コンデンス!

おもむろに見始めていました、遺伝子DNAの乗り物といえる染色体について少し深掘りしていくシリーズ、前回は、何千万・何億という塩基がつながってできたクソ長分子DNAは、実は普段はそこまでギュッと凝縮されているわけではなく、分裂期になると例のX字型の染色体が突如として形成されるのです…なんて話とともに、実際に細胞が分裂する時に染色体が2つの細胞に分配される様子を収めた動画なんかもペタリと貼っていました。

 

…って、「遺伝子DNAの乗り物といえる染色体」という記述ですが、まぁこれはそういう風に書かれることもあるとは思いますけど、一応DNAが「ヒストン」というボビンのような巻き取りタンパク質に乗っかっていると言えるっちゃ言えますけど、まぁ本体というか形そのものと言いますか、ひとつながりの分子としてあの構造を形成している主役はむしろDNAそのものとも言えますから、「『染色体はDNAの乗り物』っていうか、DNAそれ自身じゃん」とも思えますし、その記述はちょっと「そう?」とも思えるキライもあるかもしれませんね、自分で書いておいてなんですが(笑)。

 

まぁそんな細かい点はともかく、前回チラッと書いていた、好奇心が強い人なら必ず感じるであろう疑問、

「いや『分裂期になったら形成される』って、何がどうなっていきなり形成されるのさ?誰かが『形成、スタート!』みたいに号令をかけるわけでもスイッチを入れるわけでもあるまいし、そんなのあり得なくない?」

…という点について、もちろん全てが完全解明されたわけではないんですけど、少なくともそこで働く役者分子なんかは、長年の研究により色々と分かってきているのです。

 

今回は、その「染色体形成に働く分子」を紹介してみるといたしましょう……結論からいえば、染色体形成に主役として働く分子はズバリ、「コンデンシン」と呼ばれるタンパク質になっています!

ja.wikipedia.org

 

リンクカードに表示されているサムネ画像は、(ほぼ欠けているものの)左側が染色体の形成されていない間期の細胞の核、そして右半分が、ギュッと詰まった構造の染色体が形成されている様子の顕微鏡写真ですが、まずはその名前…

 

…これは、カタカナ語でも何となく明らかといえましょう、「コンデンスミルク」というのが、濃縮されて最早トロリとした感触になった、しばしば甘く加工されているあの白くてンマイやつであることからも分かる通り…

(ってまぁそれは英単語を知ってれば明らかですけど、英語を知らない子供の頭で考えたら、「『コンデンス』は、『甘い』とか『ドロッとしてる』って意味かな?」って思う気もしますけど(笑))

…condenseで「凝縮する」という意味ですから(ちなみにコンデンスミルクを英語で呼ぶ場合、「凝縮されたミルク」なので、正確には「condensed milk」になりますけどね)、「コンデンシン」というのはまさにその「凝縮=コンデンス」という意味からつけられた名前で、DNAをギュッと凝縮するという役割にピタリというかそのまんますぎる名前だといえましょう……英語版小林製薬かよ(笑)。

 

ちなみに関係ないですけど、コンデンスミルク、まぁ「練乳」と呼ぶことも多かったですが、僕はかなり幼い頃、朝食にイチゴとこれが出てきまして、野菜は全て一切ダメだったのはもちろん、果物も「別にウマくねーよなー、食べたくねぇ~」と思っていた好き嫌い激しすぎる幼児のもとに届けられたこのタレというか液体……

「世の中にこんなに美味しいものがあっていいのだろうか?!」

…と、子供にありがちな、「イチゴにかけて食べる」というより、「練乳を食べるためにイチゴを使う」と言った方が適切に思えるぐらい、ドバドバかけてニッコリご満悦だった気もするというか、「直吸いしてぇーっ!」と思えるぐらい究極の甘さで僕は本当に好きでしたけど、「こんなに美味しいものがある世界なら、生まれてきてよかった、この先も楽しく生きられそうだ」と子供心に思った記憶があるので、僕の人生の恩人といえるぐらいかもしれません(流石にそこまででもねーですけど(笑))。

 

と、時間がないくせに…というかないからこそ無駄に脱線ネタを挟みましたが、コンデンシンというのは実は1つのタンパク質分子ではなく、「複数のタンパク質分子(=20種類のアミノ酸がつながったもの)が寄り集まったもの」でして、いわば「タンパク質複合体」になっています。

 

具体的には、まさにウィ記事の模式図にあった通り(↓)…

https://ja.wikipedia.org/wiki/コンデンシンより

…このように、アメリカンクラッカーみたいな形を作る、微妙に中身の違う「SMC2」と「SMC4」と呼ばれるタンパク質、こちらが実際の「染色体形成」に重要な部分で、後は「制御部分」として働く3つ、CAP-H、-D2/3、-G/G2というもの(この組み合わせ次第で、コンデンシン自体はコンデンシンIとコンデンシンIIという2つの微妙に異なる複合体として働いています…画像一番右の、IDCとやらは、線虫という生物限定なので無視しましょう)の、合計5つのタンパク質から成り立っている物体なんですね。

 

とりあえず機能としては、ピンクのアメリカンクラッカーみたいな部分がDNAのヒモを上手く掴んで、グリンと捻ってコイル構造を作る、あるいはつまんで押し出してループを作る…という操作を上手いこと繰り返すことで(同じくウィキ図参照↓)…

https://ja.wikipedia.org/wiki/コンデンシンより

…少しずつ、一部がヒストンによって巻き取られてるとはいえ、全体としてはまだビロビロのヒモ状態のDNAを、ギュギュギュっと染色体構造にまでまとめ上げていってくれるんですね!

 

例によって、「いやだから、意思を持った物体でもないくせに、なんでそんな高度なことが可能なのさ?誰が教えた?どうやってできる?」という疑問はもっともなんですけど、こればっかりはもう、

「特定のアミノ酸とDNAの特定のヌクレオチド同士が接触することで、電気的な相互作用が上手く働き、ちょうどそういう機能が発揮できるようになっている」

…としか言いようがなく、「実際にできてるんだからしょうがない、認めよう」としか言えない話だと言えましょう。

 

まぁそれはそれ以上の原理というか仕組みは誰にも分からないのでそう考えるしかないものの、他に疑問に感じる点としては、

「いや、何か分かった風にイラスト描いてるけどさ、結局こいつは何なの?本当にこの世にそういう形を持った物質として存在してるわけ?誰がどうやって確認したんだよ。想像で描いてるとかほざいたら、俺はブチ切れるよ、そんな妄想に何で付き合わんとアカンねん」

というような疑念も、僕はうっすら学生の頃感じてたようにも思えますけど、これはもう、

「そうだよ。実際にアミノ酸という形ある物質がつながって、こういう面白い形でこの世の中というか細胞…というかより詳しくは核の中に存在しとるよ。

 『どうやって確認したのか?』については、偉い人がX線結晶構造解析というのをして、ハッキリと明らかにしたものだから、文句があるならX線結晶構造の読み方を学んで、おかしいと思う点があったら自分で指摘して」

…としか言えない感じですね。

 

そう、こいつらはタンパク質ですから、まさにアミノ酸のつながったものであり、絵で棒のように描かれた部分も、ボールのように描かれてた部分も、どれもアミノ酸が実際にそこに存在して形成しているものであり……

…以前もお世話になりました、自分でグルグル動かせる3D構造を掲載してくれていることでもおなじみ、RCSBのPDBプロテイン・データ・バンク)から、SMC2の情報をお借りしますと…

 

www.rcsb.org

 

リンクカードにも例のリボンモデルがサムネで表示されていますが、カラフルではなくなるものの、自分で動かせるビューアを起動させてその画像を貼ってみると…

https://www.rcsb.org/3d-view/6QJ1/1より

まさにこのように、どんなアミノ酸が順番に並んでいるのか、そしてそれらが具体的なこのラセン構造メインの分子で、どの位置にいてどういう形を作っているのか……まで完全に分かっており、例えばど真ん中少し下ぐらいにカーソルを当ててオレンジ色でハイライトさせた部分、こちらはちょうど182番目の「L」(ロイシン)だということが分かるわけですね。

配列自体も画像上の方に「MSERVTE…」とあるように、20種類のアミノ酸を順番にこうしてつなげていけば(このタンパク質は430アミノ酸ぐらいがつながっているので、430個この通りにつないでいけば、ですね)、気付いたらアメリカンクラッカーの片割れ・SMC2タンパク質が出来上がっており、細胞の中では勝手にこういう棒と球みたいな構造を取って、コンデンシンとしてDNAをコンデンスするために機能する……と、そうなっているのでした。

 

と、ちょっと分子をなぞっただけの浅い説明になりましたが、基本的にはこういうことだ、って話ですね。また次回も少し染色体を見ていこうと思います。

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