交換してピュアに

原子の話を少し細かく見るために、その構成要素である陽子・中性子・電子についてのベーシックなポイントをここ何回かの記事でまとめていていました。


まぁ、共有結合とかイオン結合とか、ぶっちゃけあんまどうでもいいんですけどね(笑)。


一応、原子同士の結合というのは、電子のやり取りがその本質なのである、みたいなイメージを持てば十分という話かなと思います。

 

とはいえせっかくなのでちょっと補足しておくと、前回共有結合は非常に強い結合」と書いたものの、例えば水分子内のO-H間の結合は共有結合なわけですが、普通に水分子の中には水素イオンと水酸化物イオンに分かれるものもいるわけで、何があっても絶対に離れないほどの強さではない、って形といえましょう。

(ただ、特に水素が絡む結合は、水素は最小のK殻に電子1個がある状態であり、K殻は電子2個で満杯安定なので、電子を失うことも得ることもどちらも起こり得る点で若干特殊なというか考え方が難しいともいえるものになってるんですけどね。

 例えば塩化水素HClなんかの場合、まぁこれは水素と塩素が共有結合で結ばれたものですけど、水中でHClは完全にHとClに分かれますし、「水素が塩素と電子を共有」と「水素が塩素に電子をあげて、水素イオンと塩化物イオンが電気的にくっついている」とを比較して、「共有状態である」と断言はできかねる状況になっています。

 ポイントは電気陰性度という各原子固有の値の差になってくるわけですけど、これも細かすぎる上正直ベーシックな話ではそんなにどうでもいいので、気にしなくても言いと思います。

(一応、↓のYahoo知恵袋記事の回答が非常にクリアな説明をされていたので、気になる方はご覧いただけると役に立つかように思います。))

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

 

あと、イオン結合、共有結合ときて、流石に金属結合にも触れておいた方がいいかな、と思えたものの、これは特に何の特筆すべきこともない、金属元素同士がつながったもので、Wikipedia記事(↓)にも画像の一枚すら存在しませんでしたし、深入りは不要でしょうか。

ja.wikipedia.org

(一応、大量の金属原子同士の中を電子が自由に動き回っている、という感じですが(金属は電子余りであることがほとんどなので)、まぁそういうもんだと思う以上のもんでもないですかね、やっぱり)


以上3つが、代表的な「分子内」の結合(まぁイオン結合でできる物質は「分子」とは呼ばないわけですけど、言わんとしていることは明らかだと思います)なんですけど、他に、分子と分子の間に働く力として、「分子間力」(いわゆる「ファンデルワールス」や、より特徴的なものとしては「水素結合」など)なんかも化学や、特に生物なんかでも非っ常~に重要になってくるのですが、言うまでもなく「分子内」で働く力よりも圧倒的に弱い結合力ですし(とはいえ、その微妙な強さの力が、生体内ではバリクソ重要なファクターとして働いているのも事実ですけど)、これは分子同士の力でより複雑といえるので、原子に着目している今はとりあえずこれまた深入りせず、横に置いておくことにしようかと思います。


また見る機会があれば触れてみたいと思いますが、今回は予告通り、保留状態だったご質問に戻ってまいりましょう。

 

このご質問から一気に原子に関するあれやこれやに逸れていたため、もうずっと前になりますが、アンさんよりいただいていました、途中状態のご質問はこちらですね(既に触れていた前半部は省略)。

 

水素イオンといっても、+と−があるのは正しいですか?水の中に存在するのは+の水素イオンということ?−の水素イオンは水の中ではなくどこか(水でない液体?)に存在している?

陽イオン交換樹脂」とかいうものが出てきていましたが、溶液(水でない液体?)の中のイオン、例えば水素イオンでない陽イオンもキャッチしてプレゼントできる(というか、存在しているという確認です笑)ということでしょうか?

 

⇒そう、ご質問では水素イオンについてお尋ねになられていましたが、ちょうど先ほど上で軽く触れていた通り、水素というのは唯一、電子が1つ増えても減っても安定型になる(まぁ電子を失った場合、電子がゼロになるので、安定型も何もない、単なる陽子になるわけですが)ため、ちょっと特別な存在なので難しいパターンだった感じになるのです。


なのでまず水素以外について考えてみますと、例えば塩素、これはイオンを形成する際、マイナスの塩化物イオン「Cl」しかあり得ません。


なぜなら、安定状態8個の電子に対し、塩素原子というのは1個不足の7個の電子を保有している状態であり、この状態から、さらに電子を失ってより不安定になる「電子6個」になることは絶対にあり得ず、陽イオンになれるわけがないからですね。


(また、電子を1つ得るだけで8個安定になりますから、電子を2つ得る「Cl2-」というのもあり得ません。

 机の上に置いた箱=重力で安定している物質が、いきなり浮き始めて飛んでいくぐらいにあり得ないことだといえましょう)


一方、逆にナトリウムの場合、こいつは電子1つを余計に持っている状態なので、超安定8個電子になるため、電子1つを失って(=誰か電子不足のやつに与えて)、陽イオンであるナトリウムイオンNaになります。

電子が中途半端に1つあって不安定な状況に、さらに電子を受け取って陰イオン化することは不可能なわけです(まぁ、現代の科学技術を使えば無理やり創り出すことは可能ですけど、通常の化合物に安定して存在は決してしない、ってことですね)。

 

翻って水素原子ですが、そういえば深く考えたことがなかったものの、水素って電子を受け取れば「K殻マックス2個安定」になるし、あり得なくもないのかな…?と思えたんですけど、まぁこれは結局「エネルギー的に、水素は電子を失って水素イオンHになる方が安定なのである。なぜなのかと聞かれても、この世界はそうなってるからとしか言いようがない、理由は水素に聞いてくれ」という例のパターンですね。


とはいえ、「その方がエネルギー的に安定」なだけで、もちろん水素の陰イオンも、この宇宙に存在しなくはないようです。


Wikipediaにも記事がありました(↓)。

 

ja.wikipedia.org

冒頭に「太陽等の恒星の大気を構成する重要な成分の1つである」とあるように、やはり太陽や宇宙空間のような極限状態でのみ観測される特殊なイオンのようで、人工的に形成することは可能でも、地上には存在しない水素の形態だといえるみたいですね。


そんなわけで、ご質問の「水素イオンといっても、+と−があるのは正しいですか?水の中に存在するのは+の水素イオンということ?−の水素イオンは水の中ではなくどこか(水でない液体?)に存在している?」については、これは何気に素晴らしいポイントで、普通に、

  • 水素イオンに+と-があるのは正しい。
  • 水の中に存在するのは+の水素イオン、というのも正しい。
  • −の水素イオンは、遠い宇宙に存在している。

という感じで、極めて的を射たご質問になっていた感じでした。


…が、実用的には、そんなのは無視していい、って感じですね(笑)。

(水素以外は、「+と-がある」と考える必要はない、という点も含め)

 


それでは続いてのご質問にいきますと、「陽イオン交換樹脂」についてでしたが、これはこの記事(↓)で見ていた、イオンを交換できる樹脂だったわけですけど……

con-cats.hatenablog.com

…分かりやすくするために「水素イオンをキャッチして、別の陽イオンを交換する形でプレゼントできる」などと書いていたものの、実はむしろ実用的には逆で、普通に「様々な陽イオンをキャッチして、水素イオン(または別の陽イオン)をプレゼント」というパターンの方が多いぐらいですね。

 

分かりやすい画像はないかな、と検索したら、室町ケミカル株式会社の記事(↓)に、ざっくりだけど分かりやすい絵がありました。


お借りさせていただきましょう。

 

ionexchange-info.com

https://ionexchange-info.com/about/より

例えば海水を真水に近いぐらい精製したいような場合、元々「H」がついた陽イオン交換樹脂に海水を通すことで、含まれる様々な陽イオンをキャッチし水素イオンと交換、一方、元々「OH」がついた陰イオン交換樹脂にも通すことで、様々な不純物である陰イオンが水酸化物イオンと交換され、最終的に余計なイオンたちは水分子に生まれ変わり、汚ぇ塩水だったものから、よりピュアな水が得られる……みたいなのがその仕組みですね!


僕のいる生命科学系の研究の現場では、水の精製というより「タンパク質の精製」に使うことが多いんですけど(改めて、タンパク質というのは色んな機能をもつ生体分子の王様なので、純品が欲しい場合も多いのです)、まぁ仕組みは同じように、上手いこと目的のタンパク質だけを捕まえて、余計な不純物を流し去った後に改めて回収して、純品をゲット……みたいな感じです。


細かい仕組みを見ていくとイオン交換もかなり奥が深いですが、まぁひとまずはそんなに深入りするほどの話でもないので、その辺にしておきましょう。


では次回はまた、続きのご質問を順に見ていこうと思っています。

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