日本語版6巻相当の気になるポイント、後半戦ですね。
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(6) p. 126:"AFTER ALL, I'D DO THE SAME FOR YOU!"(「私もおんなじことするから!」)
これは完全に元の日本語とは違ってるね。
日本語版だと、やっさんはここで、"Ask (tell) me the same thing!"(原文:「あたしにもおんなじこと言えよぉ」)と言っているんだ。
この意味は、(1) やっさんがポンちゃんに「もし彼氏がいるんなら隠さずに教えてよ」と言う → (2) ポンちゃん、「了解」と言うだけで、同じことをやっさんには聞かない → しばしの沈黙 → (3) 自分(やっさん)には彼氏ができるなんて誰も思ってないのかお前ら!(怒)という気持ちからの発言…という形で、とても微笑ましく愉快なシーンだから、変わってしまっているのが残念だね。
(ちなみに、次のコマのポンちゃんは"You're a pain in the ass!"(原文:「めんどくさい!!」)的な意味の台詞を言っているよ。※注:英語版では、"WHAT'S GOTTEN INTO YOU?!"(「何だなんだ?!」))
A. これに加えることは何もない。
⇒(追加メッセージ:)え、そう?でも、少なくとも日本語と英語は、全く違うよね?
⇒(追加回答:)そうだね、そしてまた、これも、なぜ変更したのかがよく分からない点だね。
(追加の独り言:)何か気に食わない展開で気分を害したのかと一瞬焦りましたが(笑)、特に英語表現がおかしいわけではなく、必ずしも流れがおかしいというわけでもないので、単に理由を推測できるコメントが全くナッシング、という感じだったみたいですね。
本当に仲が良いことが窺える(微妙な仲だと、こういうやりとりは絶対できないので(笑))とても面白いやり取りなだけに、英語だと改悪されている感じで大変残念なポイントです。
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(6) p. 152:"Tengui"(「手ぬぐい」の誤植)
…と思ったけど、巻末の注釈にも"Tengui"と書かれていたから、もしかしたらアメリカではそう呼ぶ人もいるのかもしれないね(検索したら、オンライン雑貨ショップEtsyの商品名で、Tenguiとなっているのを見かけたし)。
でも、正しくは間違いなくTenuguiなんだ。
A. 日本語では、真ん中の"u"は発音する("ten-u-gui")のかい?
日本語の発音では、"u"を省略する単語がたくさんあると聞くが、これもそうなのだろうか?もしそうなら、翻訳者はこの発音のまま綴りたいと思ったのかもしれないね。
⇒(追加メッセージ:)いや、100%「te-nu-gu-i」だし、「te-n-gu-i」なんて発音は一度も聞いたことないよ。
でも、もしかしたら、日本語を母語としない人にとってはちょっと発音しにくいかもしれないし、「てんぐい」と言う人もいるのかもしれないね。
だけど、日本語ネイティブスピーカーは、絶対にそうは言わないかな。
⇒(追加の回答:)インターネットで検索してみたら、これは明らかに翻訳の誤りであることが分かった。
次のバージョンの誤植に入れるべき点だね。
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(6) p. 166:"YOU'RE WASTED!"(「あなたは無駄!」(?))
日本語版では、"You're drunk!!"(「酔っ払い!!」)という台詞になってるよ。
A. "You're wasted"は英語のスラングで、"You're drunk"と同じ意味だ。
翻訳者は、この言い方のほうがユーモアがあると思ったのかもしれないね。
⇒(追加メッセージ:)へぇ~そうだったのか、面白い!
そのスラングを知らなかったから、あきらが"You wasted the cake"(「(ケーキ無駄にして)もったいない!」)みたいな意味で怒ってるのかと思っちゃったんだけど、よく見たらこの文は"You're"だから、"You wasted..."とは全く違うのは明らかだったね。
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(6) p. 170:"It's conveying how you feel."(「それが、気持ちを伝えることになるんだ」)
ここは、原文とはちょっと違う文構成になっているね。
日本語版では、前ページからの続きで、"What's important is,..not being timid or afraid, and telling your honest feelings."(原文「だいじなのは 臆さないこと 卑屈にならないこと きちんと気持ちを伝えること」)という意味になっているんだ。
ということで、この英文は「大切なのは臆さないことと卑屈にならないこと、それが気持ちを伝えるんだ」という構造になってるけど、実際の日本語では「気持ちを伝えること」も最初の二つと並列の項目(大切なこと三つ目)になっている、ってこったね。
A. 翻訳者は、"conveying how you feel"を最後のフレーズとして、単独で入れた方が効果的だと考えたのかもしれないね。
⇒(追加メッセージ:)そう、ほんの些細な違いでしかないけど、英語の場合、より良い見せ方として、単純にSBFの英訳文の方が効果的…って判断したのかもだね。
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(6) p. 174:これは本編の翻訳記事内でも既に指摘してたんだけど、"I shouldn't have said that"(「それを言うべきではなかった」)は翻訳ミスだね(少なくとも日本語版と意味が違う)。
実際の可南子先生は、"I cannot say that."(原文:「そんなことすら軽く口にできない」)、そして続くコマでは"I had to keep it bottled inside."(「ひたすら胸に秘めておかなければならなかった」)と、どちらも「現実には決して口にしなかった」という意味の独白をしているよ。
英語版の「言うべきではなかった」「胸に秘めておくべきだった」(=現実には、言ってしまったことを示唆)とはまさに正反対だね。
A. これは、今後の改訂誤植表の候補である。
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(6) 巻末脚注(英語版のみの特典):一部のエピソードタイトルの由来がオマケ情報として載ってるけど、注に掲載されていないものの由来は、恐らくこれかな?
「お気に召すまま (As You Like It):シェイクスピア」
「はつ恋 (First Love):ツルゲーネフ」
(こちらは英語だといくらでもありそうだけど、漢字・平仮名混じりの表記から、断言できると思う。)
A.(シェイクスピア)英語圏の読者なら"As You Like It"は誰でも知っていて当たり前なので、巻末に書くほどでもないと思ったのであろう。
(ツルゲーネフ)ちょっと混乱……
日本のウィキペディアでは、ツルゲーネフの小説は「初恋」と表記されているようだが:
別の小説のことを指しているのかい?
⇒(追加メッセージ:)
(シェイクスピア)面白いね!そうそう、本巻最終話の「クリスマスキャロル」も、注に掲載されてなかったにもかかわらずあえて取り上げなかったんだけど、それは、あまりにも当たり前すぎて紹介する意味がないと思ったから……まさにこれもそれと同じレベルだったとは!
もちろん日本人でそのシェイクスピアの劇がパッと浮かぶ人はあまりいないんじゃないかと思うけど、英語ではまさに誰でも知ってる常識だったとは、実に面白い。
(ツルゲーネフ)そうそう、Wikipediaではなぜか違う表記がされていたんだけど、ベストセラー本の方はしっかり「はつ恋」となっており…
これは日本語のエピソードタイトルと完全に同一で、同じ表記の言葉は新しいTVドラマ(この巻より後の作品)以外だとこれしかヒットしないから、これで間違いないと思う。
…おっと、と思ったら、もうちょいしっかり検索結果を見たらもう1つあったけど…
…しかし、これも上記の小説を元にした作品のようなので、いずれにせよツルゲーネフのあの小説が元ネタということで良さそうだね。
(この形の記述(ひらがな&漢字)は、通常そうは絶対にしないから何らかの意味があるはずで、自分はこの作品を知らないけど、これが唯一の候補と考えて間違いないと思えるよ。)
⇒(追加回答:)そう、その通りのようだ。
志村は、この小説の邦訳か、それを原作とする映画のどちらかを念頭に入れていたのだろう。
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…という所で、以上、日本語版6巻で気になった、SBFの英訳箇所でした。
続いて「青い花で学ぶ英語」コーナー、残り7-8巻は、案外取り上げるほどの面白い英語がそんなになかったので、今回1つ目が無駄に長くなったこともあり、6巻で見かけた他の項目は、また次回以降にまわさせていただきましょう。
今回は英語ネタというよりむしろ日本語ネタですが、6巻といえばそう、温泉回で出てきた、みんな大好きポカリについて!
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【青い花で学ぶ英語】
(6) p. 37:"POCARI SWEAT"(ポカリスエット)
スポーツドリンクの超有名ブランドなんだけど、多分知らないよね?
漫画だとちょうどラベルが隠れて全部は読めないけど、実際の名前は何なのか推測できる…?
高校時代にいたネイティブの英語の先生が、この商品名を挙げて、顔をしかめてゲェーという表情をしながら「なんてキモチワルイ名前!」みたいに言っていたのを鮮明に覚えていて、その時に英語の意味を知ったんだけどね。
面白いことに、その名前は「POCARI SWEAT」……あえて説明するまでもなく、ドリンクの名前に「汗」は、英語話者にとっては相当おかしいよね?
でも、あまりにも有名なドリンクなので、大多数の日本人(特に子供たち)は「スウェット=汗」という意味を知らないし、このドリンクは美味しくて健康に良いこともあるから、この名前を何か心地よい、清潔でクリアな、何というかスカッとした響き(スエットだけに)に感じているよ(笑)。
A. 実は、アメリカの漫画・アニメファンならほぼ全員が「ポカリスエット」という名前を知っていると思う;実際のスポーツドリンクを買ったことがないファンでさえ、名前だけはかなり有名だね。
だから翻訳者は、ボトルに名前を書いて、その名前を部分的に隠しても、欧米の読者はフルネームを理解できると期待したんじゃないかな。
⇒(追加メッセージ:)なんと!面白いね、その奇妙すぎる英名のおかげで、アニメ・漫画好きには誰もが知っている名前になっていたとは!!
知れてよかったし、英語圏でもそのままの名前で受け入れられてるってのは、大変興味深いね。
(ちなみに、実は日本語版でも元々そのまま(アルファベットで)表記されてるので、この文字は翻訳者の仕事ではなく、元々志村さん自身が描いたラベルである感じだよ。)
(追加の独り言:)
まさかFrankさんは普通にご存知で、日本文化に触れたことがあるアメリカ人ならほぼ確実に知っているとは、面白い発見でした。
ちなみに、高校の英語でこの話になったのは「セーター」という単語が出てきたときで、「セーター」ってのは実は「sweater」(いわばスウェーター)、つまり「とても暖かくて汗をかくぐらいの服」という意味の言葉だったんですね。
セーター=冬=乾燥というイメージで、日本人的には汗のイメージは微塵もありませんが、英語圏の人にとってセーターは「発汗着」と聞こえてるも同然という形だといえましょう。
…って、さっきポカリの話で「スウェット」と書いて思いましたが、別の衣服を意味する、やんちゃな若い兄ちゃん姉ちゃんのイメージが強いあの「スウェット」、もしかしてこれも「汗」なん…?と思ったら、ここまで来たら最早違う方がおかしいレベルで当たり前でしたけど、これも当然汗のsweatだったんですね!
セーターはポカリとともに高校の授業で覚えましたけど、スウェットもその仲間だったとは、今の今まで全く気付きませんでしたよ、ハハハ!
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