チーズが高い温度で急に溶け始めるのは…?

今回もまた、少しずつ遡っていく形で、溜まっていたご質問の方を見ていこうと思います。

 

コメントを貼り付けてあるメモ帳を見てみたら、「水分が95%もあるキュウリが固体でいられるのはなぜ?」という例の話に戻っていくぐらいかな、と思っていたのですが、そのコメント自体は既に、↓の記事で貼り付けまではしていた形だったようです…!

 

con-cats.hatenablog.com

しかし、この記事(↑)では、「タマゴはなぜ熱を加えたら液体っぽい状態から固まった状態になるのか」という話に端を発し、ダイヤモンドの例→気圧の話へ…と逸れていき、そのまま1ヶ月以上脱線ネタで糊口をしのいでいた感じだったわけですね。

 

ということで、そのコメント自体はまだ中途半端なままだった気もするため、コメントの再掲から再開させていただくといたしましょう。

 

例えば、液体のオレンジジュースと固体のオレンジで比べてみても水(水分子)の割合は変わらないということでしたよね?

イメージとして、水の割合が大きいと、みずみずしいというか柔らかいというか、固体より液体に寄るというか、そういう風に思えてしまうんですけど、でも水分子といっても固体の氷も同じH2Oになるわけですし、そのイメージが間違っていることもわかってはいますが、、水の場合は温度で変化するじゃないですか?

だからどうとまではわからないですが、水溶液は液体ですけど、オレンジジュースを凍らせたら当然固体になって、でも水分はやっぱり90%近くあって、きゅうりは固体なのに95%もあって、恐らくそれを絞って液体にしても同じなんでしょうけど、、それを言うなら液体になりようがない人間の水分が約70%っていうのも、どう考えればいいかわからないです。(普段特に考えることはないですけど笑)


水分子が多いということは、どういうことなんでしょう?


『それ以外の「残りの成分」がその「水」の状態がどうなるかを大きく決めており…』


『溶け込んでる中身によっては、常温でも液体ではない水分も普通に存在する』


などと書かれていましたので、その事実自体はなんとなくはイメージできるような気もしますが…

 

これ、考えない方がいいんだろうなって、書いてて思いました。消そうかな、っていうレベルで笑

(そのまま送りますが、考えない方がいいよ!と言ってもらって大丈夫です笑)

 

⇒とはいえ実はもう↑のタマゴ記事でもそれなりに触れてはいたんですけど、そこでは「分子がつながって、『骨格』みたいな構造を作れる高分子がうんぬん…」みたいなことを書いていたわけですが、突き詰めると結局、「水というものは、溶けてるものでその姿を大きく変える」ってことに尽きる感じだといえましょう。

 

例えば、コップ一杯のお水、もちろんこれはほぼ100%が水分子なわけですが…

(もちろん、例えば水道水であれば微量の塩やら何やらがイオンの形で溶け込んでるわけですけど、そんなのは0.00...1%程度なので…
(具体的には、日本の水道水の塩素は0.1 ppm以上(ppmというのは、百分率ならぬ百万分率、パーツ・パー・ミリオンのことなので、0.1%の1万分の1ってことですね。具体的には0.00001%ですから、普通にさっき超微量のつもりで書いていた「0.00...1%」というのは、0があと2つ足りないだけでした(笑))と定められているようです)
…まぁ100%の水と考えて問題ないでしょう)…

…と、また挟んだ余談が長くなりすぎたので仕切り直すと、コップ一杯の水は文句なしに完全な液体なわけですけど、ここに砂糖を溶かしていくと、どんどんドロッドロの液体になっていき、最終的には水飴のようなベットベタな、もはや液体とも呼べないようなものになっていくのはどなたも容易くイメージが湧くと思うんですけれども、結局溶けてるもので本当に水というのはガラっと顔を変える、ってことなんですね。

 

もちろん砂糖の例は、砂糖の溶解度は驚きの「100 gの水に200 gちょい」なので、ドッロンドロンにするためには相当量入れる必要があり、その場合の水分濃度は100/300で30%程度になるわけですけど、溶けるものによってはホンのわずかな量で水を固めてしまうものも沢山あり(そのほとんどが「高分子」と呼ばれる有機物…というのがこないだの記事で書いていた話でした)、結局はキュウリとか果物とか人間とか、いわゆる有機生命体は、上手いことそういう「固まる成分」を水の中に入れることで形を保ってるのです……ってのがズバリのポイントといえるように思えます。

(改めて、砂糖は「ブドウ糖」と「果糖」という1分子から成る糖が1個ずつ繋がってできた「二糖」ですけど、もっと大量に糖がつながった「アガロース」という高分子なんかですと、2%も加えたらもう水がガッチガチに固まる(超硬いゼリーになる)という感じですね。)

 

なので、「水分子が多いということは、どういうことなんでしょう?」というご質問については、

「水分子が多いということは、水分子が多く存在する、ってことですね」

…という、いわゆる進次郎構文で答えるしかないといえるとでもいいますか(笑)、正直、水分子の割合よりも、「何が溶けているか」が、その物質の構造というか状態を決定付ける、遥かに重要な因子だと思います。


改めて、例えば牛乳は水分90%でキュウリは水分95%だったわけですけど、キュウリの方が、例えばセルロース細胞壁の主成分ですね)といった「ガチガチに固められる高分子」を含んでいるので、牛乳は液体だけどキュウリは固体的な物質だといえるわけですね。


キュウリを投げられるのと牛乳を投げられるのとでどっちがイラッと来るかといったら、当然確実に牛乳なわけで、それというのも牛乳の方が(水分は少ないのに)液体の性質が強いから、なわけですね。

形を保たない液体は、身体にかかったらビチョビチョに全身に広がり、大惨事です(しかも牛乳は臭くなる(笑))。


さらに言えば、ハチミツの水分は20%程度のようですけど、ハチミツをドバッと全身に…までいかなくとも、スプーン一杯程度をかけられただけで、人間はもうベトベトになりすぎて気が気でない状況になりますから、モノの扱いやすさというか形の維持しやすさというかそういう点に、水分量ってのはほっとんど何も関係ないレベルまであるぐらいかもしれません。


(もちろん、水分0の、例えば金属の物質やプラスチックの容器なんかは、完全に純粋な固体で扱いやすいし別格といえますけど、ある程度水分を含む物質は、扱いやすさというか形の緩さに水分量はほとんど関係なく、「何が溶け込んでいるか」が全てって感じだということですね。)

 

そして、小学校以来習った固体→液体→気体という物質の三態変化も、あれはあくまで純物質で意味のある話であり、色々な高分子が混ざった有機物なんかではほぼ意味のない概念というか考えになっている…ともいえる話ではないかと思います。


「タマゴを加熱したら液体→固体」というのも、タンパク質を主に構成する炭素原子自体は、凄まじい高温にしていくと液体や気体になるわけですけど(→こないだのダイヤモンド記事)、我々が普段生活する常温条件では、水との兼ね合いで最初は液体状態に近い生卵である一方、加熱すると変性して、いわばより「固まる状態」に変化するとでもいいますか、固体っぽいゆで卵になる……という感じで、色んな要素が絡み合いすぎていて、状態の変化は一般化することができない、って話といえましょう。


(もちろん同じ鶏卵であれば、概ね何℃で固まるかは決まってますけど、例えば同じ有機物であるチーズは、これは熱を加えたら溶けていく感じになってますしね。

…と、「そういえば水が固体から液体になるのは0℃のはずなのに、チーズは人肌以上に温め続けてようやくトローンととろけ始めるのはなぜ?」という疑問を感じることもあるかもしれないのですが、これは、チーズの中の脂肪が溶け始めているだけであり、脂質の中には融点が30℃とか50℃とか、脂質を作る炭素鎖の構造次第で色々あります…ってのは、ずっと前の「楽しい有機化学講座」のいくつかの記事(例:↓)でもちょっと触れていた話でした…

 

con-cats.hatenablog.com

…つまり、「とろけるスライスチーズ」がなぜとろけやすいのかは、普通に通常のチーズよりも脂肪濃度を上げているからで(もしかしたらより融点の低い脂質を中心に使っているのかもしれません)、「とろけるチーズ」の方が普通のチーズより何か「重い」感じがするのはそのためなんですね。

 

…って、僕はずっとそう思ってたんですけど、ふと「とろけるスライス」の詳細を見てみたら…

www.meg-snow.com

https://www.meg-snow.com/products/detail.php?p=torokeru_slice


…こちら、脂質が一枚あたり4.2グラムでしたが、スライスチーズの方を見てみたら、まさかの脂質4.3グラムで、むしろノーマルスライスの方が脂質が多かったです、何でや!(笑)

(ちなみに、脂質の種類かと思いきや、飽和脂肪酸の量も両方全く同じ2.6グラムでした…)


※その答は、「製造法の違い」だったようです(参考:明治の記事など(↓))。

www.meiji.co.jp

「とろけるスライスの方が、脂肪が多いから重いんだね」とずっと思っていた僕の立場は一体……(結局、バカ舌ってことですね(笑)))

 

…とそんな感じで、正直今までで一番「同じこと書いただけだったな…」と思える記事だったのですが(今までは、時間がないでもないなりに何か新しい話はしていたつもりでしたが…)、まぁ一応、中途半端な説明になってた気がするこの辺の話に関して、「溶けてるものが構造を決める」としっかり主張しておくのも意味があるかな、と思えたので、ヨシとしたい限りです。

(辛うじて最後、チーズの話もしましたしね(笑))

 

ちなみに人間に含まれる水分は成人で60%程度という話でしたけど、それは血液とか臓器とか、そういうより液体チックなものも含んでのことなので、お肌の水分量ってのは、実はわずか20~30%とのことです(参考:コーセーのサイト(↓)など)。

www.kose.co.jp
とはいえ、小さいとはいえ20%って冷静に考えたら結構な量ですし、その数字はかなり重要で、水分量がそれを下回ると目に見えて肌が乾燥してカサカサになりますし、シワやその他トラブルの元にも極めてなりやすい、超重要美容要素だといえましょう。


上では「状態を決める上では、水分量より、何が溶けているかが大事」と書きましたが、この場合ももちろん、肌・皮膚を形成する細胞の状態(どんな物質が溶け込んでいるか)が重要ともいえますけれども、この場合は純粋な水分量も極めて大事な話だといえる感じですね。


水分量は肌ケアのみならず、健康に一番重要ともいえるぐらいですから、汗をかく真夏も、乾燥しがちな冬も、しっかりと水分摂取を怠らないようにしたい限りです。

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