美しい分子その4・Apo!

美しい…というかお見事な結晶構造を取るタンパク質をいくつか見ていた形ですが、せっかくなのでもう1つ、大変特徴的な構造のタンパク質結晶を紹介してシリーズに幕を閉じるといたしましょう。

今回は、参考にさせていただいているQuora記事(↓)より、また別の方、Himanshu Mishraさんによる回答から…

 

www.quora.com

…というか、正確には、前回のHalderさんが「ソース」として挙げられていた通り、何気にどちらもこちらのブログ記事(↓)が出典だと思われます。

beautifulproteins.blogspot.com

「beautiful proteins」というそのまんまのURLですが、残念ながらQuoraで挙げられていたものがメインで他にはあまりなく、かつ、もう10年以上も更新のないブログのようです。

ブログ執筆者のMike Tykaさんはタンパク質の構造化・構造予測の研究者のようで、まさに専門ズバリ、職業柄見てきた美しい分子をご紹介いただけたという感じでしょうか。

期待はできない気もしますが、またひょっこり美分子を紹介していただけると嬉しいですね。

 

まぁそのゴージャス分子ですが、他にもいくつかあれど、やはり最初に見ていたフェアリードレスのNGFと、前回更に発展版も含めた構造があったCI2、そして今回のやつが、三大インパクト構造分子かな、なんて気がします。

 

早速そのラストを飾るインパクト大の分子に触れてみますと、こちらは↑の紹介記事で「メビウスの輪?」といった記事タイトルにもなっている通り、ヘアゴムのようなシュシュのような、そんな素敵な(そうかぁ?(笑))リングですね!

 

http://beautifulproteins.blogspot.com/2010/12/mobius-fold-human-apolipoprotein-i.htmlより

こちらはズバリ、URLにもある通り、apolipoprotein AIという分子で、個別物質であるAIそれ自体の記事は(英語版にしか)なかったものの、グループ名であるアポリポプロテインのウィ記事は日本語版も存在しました(↓)。

ja.wikipedia.org

「アポリポ」ってのも耳慣れない方には面白い響きに聞こえるかもしれませんが、lipoはlipidから分かる通り「脂肪の」という意味、一方apoは色々な意味のある接頭辞ですけど、「離れた、切り離した」という意味がメインだと思いますが、「~から形成されるもの、~と関連した」という意味もあり、何となく後者の方かな……と思ったら、ウィ記事冒頭で「~を切り離した、~をまぬがれる」という意だと書いてありましたね。

まぁWikipediaが正しいとは限らないですが、この「アポリポタンパク質」というのは、まさに脂肪結合型のタンパク質(=リポタンパク質)と相互作用して、より高次元の構造を形成したり、代謝に役立ったりという機能をもっています。

(なのでまぁ、リポタンパク質とは離れて存在する、という意味で、「apo」メインの意ともいえそうですね。)

 

特にこのapo AIは、HDLの主要な構成成分となっており、HDLというのは恐らく健康診断なんかでどなたも目にした覚えがあることでしょう、コレステロールの内、善玉と呼ばれる方ですね。

(以前、「楽しい有機化学講座」の脂質のシリーズで、この記事あたりから何度か触れたこともありました↓)

con-cats.hatenablog.com

そう、こんな面白リング構造の分子が、実は善玉コレステロールの主成分だったということで、確かに何かいいやつっぽいですもんね、形も愛らしくて(笑)。

 

その愛らしい「構造」の方に話を戻しますと、ズバリ、ほぼ全てがαへリックスから出来ているというのが大きな特徴で、まぁだからこそ絵で描いたらユニークな形になっているだけともいえますけど、恐らく脂肪と高い親和性を出すために、この連続ヘリックスが都合いいものとなっているのでしょう。

 

詳しい分子間相互作用については僕も分かりませんが、実際のapo AIは、どのアミノ酸がリボンモデルのどこに対応するかがハッキリ分かるし、自分でグルグル動かすこともできる、おなじみRCSBのサイトを見ると分かる通り…

https://www.rcsb.org/3d-view/1AV1/1より

こちらはA~Dの4本のapo AIがまとまって構成されている構造だったようで、apo AIの1分子自体は201アミノ酸から成る、4周ではなく1周のリングなんですね。

 

ちなみに角度によっては、捻じれていないようにも見えますが…

 

https://www.rcsb.org/3d-view/1AV1/1より、アングル変更

…まぁ角度によっては最初に示してあった通り8の字に絡み合ってるようにも見えるということで、やや複雑にまとまっている状態であることが窺えるといえましょう。

 

なお、例によってRCSBで表示されるモデルのカラーリングはちょっと地味な感じになっていますけど、そもそも色づけは自分で編集可能なんですよね。


3Dモデル画像、右側にあるパネル(2つ上・全体表示画面参照)の内、一番下のマウスカーソルみたいなものをクリックしたら上部に編集パレットが出てきまして、ペン(インク)みたいなアイコンをクリックしたら「どの部分を何色にするか」という選択画面が出てくるのですが…

 

色やその他、色々変更できるパレット


…ここで例えば、↑の通り、「Selection: All」で「選択対象:全て」を選び、ColorをBlackにしてやると……

 

オールブラック!


…う~ん、ひじき!

(いやひじきではねぇだろ(笑)。黒電話のコードみたいな感じですかね、それも古い例えですが(笑))

 

更には当然、例えば「一番存在比率の多い(であろう)ロイシンだけを赤にしてハイライトする」なんてことも出来まして…


Selection: Leucine (LEU)で赤にしてみると…!

ロイシンのみを赤に

 

ででーん、やっぱり、20種類もあるアミノ酸の中では、LEUが圧倒的に目立つ感じですね!

 

Apply(適用)!

もちろんこれ以外にも塗り方は自由自在で、さらに別のアミノ酸に別の色を追加したり、鎖単位で塗り分けたりなど、カラフルに仕上げることが可能です。

まぁこれはブラウザで用意されている簡易ツールなのでグラデーション着色とかはできない気もしますけど、専用の分子構造描画ソフトであれば、まさに例の黒バックで紹介されていたような美しい描画も思いのもまま、ってことなわけですね。

 

こういう感じの操作をすることで、塗り絵のように自分で色付け体験ができたら子供たちなんかはめっちゃ楽しめそうですし、「タンパク質がアミノ酸で出来ており、この分子のように4つが重なってできることもあります」みたいなミクロの構造に親しめそうな気もしますから、例えば子供科学教室の、分子生物学・構造化学班の出し物として、

「コンピューターで好きなように分子に色をつけよう!」


…なんてコーナー、かなり良さそうですね!

 

まぁ僕はそういう色付けとか1ミリも面白いと思わないし、仮に自分がやらされてもそんなことで分子に興味が持てるなんて正直全く思わないですけど(笑)、とはいえそもそも僕は塗り絵自体が好きでもない子供でしたからそれは自分の性格なだけで、そういうのを心から楽しんでくれる子供が大勢いることは容易に想像できますし、間違いなくそういうのがきっかけで「小さな分子・タンパク質も面白いんだなぁ」と思って、分子や科学全般を身近に感じてくれることには確実につながってくれそうにも思えます。

 

別に出し物を企画する予定もないですが、これはキッズが喜んでくれそうだな、と、我ながらいいアイディアに思えてなりません。

 

という所で、Apoさんを紹介しただけで割といい分量になってくれたとともに、タンパク質以外の話で最後まとめようと思っていたのに、その時間もなくなりました。

ラストのつもりでしたが、ネタも時間もない日が続いているため、次回をシリーズラストのまとめにしようかなぁ、などと画策しています。

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