イオンは安定を目指す…

陽子・電子・中性子の話を皮切りに、放射線の話から、原子の体重=原子量が中途半端な数字になるのは何故なのか?…といった話を前回までで見ていました。

 

ひとまず原子の構造を軽~く見終えた所で、中途半端に紹介だけしておきながら脱線状態になってしまっていたご質問コメントの方に戻って参りましょう。


アンさんよりいただいていたメッセージからの抜粋で、↓の記事で見ていたやつですね。

con-cats.hatenablog.com

大分間が空いたので、また再掲させていただこうと思います。

 

陽イオンとか陰イオンとか言い出すとまた更にややこしくなってくるのは明らかではありますが、記事中に「水素イオン=陽子」という記述があったのでふと思いました、、水素イオンに限らず、イオンには陽子と陰子があるんですか?…というか、中性子は聞きますが、陰子は聞かないような…?(陰子はiPhoneの予測変換にも出てきませんでした。)

陽イオン=陽子なのかと思いましたが、陰イオン=陰子でなさそうなのを考えると、どうやら別物ということなのかもですねぇ?
水素イオンといっても、+と−があるのは正しいですか?水の中に存在するのは+の水素イオンということ?−の水素イオンは水の中ではなくどこか(水でない液体?)に存在している?

陽イオン交換樹脂」とかいうものが出てきていましたが、溶液(水でない液体?)の中のイオン、例えば水素イオンでない陽イオンもキャッチしてプレゼントできる(というか、存在しているという確認です笑)ということでしょうか?

 

⇒ある程度その辺の用語に触れた上で、改めてご質問の方、最初から触れていきましょう。


まず、「イオンには陽子と陰子があるんですか?」という点に関しては、マイナス電荷の粒子の名前が陰子ではなく電子であるという部分を修正したうえで、これは、

「イオンには(唯一の例外を除き)必ず陽子も電子も含まれます。

 むしろ、イオン状態(電気バランスが不釣合いの状態)になっていない原子ですら、陽子も電子も必ず持っています」


…という回答になる感じですね。


(ちなみに一瞬、このご質問は「イオンは陽子と陰子を持つんですか?」ということではなく、「イオンには、陽子と陰子の2種類があるんですか?」という旨をお尋ねになられているのかな…?…と思ったのですが(よく読んだらそういうご質問ではなかったものの)、その疑問に対して答えるというかより正確に記述するなら、「イオンには、陽イオンと陰イオンの2種類がある」といえる形ですね。)

 

改めて、原子というのは、原子番号と同じ数の陽子(1:水素、2:ヘリウム、…、8:酸素などなど)と、(原子は電気的に中性なので)それと同じ数の電子と、あとは原子ごとに数がまちまちの中性子(原子ごとに異なる上、さらに、特定の原子のみを見ても、最も安定なもの以外に、異なる数を含む同位体もある)とを含んだ物質でした。


そして、イオンというのは、(ちびっこくて原子同士でのやり取りが容易な)電子が増えたり減ったりして、全体の電気バランスがプラスかマイナスかに偏った状態の物質を指すものなわけですね。


先ほどの回答では、「唯一の例外を除き」などという但し書きを加えましたが、これを踏まえるとその「唯一の例外」は明らかといえましょう。


「陽子1:電子1」からなる水素原子から、マイナス電荷粒子である電子が失われて生まれた水素イオンHというのが、唯一の「電子をもたないイオン」といえるものの、それ以外の全てのイオン(および原子)は、先ほどの定義をじっくりご覧いただければ分かる通り、必ず陽子も電子もどちらも1つ以上含んでいるものだといえるわけですね。


そんなわけで、コメントにあった陽イオン=陽子なのかと思いましたが、…」という部分は、アンさんご自身がご推察されていた通り誤りであり、「陽イオン」には、「水素イオンH」や「ナトリウムイオンNa」や「マグネシウムイオンMg2+」などまぁ色々ありますが、どれも、原子番号通りの数の陽子を含んでいますし、むしろ「陰イオン」だろうと、例えば原子番号17番塩素の陰イオンである塩化物イオンClなら、陽子を17個も保有しています(本来17個電子があるのが塩素原子で、ここに電子が追加でどこかから足されたものが、塩化物イオンCl)。

 

続いての「水素イオンといっても、+と−があるのは正しいですか?」というご質問、これはめちゃんこ核心を突くナイスご着眼点ですねぇ~。


その話に入る前に、そもそも「水素イオンH」「ナトリウムイオンNa」「マグネシウムイオンMg2+」「酸化物イオンO2-」「塩化物イオンCl」などなどよく目にするわけですけど、こいつらは基本的に正負・数字込みで覚えさせられたように記憶されていると思いますが、果たしてなぜその符号・数字になるのでしょうか…?


若干高度な話になりますが、サワリの部分は高校化学の最初の方で習う案外単純な話なので、原子の構造の話を既に見ていた今、今回はせっかくですしそちらに触れてみようかなと思います。

 

この話のポイントはズバリ、電子殻(でんしかく)と呼ばれるもの!

 

こないだの原子の構造の話で、「陽子と中性子という比較的デカイ粒子が中心にデーンと鎮座し(=原子核)、その周りを電子がビュンビュン飛び交っているのが原子なのです」などと書いていましたが、その、電子が飛び交う軌道とでもいいますか、格納されるパターンには法則性があり、実はそれがイオンの数字を決めていたんですね…!

 

ウィッキー先生は何でも知っているので、こちらの記事(↓)なんかにまとめられている通りなのですが…

ja.wikipedia.org

ごく簡単にまとめると、その「電子の格納庫」である電子殻は、小さい方から順番にK殻、L殻、M殻、N殻、…と名前がつけられているんですけれども、電子はその殻に入り、ある程度その決まった範囲内を自由に飛び交う形になっているわけですが、各殻は、入れる電子の最大数が決まっているんですね。


その数が、K=1、L=2、…として、2n2で表される数になっています。


要は、K殻には2×122個L殻には2×228個M殻には2×3218個まで…の電子が入れるというわけです。

(この数は、例によって偉い人が頑張って確かめたらそうであることが判明したという、「理屈は知らんけど、世の中はそうなっとる」ってタイプの話といえましょう)


そして、言うまでもなく、電子は基本的に小さい殻つまりK殻から順番に入っていきます。


つまり、原子番号1番の水素は、陽子1・電子1ですけど、この最初の電子はK殻をビュンビュン飛んでいることになります。


原子番号2番のヘリウムは、陽子2・電子2(あと今は関係ないけど、一番安定しているタイプの中性子は2)ですけど、K殻には電子が2つまで格納できるので、このヘリウム原子が持つ電子は、2つともK殻をビュンビュン飛んでいるってことですね。


そして、非常に重要なポイントとして、「その殻の最大数まで電子が入って飛び交っている状態は、原子として非常に安定(=反応性がない)」といえるのです。


つまり、水素原子というのは、2個まで入るK殻に1個しか電子が入っていないので、これは他の「電子が満杯じゃない」原子と手を組むことで、例えば水分子になったり、塩酸HClになったりなど、様々な分子やそれこそ水素イオンになることができる(=電子配置状態が中途半端なので、反応性がある)わけですが、「ヘリウム」というのは既に電子がK殻の上限ちょうどピッタリ満たされているため、これはもう「完成されている」とでもいいますか、他の原子と手を組んだりする余地がなく、ヘリウムというのは基本的に常にヘリウム原子単独で存在しています(ヘリウムガスがそうですね)。

 

要は、「化学反応というのは、基本的に電子のやり取りである」というのが超重要ポイントでして、電子殻が満杯状態=その時点で非常に安定な電子配置になっているということで、そういう原子はもうそいつ単独で完全に落ち着ききっている…言い換えると反応性に極めて乏しい原子だといえるんですね…!


上のことから言えるもう1つ別の側面からのポイントとしては、「イオンは、常に安定な電子配置を目指す」ということがいえることになります。

(これはまぁ、なぜと言われても、世の中の森羅万象あらゆるものは、水が高いところから低いところへ流れるように、常に安定した状態に落ち着くものだから…としかいえませんが、直感的に考えて普通に納得いく話ではないかと思います。)

 

例えば原子番号を1つ増やし、電子3個持ち(陽子3なので)のリチウムを考えてみましょう。

こちらは、まず当然最初の2個の電子がK殻に入るわけですけど、残り1個は、K核にはもう入れないため、次のL殻に入るわけです。

L殻は最大8個まで電子が入るわけですが、リチウムは1個しか電子を持たない、ということですね。


そう、お察しのいい方ならこれでピンと来られたかもしれませんが、リチウムは電子を1個失って「リチウムイオンLi」になるわけですけど、なぜリチウムは電子を1つ失って陽イオンになるのか…?


その理由がまさに「電子殻が満杯の状態が、電子配置的に極めて安定」であるからです。


(もちろんL殻が満杯という方向もありますが)L殻に残り7個の電子が入って来て「L殻満員御礼」状態を目指すのと、中途半端に1個だけ入っている電子を失って「K殻満杯状態」を作るのと、どちらが楽にできるといえそうか……

…これはいうまでもなく当然、L殻8個満パンにするために電子を7個追加して「Li7-」とかいう電気的にクッソマイナスに偏りすぎてるイオンより、電子1つだけを失った「Li」になって、「K殻満パン安定余裕(L殻は再び空っぽに)」状態を作る方が遥かに簡単といえるんですね!

 

では、原子番号8番の酸素だったら…?

もう説明するまでもないでしょう、酸素原子に含まれる8個の電子は、まず最初の2個がK殻に入り、その後残りの6個がL殻に入ります。


何度も書いている通りL殻は8個がMax・安定であり、酸素というのは、「最大8個中、6個の電子が入っている」という中途半端な状態になっています。

したがって、酸素というのは電子を2つ他所からゲットして、「O2-」という形の陰イオンに極めてなりやすいという話だったのです。

(もちろん、その2つの電子をもらった先=手を組んだ相手が水素イオン2つだったら、これはH2Oという分子を形成する、って形になってるわけですね!)

 

文字だとちょっと分かりにくいかもしれない&この話はほぼ確で電子殻の配置図みたいな分かりやすい模式図があることが常なんですけど、ウィキペ先生にはその画像がなかったですね……

検索してみたらキッズ向けの化学学習サイト・Chem4Kids.comの方にちょうどいい図があったので、こちらをお借りさせていただきましょう。

(まぁこんなの1分ぐらいで作れますけど、ソースがあった方がやはり良い気もしますしね)

http://www.chem4kids.com/files/elements/036_shells.htmlより

こちらは、中心の最小K殻にはじまり、第4層であるN殻が8個の電子まで満たされた、原子番号36番(つまり、電子36個)のクリプトン(体重=原子量は、83.80とのことで、中性子が47個のものと48個のものが多く存在することが推察されます)の電子配置ですね。

 

…ややこしくなるので先ほどは触れなかったものの、実は、安定の電子配置は必ずしも「最大まで埋まっている」というわけではなく、第2層のL殻以降は「8個」あると非常に安定ともいえるのでした。

(何となく、8個が円上に並ぶと安定してそうだ、というのは納得できる話ではないかと思います。)

 

…と、これを踏まえて、なぜ周期表というのはああいう形で原子が並んでいるのか、なんてことが判然としてくるなど面白い話につながっていくわけですが……まぁもうほぼ明らかで言うまでもない話であるものの、ちょっとまた時間が限界ギリギリになってしまったので、ご質問の方に戻っていくところ含め、(かなり中途半端ですが)続きは次回とさせていただこうかと思います。

 

補足事項として1点だけ、これは授業で必ず説明されるポイントだし、Wiki先生にもしっかりその記述がされていましたが。なぜ最小の殻が「K殻」という中途半端なアルファベットから始まっているのでしょうか…?


これは、まだ原子物理学も黎明期で、詳しい電子軌道や殻の仕組みも分かっていなかった頃の偉い人が、「これより小さい殻があってもいいように、上に遡れる真ん中のアルファベットから始めよう」と考えた結果名付けられたものなんですね。


しかし、結果は残念ながらK殻より小さい殻は存在しなかったので、「始まりがK」という、クソみたいな状況になってしまったのでした(笑)。


電流の向きは二択を外して間違えてしまったくせして、用意周到にちゃんとバランスを取ったら単なる余計なお世話になってしまったとか、昔の偉い人運悪すぎワロタ、って話といえましょう(笑)。

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