液体を混ぜて反応しちゃうことはある?

ここ最近の「混ぜる」記事から派生して、前回エントロピーみたいな話に触れて、物質というのは「常に拡散して、均一に広がろうとする」性質があるので、

「コーヒーにミルクを混ぜたら、あえてスプーンやマドラーみたいなものを使ってかき混ぜてやらなくても、じっと待ち続ければやがて必ず均一になるのです。

 その頃にはコーヒーは冷めて、下手したらミルクは腐って飲めたものじゃなくなってしまうかもしれませんが(笑)」

…みたいなことを書いていました。

 

その話に関して1つだけ書き忘れていたことを今思い出しましたが、例えば水に塩や砂糖を入れた場合も同様で、粒を加えて放置した場合、混ぜないと中々溶けないようにも思えるもののこれも絶対に、時間さえかければ必ず全てが勝手に溶けていき、しかも溶けた溶質はやがて水の中で均一に広がっていきますし、さらにいえば、一度溶けたものが勝手に固体に戻ることは絶対にないわけですけど…

(なぜなら、固体状態と液体状態とを比べると、固体の方が絶対にエントロピーが小さい状態といえるわけですが、「エントロピー増大の法則」が成り立っているこの世界では、エントロピーが小さくなる反応が自発的に起こることは絶対にあり得ないので。

 もちろん、この世界ではエントロピーが小さくなる変化も存在しますけど、それは絶対に、「外部からエネルギーを与えてやる」という、何らかの仕事を加えた場合に限り起こることであり、「自発的に」という条件から外れてしまうわけですね。

 基本的にこの世の中で人間が執り行う「仕事」というのは、物作りにせよ、散らばったデータを集めて分かりやすい形にまとめる事務処理にせよ、ほぼ全てが「エントロピーを小さくすること」を目的としているといえますから、まさに、日常生活でいう「仕事」というのは、物理学の話における「仕事」と、まさに同じ単語でも何ら問題がない、非常に共通点のある用語だといえる気もしますね)


…と、補足が長くなりましたが、その「溶けたものは均一に広がっていくし、勝手に溶ける前の状態に戻ることはない」という話を聞くと…


「えっ?砂糖とか塩を水につけたら勝手に均一に拡散していく、っていうけどさ、でも、例えば水に泥を溶かした場合、勝手に均一には広がらないばかりか、思いっきり振ってあげれば一瞬溶けるのに、むしろ時間が経てば経つほど逆に泥が底に沈んでいかない?」

「冬場に、ハチミツが結晶化して底にカタマリができるのはどーいうことだ?!俺ん家の台所で、そのエントロピーとやらが勝手に小さくなるという、宇宙の法則が乱れる奇跡が起こっているとでもいうのか!?」


…と思われるかもしれないんですけど(そんなエントロピーうんぬんとかは思われないかもしれませんが(笑))、これはどちらも「溶けてません」ってのがポイントになるんですね。


まず泥水の例は、かき混ぜてやると一瞬モワッと「濁り」が均一に広がりはするわけですけど、これは、分子レベルでは水に溶けているわけでは決してないんですね。


ちょうど水と油みたいなもので、ラーメンのスープをガァーッと混ぜてやれば一瞬水と油が混じり合ったようには見えますけれども、それはそう見えるだけで、いわば単に物理的に「近い場所を舞っている」だけであり、「溶解した」わけでは決してないわけです。


…まぁそう書くと、結局「溶ける」って何なんだよ、って話になり、これは例によって分子レベルの話になるので何というかややこしすぎて省略したくなる話なのですが(笑)、ふわっとした説明をするなら、「両方の分子同士が、分子レベルで、お互いにちょうどいい力関係で共存できるようになった状態」を「溶解した」「混ざった」などと呼んでいるわけですけど、まぁ何となく、「粒が目に見えなくなる」「均一に拡散した状態で安定する」のが溶解だと、そう考えるしかない話でしょうか。

(これもコロイドとか、厳密にいえばそうとも限らないものもあるので、ざっくりな話にすぎないわけですけど…)


いずれにせよ、泥水の泥が、水に溶けているわけではないというのは、まぁ常識的にも何となく納得いく話になっているのではないかと思います。

 

次にハチミツの例を出していましたが、それ以外にも、例えば普通の塩水なんかでも、溶解度の限界まで溶けた溶液の場合、普通に時間が経つと結晶が析出してきてしまうことはままあるわけですけど、これは単に、非常に高濃度で溶けているものが、温度変化や水の蒸発や様々な要因で、水が元々溶かしていたそいつを「溶かしきれなくなった」から発生するものといえる感じですね。

溶解度を超えてモノが水に溶けることなど、熱力学・エントロピー的にも一番あり得ないことですから、そうなった場合、素直に溶けていた物質が粒になって戻ってくるのは、何ら不思議な現象ではないといえる形になっています。

 

…と、例によって勝手に疑問点を掲げて勝手に解決するという自作自演を繰り広げていますが(笑)、コメントの方が途中状態だったため、ご質問の方を進めて参りましょう。



食塩水やオレンジジュースが化学変化か?と言われると、そう思っていたわけではないのですが、新しい融合物質という感覚はまさにその通りでした。

そして、酸化銅カリカリは全くイメージできませんでしたが笑、「コップの水」と「水とエタノールの混合」は同じケースであるということがわかったので、全体的になんとなくイメージは出来ました。


ちなみに、水とエタノールのように混ざっている状態ではなく、液体と液体が化学変化した液体って、私が知っているレベルで何かありますか?

(例えに酸化銅が挙がっているところから察するに、「まぁこれはわからんやろ」っていうような液体しか無さそうにも思えますが笑)

 

⇒まぁオレンジジュースや塩水の場合、泥水とは違い「水に溶解している」のは間違いないため、ある意味分子レベルでは状態が変わっている=水に溶ける前後で、いわば化学的な違いはあるっちゃああるんですけど、異なる物質が生まれる「化学変化」を起こしているわけではないので、これは「物理変化」の一種でしかないといえる感じですね。

(とはいえ、そんなのは言葉遊び的なものに過ぎないので、どう呼ぶかなんて割とどうでもいいともいえますが…)


酸化銅カリカリ削っても、酸素分子は出てこない」というこの記事で書いていた話は、あんま上手い例えでもなかったので無視していただいて問題ない話でしたが(笑)、いずれにせよ酸化銅は、「酸素」と「銅」という物質から、「酸化銅」という、酸素原子と銅原子が強い力で結ばれた新しい物質が生まれているので、これは化学変化だという話でした。

 

そしてご質問の、「液体と液体が化学変化した液体」については……


有機溶媒同士が化学反応する例……というのは何かあったかな……と考えてもパッとは浮かばなかったものの、まぁ「何かが溶けた水溶液同士」ならこれは無限にありまして、例えば塩酸と水酸化ナトリウム水溶液を混ぜたら、これは中学の理科で一番最初に習う中和反応、

  • HCl + NaOH → NaCl + H2O

が進行し、直接かいだら「エンッ!」となって気絶するレベルの塩酸と、肌につけたらニュルニュルと肌が溶けていく水ナトという危険物同士が混ざったものなのに、できあがったのはまさかのただの塩水という、意外な結果になるのがまさに化学変化・中和反応というものだといえましょう。


(ちなみに、完全に1対1で混ぜれば、本当に完全なる食塩水になるだけなのでゴクゴク飲んでも全く無害なわけですけど、まぁ実験には誤差がありますし、どんなに厳密に測ったものでも塩酸と水ナトを混ぜたものなんて飲みたかぁありませんが(笑)、もちろん注意点として、(重さではなく)「分子数が1対1」でないといけないため、塩酸10グラムと水酸化ナトリウム10グラムを混ぜるとか、一応濃度の概念は抑えている人が、重量パーセント濃度が同じ1%塩酸と1%水酸化ナトリウム水溶液を等量加えるとかしても、完全中和にはならないことは気をつける必要がある点ですね。

 分子数は、「モル」という単位で便利に扱えるものなので、完全中和のためには「等モル」加える必要があることになります。

 重さとモルを結びつけるのは「分子の体重」こと「分子量」を考えればよく、HClの分子量は約36.5(例の、同位体の存在比のせいで、特に塩素の原子量は中途半端な数になっています)、一方NaOHは約40であり、重さの比でその数字の通りに加えれば(例えば重量パーセント濃度36.5%の塩酸100 mLと、40%の水酸化ナトリウム水溶液 100 mL加えるとかですね)、無事に完全中和になる…って話なわけです)

 

もちろん、これらは「溶液」ってより、溶液に溶けた「溶質」同士が反応しているものなので、お求めの話とはちょっとズレていたかもしれないものの(ちなみに「塩酸」ってのは「塩化水素の水溶液」で、塩化水素は、それ自身は気体です)、有機溶媒同士の話を考えてみましたが……

 

あぁ、高校化学で学ぶ範囲でも、「アニリン」と「無水酢酸」という、両方とも常温常圧で液体(水を含まない)の物質を混ぜると、「アセトアニリド」という固体が生じる……なんて反応(=アセチル化)がありましたね!


まぁ反応式なんて見ても面白くないですが、テキストで書くために、アニリンベンゼン環をまた「◎」で表すとすると、

  • ◎-NH2 + (CH3CO)2O → ◎-NHCOCH3 + CH3COOH

という感じで、両者を混ぜるとアセトアニリドと酢酸(CH3COOH)が生じるという反応ですが、まぁ僕はこの反応を実際に目で見たことがないのでどんな感じの見た目になるかはあまり想像つかないですけど、混ざったら反応して化学変化しちゃうことには間違いありませんから、アニリンと無水酢酸を等量(等モル)混ぜたら、完全に両者とは違う物質に早代わりしてしまうといえる感じですね。

 

まぁ、全然有名所の物質ではないので何の感慨もない話だったかもですけど(笑)、有機溶媒同士でも化学変化を引き起こすものはあるし、もっと身近な例でいえば、酸性とアルカリ性の水溶液を混ぜれば、液-液で完全に変わる(=両者が均等に混ざる(均一に広がる)のではなく、別の物質が爆誕)ものはいくらでも考えられる、って話でした。

 

そんな所でまた時間切れとなったので、他のご質問はまた次回とさせていただきましょう。

アイキャッチ画像は、それっぽい、液体と液体を混ぜてる化学実験のイラストをお借りしました。

まぁ、こんな青くて何かが溶けてそうな液に赤い液体を混ぜるという反応性の高そうな実験で、ピペットとかを使わず直で注ぐ(しかもなぜかビーカーは素手持ち(笑))とかあり得なさすぎて笑えますけど(ちなみに、直接注ぐことをしばしば「デカント」と言います)、まぁ、別に反応性の全くない液体同士ならデカントでも問題ないものの、じゃあわざわざそんな険しい顔すんのやめーや、って思えるかもですね(笑)。

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