放射能についておさらいしておこう

それでは、前回見ていた原子の構造系の基礎話についてアンさんよりいただいていたご質問の続きからですね。


前回の軌道についての話から、今回取り上げる部分は放射性同位体の話についてのようです。

早速参りましょう。

(割とご質問は沢山あるのですが、ポイント1つずつで区切って、都度見ていく形にしようかなと思います。)

 

まぁそれは置いておくとして、、ひとつ思い出しました!

重水素は通常0の中性子が1になったもので、もう一つ増えて2になったものが三重水素で、その先も五重や六重もあるとかで、これは不安定だからとかなんとかですぐ離れようとして、その時に放射線を発する(イメージ)…みたいな話でしたよね?


その、放射線が半減するまで(要するに、中性子がプラス2個になっている原子が半分の量になるということ?)の時間が、14日だったり45億年だったり、原子によって違うという認識で合ってますか?

 

⇒まさにその通りですね。


この記事(↓)から数記事にわたって見ていた通り…

con-cats.hatenablog.com

…簡単なおさらいですが、どの原子も、一番メジャーでしばしば一番安定している数の中性子(例えば、水素は0、炭素は6など)以外に、それよりも多くなったり少なくなったりした、体重の異なる兄弟原子、いわゆる同位体が存在しています。


で、同位体の中には、世の中に存在を確認することはできるものの、あまりにも不安定すぎて時間の経過とともに勝手に自己崩壊するやつもいまして、その不安定な輩の自己崩壊が起きる際に放たれるエネルギーが、ズバリ放射線だということでした。


不安定な同位体(=放射性同位体)が壊れるまでの時間は同位体ごとに決まっていて……といってもまぁ正確にいえば「完全に決まりきった一定の時間」ではなく、崩壊はランダムで起こるため「確率」でしかないわけですが、例えば一番小さな放射性同位体である三重水素トリチウム)の場合、こいつの半減期は約12年ですけど、まさにアンさんがコメントでお書かれになられている通り、「12年経過すると、その時点より、中性子がプラス2個になっている原子の数が半分になっていることが期待される」という形になっている……って話ですね。


(ちなみにこの「中性子がプラス2個になっている原子が半分の量になる」という記述、一瞬「プラス2個の中性子が、半分の量になる」と書かれているのかと早合点してしまいまして、

「一応正しいとはいえるのですが、厳密にはそうではなく、崩壊によって壊れる中性子は1個だけなので、元々中性子を2個しか持たないトリチウムの場合は『半分になる』とはいえるけれど、他の物質ではそうはいえない形になっています。

 『半減期』というのは中性子が半分になる時間のことではなく、放射能が半分になる時間のことを指しているってことですね」

…などと補足しようと思ってしまったのですが、コメントをよく読んだら普通に「原子が半分の量になる」と正しい解釈をされていらっしゃったので、僕が勘違いしていただけでした(笑))

 

ただ、コメントラストの「半減期は、14日だったり45億年だったり、原子によって違う」という部分は実はちょっと正確ではなく、同じ原子でも中性子の数の違う別の同位体であれば、違う半減期を持っています。

(なので、正確には「同位体によって違う」ですね。)

例えば三重水素半減期12.32年ですけど、もう1つ中性子の増えた四重水素半減期 (1.39 ± 0.10) × 10−22(=大体100垓(がい)分の1秒で、まぁ垓なんて言われてもピンと来ないので意味のない言い換えですけど(笑)、一瞬どころではない超短時間ですね)と、全く違う時間になっています。


(まぁ、「原子」という用語の選択をミスっただけで、恐らく元々そう解釈されていたのではないかと思えますが…。)


と、ここまではほとんどおさらいでした。

次は説明不足だったポイントですね。

 

例えばヘリウムの場合だと、通常2個の中性子が1個増えて3個まではOKで、4個からは放射線をぶっ放すということ?その他の原子も、プラス1まではOK?

(例えば元々が中性子0の原子も中性子100の原子も、プラス2から放射線を発するのか?という疑問です)


中性子数と放射性同位体か否か(つまり安定性)の関係は、これは全く法則がないものになっていると思います。


水素はたまたま中性子2個から放射能を持つ感じでしたが、ヘリウムの時点で完全にその流れは崩れます。


いつも便利なウィッキー先生のまとめ(↓)によると…

ja.wikipedia.org

ヘリウム原子の場合、中性子が1個増えた「5He(ヘリウム・ファイブ)」の時点で超バリクソ不安定で、こいつは四重水素とほぼ同じ、7.6×10−22秒という超絶短い時間で半減期を迎えるぐらいに、一瞬で崩壊し続けるゲボクソ不安定な同位体になっているようです。


そして面白いことに、さらに1個中性子の増えた「6He(ヘリウム・シックス)」は0.8秒の半減期ということで、むしろもう1つ中性子が増えたら、ヘリウムファイブよりもちょっと安定になるみたいですね(それでもわずか0.8秒で半分が壊れて放射性をぶっ放すという不安定さではありますが)。


ヘリウムは元々陽子2・中性子2が安定なので、奇数よりは偶数の方がまだ多少安定なのかもしれませんね(適当に思っただけのことなので、理論もないし全く違うかもしれませんが)。


さらに、中性子は減ることももちろんあるわけですけど、中性子が1つ減った「3He(ヘリウム・スリー)」は、これは実は安定同位体(=放射能なし、永久に壊れることなくそのまんまでいられる)なんですねぇ~。


とはいえ、実は三重水素トリチウム)が崩壊したら、中性子が陽子に変わってこれになる(※)という話でしたから、まあまあ、その辺の話を知っていたら安定同位体であることも想像が付くかな、って気もします。


※追記注:アンさんからのご質問コメントで気付いたのですが、これは完全にミスってましたね……トリチウムが崩壊して変化するのは、普通に質量数4の安定ヘリウムでした、お詫びして訂正申し上げます…!

 ↓の但し書きは、まぁ一応話自体は間違ってないので残しておこうと思います…)

(ただ、放射性同位体が崩壊してできた物質がまだなお不安定で放射性同位体のままであるというのも普通にめちゃくちゃあるパターンなので、「トリチウムが崩壊してできるのがヘリウム3(追記:ヘリウム4のミスでした)」ということを知っていても、「ヘリウム3が安定物質」とすぐには断言できないわけですけどね。)


改めて、どの同位体が安定か放射性かは、全くルールはないですし、こと細かに覚えている人も恐らく存在しないであろうぐらい、どうでもいい話に思います。

同位体の中には、安定なものと不安定で放射性をぶっぱするものがいる」ということを知っていればそれでよく、「どれが放射性か?」はどうでもいい、って感じですね(=気になったら調べればいいだけの話)。

 

ちょうど次も関連ポイントが語られていたので、コメントの続きに参りましょう。

 

この時に、『元々の余計な中性子は、電気を失うことで陽子に変換される…』というのは、え?マジで?っていう感じでしたが(「中性子が電気を失う」というのは、電子が飛んでいくということを言ってますか?)、更に、教わった通りに考えれば当然ではあるものの、「元々水素であったもの(中性子がプラス2の三重水素)がヘリウムになる」というのも不思議ポイントというか、今までもこれからも自らは絶対に考えることも知ることもなかっただろうなっていう、ちょっと面白いことを知ってしまったっていう感覚になれるポイントというか、そんな感じですね。(ちゃんと理解しているかどうかは置いといて笑)


⇒「中性子が電気を失う」は、まさに、「電子が飛んでいく」ということで、↑で貼っていたこないだの記事のアイキャッチ画像にある通り、崩壊に伴って原子からは電子ビームが発射される形になっています。

放射線(より具体的にはベータ線)というのはまさに、実際に電子が弾丸のように撃たれることで、当たった細胞が物理的にも化学的にも(改めて、電子というのは物質の性質を大きく変えることができる、化学反応遊撃隊のような粒子ですね)ダメージを受けてしまう、という感じなわけですね。


なので、中性子と陽子は微妙に重さが違ったわけですけど、実は中性子の方が微妙に重くなっていたのはそこからも推測可能なポイントでした(厳密にはちょっと違うものの、いわば中性子というのは陽子と電子が密接にくっついたようなものとみなすこともできるため)。


…と、今回もほとんどおさらい程度の話のみで新しい知見もほとんどなく、画像もなかったので(アイキャッチ用に)無理やり新しい話に触れておくと、今「厳密にはちょっと違うものの…」と書いた話を、せっかくなのでもうちょい見ておきましょう。


日本語版の記事にはなかったものの、英語版の中性子(neutron)と陽子(proton)のWikiP記事には、各粒子をさらに細かく表した模式図が掲載されていました。

https://en.wikipedia.org/wiki/Neutronより

 

https://en.wikipedia.org/wiki/Protonより

これらは「クォーク」と呼ばれる素粒子を模式的に示したものであり、中性子というのはudd、陽子というのはuudと表せるものなわけですけど、uはアップクォーク、dはダウンクォークと呼ばれるもので、uの方が微妙に軽い(かつ、電気的にプラス)ことが知られており、まさに「電子が飛び出したら、dがuに変わる」と考えれば納得いく感じになっている話だといえましょう。

 

(ただし、これもあくまで「そういうイメージ」に過ぎない話で、厳密にはそんな単純なものではないわけですが……

 僕も素粒子論はモグリなので詳しい解説まではできないものの、ちょうど素粒子論の初学者と思しき学生が似たような質問を知恵袋で投げて、専門家と思しき方がクッソ難しい呪文のようなベストアンサーを投げてくれていました(↓)。

detail.chiebukuro.yahoo.co.jp

…例によって、「分からないことが分かった」で満足しておくのが一番平和な話ですね(笑))

 

では、放射性ネタのご質問はまだもうちょっと続いていますが、時間切れにつきまた次回にまわさせていただこうと思います。

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