コメ返信や補足その1-31-2:仮定法のムードを掴もう!の続き

いただいていたご質問からちょっと派生して、仮定法についてツラツラと書いていた前回の続きになります。

まぁ前回は「なるべく分かりやすく噛み砕いて…」という記事タイトルにはしていたものの、仮定法についてゼロから丁寧に説明を加えたというより、ある程度基本的なことは抑えて、一通りの話を踏まえた上で意識しておくとちょっとだけ理解が深まるんじゃないかな…という程度の話になっていたかもしれませんが、今回も同じように「ムードを掴む」ための補足ネタを足すような形になりそうですね。

 

そもそものご質問は「助動詞の過去形が何とも分かりづらい。couldとかwouldは『丁寧になる』っていうニュアンスぐらいしかないんだが…?」という話だったわけですけど、今回はその点に立ち戻って、「なぜ過去形で丁寧になるのか」について見てみる所から始めてみましょう。

…とはいっても、実はこれに関してはもう以前の記事でチラッと触れたことがありました。

どこでだったかな、と思ったら、シェアメイトからもらったメールのメッセージから、英語の丁寧な表現について触れていたこちらの回でしたね(↓)。

con-cats.hatenablog.com

この記事でも書いていた通り、「Will you...?」と比較してその過去形を使った「Would you...?」という依頼の方が丁寧になるというのは、何てことはない、ズバリ、過去形になることで仮定法のムードが発動されることになり、直接的ではない、婉曲的な表現になるから、というのがその理由なんですね。

(仮定法の「もしも自分が鳥だったら…」に過去のニュアンスは1ミリも存在しないように(分かりやすくたまたま同じことがいえる日本語で表記しましたが、もちろん英語でもそうですね)、この「Would you...?」という疑問文に過去のニュアンスは全くないのも、中学英語で学ぶおなじみの話といえましょう。)


これに関して、自分が勝手に言ってるわけではないことを示す=「ネイティブお墨付き」の印をいただくために、またおなじみのマーク・ピーターセンさん、T. D. ミントンさんの本でその旨の記述はないかなとパラパラと手持ちの著作を眺めていたら、こちらはミントンさんの本に、ちょうどいい記述がありました。

しかもその旨に加えて、「これは絶対に知っておいた方がいい!」と思えるお役立ち情報も一緒に掲載されていたので、既に何度か引用させていただいており何度も何度も勝手に引っ張らせてもらって申し訳ないですが、『日本人の英文法』からまたまた1ページ弱をご紹介させていただきましょう。

こちらは84ページ、14. 「依頼」を表す助動詞の章からの出典になります。

 

Will you...? は「依頼」よりも「命令」に近い

 依頼の疑問文で使われる助動詞のうち、would / could は will / canと比べて、本質的に丁寧であることは明らかです。その理由は、wouldやcouldは間接的な言い方であり、if you don't mind(もしお嫌でなければ)とか、if it wouldn't be too much trouble(もしそれほどご面倒でなければ)などのifの意味を含んでいるからです。

 依頼をするときに、友人やよく知っている人に対していちばんよく使われるかたちは、おそらく次のようなものでしょう。


 Can you give me a hand with this?

 これ、ちょっと手を貸してくれない?


 これは、文尾にpleaseをつけることによって、丁寧度をごくわずかに上げることができます。また、canを、couldかwouldにすることによっても、ごくごくわずかに丁寧度を上げることができます。しかしその差は、そんなにはっきりしたものではありません。一方、willは依頼の疑問文で使われると、明らかに丁寧度が低くなります。「駅への行き方を教えていただけませんか」という日本語を学生たちが、Will you tell me how to get to the station?(駅への行き方を教えてくれ)と訳すとき、私は怖さで身の縮む思いをよくします。

 Will you...? は、相手に依頼をするにはひどくぶっきらぼうな言い方です。実際、これは依頼というよりは命令に聞こえることも多いですし、とりわけ、相手がしたくないようなことを頼むときに使うと、命令のような響きになってしまいます。確かに友人同士が使っているのを耳にすることもありますが、それよりも「親→子」「師→弟」の間柄で使うほうがずっと一般的です。自分を傲慢な人間に見せたくなければ、見ず知らずの人に使うのはもちろん不適切ですし、また、ヒヤメシを食わされたくなければ、上司に対してもけっして使ってはいけません。もっともみなさんはネイティブではないので、誤って使っても大目に見てもらえるとは思いますが。でも、日本人の間では本当によく誤用されているので、十分に気をつける必要があると言えます。

 

大変ためになるお話でした。

まず後半の話からいくと、「『Will you...?』はマジでヤベェから使うな」問題、まぁ僕はネイティブではないので、はっきりと失礼に当たるとまでは身をもって心から理解できるわけでもないんですけれども、これはしばしば聞く話ですね。

そういう後天的な学習もあって、自分で使うことは絶対にないものの、でもまぁ正直、実際に聞くこともなくはないような…??って気もするのが正直な所かもしれません。

でもそこはもしかしたらイギリス生まれのミントンさんと、アメリカ英語との差なのかもしれないし、あるいは単に「依頼文以外で登場する『Will you...?』」と勘違いというかごっちゃになってるだけかもしれないので、あまり信用されない方がいいといいますか、基本的に全部『Could you...?』で済ませても問題ないですし、あえて危ういウィルを使う意味も一切ないので、何かを頼みたいときに「Will you」を使うのは避けるのが賢明といえましょう。


あとは同じく途中に出てきていた、こないだも触れていたpleaseについて、ミントン先生もやっぱり、ごくわずか丁寧にはなれど、「ほとんど違いがない」 とおっしゃっているように、個人的にはやっぱり「プリーズはあんま意味ない気がする」派かもしれません(というか、何となく「お願い!」という押し付けがましさが出る場面もありそうで、使うのに躊躇するという方が正確でしょうか)。

 

…とまぁその辺はオマケネタとして、本題は最初の、「なぜ過去形にすると丁寧になるのか」を大変分かりやすく解説して下さっている所ですね。

そう、これは結局、過去形にすると仮定法になり、仮定法のムードから、言外に「もしよろしければ…」「お手すきだったらで構わないのですが…」というへりくだる姿勢が醸し出されているから、というのがその理由であり、「察して」文化ではない英語圏にしては中々珍しい、ワビサビを感じさせる表現(ってほどでもないですけど(笑))になっている形でしょうか。


まさにちょうどこれに関連した話が、前回最後に「引用したマーク・ピーターセンさんの本の章の頭に、大変面白い話があったので、また次回…」と書いていたものになります。

話ついでにそちらの方にも触れていきましょう。

その面白いネタとはズバリ、次の文の意味はどういうものだろうか?という問いかけです。

I could meet him in New York.

前回書いた通り、本文を直接引用はせずにポイントだけ抜粋させていただく形にしようと思いますが、実際の本でもそうだったように、まずはご自身で考えてみてほしいんですけど、念のため各単語をおさらいしておくと、I=私、could=canの過去形、meet=出会う、him=彼、in=で、New York=ニューヨークという感じですね(馬鹿にしてるにも程があるレベルの基本語のみですが(笑))。

どんな日本語が思い浮かんだでしょうか?

これはやっぱり、生の英語に触れたことがない中高生であれば、自分も間違いなくそうなので断言できますが100%絶対に、テストでこれの和訳問題が出てきたとしたら、「私はニューヨークで彼に会うことができた」とするわけですね。


本の方では和訳というより、「この『私』は、『彼』にニューヨークで会えたのかどうかを尋ねられたとしたら、どう答える?」という話になっていましたが、当然、普通に素直な考えの持ち主であれば、「会えた」と答えることでしょう。

(「あえてそう聞くってことは、多分会えてないんだろ」というメタ読みをするヤツもいるかもしれないけど……という点は本でも触れられていましたが(笑))。


…で、この流れなら最早当たり前すぎますけど、ズバリ、英語のネイティブスピーカーであれば、これは悩むことも迷うことも一切なく、確定・即断で「会っていない」と答えるというんですからこれは驚きです。

その理由は、この単純な一文を見た場合、英語ネイティブは、このcouldを自動的に確定で「仮定法での用法」に受け止めるからだそうで、なぜかと問われても「だってそうとしか読めないから」としか言えない話だと思うんですけど、その理由の一つは、「もし『会うことができた』と言いたいなら、ここではbe able toの過去形を使って『I was able to meet him...』とするから」というのがあるみたいではありますね。

正直、僕は知識としては知っているので今なら「そう読めるかも」という意識は働くものの、やっぱりパッと見は「『会えた』のかな?」とも思えちゃいますし、これは本当に難しい所ですが、知らないと絶っっ対にそうは読めないという、とても面白い話にも思えます。

 

とりあえずこの話と、それから前半で見ていた「Could you~?」の疑問文に隠されている言外の意味なんかから言えることとして、これも同じくピーターセン本にまとめられていた話ですが、英語では、ifで書かれる条件節を省略する形での表現(仮定法が用いられる)が、非常によく多用されるということがあるんですね。

つまり、先ほどのニューヨークの例文、ネイティブはどう解釈するかというと、「書かれてはいないけど、couldで仮定法のムードが出ているので、ifの条件節が言外に含まれている」とみなし、

「ニューヨークに行けば(行きさえすれば)、私は彼に会える(はずだけど……)」

というのが、ネイティブどもがごく自然に解釈する例の英文の意味になるわけです。

(もちろん、「…はずだけど、今はまだ会っていない」まで含めてのニュアンスといえましょう。)


言われりゃ一応納得できなくはないけれど、自分の目や耳だけでその思考に持っていくのは、結構難しいと思えますねぇ~。

 

そしてちょっと話を戻すと、「英語では条件節を省略しがち」と書きましたけど、面白いことに日本語ではその逆で、我々はしばしば帰結説を省略するんですよね。

つまり、「よろしければぜひ。」「それじゃまた機会がありましたら…」といった具合で、「よろしければぜひ……何なんだよ?!」と冷静に考えれば思えるものの(笑)、これはまぁ自然な日本語として普通に受け入れられる台詞であり、文脈に応じて、「よかったら食べてって」とか「都合がよければまた会いましょう」とか、我々は自動的に「その後に意図されているであろう内容」を勝手に補完するわけですけど、英語ネイティブは逆に、条件説がない文章で、条件節の部分を勝手に補完して読むことに長けているという感じだってことですね。

大変面白い話でした。

 

…と、正直「あんまり仮定法のムードを掴む話にはなってなくない?」とも思えましたが(笑)、ちょうどまたアンさんから前回の記事へのご質問をいただいていたので、次回はそちらに触れることで、もう少し仮定法の話をおさらいする形にしてみようかなと思います。

(というか、アップ後に思いましたが、「ニューヨークで会えるだろうけど…」の話、かなり説明不足でしたね!そこももう少し補足しようと思います。)


またまたアイキャッチ画像に使えるネタが皆無だったため、まさに無理やりで、過去形にすることで婉曲的なへりくだった表現になる→「へりくだる」って、何かゴマすりみたいな感じであんまり印象良くないイメージもありますね……という感覚が個人的にあるんですが、実際は別にそんなゴマすり野郎みたいなニュアンスにはならない(そもそも「へりくだる」にもそんなネガティブな意味はないですかね?)ので、「Will you~?」ではなく「Would you~?」や「Could you~?」(せめて「Can you~?」)を使うようにしましょう……という雑なまとめで、ゴマすりいらすとをペタリと貼って終わらせていただきましょう。

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