青い花の同人誌『That Type of Girl』日本語訳その37:オススメ書籍

今回は参考文献の中から特にめぼしいものにコメントがつけられているセクションですね。

先日の追記に、このセクションへのメッセージもありました。

-----Frankさんによる最終章への追記・訳-----

Suggestions for Further Reading.

本のタイトルや著者に言及した箇所は簡易引用であるので、これらは英文のままにしておくのがよいであろう。その方が、読者が参考文献の中から(英語の)原典を探すのが簡単になる。

しかし、最後の「日本語の著作」の項は、英語で出版されたことのない作品なので、日本語で作品と著者を引用する方が理に適っているように思う。

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一部、日本語著作の英語翻訳版もあったので、そちらは日本語の方に置き換えておきました。

英語版が気になる方は、元のPDFをご覧いただければと思います。

 

トップ画像は、放浪息子の英語版裏表紙を続けさせていただこうと思いましたが、今回は1点めっちゃ気になるアイテムが記事の中にありましたので、そちらの表紙で飾らせていただきましょう。

下へ続く…!

ユリイカ2017年11月臨時増刊号・志村さん特集!(https://www.amazon.co.jp/dp/4791703405/より)

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That Type of Girl(そっち系のひと)
志村貴子青い花』に関する考察

著/フランク・へッカー 訳/紺助

 

(翻訳第37回:209ページから213ページまで)


推奨参考書籍

以下に、本書で取り上げた話題に興味を持たれた人に向けて、特に重要であり、引っ張る価値のある著作を挙げてみた。最後の項は、日本語で書かれたものだが、個人的に英語の公式翻訳を心待ちにしているものを掲載している。これらの作品の詳細情報については、本書の執筆にあたって参考にし、本文中で言及したその他全ての著作物の完全なリストも並べて列挙してある「参照文献」の章を参考されたい。

(※訳注:本節では、著者名及び作品名は、検索の利便性を考慮し、原典まま(英文作品はアルファベット表記、原典が日本語であるものは日本語)とする。)

エス文化と文学

Alice Mabel Bacon, Japanese Girls and Women. ベーコンは、明治時代の日本の少女や女性の人生を、現代的な視点で記述している。彼女は、アメリカに留学していた日本人少女、山川捨松と一緒に育ち、山川のアメリカ留学仲間である津田うめや永井しげとも親しい友人関係にあった(「舞台設定」の章を参照)。(ベーコンは1889~90年および1900~02年にかけて日本を訪れ、教壇に立った。その後、津田の協力を得て、本書を執筆した(津田は、自分の参加を匿名にすることを希望していた)。

Edward Carpenter, The Intermediate Sex: A Study of Some Transitional Types of Men and Women. このエッセイ集は、今日でいう所のLGBTQアドボカシー(「擁護・代弁」や「支持・表明」「唱道」などの意味を持ち、同時に政治的、経済的、社会的なシステムや制度における決定に影響を与えることを目的とした、個人またはグループによる活動や運動のこと)の、初期の例である。カーペンターの思想は、「吉屋へのオマージュ(敬意)」の章で述べていたように、吉屋信子エス関係に対する考え方に影響を与えた。特に、1899年のエッセイ“Affections in Education”は、本書に再録され、1920年フェミニスト社会主義者山川菊栄によって日本語に翻訳されているので、参照して欲しい。

Hiromi Tsuchiya Dollase, Age of Shōjo: The Emergence, Evolution, and Power of Japanese Girls' Magazine Fiction. Age of Shōjoは、エス文化および文学が欧米の翻訳文学からどのような影響を受けたかについて書かれた、本一冊分に及ぶ長編作品である。

Sarah Frederick, “Not That Innocent: Nobuko Yoshiya's Good Girls.” フレデリックは、吉屋の生涯と作品について、特に小説『屋根裏の二処女』に焦点を当てながら概論を述べ、その詳細な筋書きといくつかの段落を翻訳している。(フレデリックは、20世紀日本文学や歴史という文脈において吉屋作品を取り上げる形の刊行プロジェクトにも取り組んでいる。)

Gregory M. Pflugfelder, “‘S' is for Sister: School Girl Intimacy and ‘Same-Sex Love' in Early Twentieth-Century Japan.” フルーグフェルダーは、19世紀後半から第二次世界大戦までのエス文化を上手くまとめており、それが性科学者、ジャーナリスト、およびフェミニストによってどのように捉えられていたかに光を当てている。この論文では、女子学生時代にエス恋愛を実体験した女性数名へのインタビューも掲載されている。残念ながら、フルーグフェルダーは彼女たちの言葉を長々とは引用していない―論文の最後の行で、日本の女子学生は「話を聞かず、話し続けるばかりであった」と嘆いているのは皮肉である。

Deborah Shamoon, Passionate Friendship: The Aesthetics of Girls' Culture in Japan. エス文化および文学について、戦後のその運命を含めて記述した、こちらも本一冊分に及ぶ長編作品である。

吉屋信子黄薔薇 吉屋信子の作品の中で唯一、公式英訳(サラ・フレデリックによる)があるこの作品は、吉屋の感傷的なテーマと華麗な散文が味わえる『花物語』の一編である。

百合文学および批評

Nicki Bauman, The Holy Mother of Yuri. 定期的に更新されるこのブログでは、百合関連のニュース記事を取り上げ、英語で発表された同人誌からビジュアルノベルまで含む百合作品をレビューしている。バウマンは、百合の読者層の統計分布についても発表している(参照文献の章を参考)。

Erica Friedman (ed.), Okazu. フリードマンが執筆し、時折ゲスト投稿も行われる、百合ジャンルや関連トピックを扱う最も有名かつ権威あるブログである。百合漫画やライトノベルのレビュー(日本語版、英語版両方)、百合関連イベントのニュースレポートなどが定期的に配信されている。

Erica Friedman, By Your Side: The First 100 Years of Yuri Manga & Anime. この近々出版される作品は、吉屋信子エス文学から、現在の百合作品や関連トピックまで、これまでで最も包括的な百合の歴史となることが期待されている。

Verena Maser, “Beautiful and Innocent: Female Same-Sex Intimacy in the Japanese Yuri Genre.” 私の知る限り、メーザーによる2015年の博士論文は、英語で百合というジャンルを最も広範に扱った学術論文である。この論文では、論争中のジャンルの境界線、その歴史、百合漫画と関連作品の制作・流通方法、百合ファンへの調査結果について論じている。

Yuricon, “Essays.” Okazuブログを運営するYuriconウェブサイトの一部で、このページは英語の百合関連資料の包括的なリンク集である。百合ジャンルの歴史に興味のある人には、最初の一歩としてお勧めのページである。

日本におけるレズビアニズムおよびフェミニズム

Sharon Chalmers, Emerging Lesbian Voices from Japan. 2002年に出版された本書は、日本のレズビアンの生き方を扱った英文書のパイオニアであるが、所々で学術的な専門用語が多用されているのが難点である。チャーマーズ自身がインタビューした女性たちからの発言引用も多数収録されている。

掛札悠子、レズビアン」である、ということ 1992年に出版された掛札の本は、ドライな学術的理論書とは異なり、極めて読みやすく、個人的な回想録および日本でレズビアンであるということにまつわる様々なトピックへの探求が組み合わさったものとなっている。

Mark McClelland, Katsuhiko Suganuma, and James Welker, eds., Queer Voices from Japan: First-Person Narratives from Japan's Sexual Minorities. Queer Voices from Japanは、戦後日本におけるLGBTQの生き方を論じたインタビューと一人称の記事を集めたものとなっている。いくつかの章では、1950年代から1990年代までの日本のレズビアンの生活を垣間見ることが可能である。また本書には、日本のレズビアンフェミニスト運動の初期に関する内部証言も含まれており、より詳細な情報を知りたい人には、ジェームズ・ウェルカーの論文(下記参照)が役に立つだろう。

James Welker, “FromWomen's Liberation to Lesbian Feminism in Japan: Rezubian Feminizumu within and beyond the Ūman Ribu Movement in the 1970s and 1980s.” 日本におけるレズビアンフェミニスト運動の初期の歴史が上手くまとめられており、それが現代のアメリカのレズビアンフェミニスト運動からどのような影響を受けたかについての考察も含んでいる。

その他興味深い著作

David Chapman and Karl Jakob Krogness, eds., Japan's Household Registration System and Citizenship: Koseki, Identification, and Documentation. 日本の身分証明書や戸籍に関する法令の歴史とその適用に関する詳細な議論を読むのは、大変な苦労である。しかし、本書は、日本国家が個人とその家族、特に社会的に疎外された人々の生活をどのように規制しているかを覗き見る上で、非常に貴重な一冊である。

Marius B. Jansen, The Making of Modern Japan. 日本史の知識がないと、20世紀や21世紀の日本の社会運動や文学運動を理解するのは難しい。せっかちな人は徳川幕府に関する部分を読み飛ばしても構わないが、明治、大正、昭和の議論は、エスや百合のジャンル、並びに日本の大衆文化全般の背景を知る上で役に立つ。

kyuuketsukirui, “Don't Want to Know What I'll Be without You.” 残念ながら、『青い花』の二次創作作品はあまり多くない;一方、『やがて君になる』や『加瀬さん』シリーズのような他の百合作品は、ファンによる同人作品が桁違いに多い。そんな中でも存在している『青い花』の二次創作として、この作品が私のお気に入りだ:400ワード近い文章で、あきらの仲睦まじい姿と、ふみへの愛の本質を紡ぎ出している。

Yoshio Sugimoto, An Introduction to Japanese Society. 社会階層、教育制度、ジェンダーおよび家族、政治、民族、宗教、並びに文化など、日本社会の様々な側面の総合的な解説書だ。本書は、日本が「独特な単一文化」ではなく、むしろ「文化的多様性と階層間競争に満ち溢れている」(前書きより)という視点で書かれている。本書は大学の講義で教科書として用いられることを想定している;最新版では簡潔な日本史、オンライン資料やビデオへのリンク、学生の研究課題への提案などが追加されている。

日本語の著作

ユリイカ(平成29年11月臨時増刊号) 志村貴子の作品に焦点を当てた、文芸誌の特集号である。19ページに及ぶ志村のインタビューと、志村の完全な著作一覧と思われるものが掲載されている。

志村貴子淡島百景 宝塚のような歌劇場付属の女子校を舞台にしたこの漫画(最初はオンラインで公開)は、志村による舞台の魅力が存分に、総力を挙げて発揮されているように思われる。2011年に始まり、数年間休載していたが、このほど再開された。

吉屋信子花物語 1916年から1924年にかけて刊行された、吉屋の有名なエス小説集である。

―、屋根裏の二処女 エリカ・フリードマンらは、1919年のこの小説を、最初の百合(または百合の原型)作品と称した。

クリエイティブ・コモンズ・ライセンス

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ユリイカの特集号、記事内の記述では単に雑誌の1コーナーなのかな、と思っていたのですが、検索してビックリ、丸々一冊志村さん特集だったとは、これはめちゃくちゃ良すぎるじゃあないですか…!

雑誌ではなく、ムック(マガジンとブックの造語)ということで、半ば単行本に近い扱いのようですから、今でもAmazonで普通に買えるとはありがたい限り!

しかし、電子版か、紙媒体か悩ましい所で、この手の作品は紙の方が断然いい気もするものの、とはいえ国外配送は難しいだろうし、実家に送ってスキャンしてもらうとかも、折角の豪華な本をスキャナに押し付けるのもアレだしなぁ…ということで、まぁ、すぐ読めるってこともあり、電子版を手に取ってみようかなぁ、と思います。

読み応え抜群そうで、めっちゃ楽しみです…!


あとは、最後の方にあった青い花の同人二次創作、検索したらここで挙げられていたタイトルは、FanFictionで、普通に全文公開されていましたね。 

ネタが尽きたら、この辺の作品も翻訳して紹介してみようかなぁと思いますが……って、これは著作権的に微妙なのかな…?

作者の方にコンタクトを取ってみて、許可がもらえたら公開してみたいですね…!

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