陽子と原子など、各用語の違いをまとめておこう

水素イオンそのもの、つまり特有の性質を持つ物質の最小単位といえる陽子、そして、数が変わることで原子の体重が変わるとともに、不安定なものは放射能をもつようにもなる中性子に続き、ここ最近はもう1つの原子構成員・電子に着目していました。


前回の電子軌道うんぬんはまぁやや発展事項といいますか、「そういう話もある」程度で割とどうでもいい話ではあったのですが、関連話に戻っていく前に、ちょうどアンさんから1つ、「そうそう、その点のまとめもしておいた方がよかったね!」と思える良質問をいただけていたため、普通に他にも保留中の質問が控えている状況ですが、新しくいただいたそのご質問は最初にまとめておいた方が良いベーシックな話になっていたため、今回まずそちらから触れさせていただくといたしましょう。

 

おざなりになっていた部分への大変ナイスご質問、誠にありがとうございます…!

 

陽子、電子、中性子というのは、「原子」のようにただの総称ですか?

(水素原子、酸素原子など、何種類もあるという意味で)


それとも、陽子がひとつの水素原子の「陽子」と、陽子が2つのヘリウム原子の「陽子」は、全く同じものということですか?


⇒そう、この辺ちゃんとハッキリ書かずに勢いで始めていたため、特にこのジャンルに不慣れな初学者の方にとっては混乱しやすいポイントといえる感じかもしれないなぁ…という点はずっと懸念として胸につかえていた感じでした。


…まぁご質問をいただいたからそう書いてるだけで、正直「ホンマかいな(笑)」って話かもしれませんがそれはともかく、せっかくなので各用語の意味というか実体についてまとめておきましょう。

まずご質問への回答としては、ズバリ、色々なものが存在する「原子」というものとは違い、陽子、電子、中性子の3兄弟は、全く同じものになります。


つまり、水素原子にある1個の陽子と、ヘリウム原子にある2個の陽子は全く同じもので、一切区別がつきません。

もちろん炭素原子にある6個の陽子も、前回見ていた現在最大の原子番号118番オガネソンの持つ118個の陽子も、全て、1つ1つは水素原子にある1個の陽子と全く同じものになります。


また言うまでもなく、電子も中性子も同様です。

重水素の持つ中性子も、アルミニウム原子の持つ中性子も、全く同じものとなっています。


つまり、この世の中に存在するあらゆる物質というのは原子の集まりなわけですけど、実はその原子を構成する3つの粒子は全く同じヤツらしかおらず、いわば「ただ個数が変わるだけで、ガラリと性質が変わる」という面白いというか不思議な状況になっているわけですね。

 

要は、たった3種類の素材の組み合わせでしかないのに、例えば「陽1・電1」なら水素というメチャ軽な気体になるし、「陽6・電6・中6」なら炭素という黒い塊になるし(とはいえ炭素も炭素で、めっちゃ色々な形態をとりますが)、「陽80・電80・中122」ならこの世で唯一常温で液体の金属・水銀となる……という、

「ちょっと数というか組み合わせが違うだけで、そんなに色形ニオイ味が変わるものなん?」

と思えるのは、ちょうど、遺伝子DNAが、わずか4種類の物質(A, C, G, T)の組み合わせで出来ている、という話に近い驚きがあるものではないでしょうか。


(もちろん、元々同じ物質だったものですら、ちょっと数のバランスが崩れたらいきなり性質が変わりますし(例:「陽1・電1・中2」だと、いきなり水素が放射能をもつ…とか、「陽1」のみだと特に水中で水素イオンとして漂い、これがめちゃくちゃ多いだけで人間の体を焼けただらせる「酸(アシッド)」となる、など)、むしろその辺の話を知ると、「粒子1つの違い」がいかに大きいものであるのかは、何となく実感をもって理解できるようになる気もします。)


また、その「区別が出来ない」という事実は何気に素粒子物理学、いわゆる量子力学の世界では極めて重要なことになっていまして、昔読んだ、ノーベル物理学賞を受賞した朝永振一郎さんの「米粒・電光掲示板」の例え話なんかがとても分かりやすく、また死ぬほど面白くて僕は好きなのですが……


あぁ、検索したら、朝永さんの名著「量子力学と私」のダイジェスト的なまとめをしてくださっているページが見つかりました。


昔のインターネットページ特有の、文字コード指定がまずいためリンクカードは完全文字化けしてしまうという現象になってしまったこともあり、文字列リンクのみにせざるを得ないのが残念ですが、極めて面白いと思うので、リンクをご紹介させていただきましょう。

物理の窓】「素粒子は粒子であるか」シリーズ:

3 素粒子のおのおのは自己同一性をもっていない

http://james.3zoku.com/kojintekina.com/physics/physics081200.html


まぁ全く長い記事でもないですしシリーズ第1回からお読みいただくのがベストに思えますけど、この第3回が、「素粒子は区別が出来ない」ことについて述べられている記事ですね。


もちろんここでいう「素粒子」は、陽子などをさらに細かく見ていったら出てくる「フォトン」や「クォーク」や「ニュートリノ」といったものを指しているわけですけど、それらの集合体である基本粒子たる陽子や中性子も同様という話になります。


既に上記記事が素晴らしい要約になっており、要点の引用も中々難しいので「興味ある方は上記記事をどうぞ」という丸投げの形にしようと思いますが、こいつらは全く区別がつかないがゆえ、量子力学という学問分野が凄まじく発達したといえるぐらいに重要なポイントであるわけですけど、細かいことはともかく、とにかく電子や陽子は「区別がつかない」というのが結論というお話でした。

 

ご質問の方に戻ってまとめてみますと、こんな感じでグループ分けしたら分かりやすい感じでしょうか。


【固有のもの】(この世には無限にも思える数が存在するけれど、種類は1つのみ、どれも同じ!)

  • 電子:マイナスの電気を含んだ超小さい粒子。小さく機動力に富むため、化学反応の多くは、こいつのやり取りであることが多い!
    放射線の正体も、こいつが弾丸のように飛んでくるというものでした(ただし、β崩壊のみ。放射線はその他のタイプもあり))

  • 陽子:プラスの電気を含んだ粒子。こいつの個数がその物質の性質を決めているといえる、物質のコア的存在。

  • 中性子:電気的にプラマイゼロの、物質の性質に幅をもたせるオプション要員みたいなやつ。(でももちろん原子を構成する上では極めて重要)

【グループ名】(そういう固有の物質があるわけではなく、あくまでも総称)

  • 原子:水素原子、リチウム原子、鉄原子…など、固有の性質をもった、いわば物質の最小単位
     これを分けると、全く区別の付かない電子・陽子・中性子になるので(逆にいえば、その3つが原子の構成要素)、特有の性質をもった一番小さい物質ということ。
     2023年現在、118個の原子が知られている。

  • 分子:いくつかの原子が手をつないで、特有の性質をもつようになったやつ。水素原子2つと酸素原子1つがくっついた水分子とか、CH3COOHで表される酢酸分子とか、同じものが大っっ量に集まって「実際の物質」として手に取ることのできるものの多くは、この「分子」(ただし、原子が集まってできている物質も多々あり。電子配置が完全に安定しており反応性に乏しいヘリウムとか、金属とかも原子の寄せ集めでカタマリになりやすい)。
     原子の組み合わせは無限にあるともいえるので、事実上この世には無限の分子が存在するともいえる(気がする…もちろん無限ではないと思いますが、合成すれば新しい分子なんていくらでも作れますし、ほぼ無限と考えてよいでしょう)。

  • イオン:電子を失ったり手に入れたりすることで、電気のバランスの崩れた状態の原子のこと。電子はマイナス粒子なので、前者が陽イオンで、後者が陰イオン
     「バランスが崩れた」といっても、ものによってはイオンの方が遥かに安定していることもある。
     陽イオンになりやすさ・陰イオンになりやすさ…みたいなものは、完全に電子配置によって決まるもので、ここ最近見ていた話が大いに関係してくる。

  • 官能基有機化学でしばしば登場してくる、いくつかの原子が組み合わさってできた、特別な機能をもつグループ。
     分子でもイオンでもないけれど(それ自身で完結はしておらず、何か別の原子と手をつなぐこと前提のグループなので分子ではなく、基本的には電気的な偏りがないので、イオンでもない)、特定の原子団を表すのに便利なので、この業界ではよく使われる(-CH3でメチル基とか、-NO2でニトロ基とか)。
    …あえてここで並べて出す意味はなかったかも(笑)。

 

といった感じで、「官能基」よりもこの範囲でよく出る用語は原子核とか、あぁあとは元素とかもありましたけど(原子核は、陽子+中性子が原子の中心に鎮座している、まさに文字通り原子のコアなだけですね)、原子と元素の違い、これはぶっちゃけほっとんど同じで、正直ごっちゃに使ってもそこまで大きな問題はない気もしますが、まぁ「元素」はその原子の種類のことを指している用語、って感じですね。


例えば、「空気中に存在する原子の種類には何があるか」ということを聞きたい場合、「空気中に存在する原子は?」と書いてしまうと、「空気には窒素とか酸素とか二酸化炭素が含まれるけど、どれも原子ではなく分子の形で存在するしなぁ」という感じで何か微妙な問いかけになってしまうわけですけど、ここで聞きたいのは「原子の種類」であるため、こういう場合は「空気中に存在する元素は?」と書けば、「あぁ、窒素と、酸素と、それから二酸化炭素に含まれるから炭素もあるし、アルゴンガスのアルゴンとかもあるね」と気持ちよく答えられるというわけです。


…まぁあんまりいい説明じゃなかった気もしますが(笑)、原子という構造そのものじゃなくて、種類について言いたい場合は、「元素」という語を使った方がしっくり来る場合が多い…って感じといえましょう。



…と、ベーシックなポイントだったので簡単に終わると思いきや、同一性の話とかにも逸れた結果案外無駄に長々とスペースを食ったため、今回はこのまとめでおしまいとし、続きはまた次回としようかと思います。

 

上で各用語についてまとめてはみましたが、とはいえずーっと前から書いている通り、結局どれも原子1個・電子1個レベルでは目に見えないものなので、最終的にはどうしても自分の中で勝手なイメージを持つしかなく、どれだけ整理しても「うーん、分かったような、分からんような…」となりがちな話だとは思うんですけれども、一応上のようなクリアなイメージを持てば、「ま、分かったような気も…」と思える感覚が少しずつ増えていくのではないかなぁ、という気がします。

 

あと、朝永振一郎さんに関して、以前の記事(↓)で、「朝永さんが語っていた面白いネタに、またいつか機会があれば触れてみたい」などと書いていたのですが…

con-cats.hatenablog.com
…今回短く終わったらそのネタに触れるいいチャンスか…?と思えたものの、結局その時間もなくなったので、またの機会にまわすといたしましょう(鏡の話なんですけどね)。


アイキャッチ画像も全く何もなかったので、やむなくそれっぽい「原子」いらすとをお借りしました。

この絵、こないだも使ってなかった?…って話ですが、こないだWikipedia先生の図だったので、まぁほぼ同じネタですけど、いらすとやの力も借りさせていただいた感じですね、どうでもいいにも程がある話ですが(笑)。

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