効きにくくする可能性が高いというのは、面白い話でした。
本質的に生命の危機や疾病に関する話ではないので、どうしても研究の歩みが遅いのかもしれませんが、今の遺伝子技術があれば、普通に「この薬剤に対し、どの遺伝子の変異がどの程度の感受性を示すか」はかなり簡単にテストできますから、余裕のある研究室がいつかもっとはっきり示してくれるかもしれませんね。
そして赤髪に限らず、他の遺伝子と何か面白い身体的性格的特徴の関係なんかも、この先色々明らかになっていくことも期待されると思います(どうしても、専門外の人が「面白い!」と思える話は、上述の通り優先順位が低くなるので、あまり出てきにくいとは言えますが…)。
遺伝子解析が進み、完全オーダーメイド医療が可能となる世界がやって来ることに、ぜひ期待したい限りです…!
