ダイヤモンドも液体に…?!

「ほとんどが水ばっかりのものなのに、なぜ固まる…?」という話から、「寒天なんてたった2%入れるだけでカッチコチやぞ!」…的なネタに触れ、さらには「そういやタマゴにいたっては、熱を加えると固まりますね」なんてことにも脱線していたのが前回の記事でした。

 

時間がなくて書けなかった話から少し補足しておくと、加熱して固まるのはタンパク質が変性することが原因である……これは例えていうならば、アミノ酸の鎖(タンパク質というのは、20種類あるアミノ酸が1つずつズラーッとつながったものでした)が、いわば最早ほどくことができないほどきつく結ばれてしまったようなもので、一度変な結ばれ方をした鎖縄がもうほどけなくなってしまうのと同様、一度熱変性したタンパク質は、冷やしてももう生卵状態に戻ることはない……

…って話でしたけど(ただ、あくまで「ほどき辛い(自然には決してほどけない)」だけで、人類の叡智をもってすれば、ほどいて生状態に戻すことも可能、なんて話もありました)、当然ですが固まったタマゴは固体なので、これを加熱し続けると液体に……なるかと思いきや、これは残念ながらならないんですねぇ~。


(ちなみに生卵はまぁ粘性はあるもののあれは誰がどう考えても液体なわけですが、これまた大部分は水なので、氷点下に置けば冷凍も可能ですね。

 この冷凍タマゴ、案外知る人ぞ知る美味しいヤツらしく、実際どんな感じかの様子やこれを使ったレシピなどの記事もネットにいっぱいありました(一例↓)。

hugkum.sho.jp

…要は、生卵というものは、冷やしても温めても固まる、意外と面白い物質だった、ってことですね)


脱線しましたが、タマゴの温度を上げても「固体→液体」の状態変化が起こらないというその理由については、タンパク質はアミノ酸がつながってできた高分子ですけど、そういった複雑な有機化合物は、加熱していくとその内(ゆで卵になるような「変性」を通り越して)分子が分解していき、機能性高分子でもなくなり、くっついていた他の元素とも離れてしまった結果、融点に達する前に単なる黒焦げの炭になってしまうから…という、まぁ言われてみればそりゃそうかもね、という話だといえましょう。

(もちろん、そのタンパク質を構成する他の元素である水素なんかは水になってさくっと蒸発していきますし、窒素や硫黄も、酸化されて気体となって雲散霧消していく感じですね)


とはいえ、「じゃあ黒焦げの炭は、何で加熱しても液体にならんの?」という話になるかもですが、これまた、炭素の融点に達する前に、空気中(あるいはタンパク質分子内)の酸素と反応して、二酸化炭素=気体となりその場からいなくなってしまうから(もちろん完全に酸化するにはかなりのエネルギー=高温が必要になりますが)、ってのがその理由で…


…しかしそうすると、「じゃあ酸素がなければ炭素は炭素のままどんどん温度が上がるん?」と思える気もするわけですが、これはまぁ実際、例えば真空状態でタマゴを加熱し続ければ「燃焼」することはなくなるので(化学でいう「燃焼」は、「急激な酸化」のことですね)、真っ黒な炭になった炭素が二酸化炭素としてその場から姿を消すことはなくなるものの……


実はこの場合も、どれだけ温度を上げようと、炭素が液体になる姿を拝むことはできません。

それはなぜかというと、実は炭素原子ってのは「昇華性」の元素でして、固体がいきなり気体になる性質があるからなんですねぇ~。

ja.wikipedia.org

昇華点としては、上記ウィ記事によると3642°Cらしいですけど、酸素の存在しない真空中などで、炭素のままの形で何とかそこまで加熱してやっても、幻の「炭素の液体」を拝むことはならず、最早真っ黒クロ焦げの炭素原子そのものがいきなり気体としていなくなってしまう形になっています。

(まぁ見えなくなるだけで、この世には存在し続けるわけですが)


とはいえ物質の状態変化というのは何気に温度のみならず圧力も大いに関係する話ですから、実は、炭素を液体にすることは、絶対にできないわけではないようです。

 

日本語版よりも英語版の方がちゃんとした図だったので英語版のウィキページから炭素の状態図をお借りすると…

https://en.wikipedia.org/wiki/Carbonより

横軸が温度、縦軸が圧力ですが、温度のKケルビンで、これは高校化学でも習う「絶対温度」ってやつでして、0 Kが全ての分子が運動を止めるとされる絶対零度で、℃で表すと-273℃であり、普通にKから273を引いたのが℃になるというだけですね。

一方の圧力は、これは日本語版の図の説明にありましたが0.001 GPaがおよそ10気圧に相当するそうで、炭素の黒色結晶であるグラファイト黒鉛気体(Vapor)ではなく液体(Liquid)になるのは、およそ0.01 GPa以上、つまり100気圧以上の高圧が必要で、1 cm2に1 kgの重さが乗っている圧力がおおよそ1気圧ですから、1 cm四方の紙の上に100kgぐらいの重さの圧をかけて、約4600K=約5000℃にまで加熱してやってようやく三重点(固体・液体・気体の三態が共存する状態。画像でいうと「TP (Triple Point)」)なので、安定して液体にするには、まぁ1 cm2あたり数百kgか10倍ぐらいにあたる1トン=1000気圧ぐらいの超重力がいるってことで、炭素の液体を見るには相当な力が必要ってことですね。


なお、炭素には黒色結晶の他に、透明結晶であり、自然界に存在するものの中で最も硬い物質であるダイヤモンドという状態もあるわけですが、状態変化グラフを見る限り、超々高圧下では炭素の結晶はバリカタのダイヤモンドに姿を変えるようですけど、右上の方を見るに、高圧を維持したまま温度を上げると、ダイヤモンドが液体になるという夢のような状況があるみたいですね!

(高圧を維持しないと、グラフにある通り、ダイヤモンドは高温で黒鉛に化けてしまいます……火事に遭うと、ダイヤがただの炭になってしまうというのは有名な話といえましょう。)


しかし、ダイヤが輝いているのは結晶構造を取っているからであって、結晶ではなくなったらただのみすぼらしい炭カスと同様でしょうから、これは恐らく、「ダイヤモンド・リキッド」という夢のある響きとは対照的に、色の付いて濁った、しょうもない液体であることが予想されます(笑)。


流石に貴重なダイヤモンドを、わざわざ尋常じゃない超高温高圧下に置いたまま超加熱し続けて液体化してやるような酔狂な人はいないようで、検索しても全然関係ない話しか出てこなかったため「液体ダイヤモンド」がどんなものなのかは幻のままでしたが、日本高圧力学会の方に、高圧でのダイヤモンド合成という面白い話が結構詳しく書かれていたので、興味ある方はご覧いただくことをオススメですね!

 

 

そう、ダイヤモンドは「天然」と「合成」とがあると聞く気がしますが、合成ダイヤモンドってのは、まさに高圧下で作るものだったようです。

下手したら何億年もの時間をかけて作られた天然のものに比べると、合成ダイヤは内包物が少ないという差があるらしく、光の屈折度は天然物の方が上であることが多い…なんて話も目にしますけど、しかし技術の発展により、今ではもうプロの鑑定士でも中々見分けがつけられないぐらいの輝きを放つ合成ダイヤモンドもあるらしいですねぇ~。

 

僕は、そもそも物欲全般がほとんどないから当たり前とはいえますが、宝石・貴金属の類にも1ミリも興味はないですし、ダイヤなんてお金もらってもいらないぐらいですけど(まぁお金もらったら受け取りはするかもですが(笑)、指輪とかブレスレットとかネックレスとか、とにかく装飾品の類を身に付けるのは正直鬱陶しいので、マジでお金もらってもやりたくないぐらいですね)、まぁでもダイヤの輝きが美しいのは間違いないといえましょう。

 

なお、ダイヤモンドは世界一硬い物質としても有名ですが、「硬い」ことと「壊れない」ことは全然異なることに注意が必要ですね。


そんなわけなくない?と、昔その話を聞いたときは一瞬思えたものの、これは案外当たり前で、例えばふにゃふにゃのプラスチックの板とガラス板、どちらが硬いかと聞かれたら全会一致でどう考えてもガラスですけど、しかし、どちらが割れやすいかは、例えば石を投げてぶつけたらどうなるかを考えれば明らかでしょう……ってそんなこと考えなくとも幼稚園児でも分かる話ですが(笑)、割れやすい(壊れやすい)のは圧倒的にガラスなんですよね。


それと全く同じで、ダイヤモンドも、ハンマーで叩きつけたら余裕で粉々に砕け散ります

まさに、「ダイヤモンドは砕けない…わけではない」って感じなんですね。


じゃあ「硬いって何なの?」って話ですが、これは、「引っかくことで傷を与えられない」というのがポイントで、「擦り合わせたら、絶対にダイヤモンドが勝つ」という特性から、「ダイヤモンドカッター」なんかで工業分野では広く使われているものといえましょう。

 

その辺の話も、ウィッキー先生に詳しく掲載されているので、興味ある方はぜひお目通しになることをオススメします、と、また時間がないので丸投げさせていただこうと思います(笑)。

ja.wikipedia.org

そんなわけで、またしても脱線ネタのみでご質問には到達せぬまま時間切れとなってしまいましたが、次回はまたご質問の方に戻っていこうと思います。

 

アイキャッチ画像は、先ほど貼っていた状態図はあまりにつまらんすぎて微妙だったので、上記ウィキップ先生の記事から、ダイヤといえばやっぱりこれこれぇ~と思える「ブリリアントカット」の画像をお借りさせていただきました。


やはり宝石の画像は映えますね!(まぁ、画像を見るだけなのも虚しいかもしれませんが(笑))

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