そもそもヒストンとはどういう意味なんだろう?

前回から、DNAの沈殿(エタ沈)に端を発し、「DNAは別に塩水で溶けやすくなるわけではないと思うけれど、細胞の中で構成している『めちゃくちゃギュッと締った強固な構造体』はほどけやすくなる」という話から触れる必要のあった「ヒストン」について、少しずつ見始めていました。

 

まぁ元々一連のDNA・染色体の話でその内触れようと思っていたのでちょうど良かったという感じではありますが、結局ヒストンというのは、DNAをグルグル巻きしてコンパクトな形に収めるためのよく出来た超小型生物機械みたいなもので……

…また軽く前回のおさらいからしておきますと、ヒストンのコアの部分はヒストンオクタマー(八量体)と言われる「8つの分子」がくっついてできたもので、僕はヒストンが専門ではないのでそこまでしっかり把握していなかったものの、2A・2B・3・4の4種類のヒストンが2つずつ組み合わさって出来るこのオクタマー、Wikipediaでは隣り合って直接相互作用をしている同士のペアがどうも間違った記述になっているようです…

(普通は、「2A⇔3」「2B⇔4」というペアがくっつき合うとされているけれど、ウィ記事では逆に描かれていた)

…なんて話をしただけで、それ以上の具体的な点には触れていませんでした。

 

まぁそもそも「ヒストン」と聞いても、日常生活で聞いたことがある気がする似たようなカタカナ語だと「ピストン」というものしか浮かばないと思うので、こういう「知ってる言葉とちょっと違う」ものは何かパチモン臭を感じてしまうものですが……

…流石に生命科学系に進んだ人ならむしろピストンより聞き慣れる単語になっていくぐらい有名所の分子とはいえ、まずは例によって単語の意味を振り返る所から始めてみましょうか。

 

いや意味としては、「DNAが巻きついて、染色体を形成するタンパク質」でしかないんですが、意味というか語義・語源ですね。

まぁこれは「histone etymology」で検索したらいくらでも出てくる話で……

https://www.google.com/search?q=histone+etymologyより


Google検索トップに出てくる語源ツリー画像をお借りしましたが、基本的に語源なんて諸説あることが多いわけですけどこの場合もそのようで、「arrest(拘束する)」という意味のギリシャhistanai、または「web(クモの巣)、tissue(組織)」を意味するhistosが由来とのことで、これは正直どちらもDNAという生体分子が絡まり合って存在している分子というイメージピッタリの、大変納得いく語源だといえましょう。

 

…とはいえしかし、まぁ正直「histo-」が「組織」を意味する語だというのは医学・生命科学系の人には常識で、どちらかと言えば「なぜそれに『-one』がくっつくのか?」が気になる点だったわけですけど、それについてはこの説明では判然としませんね……。

 

化学的には、確かこないだの記事でも見ていた通り、「-オン」という語尾は「ケトン」を意味する語で、語源辞書のEtymonlineではまぁその旨も書かれていたものの、それ以外の本来の意味も載っていました(↓)。

 

www.etymonline.com

 

化学的な接尾辞、ギリシャ語の-oneで女性の愛称(anemoneにおける、anemos由来の「daughter of the wind(風の娘)」のように)、また、化学的な使用では「weaker(より弱い)」誘導体を示す。


…ってことで、まぁ「アネモネ」の「-one」と同根の、元々は女性的な響きをもたせるための言葉であり、化学では「弱まった誘導体」のことを指すそうですが、これは正直あんまりピンときませんね。

 

というか、よく考えたらこういう用語は、ウィキペディア大先生がしばしば発見者ととともに命名の由来なんかも記述してくれているものだということに気付きました。


日本語版にはなかったものの、英語版のHisotne記事にはありましたね、早速HistoneのHistoryを参照させていただくと…

 

(というか、そういえば「ヒストン」と「ヒストリー」はそっくりですが、ヒストリーの方は「学んだ・賢者」を意味するギリシャ語histōrに由来するということで、似て非なるものだったようです。)

 

en.wikipedia.org

 

ウィッキー先生によると、ヒストンが発見されたのは1884年、ドイツの医師・アルブレヒト・コッセルさんの手によるもののようで…

 

ja.wikipedia.org

 

…コッセルさんは、その辺の細胞生物学の発見・貢献により、記念すべき第10回ノーベル医学生理学賞を受賞されていたんですねぇ~。

 

肝心のヒストンは、コッセルさんが名付けたかどうかまでは定かではないものの、この名前自体はドイツ語の「Histon」に由来し、Histonという語自体の語源は結局こちらも不明瞭ではあるものの、恐らく古代ギリシャ語のhistós(loom=織機)などに由来するのではないか…などと書かれていますね。

 

そう考えると、「組織」という意の「histo-」とは実はあまり関係なかったといえるかもしれませんが、実際ヒストンは組織ってわけでもないですし、「織機」というのはミシンのボビンにも近いし、むしろこれはかなりイメージに沿う名前だといえましょう。

 

ただ、コッセルさんがこのヒストンというタンパク質を発見した頃はまだまだ分子レベルの細胞生物学は言うに及ばず、顕微鏡技術なんかも発展していなかったと思われるので(「DNAが染色体の中で遺伝物質として働いている」という発見がなされるのは、次の世紀まで待つ話ですもんね)、ヒストンが「ボビンのような分子」というのはそこまで想像できるわけがなかったと思われるのに、まさに慧眼といえましょう。

 

とはいえまぁ、名前なんてそこまで厳密につけられるものではありませんし、コッセルさんの気まぐれで「『生体組織』や『ヒストリー』にもかかってて何かカッコイイからヒストンって呼んだろ」って感じで適当につけられた名前だった可能性も、なくはないかもしれないですけどね(笑)。

 

いずれにせよ、ヒストンというのはDNAを巻き付けるタンパク質分子であり、前回紹介していた画像はどれも英語の論文なり教材なりが由来だったので正直分かり辛い感じでしたが、日本語でも調べてみたら、MBLライフサイエンスという、生命科学系試薬の販売会社の解説記事が大変分かりやすくまとめてくれていたので(試薬会社の解説記事は、本当に分かりやすくてタメになることが多いのでオススメですね)、正直もう「これを読んでいただければ…」で終わりの話かもしれません(笑)。

 

ruo.mbl.co.jp

 

とはいえこの記事は、ヒストンそのものというより、「ヒストン修飾」というもうちょい発展的な内容でしたか。


しかしまとめの画像は大変分かりやすく(ちょっと解像度が小さくて文字が読み辛いですが)、大きいものから順にどんな感じなのかを示してくれている良いイラストですね(↓)…

https://ruo.mbl.co.jp/bio/product/epigenome/article/histone-modification.htmlより

…でもまぁ、これはあくまで「この辺の話に精通していれば分かりやすい」のであって、結局見知らぬカタカナ用語が複数出てきた時点で人間は理解を諦めるのが基本ですから、↑の画像でも、ヒストン以外に「クロマチン(線維)」「ヌクレオソーム」などが出てくる時点で、初学者の方にとってもう嫌になるのは必定だといえましょう。

 

ただ正直、この辺の用語はもう、あえて覚える意味があるほど重要なものでもないですし(まぁそれを言ったらヒストンだって、覚えて人生がより良くなるとかは全然1ミリもないですけど(笑))、「説明を見て覚える」のではなく、「関連した話を色々学んでいく中で、沢山触れることで自分の中に『こういうものなんだな』というイメージがいつの間にかできあがっている」というのが、正しい学習法…って訳じゃないですけど、それが理想なのかな、って気がします。

 

まぁ、ヒストンだけやたら詳しく見て、時間が無くなったため「覚えるんじゃない、感じろ」みたいな流れに持っていきたいだけかもしれませんが(笑)、とはいえクロマチンヌクレオソームは、そもそも染色体が「chromosome(クロモソーム)」という語であり、それをバラバラに分解したようなもんじゃん…って話に過ぎませんし、正直ほとんど同じ感覚で使えなくもない語なので、「この辺のDNAとヒストンの複合体を、そのように呼ぶことがある」みたいな、細かいことは気にせずまずは感覚に頼って話を進めるので十分ではないかな、と思います。


ということで、マジで何ら具体的な説明に入らないまま一区切り…という牛歩解説になっていますが、DNA・ヒストン・染色体・クロマチンヌクレオソームなどなど…について、次回からようやくもうちょい詳しく見ていこうかな、と思います。

(とはいっても、もう↑の画像以上の話もないかもしれませんが…。)

にほんブログ村 恋愛ブログ 婚活・結婚活動(本人)へ
にほんブログ村